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2012年11月17日

● A子の話(その29)


僕とB子は中学校で ある意味、似たもの同士と扱われていたのだが、その「似たもの」とは 二人とも学校内では殆ど無口で、しかもいつも不機嫌そうにしていたから他の生徒達にしてみると とても取っ付き難いタイプというもの




僕の場合は それに輪をかけて、いつも教師に反抗していたから僕と仲良くしていると教師達に目を付けられてしまうという計算も働いていたし、だからと言って 今風に僕が学級内で虐められたりシカトされていたのか?と言えば そういう風にならなかったのは、クラス内で虐めっ子と覚しき生徒が誰かを虐めてるのをみつけると その虐めっ子を僕が 時には脅し、時には殴っていたからだ。


が、僕は決して正義の味方を気取っていたわけでは無く ただ単に教師への鬱憤を晴らす八つ当たりの道具にしていただけの事で 学級内では僕の事を密かに「ウニ」とあだ名で呼んでいるとA子から教えて貰った時にも腹は立たなかった。


だって、いつも僕はウニの様にトゲトゲしてたんだからね。


B子は以前に記した様に 最初は言葉の訛りにコンプレックスを持っていて喋る事をしないでいたのをクラスの他の生徒達から誤解された反面 B子自身もそういう生徒達に


「わざわざ、こちらから擦り寄って友達になってもらう必要なんか無い」

「友達はA子だけで充分」


…と考える勝ち気な性格が災いし端から見たら孤立していたし、さらに言えば そんな僕とB子が一緒に帰る機会が多いのを指して


「アイツら付き合ってんだろ? お似合いだよね、似たもの同士で」


そんな風に皮肉とか嫌味を込めて噂され、間を空けられていたせいもある。


そんな僕達二人が共通して 唯一、親しげに会話をしていた女生徒がA子なわけだが、そのA子も 僕やB子とは違う理由で他の生徒達からは浮いた存在だったんだ。


それは彼女が金持ちの社長令嬢という 当時で言えば絵に描いた様な「ブルジョア」で その辺の庶民の子供から見れば 羨望の的であり、高嶺の花である反面、本人には全くそのつもりが無くても さりげない言動が庶民の家の子供達には嫌味に聞こえてしまう弊害が祟ったのだ。


今思えば、そんなブルジョアなA子と僕とB子が放課後になって 図書館へと向かう途次、陽気にいろんな事をペチャクチャ喋っりあっていたなんて ごく限られた数人の友人以外、他の中学の同学年の生徒達は想像も出来なかったはず


そんなA子と僕やB子が仲良くなれたのは奇跡なのか、神の悪戯なのか定かでは無いが、たぶん、A子は僕やB子と仲良くなっていなければ 中学を入学してから卒業するまで3年間 ずっと、お抱えの運転手さんが運転する車で登下校し、これといった友人も必要せず、まさに箱入り娘として卒業していっただろう事は間違いなく、少なくとも彼女の小学校の6年間がそうだったのだから。


そのせいか、中学3年の晩秋 放課後になって図書館へと歩く途次、自動車通学では味わえない北風を浴び、舞い踊る雪虫にキャァキャァ悲鳴を上げながら それらが楽しくて仕方が無い…ってぐらいにニコニコと楽しそうにA子は歩いていた。




そんな、ある日の図書館からの帰り道…


B子と二人で自衛隊官舎へと帰り道を歩きながら いつもの様に僕達はお喋りをしていた時に ふと、僕は思った事をそのままB子に言ってみた。


「ねぇ、A子の家ってさ もの凄い豪邸じゃね?

