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2014年08月24日

● A子の話(その37)


B子の突拍子も無い宣言に 晩酌と夕餉に集っていた三家族は二人を除いて大いに盛り上がった。




「そうか… いやいやいやいや、実にありがたい

 B子ちゃん、ウチの馬鹿息子の嫁になってくれるんだ? いやぁ嬉しい」


と、本気で喜んでる僕の父親


「じゃ、ついでにウチのC男と @@@ちゃん(僕の妹)も正式に婚約しちゃえ な? な?」


と、無邪気なC男の親父さん


憤怒の表情で僕を睨みつけたまま微動だにしないB子の親父さんと 蛇に睨まれたカエル状態の僕。


すると、B子の親父さんは クィツと顎を振る。


それは、たぶん身振りで「ついてこい」という指図なのだろうと僕は察し、コクンと頷くと それを見てB子の親父さんはゆっくりと立ち上がって玄関へ その後を僕は続いていった。


B子の親父さんは下駄を履いて外に出たので 僕もサンダル履いて外に出た。


その瞬間、僕の顔の左半分が無くなっちゃったんじゃないか?と思えるほどの大爆発が起き、僕はグラッとよろめいた。


それはB子の親父さんによるいろんな気合いのこもったビンタだった。


「キサン、たしかにオイはアレ(B子)のこつばキサンに頼んだど

 やけんが、嫁にもろうてくれちまでは頼んだ覚えは無かど お?」


外は夜で真っ暗なのに B子の親父さんの目だけは真っ赤に燃え上がっていた。


「いや、自分は口説いたつもりは無いんスけど…」


「なんねそいは! キサンが口説いとらんで なんでアレ(B子)は口説かれとっとじゃ?」


「さぁ… なんで、あんな事を言いだしたのか 自分には判りません」


「ん? キサンはアレ(B子)を好いとうとや無かか?

 キサンの嫁には出来ん、器量不足やち言いたいんか?」


「いや、そんな事も言ってないし、考えてもいないですよ」


また僕の左頬に大爆発が起きた。


「キサンもキンタマばぶら下げた男なら 女に恥ばかかすんやなかぞ!

 好いとうとや? 好かんのか? どっちかハッキリせんね?」


さすが大ビンタ二連発に それなりに喧嘩慣れしていたと自負する僕だったけど、クラクラしながら


「好きです」


僕はそう応えた。


B子の親父さんは 腹巻きから煙草とライターを取り出して くわえた煙草に火をつけると 一服目を深呼吸する様に大きく深く吸い込んだ。


そして、僕に煙草とライターを差し出すと


「キサンも一本つけんね」


言われるまま僕も煙草に火をつけ 一服目を深く吸い込んだ。


「いきなり抱きつかれて面食らった上に、結婚する、やもんなぁ…」


ブツブツ言いながらタバコを吸うB子の親父さんに僕は何も言えず、オドオドと自分も煙草を吸う


やがて、フィルターのギリギリまで吸い終えた煙草を下駄で揉み消すと 大きく一息吸った空気を ため息の様に吐き出し


「くらわして(叩いて)悪かったなぁ

 せやけど、こいは花嫁の親父から花婿への儀式みたいなもんやけぇ悪ぅ思うなや」


僕は何が何だか判らなかった。


(オジサン、アナタの娘は冗談で アナタを号泣させる為に笑顔で抱きついただけなんですから!)


(オジサン、僕とアナタの娘との間には結婚なんて話はおろか、付き合って…とか、チューとか まだまったく無いんですから!)


(オジサン、あれ? なんか目が優しくなってますけど、オジサン お願いだからちょっと待って!)


僕の心の中でいろんな声が叫ぶんだけど それらは何故か僕の口から言葉になって出て行かない


そんな僕には構う素振りも無く、B子の親父さん的には「僕にお嬢さんをください」儀式が目出度く終了したらしい…


(いや、本当に、自分まだB子を一言も口説いてないんですけど…)


と、相変わらず心の中で僕は叫んでいたが、ふと、もう一人別の僕が心の中に現れて


(良いんじゃねぇ? B子わりと可愛いし、性格に問題はあるけど それも考えようによっちゃ面白いし)


と、つぶやき 僕はどっちの言い分にも甲乙つけ難くなって…


そんな僕の心の中なんか知らないであろうB子の親父さんは 


「いつか、こん日がくっとは判っちょったし、覚悟もしてたっちゃ

 やけんが、こぎゃん早かとは思わんかったもねぇ…

 まぁ、昔は 15・6(歳)で男子は元服して嫁ば貰い

 女もその歳頃で嫁に行ったんやけんね…」


(それ、いつの時代の話ですか!!)と、僕は心の中で叫んだが それも聞こえるはずも無い。


それと、同時に僕の心の中に また新たな僕が出現し


(あれ? って事は 俺はB子の乳揉んだり、あんな事やこんな事しても親公認だから 怒られないのか?)


僕の心の中で途轍もない野望が芽生えた。


「まぁ、ええ、キサンは元々オイの倅同然やったけん それが、ホントの倅になるだけで

 よその馬の骨の嫁になるんと違うと思えば まぁ、そいも運命ったいねぇ…」


そんな事を呟きながら自己完結しようとしているB子の親父さんに つい、僕は自分でもよく判らないんだけど


「ありがとうございます」


と、これだけはハッキリと明確な言葉を口から発した。


その瞬間、僕の右頬に大爆発が起きた。


「さっき右手で2発くらわしたけん キサンの左頬だけふっくらしよるけんな

 右にもくれてやらんとバランスが悪かとやろ?

