2010年12月 9日

或る日の千歳基地(その2)


この記事は千歳基地の周辺に集う撮影マニアに捧げる。




気温-2度、風速ほぼ37km/時 雪は降っていない分、余計に肌寒い日だった。


ゆえに、ふと気が向いて普段は殆ど千歳基地の写真を撮りに来た事が無い人は早々と帰ってしまうのは当然であり、あしげく通う人達ですら その日の千歳基地には 百里から305飛行隊のF-15が6機飛来し、そのうち4機が飛んでいるぐらいで それ以外の外来機は無く、ローカルの201や203飛行隊の機体が飛んでいるだけなので 昼過ぎには殆どが帰ってしまい 残っていたのはたった二人。


物語は そんな時に始まった。


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いつもの様に訓練フライトへと飛び立つが如く、201飛行隊のF-15が4機 一列に並んでランウェイ36Lに向かっていたところ 無線から「訓練場内救難」という単語が聞こえ始めた矢先、最後尾の1機がタクシーウェイのNO.5と呼ばれる地点で停止し 他の3機は36L手前のアーミングエリアへと向かっていった。


無線から聞いた内容で推察するに「その4番機はタキシング中に前輪がパンクした」という想定の場内救難訓練の始まりだった。


真剣に訓練に励む自衛隊員各位には大変申し訳ないが「訓練」と判っている以上 それを眺めている二人の撮影マニアにとっては「イッツ・ア・ショータイム」である。


その作業がどういう風に移行するかを まるで、映画やドラマを見るように楽しんでいた。


ところが…


ふと、先頭の3機はどうしてるのか?と 36Lのアーミングエリアを望むと


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いつの間にか何処かから現れたもう一機が加わり4機並んで 遠目にはいつものようにアーミングしているように見えるのだが、よく見るとキャノピーが上がっている。


補足しておくと、アーミングとは銃で言えば「安全装置のかけ外し」の事。


パイロットが発射ボタンを押しても弾やミサイルやチャフやフレアが発射されないように機体の外部に安全ピンが差し込まれており、離陸する直前に滑走路の手前でアーマーと呼ばれる武器担当の整備員が このピンを外し、着陸後も上述の残弾が残っている場合は着陸滑走した先の滑走路端のアーミングエリアで安全ピンを差し込んでから格納庫前のエプロンへと向かう(これをデアミと呼ぶ)


で、さらに補足しておくと 通常、なんらかのトラブルが生じない限りF-15はエプロン前でパイロットが乗ったらキャノピーは閉じ、着陸後もエプロンに着いてからでないとキャノピーを開ける場面を私は見た事が無い。


(F-4はキャノピーを開けて滑走路端までタキシングし、離陸滑走直前に閉め 着陸後、ドラッグシュートを切り離して キャノピーを開けエプロンへとタキシングしていく様がマニア心をくすぐるのだが)


しかも、アーミングエリアの4機はそこでエンジンを完全に停止し、あろうことかパイロットが機体から降り始めている


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なので、ブッ飛んで36Rの”共産党の丘(昔、自衛隊に対して抗議活動する連中が叫ぶのに利用していた場所なので古くからの撮影マニア達がそう呼ぶ))”で撮ったのが 上の③④


で、さらに


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36Lにブッ飛んで撮ったのが上の⑤⑥


おそらく、千歳の古くからのマニアでも 36でこの光景を見たり撮った者はそうそういないだろう。


これを撮った瞬間、たまたまそこに居合わせた二人は 気温-2度である事も、風速がほぼ37mあって それだけ体感気温が下がっている事も、それまでその日ロクな写真が撮れずにいた事も総て忘れ その幸運にヘラヘラ奇妙な笑顔を浮かべながら ある者は涙ぐみさえしていたと言う。


しかも、その二人のマニアは


「ここまできたら ”アソコに行って撮るしか無ぇべ”」と言いだし…


その”アソコ”が何処かは 申し訳ないけどあえてここには記さない。


それは、その場所が”立ち入り禁止”の場所という意味ではなく、真の千歳基地の撮影マニアであれば誰もが知っている場所であり、最近 デジカメブームなのか 新たに千歳基地に写真を撮りに通う人が増え始めたのだが その中に、明らかについ最近来だした人なのに 何故か「昔から通っていた」と妙に見栄を張る面倒臭い人が時々いるので そんな人がホラを吹くネタにこの記事が使われてはつまらないので伏せておく。




で、二人のマニアは その”アソコ”へと向かったわけだが…


そのうちの一人は その”アソコ”に行く途中 ふと見た光景をどうしても写真に撮りたくなって 撮ってはカメラのモニターを見ながら設定を直し、また撮って…を繰り返しているうちに


耳に差し込んだイヤホンから無線で「状況終了! 速やかに撤収に移れ」という指示が聞こえ 一足先に”アソコ”へと向かった者から


「あ!、パイロットが乗りそうだよ」


との報せに 慌てて脚立とカメラを担いで走り… 男は藪の中へ飛び込むようにつまずいて派手に転んだ。

(余程、慌てていたんだろうね)


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ようやく”アソコ”に辿り着いて写した写真は 既にパイロットが乗り、キャノピーは閉じた後だったが、この直後 エンジンが回り始めてキュンキュン油圧の音をさせながら動き始めたF-15のサウンドと濃い排気の香りに酔いしれ至福そのものだったという。


戦い済んで日が暮れて ”アソコ”から愛車へ戻ったその男は転んだ拍子に防寒ズボンとジャンバーにかぎ裂きの破れ目を作り 右手に持ったカメラを庇おうとしてついた左手首を挫いていたが 全く意に介せずヘラヘラ笑いに薄涙目状態で札幌へと帰っていったという。


その男が撮った 転ぶ前に撮った写真が下の二枚だ。


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日本国内の他の基地の何処かでは なんの変哲も無い写真かもしれない。


興味のない人にはどうでもいい写真である。


でもね、千歳で航空祭以外に「キャノピーの開いたF-15」を撮れる機会など殆ど無い。


それ以上にエマジェンシー以外で 36で「キャノピーの開いたF-15」を撮れる機会も殆ど無い。


その男にとって この記事の写真は


「昔、この36でね…」


と、今後、彼が死ぬまでずっと 千歳で出会った初心者相手にあたかも「自分は古参だ」と これ見よがしに威張るのに十分なアイテムを得たも同然なのは言うまでも無い。


というわけで、その男に関して千歳基地に集う撮影マニアの方々は その男の事はどうか生温くスルーの方向でお願いしたい


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