 アイツの部屋なんて わざわざ図書館に行かなくても至れり尽くせりなんだろうから

 なんで図書館なんかに行くのかな?」


すると、B子は


「A子ね、お母さんと上手くいってなくて家に居たくないらしいよ

 なんか、よくわからんのやけどもの凄く普通じゃないんやて」


「普通じゃない」ってどんなのかもの凄く興味を覚えたけど、それに関してはB子にも詳しくは話していない様で…


「それにね、他の人達には絶対内緒にしといて欲しいんやけど

 A子ね、図書館にいつも来ている高校生に憧れちょるんよ」


その発言は僕には爆弾だった。


「え? なにそれ? 片思い? ね? ね? ね?」


その衝撃の真事実を聞いたら180cm男は間違いなく膝から崩れ落ちる、そんな姿を思い浮かべてB子に尋ねると


「まだ、片思いまではいってないみたい

 でも、図書館に行ってその人を見つけると ”カッコイイ”とか言って見つめてるんだよ」


180cm大ピンチ… 僕にはそっちの方が楽しくてしょうが無かった。


だから、つい「絶対、内証」ってB子に念を押されたのに次の日の朝には 後年に親の跡を継いで開業医になった友にだけは その話をしてしまったんだ。


「え? いつの間に? 誰よ? オイオイオイオイ花嫁の親友としては 相手がどんな奴か…」


後年に親の跡を継いで開業医になった友は目をギラッと輝かせてその話に食いつき 僕なんかよりもはるかに興味津々


だから、その日の放課後 A子とB子の後ろを歩きながら、僕達はワクワクしっぱなしだったのだが…


図書館への道は 図書館の横のそんな広くはない公園の中の小道を通り抜けていく、ちょうどのその小道にさしかかった時、A子は急に立ち止まると公園の中に数本あったイチョウの古木の方を見ている。


すっかり、風が肌寒くなったとはいえ イチョウの木の葉はまだ緑色で紅葉の黄色い葉にはほど遠かったが、古木の下には近所のオバチャンらしき人が数人、銀杏の実を拾っており、その一人が僕や後年に親の跡を継いで開業医になった友がインスタントラーメンを食べに行く雀荘のオバチャンで 


オバチャンは僕達を見つけると、


「あら、アンタ達 いいとこ来たね。

 ほれ、袋をあげるから アンタ達も拾いな

 ここの銀杏は美味しいんだ、ほっといたらいろんな人が拾いに来て

 あっと言う間に拾われて無くなっちゃうんだから、ほれ、早いモン勝ちだよ拾いな」


真っ黒のゴミ捨て用のポリ袋を僕や後年に親の跡を継いで開業医になった友に一枚ずつくれた。


「うわぁ、面白そう」


A子は僕からそのポリ袋をひったくる様に奪い取ると イチョウの木の下に行って夢中になって拾いまくり、B子も一緒になキャァキャァ騒ぎながら本当に楽しそうで 180cm男もドサクサに紛れるみたいに さりげなくA子のそばでA子をチロチロと盗み見しながら やはり、楽しそうに拾ってる。


だから、30分もしないうちに二つのポリ袋がパンパンになるぐらい膨らみ、その重さで破ける手前ぐらいまでになってしまったから


「おい、これぐらいにしておかないと帰る前に袋が破けちゃうぞ」


と、僕が言って 渋々、


「そうだね」


と、拾うのはとりあえず止めたけど それでもまだ名残惜しそうだった。




僕達は 銀杏の実でパンパンになったポリ袋を持って、そのままいつもの様に図書館に入り、いつもなら僕や後年に親の跡を継いで開業医になった友は自習室には行かず、閲覧室で本を読んで過ごすんだけど その日は目的があったので、二人ともA子達と一緒に自習室に行き、キョロキョロ見回しながらA子の憧れの相手を探したのだが、A子の仕草や目線でその対象は直ぐに判り…


