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2014年08月19日

● アレルヤ


「アレルヤ」という曲を聴くと 私は決まって一人の女子高生を思い浮かべる




夜半、オンラインゲーム仲間とスカイプで喋りながら「艦これ」をプレイしていた時の事、WOWOWでアニメ映画『空の境界 未来福音』の放送が始まった。


空の境界 未来福音


DVDが発売された時に完全生産限定版を購入して見ていたにも関わらず、ゲームやスカイプに集中する事が出来ず、ついつい見入ってしまった。


というのも、私はこの映画が 特に開始から1時間16分以降のラストがとても大好きなのだ。


空の境界 未来福音


この映画を初めて見た時に ラストに流れてくるKalafinaが歌う主題歌「アレルヤ」を聴いて涙ぐんだほどだからだ。



そして、この夜も涙ぐんだ…というか泣いた。


それは映画や曲への感動だけが理由じゃ無い。




私はいつも病院内を徘徊する時にクラッチバックを持ち歩く。


そのクラッチバックには財布と小銭入れと携帯電話と煙草とライター、そしてMP3プレイヤーとその時々の読みかけの本を入れている。


病院のロビーや喫煙室、天気の良い日なら屋上などで一人で過ごす時に それらの装備があれば殆ど事足りる。


大抵は院長室で病院長であり、私の主治医であり、腐れ縁の悪友でもある二代目開業医と雑談したり、喫煙室に屯するヤクザ患者を弄って遊んで過ごすのだが 時には病院の患者用ロビー兼食堂や屋上で音楽を聴きながら本を読むのも案外好きなんだな


で、ちょうど、今年の真冬真っ盛りの頃の事。


その頃私は左肩から左手の小指までジワーンとした痺れに悩まされ 暇を見つけてはリハビリルームに行きマッサージやパラフィン湿布などを施してもらっていた。


そんなある日の事、いつものようにマッサージを受けながら、リハビリルーム内のベンチで休憩しつつの患者である女子高生と療法士が交わしていた会話を何気に聞いてしまったのが そもそもの事の発端だった。


療法士

「あんまりリハビリを頑張りすぎるのも身体には良くないよ」


女子高生

「だって、私、他にする事無いし、早く自分で歩けるようになりたいんだもん」


療法士

「車椅子で学校に通学するのは嫌なの? 学校行って、友達とお喋りするだけでも結構気晴らしになるよ?」


女子高生

「友達? 私には友達なんていないもん」


療法士

「そんな事無いでしょ? よくお見舞いが来てるじゃん」


女子高生

「あの子達は私の為に来てるんじゃないの ”お見舞いに行く”自分の満足だけが目的」


療法士

「え~、そんな風に考えるのって ちょっとヒネクレてるんじゃない?」


女子高生

「たまたまね、クラスメイト達が交わしているLINEを見せてくれた子がいたの

 そしたら、その中でクラスメイト達が私の事を”幽霊”だって笑ってたの」


その言葉を聞いた瞬間、その子と話していた療法士と、私の肩をマッサージしていた療法士も私と同じ様に会話を聞いていたらしくギョッとした様に固まり言葉を失っていたが、不思議と患者の女子高生自身は柔らかな微笑みを表情に浮かべていた。


