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2014年01月26日

● 夜歩く はぎわらさんへの返信


はぎわらさんのブログの記事』を拝読し 性懲りも無くレスしてみる。


【1月28日に追記しました】




横溝正史先生の「夜歩く」は一般的な知名度は「八つ墓村」や「犬神家の一族」よりは低いけど マニア的な評価は高い著作だと思う。


が、他の作品と少し趣が異なる点として物語に耽美的な色が濃いというような理由で読む人によっては評価が低い面も否めない。


私個人の感想としては 耽美的であろうがエログロであろうが、作品としてどれだけ引き込まれたかが評価の基本なので この本は「面白かった」と思っている。


さて、この本が探偵小説である事と 願わくば、もっと多くの人に読んで欲しい本だと思うので出来るだけネタバレ抜きで以下に記すつもりではあるが、多少の抵触はどうかお許し願いたい。




【※注】 以下の記述にはネタバレが若干含まれます。




まず最初に、現在 新刊文庫で横溝作品を入手する場合 その多くが角川文庫になるわけだが、


角川文庫「夜歩く」


同じ角川文庫でも 上の画像の左は昭和51年版(これを私は便宜上”旧角川版”と呼ぶ)で右は平成25年版(これを私は便宜上”新角川版”と呼ぶ)


以前、はぎわらさんとのやりとりの中で 角川文庫における横溝作品は1990年代の半ば頃にいくつかの改訂を施しており、そのひとつが それまでの「杉本一文氏による表紙絵」を無くした事であり、もうひとつが「章立て」「見出し」旧仮名遣いの変更である。


表紙絵の変更の理由に関しては判りようも無いが、多くの従来からのファン達からは不評なのは言うに及ばず、はぎわらさんの「獄門島」の指摘に続き 今回、「夜歩く」でも意味不明な章立ての変更が行われたのが確認されたのは残念の極み


ちなみに、上の画の旧角川版を確認したところ すべてが小見出し風の区切りで新角川版の様な章分けは一切無い。


ゆえに、文中での「前章で述べたような」という記述が指すものと新角川版の章立ては整合せず混乱が生じる。


何故、こんな改悪が行われたのだろう?


あくまでも想像で語るが、なんとなくそれまでは昔ながらの活字を用いた組版印刷だったものを現在の電算写植(原稿をコンピュータ・データ化)する際にOCRの誤読や旧仮名遣いなどの処理間違いなどの校正ミス また、老眼対策などで文字の大きさを変えたりする際に起きるレイアウト(ページ割り含む)でのミスや御都合などの結果なのだろうけど、肝心要の点は 


「本当に横溝正史作品を愛する者が最終確認したのか?(ちゃんと読んだのか?)」


という事に尽きる


つまり、言い換えれば 


「今の角川には横溝文学への敬愛が無い」とも。


これは腹立たしいなぁ。


その上、御丁寧に


角川文庫「夜歩く」


巻末に上画の様に「著作権継承者の了解を得た上で」と明記するあたり白々しさが滲み出ている。


ゆえに、今後、私はこれから横溝文学に触れようとする若者達に対して


「間違っても本屋で新版は買うな 横溝文学は旧版の緑文字背表紙のを古本屋で買え」


そう警告しなくてはならないな…とも。


いや、ほんとガッカリだ。




それとね、今回の件であらためてみたところ もうひとつ大事な改悪点を発見したので記しておくが それは旧角川版では どの文庫作品にも末尾に数ページ「解説」と称して中島河太郎氏や大坪尚行氏などの解説文があったのだが それも新角川版では綺麗に削られている。


まぁ、ごく希に単なるネタバレみたいなお粗末な解説もあったけれど 特に横溝作品の場合の解説は 海外ミステリーや探偵小説の「いろは」など勉強になる素晴らしいものが多かっただけに ばっさりと切り捨てた今の角川文庫には罵る言葉すら見つからない


【※追記 1月28日】


旧角川版における巻末の「解説」等について おぼろげな記憶を頼りに記しておく


例えば、横溝正史先生のエッセイを読むと海外の名作をずいぶんと読み そんな中でディクスン・カーの
著作に関する感想などは何度も登場し 大げさに言えば密かにライバル視していたのかと思うほど

だから、実はディクスン・カーの著作に「It Walke by Night(邦題:夜歩く)」という一冊があり 私などは
勝手にそれの対抗作として書いたのだろうと思い込んで カーの「夜歩く」を入手して読んだのだが
後に別のエッセイで「ガードナーの『夢遊病の姪』」を読んで書いた…と知り 今度はそれを入手して
読んだものだ

