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2014年01月03日

● 雑感(1月3日)


旅行に行けなくなって久しい




行けなくなって間もない頃は 次々と行きたいと思うところがいくつも生じ、でも行けないからそれがストレスになり その繰り返しに悶々としていた。


そんな感じも数年が経つと いつの間にか心の中に諦めみたいな防御モードが構築されたみたいで 行きたいなと思うところが生じても「まぁ、いつか行けたらいいな」みたいに思う様に制御され「絶対行くぞ」という気持ちにまでは昂ぶらなくなっていた。




数年前、長い事入院している高校生の女の子とロビーでお喋りしていた時の事。


読書繋がりで その子とは会話をする様になったのだが、入院生活も長くなると読みたい本も読み尽くしてしまうようで「何かお薦めの本はないですか?」とその子から聞かれて「横溝正史」と 私は強く薦め、「本陣殺人事件」を出入りのレンタル屋の店長に買って来させてプレゼントしたのだが、それがキッカケでその子は横溝正史の有名どころの作品を読む様になり、その日もいつもの様に金田一談義に耽っていた。


すると、その子は


「初めてなんですよね、本を読んでてその舞台になったところに行ってみたくなったの

 私、岡山の”本陣”とか、”悪魔の手毬歌”の”おりん”とすれ違った峠とか、総社とか

 どんなところなのか自分の目で見てみたいんですよ」


と言った。


私も全く同じように横溝先生の金田一シリーズを読んで その舞台となった地を旅して歩いた身なので 彼女の気持ちはよく判る。


なので病人に対してはお約束のような


「じゃ、あれだ 早く病気を治さないとな」


とってつけた様にそんな事をその子に私は言ったのだが、それまで病状に何の改善も見られなかった彼女が少しずつだが回復に向かったのか昨年の春に退院して行った。


病院長であり、私の主治医であり、旧来からの悪友でもある二代目開業医はそれを


「俺の治療が実を結んだ結果だな」


と、彼らしい自己都合解釈台詞を吐いていたが 奴には珍しい複雑な表情をしていたのが少し気になったが、私はそれが心の持ち方を変えたさすが横溝マジックだと一人悦に入っていたので気にもしていなかった。


昔から「病は気から」という言葉があるが、いつもいつも気を変えるだけで病気が治ってしまうのならば医者なんかいらない


しかし、医者がどうこうしなくても気持ちの持ちようで治ってしまう事も希にだがあるもんだと実感していたのだ。


その子が昨年末、定期検診で病院に来たんだと言いながら私の病室に寄って


「へへへ、行ってきちゃいました 岡山」


と、お土産の「もみじ饅頭」をくれたのだが(もみじ饅頭って広島の名物なんだけどな… しかも、俺、アンコ苦手なんだけどなぁ…)なんて事を心の中だけで呟いていると


「やっぱ、行って正解でしたよ 良いとこでした」


と、ニコニコ顔


「そうか、そりゃ良かったなぁ」


なんて言いながら その子の笑顔を見ていたら、それは入院中には決して見せてもらえなかった満面の笑顔でキラキラ輝いていた。


お陰で私の「旅に行きてぇ」病が再発した。


女の子が帰った後、いつの間にか寝てしまっていた私は夕食を運んできたCちゃん(私の担当看護師)に叩き起こされ、「旅に行きてぇ」病が再発した事と、それに至った女の子の話と、その子が見舞いに来た事を話したところ Cちゃんは病室の中をキョロキョロと見回していたので


「おう、俺アンコ嫌いだから その辺にある”もみじ饅頭”持って行っていいぞ」


と、Cちゃんに言ったら 早速それを見つけたのか逃げる様に病室から出て行ったんだ…




昨年の末、ブログを通して知り合った友人と電話で横溝談義に花を咲かせて楽しいひと時を過ごす機会に恵まれ ふと、先述した女の子の事を久しぶりに思い出した。


なので二代目開業医に


「なぁ、あの子どうした? 今度、いつ定期検診に来るんだ?」


と聞くと 二代目開業医は


「ん? あ、あぁ、@@ちゃんか? あの子なら残念ながら昨年の秋に亡くなったぞ」


と、変に無表情を装いながら応えた。


「あ? 嘘つけコノヤロウ 去年の秋ったら俺のところに見舞いに来るぐらい元気だったぞ」


と、二代目の素振りが気になった事もあって私が問い詰めると


「そうか… 気がついちゃったかぁ…」


と、複雑な表情を浮かべて


「いや、オマエには言わなかったし、出来ればそのまま忘れてくれればと思ってたんだけどな…

 @@ちゃんが去年の春に退院したのは いろんなところに癌が転移しちゃってどうにも手の施しようが

 無くなっちゃって余命3ヶ月って状態だったから それを告知したんだよ

 そしたら、父方の祖父ってのが広島県に住んでる金持ちでホスピスを手配したから転院しろって事になって

 それで転院していったのさ…


 普段なら、オマエに話すんだけど そん時は@@ちゃんが話さないでくれって言うから黙って

 たんだけどね」


と言う


「何それ? でも俺、去年の秋に会ったぞ…」


と私が言うと


「会いに来たんだろうさ 夢の中に…

 その時の事をCちゃんから聞いた時には さすがの俺も久しぶりに震えたよ」


二代目開業医はロクデナシだが、そういうドッキリ話を仕立て上げる奴では無い。


間違いなく彼の言ってる事は本当なんだろう…


でも、私はまさに狐につままれた様な気分だった。


「オマエがさ、@@ちゃんが見舞いに来たってCちゃんに話したんだろ?

 Cちゃんが真っ青になってそれを俺(二代目開業医)に話してくれたんだけど、

 その半月ぐらい前に@@ちゃんの御両親がここ(病院)に挨拶にいらしてくれててさ…

 一週間ほど前にホスピスで苦しまずに穏やかに旅立った…って

 あ、それと、オマエ(私)に”横溝小説の舞台に行きました 良いとこでした”って

 @@ちゃんが最期に伝えてくれって御両親から言われてたんだけど…

 でも、それオマエに言えなくてさ…

 そしたら、オマエが@@ちゃんが見舞いに来た…って言ってるって聞いたら尚更言えなかったもなぁ…」


剛胆な性格の二代目開業医にしては珍しい振る舞いだった事に違和感を覚えつつも、私は実にリアルな白昼夢を見ていたんだな


そういえば忘れていたけど、そんな頃だったっけ Cちゃんが高そうなアレンジメントの花籠を私の病室に持ち込んで飾っていき、何やってんだアイツって感じで不思議に感じていたのがようやく判り 妙に可笑しくなった。




さて…


大晦日の晩、ブタネコ家では恒例の家族そろって「すき焼き」をつついていた時の事。


ふと、テレビを見ながら「どこか旅行に行きてぇ」と私が呟いたのを聞いて次女の婿が


「だったら、あれですよ 早く病気を治さないと…」


偉そうな顔でそんな事を言いやがったので


「テメェ、いつからそんな偉そうな事を俺に言えるようになったんだ お?」


と、渋く問い詰め


「そんな小生意気な口に牛肉は3年早ぇぇ オマエはネギだけ食ってろ」の刑に処したのが我が家の昨年最後の出来事だ。


お駄賃

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コメント

不思議な体験をされましたね。正月早々、携帯で拝読して、布団の中で涙をポロポロこぼしちゃいましたよ。

★ ハウプマン さん

今年もよろしくお願い申し上げます。^^


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