2015年4月 2日

わさび


私は物事を考えすぎるのかもしれない




その昔、私が自宅を建てようとした時に 私の人生の師にあたるNさんは


「なんでもかんでも あぁだこぅだじゃなくて 何処か一つ自分なりのこだわりを示せ」


とアドバイスをくれた。


その結果、私が一番こだわったのは風呂場である。


ゆえに、病院暮らしだからといって どうにも病院の風呂では満足出来ないので 風呂に入りたくなったら私は自宅に帰宅する。


こだわって作らせた風呂だけに、私は自宅の風呂に入るのが大好き...という以上に温泉旅行を除いて、余所の風呂では落ち着けないし さらに言えば、私は寝起きに風呂に入りたい派であって 夜にはあまり風呂に入りたくないんだな


朝起きると風呂に入る。


顔も洗うが頭も洗う、そして湯船に浸かりながら歯を磨く... それが私が自宅を建てて以降の習慣だった。




さて、半月ほど前の事。


前日に病院から帰宅していた私は 朝起きていつものように風呂場へと


浴室の手前にある脱衣室兼洗面所で裸になり、棚に置いてある私用の歯ブラシと歯磨き粉を入れたステンレスのマグカップを持って浴室へと


湯船に浸かり、備え付けのTVを見ながら歯を磨こうとして「あれ?」と気づき 前日の事を思い出した。


というのは、マグカップに歯ブラシと一緒に入っていたのが それまでに見た事の無い歯磨き粉のチューブだったのだ。


というか、それってどこからどう見ても「わさび」なんだな(SBって書いてあるし^^;)


そう、前日に歯磨き粉が残り少なくなっていたので 連れ立って買い物に出かけようとしている嫁や娘達に「歯磨き粉を買ってきて」と頼んでおいたのを思い出したのだ。


まぁ、あたりまえであれば 緊急用(たぶん、心臓が壊れている私専用...といっても赤くないしツノもついてないが)のインターホンで家人を呼び、問い合わせるところなのだろうが、なんかそうするのが"負け"みたいな気分に襲われた私は 湯船に浸かりながらマグカップの"わさび"を見つめて しばし思案した。


「何故? ここに"わさび"なのか?」 と。


これは もしかしたら嫁か娘達による私に対するなんらかの仕掛けじゃなかろうか...


寝惚けながら風呂に入っている私が 気づかずに歯磨き粉だと思ってわさびで歯を磨く...って そこまでマヌケじゃ無いぞ俺は


いや、そこで怒ったら 俺の人としての器の小ささを露呈するばかりだ


ここは、嫁や娘の想像を超えた反応を見せてこそ 父としての俺だ


しばし黙考の後、私は"わさび"を"わさび味の歯磨き粉"だと自分に暗示をかけ 誰もがするのと同じ様に歯ブラシに歯磨き粉をのせ やおら歯を磨き始めた。

(※注 絶対にマネしないで下さい。)


簡単に感想を述べると、一般の歯磨き粉だと口の中が「スースー」なのだとしたら「ヒーヒー」 未だかつて味わった事の無い爽快感の一歩手前な気分


わさび特有の鼻の奥にツーンと抜ける刺激で目が覚める


ついでに、新たな快感にも目覚めた気分だった。




それから二週間、わさびで歯を磨く事が私の中では既にあたりまえの事となっていた。


そんなある日の事、家族揃って晩御飯を食べようとした時に その時のメインデッシュが刺身だった事もあってか 次女が


「あれ? わさび何処?

 この前、なくなりそうなんで新しいのを買ってきておいたはずなんだけど...

