2015年3月 7日

海底に眠る戦艦「武蔵」発見の報に触れて


先日、シブヤン海の海底に眠る戦艦「武蔵」が発見されたそうな。





2005年の3月に『軍艦武蔵 全2巻』という記事を掲示した事がある。


その記事の中で私は


私は「軍艦武蔵 全2巻」に登場する 元・武蔵乗組員を 一人、知っている。


と記した。


仮に、その人の事を以下の文章ではEさんと呼ぶ。


そんなEさんと私が懇意にさせて頂いたのには 少々、複雑な事情がある。


まず、武蔵がシブヤン海で撃沈された際に 海上に漂うEさんを救助したのが駆逐艦「清霜」で 日没後の暗闇の中、沈んだ武蔵から漏れ出た重油まみれでヘロヘロになっていたEさんを「清霜」の乗組員の一人が海に飛び込んでEさんの身体にロープを巻いて引き上げてくれたのだそうだ。

その後、助けてくれたのが誰かは判らずじまいだったが、その事をEさんは


「『清霜』の乗組員がいなければ今の自分は無い」


と、生涯にわたり感謝し続けたわけだが その「清霜」の乗員の中に私の父の従兄弟にあたる人がいた...というのが縁(その1)


Eさんは救助された後、終戦までのほとんどをフィリピンで過ごしたのだが 武蔵が撃沈されて数ヶ月後に「清霜」もフィリピン近海で撃沈され 運良く救助された私の父の従兄弟もフィリピンの病院に収容され 終戦までのほとんどをフィリピンで過ごしている間にEさんと知り合い、懇意になった...というのが縁(その2)


それとは全く別の話で...


戦艦「長門」という名前は「大和」や「武蔵」ほどではないけれど 軍事に興味の無い人でもわりと多くが知っている。


その長門と同型の姉妹艦で「陸奥」という名の戦艦が存在したのだが、その「陸奥」の名前を知っている人は想像以上に少ない。(但し"艦これ"に興じている人は除く)


で、その「陸奥」という名の戦艦がこれといった戦闘参加も無いまま大戦中期に瀬戸内海で停泊中に原因不明(諸説あるが確定した原因は無い)の大爆発で乗員の殆どを乗せたまま沈没したのを知る人はさらに少ない。


「陸奥」と共に海中に没した乗員には艦名の「陸奥」に縁があったのか 北海道・東北出身の乗組員が多かった事もあって 戦後、海軍OBの北日本出身者達は陸奥の船体引き揚げ・遺骨回収をしたいと尽力したが それが実現したのは沈没から25年以上経った1970年の事。


実は、私の叔父の一人も乗組員として陸奥と共に没しており 私の祖母にとってはその叔父の遺品が無い事を不憫がり、「陸奥」引き揚げと遺品・遺骨の回収は叔父の供養の為にと悲願だった事から 私の父や叔父達も実現に向けての活動に積極的に参加していた。


で、先述したEさんや父の従兄弟も海軍OBとして関係していたから知古の輪が広がり...というのが縁(その3)


で、極めつけが


結果的に私が引き継いだ現在の会社の創業者であり、学生時代に私のその後の人生に大きく影響を与えてくれた喫茶「職安」の常連さん達の初代の大ボス的存在である「屯田兵の御隠居」と呼んでいる因業爺さんは元海軍士官で 海軍OBの集まりにおいても相当な顔役だった。


以前にもこのクソブログのいくつかの記事に記したように そんな御隠居がバイト学生の中でも特に私を可愛がってくれた最大の理由と思われる事が 私の父や祖父、それに数名の叔父など親戚縁者に海軍での従軍経験者が多かった事。


結局、そういう背景は御隠居の生前には何一つ私は判らなかったんだけど、常日頃の海軍OBの交流や慰霊祭などでの交流、戦艦「陸奥」の引き揚げ問題、その後に戦艦「武蔵」乗り組み生存者達による「武蔵会」設立等々 北海道在住の海軍OBの中で御隠居とEさん、それに私の父や叔父達の間に交流があったわけで それが故に私自身もEさんとは何度も会って話す機会があり、いくつかのエピソードもあって私の記憶からは削除する事の出来ない人なのだ。


だから、海底に眠る戦艦「武蔵」発見の報を耳目にした時 私は真っ先に在りし日のEさんを思い出したのは言うまでも無い。


もし、Eさんがまだ存命でこの報に接したとしたら どう言ったのだろうか? と。


何がキッカケだったのかは思い出せないが、私が大学生だった頃にEさんとの雑談の中で戦艦「陸奥」の引き揚げの話題になった時の事だ。


Eさんは


「船体全部では無いけれど"陸奥"が引き揚げられたのは良かったと思う反面、自分が乗っていた"武蔵"を思うと羨ましい気持ちと 引き揚げなどせずにそのまま海底にそっとしてあげといた方が良かったんじゃないか?という思いが入り混じって 実は複雑なんだよね」


