« 僕等がいた | TOPページへ | A-Studio(11月放送分) »

2012年12月01日

● A子の話(その32)


「ブタネコが@@高校を受験するんだってさ」というニュースはあっと言う間に学年内に広まった。




すると、当然の様に「虎刈りの丸坊主に髪をバリカンで刈られた男」や「後年に親の跡を継いで開業医になった友」といった同じ@@高校受験を希望しながら担任や進路指導の教師から「そこは無理」と撥ねつけられていた二人も


「自分で選ぶ道ですから」


と、強硬に申し入れを繰り返し 最終的には保護者である親の「入試に落ちても学校や教師に責任は問わない」旨を明記した一筆を入れる事で教師達は渋々認める事にした為、僕にもその一筆を親に書かせろと言われたのは言うまでも無い。


3年の中にはその話を聞いて「それじゃぁ、俺も」と便乗しようとした者も他にいたらしいが、結局、進路指導でダメを出されながら@@高に願書を出したのは僕達3人だけだった。


やがて、雪が降り始め季節は冬となり学校は冬休みになった。




受験生にとっての冬休みは受験の最後の正念場。


A子やB子は朝早くから晩まで図書館に通っていたが、先にも述べた様に僕には全く真剣味が無かった。


そんなある日の事。


「ブタネコ君、そんなに自衛隊に入りたいの?」


と、A子が聞くので


「自衛隊に入りたいというよりも、それ以上に俺はヘリのパイロットになりたいの」


「ふぅん、そうなんだ? ちょっと意外だね」


「ん? 何が?」


「自衛隊って集団行動が基本でしょ? ブタネコ君はどっちかというと個人行動を好むじゃない?」


「ヘリって機長と副操縦士の二人だぜ? 個人行動みたいなもんだろ」


「あ、そっか… 自分の行きたいところに好き勝手に飛べるもんね。」


「好き勝手って言われても限度はあるけどね。」


「ねぇ、自衛隊ってさ 日本全国、いろんなところに転勤するんでしょ?」


「そう 何処に行くかは判らない」


「じゃ、北海道に戻ってこれない可能性もあるの?」


「いや、大っぴらにはされてないけど 今の日本の仮想敵国はソ連だから(この当時はそうだった)

 北海道には規模の大きな部隊がいくつも配置されているから そのぶん人員も必要なんだけど、

 北海道は冬が厳しいって思い込まれているから 特に関西方面で入隊した隊員達から

 北海道には転勤したくないって敬遠されていてね、俺みたいに北海道で生まれ育った身が

 ”北海道の部隊に転勤したい”って希望したら わりと簡単に転勤出来るらしいんだよ。

 ただ、北海道とは言っても それが札幌とは限らないんだけどね」


「ブタネコ君が入ろうとしてる自衛隊の学校って何処にあるの?」


「神奈川県の横須賀」


「そこにどれくらいいるの?」


「学校自体は4年間なんだけど、まず横須賀の武山ってとこで3年、

 その後1年の間に何処かの部隊に研修に行って、さらに、陸曹教育なんてのもあって

 4年間で卒業したら三等陸曹って階級になって どこかの部隊に配属…、

 そこで”部内操縦学生(陸曹航空操縦課程)”って試験に受かったら、

 今度は陸上自衛隊の航空学校に入り、その後の幹部学校も含めると2年ちょいだから

 うまく予定通りに進めても7年後の話」


「と言う事は私達が高校に行って、大学を卒業する頃ぐらい?」


「まぁ、うまくいけば そんな感じかなぁ…」


「へぇ、楽しみだね 早く見たいな、ブタネコ君の制服姿」


「いや、まだ1次試験に受かっただけだから」


「え? B子言ってたわよ? B子のお父さんがブタネコ君は もう合格内定だって」


「B子の親父さんは気が早いんだよ」


「もの凄く、嬉しそうなんだってね B子のお父さん

 アタシも何度かB子んちに遊びに行ってお会いしてるんだけど豪快なお父さんだよねぇ」


「たしかに」


「ブタネコ君とB子が結婚したら B子のお父さんもの凄く喜ぶんじゃない?」


「どうだろうね? 俺には厳しいんだぜ、”キサンはオイの倅も同然”とか言って無茶苦茶…

 って言うか、俺とB子が結婚? 何故に、そんなに話が飛躍するんだ?」


「お似合いだと思うんだけどなぁ…」


「オマエはどうなの? ブタネコ君はアタシのものなんだからね!…みたいな気持ちは無いの?」


僕が冗談半分に聞くと


「無い。!」


と、キッパリ。


「それよりオマエさぁ、他人の世話を焼く前に自分の事をだなぁ…」


そう言い返すとA子はジトッとした目で僕を見据えて


「図書館で私の初恋が崩れ去ったの見たでしょ?