たしかに、ちょっと見 頭も良さそうで、体格もわりとガッシリ系でスポーツもそこそこやりますよ…なんて感じの高校生


「なんだ、俺の方が全然あんなのより良いじゃん」


ニヤニヤしながら後年に親の跡を継いで開業医になった友が僕に囁いたが、実は僕も全く同じで


「あいつより俺の方が…」


なんて思っていたのが 今だから言える正直な本音。


その男も微妙にA子を気にしているのか チラチラとA子を見ており…


「おいおい、向こうもその気か?」


さらにニヤニヤしながら囁く後年に親の跡を継いで開業医になった友。


すると、その男は立ち上がりA子の横まで歩いてきたので


「なんだなんだ?」


と、僕や後年に親の跡を継いで開業医になった友が注目すると その男はA子とB子に向かって


「ねぇ、君達

 悪いけど、率直に言わせてもらうけど 君達、臭いよ」


そう言った。


A子も そしてB子も、花も恥じらう中学三年生の年頃の乙女である。


しかも、そんな年頃の乙女にとって まがいにも憧れの男の子から「臭い」と言われるのは最大の恥辱


A子も そしてB子も その言葉が耳に届いた瞬間にポカンとした表情で刻が停まったかの如く身動ぎもしないで固まっている。


すると、ちょっとした沈黙を破る様に 再びその男は


「ほら、外は寒いから この部屋、窓を閉めきって暖房を入れてるじゃない?

 その袋、何が入ってるのか知らないけど もの凄く臭い匂いでたまんないんだ…」


と言ったのを聞いた瞬間、180cm男は慌てた様に立ち上がり 銀杏の実がパンパンに詰まった二つのポリ袋を掴みあげると


「すいません、これ僕のなんです

 彼女たちには全く関係無いんです


 本当にスイマセン、この袋 直ぐ外に持って行きますから…」


そう言いながら自習室をアタフタと小走りに出て行った。


知らない人には想像出来ないだろうけど、そして知ってる人なら容易に想像できると思うけど 銀杏の実って独特の臭気を漂わせているんだよね


それを夢中になって素手で拾い集めているうちに匂いに対して 知らないうちにある程度慣れちゃってたんだね僕達は。


でもね、そんな事より 僕と後年に親の跡を継いで開業医になった友は180cm男が 僕達よりも早く反応し、A子を庇った事に驚きを通り越していたんだ。


180cm男がポリ袋を持って部屋を出て行くのを見送ると A子の憧れの男は元の自分が座っていたところに戻り、何事も無かったかの如く参考書を開いた


僕と後年に親の跡を継いで開業医になった友は殆ど同時に立ち上がり、180cm男の後を追って自習室を出たんだけど 僕達が立ち上がった時に背後で微かだけど間違いなくA子の声で


「終わった…」


というポソッとした呟きを耳にしていたが、僕達は振り向かずに180cm男の後を追った。




180cm男は図書館の出入り口の外で 両手にポリ袋を提げたまま途方に暮れていた。


「どうした?」


僕が背後から声をかけると


「とりあえず、勢いで外に出てきたのはいいけど 鞄を自習室に置いて来ちゃったし…」


すると、後年に親の跡を継いで開業医になった友が180cm男からポリ袋を取り上げながら通りの向こうの雀荘を指して


「俺達、あそこの雀荘にいるからよ オマエは自習室に戻ってA子達と勉強しな

 で、帰る時に俺達の鞄を持って声をかけてよ な?」


そう言われて素直に自習室に戻ろうとする180cmに


「オマエさぁ、もしかしてA子があの高校生に気があるの 知ってたのか?」


僕がそう聞くと 180cmは何故か複雑な表情を浮かべて


「俺、いつもA子ちゃんを見てるからね

 なんとなく、そうかな…って思ってたんだ」


「で? 咄嗟に庇ったの?」


「う~ん、なんでだろうね?」


そう言って淋しげに薄く笑う180cmに


「オマエ、ホント良い奴だな…

 さすが、中体連でブタネコの頭に剛速球をぶつけただけの事はあるな

 イヤイヤイヤイヤ、俺は感動した。

 オマエ、ホント良い奴だ。」


目にうっすらと涙を溜めてそう言う後年に親の跡を継いで開業医になった友


僕もその言葉に一部承服出来なかったが、貰い泣きならぬ「貰い感動」したんだ。


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コメント

甘酸っぱいよねぇ〜本当に。180cmのとっさの行動は泣けてくるほど良い!銀杏はもろアレの臭いですものね。

★ ちょろ松 さん

ええ、凄い匂いなんですよね。^^;


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