と、何とも言えない 苦笑いのような、寂しそうな微笑みみたいな表情を浮かべていた。


「例えば、陸軍の兵隊や 海軍でも艦隊勤務ではなく、地上要員として南洋の島で戦っていた兵隊達は遠く離れた故国や故郷に思いをはせた人が殆どだったから 共に戦って生き残った人達は没した戦友の遺骨の欠片だけでも故郷に還してあげたいという気持ちが強いんだ。


でもね、海軍の艦隊勤務の船乗り達って 自分が乗り組んでいる艦が家で、乗組員達全体が家族で、いざとなったら乗っている艦が棺桶だ...って気概をもっていた奴が少なく無かったんだ。


だから、自分のように生きて故国に戻れた者は 戦友の遺骨の欠片だけでも故郷に還してあげたいという気持ちもある反面、艦と共に海底に没した連中は そこを棺桶に静かに眠らせておいてあげたい...って気持ちもあるって事をなかなか一般には理解して貰えないんだな。


まぁ、陸奥の場合は海底と言っても瀬戸内海という 言わば故国の中みたいなものだから余計にどっちが良かったのか悩んじゃうんだわな」


「じゃ、Eさんが乗っていた武蔵の場合だったらどうなんですか?」


と、私が聞くと


「武蔵が沈んだシブヤン海は水深が深く 人間が潜っていけるようなところじゃないから どうやったって引き揚げなんて不可能で迷う事無く ただ静かに眠っているよ。


...っていうか、それぐらい深いところに沈んだのも ある意味、武蔵ならではなんて思うんだ。


知ってるか? サイパンとか南洋の島々の周辺に今では日本の若者がリゾートだとか言って遊びに行き、ダイビングを楽しむ...なんて話が普通になっちゃっているけどさ いつだったか、そんな番組をTVで見てたら 戦時中に沈められた艦船がダイビングスポットなんて言われて 海底に横たわっている駆逐艦や輸送船の残骸に潜って遊んでいるんだよな


なんかさ、それ見てたら その沈んだ艦船と共に没した連中に申し訳ない気持ちでいっぱいになったんだ


たぶん、そこで眠っている連中は 後世の日本の若者達が遊んでいる姿を見て、戦争が終わって平和を享受している事を率直に喜んでくれるだろうさ


でもな、生き残った俺達は 自分の子供や孫に そこで亡くなっていった先人が居る事や その先人がどのように没していったのかすらまともに教えておらず、知ろうともせずに無邪気に遊んでいるのを放置しているのが なんか戦友達に申し訳なくて仕方が無くなったのさ


もしも、武蔵が潜っていけるぐらいの深さに沈んでいて そこを今の若者が何も知らずに、知ろうともせずにダイビングスポットなんて興じてやがったら... 俺はそこに眠っている戦友達に会わせる顔が無いよなぁ...ってな。」


戦艦 武蔵

戦艦 武蔵

戦艦 武蔵

戦艦 武蔵

戦艦 武蔵


戦艦 武蔵

戦艦 武蔵

戦艦 武蔵

戦艦 武蔵

戦艦 武蔵

戦艦 武蔵


「静かに眠らせてあげたい」という気持ちと それとは別に、発見された事を素直に喜ぶ人も少なく無い事も理解出来る。


たまたま、


『日本の伝統に従って敬意を持って対応する』


と、発見を指揮した人物が言ってると聞いて 発見された事以上に、私はその気持ちが嬉しいと感じた。


コメント(2)

リクエストに応えていただき、有難うございます。

ブタネコさんが記事にされていたのを受け「軍艦武藏」を読み、感銘を受けました。なので、やはりこのニュースに対してブタネコさんがどう感じられたのか、興味のあるところでした。


>戦後、海軍OBの北日本出身者達は陸奥の船体引き揚げ・遺骨回収をしたいと尽力したが それが実現したのは沈没から25年以上経った1970年の事


そうなんですね、日本の海域にある軍艦でさえそれだけ時間がかかるんですね。

それがましてや他国の海に沈んだという事になると、見つかるのにこれだけ時間がかかったというのは致し方無い事なんですね。


>戦友の遺骨の欠片だけでも故郷に還してあげたいという気持ちもある反面、艦と共に海底に没した連中は そこを棺桶に静かに眠らせておいてあげたい...って気持ちもあるって事をなかなか一般には理解して貰えない


簡単に理解できる、なんて言えませんが、それでも、理解したい、と思います。

ただ、そっとしておくにしても、今までシブヤン海としか分からなかった事が具体的に「ここ」と分かっただけでも乗組員だった方達やご遺族にとっては随分違うんじゃないだろうか、と思いました。

日本政府が今後どういう対処をするか、そっとしておくにしても、一部日本に持ち帰ることが出来るものは持ち帰るにしても、

>「静かに眠らせてあげたい」という気持ちと それとは別に、発見された事を素直に喜ぶ人も少なく無い事も理解出来る

というような事を考慮に入れての事なら良いのですが、これがまた隣国に「軍国主義の復活」云々言われて行動を決めたり決めなかったり、という事が無いようにしてもらいたいです。今のところまだ大々的には言ってないようですが・・・

★ うごるあ さん

中・韓が何を言おうが聞く必要ないです

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