他にもクロフツの「樽」、アガサクリステイの「そして誰もいなくなった」「アクロイド殺し」… 日本の作品
で言えば 高木彬光の「刺青殺人事件」や坂口安吾の「不連続殺人事件」など 横溝作品の解説文で
興味を惹かれて入手して読んだ小説は数え切れないほどだ

特に中島河太郎氏の解説は 江戸川乱歩など日本の作家は言うに及ばず、海外のミステリー作品
にも精通されて その解説文がひとつの探偵小説史の教科書とさえ思えるほど(少なくとも私は
教科書だと思っている)

だからこそ、それらを後世に残さず切り捨てた方針には腸が煮えくりかえるのだ。


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コメント

ブタネコさん、こんにちは。

この記事とはぎわらさんの記事も読ませていただき、ショックを受けました。

まず、この作品を読んだにもかかわらず、はぎわらさんが指摘されている点にまったく疑問を抱かなかったことになんて浅い読み方をしているんだ・・・というショックを受けました。
次にブタネコさんの記事に書かれているように本屋で新しく買うと初版当時の作品が読めないんだという事実にショックを受けました。

某密林ではこの本に目ん玉が飛び出るほどの高額が設定されていて、戦慄しましたが、他の古書店では手が出るくらいの価格で出ているようなので、ちょっと安心しました。
自分の本の読み方を反省しつつさっそく手配しようと思います。

★ slan さん

ちと見てみましたが、凄い値段がついているのは 書籍化されて間もない頃の貴重本じゃないでしょうか

あくまでも某大手レンタル店の店長の話によりますと 北海道の感覚ではBOOKOFFあたりが中古本の
在庫数が多く 金田一シリーズの緑表紙を、100円ぐらいで売っていたりするそうです。

もちろん、紙が酸化していたり カバーが微妙に擦れていたりするので通常の古本扱いらしいのですが
時々それらを買い漁って表紙絵蒐集のコレクターにネット販売している輩も少なくないそうではあります
けどね


ご返信ありがとうございます。


巻末の解説については、『殺人鬼』(平成19年3月10日 改版再版)と『悪魔の降誕祭』(平成24年5月15日 改版6版)は解説を残しており、両タイトルとも「中島河太郎」氏による解説と「山前譲」氏による解説、二つの解説を併載しています。

ちなみに、解説の残っている上記の『殺人鬼』と『悪魔の降誕祭』は「金田一耕助ファイル」シリーズの20タイトルから洩れたものです。

現行版のすべてのタイトルを手にして確認することができたわけではないので、あやまった一般化で、邪推になりかねないことではありますが、「金田一耕助ファイル」の割り付け等を担当した人たち(わざわざ1ページを使ってしるされているクレジットをそのまま引用すれば、「本文デザイン 天下井教子+エーダッシュ」)の、文学作品への無理解が露呈したとも思えてきます。発注主としての編集部が文学作品のテキストの一言一句の重要性を真に理解していれば良かったのでしょうが、実際には編集者も文学作品に無理解で、出版の歴史的意義をかるく考えていたがゆえに、デザイナー集団に好き勝手にさせてしまったのでしょう。

角川書店には「角川源義」の「角川文庫発刊に際して」を読み直せと言いたいですね。
(初発の「角川文庫」に岩波ほどの気概があったか否かは問わないとしても。)

★ はぎわらさん さん

そうですか「解説」のある本がありましたか…

知人に頼んで 近所の大型書店に在庫されていた10数冊(書名までは確認しませんでした)を一通り
確認して貰ったところ 解説のある本は一冊も無かったのですが、たまたまだったんですね すいません

で、例えば 私は常々このクソブログで 原作本を映像化する際、原作に忠実に映像化しないモノはクソ
だとは述べた事はありません

尺の問題など不本意ではあってもその為には取捨選択など仕方が無いものがあると理解しているつも
りだからです。

しかしながら、原作をきちんと咀嚼せず 原作の持つ魅力や素晴らしさに敬意の欠片も示さない映像化
に対しては手加減なしにクソ呼ばわりします。

まさか、原作者の没後に 仮に著作権継承者の了解を得たからとして改悪する行為が生じているとは
今回の経緯に失望どころか怒りさえ感じます

つまり、こういった状況を知った上で著作権継承者が了解しているのだとしたら その連中もクソだと
言わざるを得ない とも。

【※注意!!】

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