 あれで私、目が覚めたの 今は受験の事しか考えちゃダメなの

 愛だの恋だのなんて事は高校に入学してから存分に満喫するの…」


と、寂びしそうに言い


「それなら、俺の人生にグチャグチャ口を挟むな」


と、僕がツッコムと A子は 話題を変えようと思ったんだろうね


「いいなぁ… 日本全国、いろんなとこに行けるんだねぇ…」


「自衛隊の隠語で転勤の事を”官費旅行”って言うんだ」


「いいなぁ、私 行ってみたいところが一杯あるんだ」


「行けばいいじゃん オマエんち金あるんだから 自分で行けるべ」


「ウチのお父さん厳しいからね まず、せめて大学生ぐらいの年齢にならなきゃダメでしょ

 それに、お父さんにお金を出して貰って…じゃ なんか意味無いじゃない?

 やっぱ、バイトとかして自分で稼いだお金じゃないと…」


「オマエんちの親父がオマエのバイトを許すのか?」


「それなんだよねぇ… やっぱ、ダメだろうなぁ…」


「お嬢様にはお嬢様なりに夢や悩みがあるんだな」


「そりゃあるわよ 花も恥じらう年頃の乙女なんですからね」


「じゃ、受験が終わって 高校に合格したら、まず何をしたいの?」


「そうだなぁ… あ、そうだ アイヌネギを採りに行ってみたい

 去年、B子から お父さんが採ってきたのをお裾分けで貰ったんだけど美味しかったのね

 で、聞いたら ブタネコ君もその時に作業員で連れて行かれてたんだってね?」


そう、アイヌネギは場所とか陽気にもよるが 僕の住む自衛隊官舎の人達が採りに行く場所は 4月の末からゴールデンウィークの終わり頃が時期なのだ。


「よくTVでキノコとか山菜採りに山に入った人が遭難した…とか、熊に襲われた…なんて

 ニュースでは見聞きしていたけど 周りにそうやって採りに行くひとなんて居なかったから

 実感が湧かなかったんだけど あんな美味しいのを食べたら採りに行きたくなるわよね?

 それも、自分で採ったのならきっともっと美味しいんでしょ?

 ほら、図書館の銀杏 ああいうのってさ、北海道に住んでいればこそ味わえる楽しさよね」


A子は何とも言えない笑顔で目をキラキラさせながら そんな事を言う


「オマエよぉ ブルジョア家庭のお嬢様が

 ”アイヌネギを自分で採ってきて食べたい”

 …なんて 普通、言わねぇぞ?」


「なによ? いいじゃん、そういうお嬢様が世の中に一人ぐらいいたってさ」


ちょっとふくれっ面になって言い返すA子… 自分で自分の事を普通に「お嬢様」と言っちゃう姿に僕達は何の違和感も無かったが、そういうところがかえって庶民の娘達である他の多くの同級生の女の子達から嫉妬される要因だった事は否めない。


でもね、僕にはそんな明け透けなA子が逆に親しみ易かったんだ。


お駄賃

 気が向いたら…で結構です。^^;

 この記事への御駄賃がわりに下のバナ-のいずれかを クリックして頂けると嬉しいです。^^
 (全部、クリックしてくれると もの凄く嬉しいのは事実です。^^)

ブログランキング・にほんブログ村へ Blog Ranking 人気映画・TVBLOG blogram投票ボタン BlogPeople「自分のこと」部門にクリック BlogPeople「テレビ」部門にクリック BlogPeople「映画」部門にクリック

『A子の話』関連の記事

【※注意!!】

この記事は『ブタネコのトラウマ』の倉庫に保管されている記事なのでコメントの投稿は出来ません。 2015年2月10日以降 このクソブログは『ブタネコのトラウマ・リニューアル版』に移転しましたので新規記事更新及び、過去記事へのコメントの受付もそちらで行っておりますので お手数ですが、そちらへの移動をお願い申し上げます。