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2013年02月05日

● A子の話(その35)


定員割れとはいえ、合格した事に変わりはない



端から見れば道内でも有数の進学校に合格したのだから素直に喜ぶべきところなのだろうけど、その時の僕は 正直言って嬉しい気持ちよりホッとした気持ちの方がはるかに勝っていた。


と、同時に いろんな思いが絡み合ってもいた。


嫌味に聞こえるかもしれないが 僕は自衛隊生徒に進みたかったから「どこそこの高校に行きたい」なんて進学する高校に希望とか選り好みみたいなものは全く無く @@高校に願書を出したのも中学校の担任や進路指導に対する反発でしか無い


でも、結果オーライ 本当に運が良かった。


人間一人が人生で持ち得る「運」の全てを使い切ってしまったぐらいに運が良かった ただ、それだけの事


だから、僕は素直に喜べなかった 実力よりもはるかに運の良さによる結果だったからだ。


僕と同じように「ただ運が良かった」だけの理由で合格した「後年に親の跡を継いで開業医になった友」の場合は少し違い、


「俺の実力を中学の教師達は正当に評価出来ないマヌケばかりだった」


と公言するようになり、それ以上に彼の母親が


「ええ、ウチの**君(後年に親の跡を継いで開業医になった友)が入試に落ちるなんて

 全く考えておりませんでした」


と、持ち前の成金スタンスで周囲に自慢を吹聴し 同時に合格した僕はそれまでは「ウチの跡継ぎと仲良くするのには少々身分が違うんじゃないの?」と時に冷たい視線を浴びたものだが、同時に合格した事で「優秀な息子の御学友」とはるかに扱いが変わり、それまでとは全く違う歓待ぶりで やる事が無くて暇つぶしに「後年に親の跡を継いで開業医になった友」の家に遊びに行くと


「お昼御飯食べていってね **君(後年に親の跡を継いで開業医になった友)の親友なんだから」


そう言って基本的には大エビの天ぷらが1本載るだけの天ぷら蕎麦のはずなのに 何故か3本載せさせた特注天ぷら蕎麦を出前で取り寄せ、3時になると「オヤツがわりに食べて」と極上のにぎり寿司をとってくれて…


その成金スケールの生活を目の当たりにして驚きつつも


「何言っても聞こえない人だから 気にしないで楽しんでくれ」


と、我関せずの「後年に親の跡を継いで開業医になった友」は(元)生徒会長や「気の弱い男」を呼びつけて麻雀をして過ごしたり、その当時は今のようにファミレスなんて無く、喫茶店はさすがに中学生が入るのは憚られ しかも春休みと言っても本州のように桜が咲いたり散ったりする程の温かさとは無縁の札幌では そんな年頃の子供が集って遊べる場所には限りがあり、誰かの家に屯するのが自然で普通だったから「自慢の息子さんと同じ高校に合格した」子供達には にぎり寿司をオヤツと称して食べさせてくれる成金の家は暇つぶしには最高の場所


B子とA子も誘うと何の気兼ねも無く遊びに来れば 「後年に親の跡を継いで開業医になった友」の母親にしてみると憧れの真のブルジョアの御令嬢A子は もう自慢の息子の御学友としては最高の扱いで 出来ればそのまま結婚しちゃって…みたいな歓待ぶり


「A子が遊びに来てる」 そう聞けば180cm男は航空自衛隊の戦闘機さながらにスクランブル状態で駆けつけたが、「後年に親の跡を継いで開業医になった友」の母親にしてみると同じ開業医とは言え「田舎の医者の倅」と そこは冷淡、しかし、180cm男には そんな母親の視線は屁とも思わず…


大人数で人生ゲームとかモノポリーに興じながら いろんな雑談で盛り上がって過ごしたのだが、そこでA子が話していた事は 彼女にとって念願の志望校に合格した事を素直に喜び、


「高校に入ったら ~したい」「~な事をやってみたい」


僕や「後年に親の跡を継いで開業医になった友」にしてみれば 過剰な程の夢みたいな事を話していたもので どんな事をどういう風に言ってたか覚えていないが、それはいかにもメルヘンチックだったり、チッチとサリーみたいなお話しだったり…