なので、私は


「よぉ、ネェチャン それってオマエの脚をもじって”幽霊”って意味なのか?」


すると、患者の女子高生は やはり、柔らかな微笑みを表情に浮かべたまま


「たぶん、そうなんだと思います」


と、応え


「じゃぁ、オマエの心が死んでる…って意味じゃ無ぇんだ?」


と、重ねて聞くと


「クラスメイト達は たぶんこんな怪我しちゃったんで私の心も死んでるって決めつけたいみたい

 でも、私に言わせれば事故で一度死に目に遭って世の中や周囲の見方が変わっちゃっただけで

 別に、死んでるつもりはないんですけどね」


明るく笑いながらのその応えに私は感動した。


その子は昨年の秋に部活で遅くなり、夜道を学校から自宅へ自転車で帰る途中に酒に酔っ払った運転手のトラックに交差点で巻き込まれるように轢かれ 両足の膝から下を失った

つまり、「脚が無い」から「幽霊」 彼女のクラスメイト達は悪気の有無に関わらず彼女の聞こえ無い(目の届かない)ところでそう呼んでいた…というわけだ。


でも、彼女の心は健全だった。


「で、アレか? リハビリをこなして、車椅子じゃ無く、義足で立って歩けるようになって

 そのクラスメイト達に”私はちゃんと生きてるし歩けるわよ”って見せつけてやりたいのか?」


さらに私が聞くと


「うぅん、今通ってる高校には 私の方からお願いして友達になってもらう価値のある子なんて

 一人もいないって判ったから、”見せつけたい”なんて気持ちは全然無いの。

 それよりも、ウチの両親が”この子はこの先一生車椅子生活で…”って凹んじゃってるのが鬱陶しいの

 私が一人で立って歩ける様になれば少しは安心して落ち着くと思うんだ、もちろん、私もそうなりたいし」


その応えに私はさらに感動した。


変な言い方だけど、「憎しみ」とか「見返してやる」という気持ちは 人間の心のエネルギーとしては相当なものがある。


ゆえに、事故の被害者達の中には そんなエネルギーを糧にリハビリに励む者が少なく無く、しかもその多くがそういうエネルギーで見事に克服していった例を私は入院生活の中でいくつも見てきた。


けど、「両親の心の安定の為」 そう応えた患者を見たのは始めてで それだけで二人の娘と二人の孫娘を持つ私は感動で泣きそうになった。


「それよりオジサンって いつもリハビリ室でそのMP3プレイヤーで何か聴いてますよね?

 それって、いつも何を聴いてるの?」


女子高生はたぶん話題を変えたかったのであろう、そんな風に聞き返してきた。


「あ?、これか?」


その頃の私はアニメソング 特に藍井エイルやLISA、それにKalafinaなんかを好んで聴いていたのだが、療法士達の手前「アニソン」と口で言うのがなんだか憚られたので 「聴いてみな」と言って、私は自分のMP3プレイヤーをそのまま女子高生に渡した。


すると、女子高生はしばらくの間、目を閉じて聴いていたが やがて目を開くと


「これ、何て曲なんですか?」


と、私に聞くので 両耳イヤホンの片方だけ女子高生に外してもらって それで確かめ、その曲はアニメ映画『空の境界 未来福音』でKalafinaが歌う主題歌「アレルヤ」だと教えると


「この曲、なんか、泣きたくなっちゃうぐらい良い曲ですね」


と、女子高生


それに対して


「だよな?、良い曲なんだよ、心が洗われるっていうか… オジサンこれ聴くと優しい人になっちゃうんだ」


すると、女子高生は


「オジサン、超ウケルぅ 全然、似合って無いし」


と、笑い出した。


そんな時、私の担当看護師であるCちゃんが現れ


「院長がブタネコさんの事を探してますよ なんだか急ぎの用らしくて…」


と言うので 私は女子高生の患者に


「おう、そのMP3プレイヤーくれてやるから 満足するまで聴いて堪能しろ」


と言って渡したたまま私は院長を探しにリハビリルームを後にした。


まぁ、今だから正直に言うと 私は感動してギリギリ泣き出す寸前だったのだ。


で、その女子高生はともかく 他の患者や療法士達の前で泣く姿を見せたくなくて リハビリルームから逃げ出したかったんだ。


それと、心の荒んだ私のようなオッサンに与えてくれた感動に対して もし、そんなものでその子の病院生活の僅かながらも癒やしの一つにでもなるのなら MP3プレイヤーの一つや二つを御礼代わりにプレゼントしても罰なんかあたらないだろう… なんて、カッコつけたかった…ってのもあったんだけどね。