 っていうか、なんで冷蔵庫の中に歯磨き粉があるの?」


と言い出したので 私としては予想よりははるかに日数がかかったが いよいよ出番が来たなと 大事に考えておいたボケを披露しようとしたところ


それより先に ウチの嫁が間髪入れずに


「あぁ、洗面所にあるわよ 旦那様(私のこと)の歯ブラシと一緒にマグカップに立っているから」


と平然と応えると 私以外の家族が一同に


「なんで?」


私は言葉を失い 心の中で「え-------------っ そんな...」状態。


すると、嫁はたたみかけるように


「旦那様から頼まれて買ってきた歯磨き粉と 同じ日に買ってきた"わさび"のチューブを

@@@(次女)が置き間違ったんじゃないの? どうしてそんなの間違うのか理解に苦しむけど」


言われて次女が洗面所に行って戻ってくると


「ホントだ、ママの言う通りに"わさび"が洗面所にあった...

 でもさ、これ新しく買ってきたはずなのに もう結構使われてるよ」


と、一同にわさびのチューブを見せる。


「で? わさびで歯磨きしてる御気分は如何なモノかしら?」


と、私に嫁が問う


「オマエ(嫁) 気づいてたの?」


「ええ、当然」


「いつから?」


「歯磨き粉とわさびを買ってきた日の夜から

 寝る前に歯を磨こうと思って洗面所に行ったら変な物があるんだもん 直ぐ気づくわよ」


「だったら、なんか言うなり、取り替えておくなりしてくれればいいじゃん」


「う~ん、一瞬そう思ったんだけどぉ... この状況をアナタならどう反応するのか見てみたかったの」


その嫁の一言に一同ポカン 


「で、次の日の夜に見たら ホントにわさびで歯を磨いた形跡があったから...

 なのに、アナタは何も言ってなかったんで ビックリで可笑しくってツッコムのやめたの」


笑い転げる一同。


「アナタこそ 最初に直ぐ言えば良いだけの話なのに なんで黙ってたの?」


澄ました顔でそう聞く嫁に


「それじゃぁ、当たり前の反応過ぎてつまらないかな...と

 それに、もしかしたら、オマエ(嫁)や娘達が俺に仕掛けた挑戦じゃないか?とさえ思ってさ...」


すると、次女が手に持ったわさびのチューブを見せながら


「じゃぁ、ずっと今日までわさびで歯を磨いていたの?」


と、聞くので


「そうだよ、誰かが気づいてツッコんでくれるまでは 途中で止めたら負けだろ?」


「あら? もしかして私、アナタがとっておきのボケを披露する邪魔しちゃったのかしら?」


しれっとした顔でそう言う嫁


私は「何か」をグッと心の中に抑え


「いや、ボケなんて真似するわけないじゃないか...

 案外ね、やってみると良いもんだよ わさびの歯磨き。

 あれだろ? 今流行のオーガニックじゃん オマエらもやってみ?」


と、応えてみたのだが 自分のこめかみの辺りがピクピクしてるのが判ってもいた。


同時に、嫁の彼女独特のSっぷりが未だに健在なのが判って嬉しかった。


コメント(5)

仲睦まじいバトル劇
まだまだ『奥さんここに在り』で
洗面台に『モンダミン』の代わりに
ミツカン酢を置かれるような感じですね


どうも「女」偏に家が付くと
パワーアップされるようで…
「良」く思った娘と知り合い
「眉」を見せられ媚びられて騙されついでに夫婦になり
いつしか家が後ろにつくと「嫁」となって強くなり
そのうち「古」くなると姑でさらに箔がつくのでしょうねぇ

どうも「女」偏に惑わされつつも
しょうがねなぁと動いている…

❞オレ、ふぁいっと❞ と握りこぶしを作っている
自分がいます

奥様 GJとしか申し上げられません。

世の既婚女性が、奥様ほどの賢さと懐の深さ、そしてお茶目さと持っていたなら、日本は最強だったのに…。

★ snow431 さん

私は「俺 ガンバ」って思ってます。^^


★ みかnママ さん

どこかの人達みたいに「女が!」ばかり吠えるだけじゃダメなんです。^^


久しぶりの嫁ネタ。健在で何よりです。
出会いの頃のイメージとのギャップもおもしろいです。

★ ぴの さん

そんなに変わったとは思ってませんでしたが、たしかに^^


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