だから、僕や「後年に親の跡を継いで開業医になった友」は


「そんなにチッチになりたいんなら そこの180cm超えてる奴をサリーって呼んでやれ」


等と無責任に言えば 180cm男は顔を真っ赤にして急にオドオドし出すのに、A子はそれに全く気づかず


「いいなぁ、高校生になったら誰かと付き合っちゃったりするのかなぁ…」


と、純真無垢に反応し、それを見て180cm男はますますオドオド…


そんな感じで過ごしていたある日、合格した高校の野球部の監督から直接 僕と180cm男に電話があり、


「高校でも もし野球部に入る気があるのなら春休みの間、筋トレやってるから参加しないか?」


と、誘われ それはサッカー部も同様だったらしく「後年に親の跡を継いで開業医になった友」にもサッカー部の顧問から そういう電話が同時期に入っていた。


@@高校は進学校で体育会系の部活は どの部も弱小と言っていいレベルだったが、そんな学校でも合格者の内申書をチェックし 部活動経験者に声を掛けるぐらいの事はしていたのだ。


「おまえどうするの?」


僕が180cm男に聞くと


「野球は中学までで 高校ではやらないつもりなんだ」


と、応えていたのに


「弱小野球部とはいえ、エースピッチャーならモテモテになれるんじゃね? おまえ無意味に背も高いし」


僕がそう言うと


「女の子にモテたいからって そんな理由で野球やる方が それこそ意味無いだろ?」


と、言い返す180cm男に


「他の女はともかくとして 野球部のエースの180cmと ただ無意味に背が高いだけの180cmじゃ

 さすがのA子も見方が違うんじゃねぇの?」


と、言い直すと


「そ・そうかな?」


と、ちょっと食いついてくる180cm男


すると、「後年に親の跡を継いで開業医になった友」が


「そりゃそうだよな 私の彼、野球部でエースなの…ってのと

 私の彼、ただ背が高いだけなの…じゃ 全違うわな、うん」


と、独り言のように でも、180cm男にはハッキリ聞こえる様に言うと 180cm男はしばらくの間真剣に考え


「勉強に影響が出ない程度の練習だったら 野球部に入るのも悪くは無いよね…」


…なんて言い出すのを僕達はクスクス笑いながら弄って遊んでいたものだ


結局、暇を持て余していたのも事実、入学してから雰囲気を確かめた上で野球部に入ろうかと思っていたのも事実だったから「見学のつもりでいいからおいで」という優しげな言葉を真に受け高校に行ってみると その高校の野球部はその時点で部員が新2年生と新3年生合わせて7人しかおらず、最低2人一年生が入部しなければ試合にも出れない


僕と180cm男は中体連の時は違う中学だったけど、まがいなりにもどちらも道大会まで勝ち進んだ中学のレギュラーであり、180cm男は強豪の私立高校の多くからスカウトされるほどのピッチャーだったから @@高校の野球部としては即戦力のルーキーとして大きな期待だったんだな


そんな野球部だったから先輩も気さくな人達で 真剣に甲子園を目指し勝負に拘るのではなく、ただ野球をするのが愉しくて仕方が無い…みたいなのんびりムードで 先輩の中には同じ中学で僕が一年生だった時に三年生だった人がいた事もあり、そのまま僕と180cm男は野球部に入る事になる


そんな180cm男に対してA子が


「¥¥君なら一年生で直ぐにエースでマウンドに立てるんじゃない?

 凄いなぁ… ¥¥君が投げたら甲子園は無理でも全道大会ぐらいは勝ち進めるよね?

 そしたら、私応援に行くよ」


全く何の恋愛感情も込めずに ただ彼女持ち前の天真爛漫さで言っただけでも


「いや、甲子園に行く 一年では無理でも、三年の夏にはきっと…」


…なんて真剣に応える180cm男に


「オマエよぉ 野球は九人でやるんだから、オマエ一人が意気込んでもよぉ」


僕が横から口を挟んでも そんなのは耳に入らないのか


「いや、ピッチャーさえビシッといけば それなりになんとか…」


180cm男は変に燃え上がるばかりで


「良かったねブタネコ君 同じチームならデッドボールをぶつけられなくても済むね」


と、訳の判らない事を とても愉しそうに話していたA子


まぁ、ベタな青春ドラマ風に言えば 高校進学を前にして僕達はいろんな意味で期待や夢を膨らませていたわけで、B子はとりあえずの目標をクリアした事を素直に楽しんでおり、A子は彼女自身の中でいろいろと思い描く理想とか期待が人一倍大きく、基本的には@@高校に入る為に道内地方から越境してきて その上でA子と同じ高校に進学するチャンスを得た180cm男もいろんな意味で盛り上がっていたが、先にも述べたように僕や「後年に親の跡を継いで開業医になった友」は進学が決まった@@高校に対しては実は何の思い入れも無かったから 他の連中よりも少し褪めた感覚もあって周囲のノリについて行けない部分があって そんな温度差を特にA子は全く感じ取れないぐらいに夢を見ていたんだ。