彼女が療法士との会話の中で


「私の方からお願いして友達になってもらう価値のある子なんていないって判った」


と言ってるのを聞いた時、高校生の時にウチの嫁が


「こんなクラスの中に私が友達になってやってもいい子なんていないわよ」


そう呟いていたのを思い出し、


「でも、私に言わせれば事故で一度死に目に逢って世の中や周囲を見る目が変わっちゃっただけで」


という言葉の中に 私自身がかつて同様の実感を味わい、むしろそのお陰で蒙が啓いて今に至れたとも感じている事を もしかしたらこの子もそうなのか?と感じ 何よりも、


「私が一人で立って歩ける様になれば少しは(両親が)安心して落ち着くと思うんだ」


と、両親の身を案じる姿勢に Kalafinaの「アレルヤ」の冒頭の歌詞


『未来は君に優しいだろうか』


が、偶然なのではあろうけど その奇縁さがもの凄く私の心に染みたんだ。




さて…


それから半年が過ぎ、患者の女子高生は退院して家に戻ったが 今もリハビリに励んでいる。


彼女の精神力が凄いのと、義足における日本の技術力と進歩の凄まじさもあるんだろうけど 彼女は杖の助けがあれば家の中での生活に限って言えば車椅子の必要は無い。


まだ、長時間立ち続けたり、ある程度の距離以上を歩くには心許ないけれど それも今までの彼女の経緯を振り返ればこの先少しづつ伸びていくのは間違い無いだろう


そして、彼女は通院のたびにカサブランカの花を一本手土産に私の病室を訪れる。


「なんでカサブランカなんだ? 結構、高いだろ? そんな気をまわさなくていいから その金で好きな本やCDを買えよ」


いつも私は彼女にそう言うのだが、彼女は笑うだけで応えず、また次に来る時にカサブランカの花を一本手土産に持ってくる… その繰り返しが続いている。


で、ある日 私の担当看護師であるCちゃん経由で その理由が


「だって、あのオジサン 私が脚を無くしちゃって幽霊になってから初めて出来た友達なんだもん」


と聞かされた時、不覚にも私は嬉しくて泣いた。


だから、それ以降 Kalafinaの「アレルヤ」を聴くと私は彼女を思い浮かべ、、


『彼女の未来が 彼女にとって優しい未来であるように』


と、祈らざるを得ないのだ。 (神様なんか全く信じていないけどね)


お駄賃

 気が向いたら…で結構です。^^;

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コメント

泣いた。咽び泣いた。

いつも読ませていただいています。
喫茶「職安」やA子の話などのファンであり、いつまた始まるかと期待しつつ、ドラマや俳優たちへの辛辣な意見を拝聴しながら、良く似たことを考える人もいるもんだ・・・と拝見しております。
このたびの女子高生の話も、大変素敵なお話であると思いつつ、ブタネコさんはご自分を強面の方のように書いておられるが、実は人を引き寄せる魅力のある方なのだろうなあと思っております。
これからも、素敵なブログで楽しませてください。

もらい泣きしちゃいました。そして、優しい気持ちになれました。
ありがとうございました。

こんばんは^^
残暑お見舞い申し上げます。

いつも良い話をありがとうございます。
楽しみに読ませていただいております。
ではでは

少し前に、クラスメートから無視され
幽霊と呼ばれている主人公の小説を読んで
案外キツいなと思いましたが
現実はもっとキツいんですね。

それにしても、いい曲 いい娘ですね~

★ jun さん

ども^^


★ 寺西康年 さん

>強面

その辺に関しては私自身がお応えするのは憚られます。^^;

面識のある人達は たぶん、吹き出して笑ってると思います


★ 高橋信之 さん

掲示した甲斐ががありました。^^


★ omoto さん

また、近いうちに別の話を掲示するつもりです


★ 虎馬 さん

うん、現実は厳しい というか、理解に苦しみます。


【※注意!!】

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