 おぅ、右もふっくらと 良い感じになってきたっちゃ…」


B子の親父さんは僕の右頬を撫でながらそう言うと 思いっきり力任せにつねりあげ


「ええか? 許したっち言うても当分は 手ば握るとこまでやぞ

 尻ば撫でくり回したり、チューなんかは許さんけんね 判っとうや?」


いつのまにか両目から再び大きな炎をメラメラと吹き上げてそう言った。


B子の親父さんは やっぱ、私の心の中の煩悩を本能的に見抜いていたんだな。


僕はその後、なんとかB子と二人だけになる機会を作って B子に真意を問い質したかったんだけど、周囲の盛り上がりは異様で 気がつけば誰も彼もが「乾杯」とか言って 僕の妹やC男まで酒を飲んでおり、肝心のB子も酔っ払っていた。


そして、B子の親父さんは席に戻ると 浴びる様に酒を飲み始め


「ええか? B子はよぉ、幼稚園ぐらいの頃には

 お父さん大好きぃって言うちから 毎晩、オイと風呂に浸かったっちゃ」


とか、


「B子はなぁ そりゃぁメロンが大好きやって オイはオイの煙草銭や酒代を我慢して

 B子のために買うてやったっちゃ、キサンにそれが出来るとや?」


と、何度も同じ話を僕に繰り返し 僕がそばから離れる事を許してくれなかった。


深夜になって、その酒宴がようやくお開きになった時には B子は既に自室に戻って寝ちゃった後だった。




その後…


僕は一度は布団に入って寝ようと試みたんだけど、目を閉じると また二人の僕が現れて 片方は


「あれはB子の冗談に決まっている 真に受けるとドツボにはまるぞ」


と言い、するともう一人が


「いやいや、これは最大のチャンスだよ B子は可愛いし、スタイルだって悪くない。

 この先、大人になれば もっと色気や…」


なんて事をささやく。


それらが妄想となっては膨らみ、また違った妄想が…


その繰り返しに悶々となり、やがては寝る事を諦めて起き上がると 僕は机に向かい、深夜ラジオを聴きながら、勉強の真似事を始めたが どうにも集中出来ない。


結局、僕は明け方まで眠る事が出来なかったのだが、そのうちにウトウトとしていつの間にか眠ってしまい 妹に起こされた時には遅刻ギリギリの時間で 出がけにB子の家に寄ると B子はとっくに家を出た後。


B子の母親は 学校へと歩き始めた僕の背中に


「もう、いつB子を押し倒しても良いんだからね 頑張って!」


と、訳のわからない声援をくれた事を 僕は今でも覚えている。


お駄賃

 気が向いたら…で結構です。^^;

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コメント

こんばんは、

A子さんの話 続き読ませていただきありがとうございます。
UPされるには、もの凄いエネルギーが必要なんじゃないでしょうか。
小生、生まれも育ちも福岡なので、B子さんの親父さんのファンで九州弁に感情移入して目に浮かぶようです。^^

 
A子さんの心よりご冥福をお祈りいたします。
(見ず知らずの者からこのような、ことを申し上げて、今までの経緯を考えご気分を害されたらと思い迷いましたが、読ませていただいております以上は、と思い最後の一文、記させていただきました。

A子さんシリーズを読んでいて
厩舎の同僚仲間家族が集まるシーンが
なんだかとても懐かしく微笑ましく好きです。

でも、読み終わったあといつも切なくなるのは
登場人物のほとんどがもうこの世にいないことを俺が知っているからだとわかりました。

★ omoto さん

お気遣い頂き恐縮です。^^


★ 虎馬 さん

俺と嫁は まだ生きてるよ あ、医者も

ブタネコさん こんにちは。

「A子の話」、いつもながらオッサンのブログ
見ながらティッシュで鼻水かんでます。
仕事サボって会社のPCでは見れませんよ。

で、虎馬さんの「厩舎」にツッコミが入らないのも
つい裏読みしようとしてしまいますが、?です^^。

佳境に向けて話が進むにつれて
何だか懐かしく、そして思い出がヒョコヒョコと蘇っていくようで
他人事ながら嬉しくも有り寂しくもある感情に浸っております。
小生もこの歳になると廻りではだいぶ鬼籍に入るものが多くなり
あんときこうだったなぁ、こんときは…

今年の盆はそれが大挙してやってきたような感じです。
私も義父には貞子以上にビビらせて頂いたほうですので^^;


★ おじさん さん

お元気そうでなによりです。^^

>厩舎

虎馬さんは競馬ヲタですから「官舎」とホントはタイプしたんだと思います。^^

(御指摘頂くまで気づきませんでした)


★ snow431 さん

>鬼籍

私の周りも同じです。^^


【※注意!!】

この記事は『ブタネコのトラウマ』の倉庫に保管されている記事なのでコメントの投稿は出来ません。 2015年2月10日以降 このクソブログは『ブタネコのトラウマ・リニューアル版』に移転しましたので新規記事更新及び、過去記事へのコメントの受付もそちらで行っておりますので お手数ですが、そちらへの移動をお願い申し上げます。