入学式を迎え、僕達は晴れて@@高校の生徒となった。


普通なら高校進学と同時に その高校の真新しい制服に身を包み… ってなるんだろうけど、@@高校はその当時札幌市内でも数少ない制服の無い高校だったから 殆どの生徒はジーパンにトレーナーという私服の出で立ちで それは制服から解放されて大人になった…みたいな気分で受け止めた生徒が大半だったけど 僕や「後年に親の跡を継いで開業医になった友」は 敢えて中学の時に着ていた学生服のボタンだけ高校生っぽいものに取り替えたのを着て登校していた。


というのも僕に限って言えば、私服だと実はファッションとか、清潔感とかいろんな要素が入り混じる事と 成長期でもあるから衣服を気にすればする程、制服の方がはるかに安上がりに済む…という理由も大きかったし、「後年に親の跡を継いで開業医になった友」の様に金の問題では無く ある種の不良ファッションという意味合いでそうした部分もある。


まぁ、判りやすく言えば 私服よりも制服の方が不良的威圧感が全然違ったんだ


当然、そんな格好をしていたら 在校の諸先輩の中の、特に暴れん棒系の方々から


「おいおい、一年生のくせに生意気な…」


という話になるんだけど そこは中学時代に周辺の他中学及び他高校の不良相手に名を売ってきたマッチポンプの「後年に親の跡を継いで開業医になった友」クンであればこそ


「え? あいつなんでこの高校に受かっちゃったの? あれ相手にしたらマズイよ」


と、さすがは進学校だけあって不良と言っても偏差値は高く そのぶんいろんな意味での計算も早い


しかしながら、「後年に親の跡を継いで開業医になった友」クンとは仲良しでも 周辺の他中学及び他高校の不良相手に対して全く知名度の無い僕は そういう特別待遇は無いから


「おい、ちょっと」


と、今風に言えば 盛り場界隈でちょっと小綺麗な女の子が歩けば芸能事務所や水商売のスカウトが声を掛けて群がるように


けれども、それも幸いにして同じ中学の先輩でその高校に進学していたのが数多くいたので その方々は中学時代の僕をよく御存じだったから そんなに間を置かずトラブル事も無くなったが そんな中で僅かながら他中学から進学して先輩の何人かといざこざした際に それは進学校においては物珍しい困った話でもあり、担任なり、生活指導の教師とは早い段階で面識を得る


で、絡んできた先輩達を僕と「後年に親の跡を継いで開業医になった友」が殴り倒した事で その説教を担任教師から初めて頂戴した時に、


「オマエなぁ、野球部に入ったんだろ? たとえ学校内であっても暴力沙汰の騒ぎが大きければ

 対外試合の自粛とか高野連の処分の対象になるんだぞ? 判ってるよな?」


たしかに仰る通り それは判っている。


「あまりにも相手がしつこいのでやむを得ず対応しただけの事で…」


「屁理屈言うな、それよりもオマエとは一度ちゃんと話しておこうと思ってたんだけど

 オマエ、中学では日教組や北教組の先生相手に反抗しまくってたんだってな?」


「…」


「俺な、札幌の日教組の支部会の幹事やっててよ オマエが逆らいまくってた先生達とも

 長い付き合いの仲良しで、オマエの事はよく聞いてんだわ

 でな? 中学ってのは義務教育だから多少甘やかされたかもしれないけど、高校じゃそうはいかないぞ

 ちょっとでも舐めた真似したら 即、停学 即、退学だから その辺、覚悟しておけよ」


信じて貰えないかもしれないけど 本当にその時そう言われたのだ。


横でそれを聞いていた「後年に親の跡を継いで開業医になった友」ですら その教師の台詞に唖然としていたものだ。


それは高校に入学して一週間も経たぬ時の事であり、その瞬間に僕は@@高校に進学した事を激しく後悔すると同時に その時点で高校生活に失望したんだ。


お駄賃

 気が向いたら…で結構です。^^;

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コメント

こんにちは、はじめまして^^
貴重な体験談を披露していただき、本当にありがとうございます。
生まれも育ちも福岡なので、特にB子さんの父に感情移入してしまい、読みながら大笑いしたり、涙ぐんだり
、毎晩の楽しみに少しずつ読むつもりが、面白すぎて、途中で止められず、最後まで一気読みして、
気がついたら、AM4:30でした。orz
続き楽しみにしてます。^^
他のカテゴリも読み応えあって楽しみです。^^

ブタネコさんとご家族の皆様のご健康とご繁栄を祈念いたします。
ご自愛くださいませ。

★ furutaido さん

恐縮です。^^

A子の話はもう少し続きがあるんですが ちょっとした事情で掲示のタイミングを見計らっておりました。

そんなに遠くない時期に公開する予定です


【※注意!!】

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