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2012年11月04日

● A子の話(その25)


夏の中体連を終えて部活を引退した僕は紛れもない「受験生」に専念する身となった。




昨今はファーストフードやファミレスに行って飲み放題のドリンクバーで何時間も粘りながら勉強する学生の姿が目立ったりするけど、僕のその当時にはそんなものは無い。


その代わり、僕達が学生だった頃の定番は「図書館に行って自習室で勉強する」というスタイル


手狭な自衛隊官舎に住んでいた僕やB子はともかく、後年に親の跡を継いで開業医になった友やA子は広々とした立派な自室を持つ身だから 別にそんなところに行く必要があるのか疑問だったが、そのA子が率先して


「市立図書館に行こう」


と、言いだし A子と親友のB子は自分にも都合が良いので当然それに同行する


意外だったのは密かにA子に恋心を募らせる180cm男で


「ぼ・僕も行っていいかな?」


と、ノミの心臓を精一杯にドキドキさせながら必要以上に積極的に懇願し


「うん、みんなで行こう? その方が楽しいし」


というA子の反応に嬉し泣きしそうな勢い


後年に親の跡を継いで開業医になった友は勉強をする事よりも、そんな180cm男を眺めているのがとても面白いらしく


「おう、じゃぁ、俺も行く行く」


私はと言えば後年に親の跡を継いで開業医になった友と同様に180cm男を眺めたかったのと、図書館から帰宅するのが日が暮れた時間になるので B子の親父さんから


「キサン(貴様)がB子のボディガードせんで どうすっとや?」


そう言われるのは目に見えてもいるから普通に同行した


そんな感じで僕達の受験生としての日々は始まったのだが…


いざ、図書館に通い始めて間もない頃 同じ中学の同学年の男子が二人、僕達と同じように図書館に通っているのに気づく


それは、僕の中学の不動の学年1位である事もさることながら、全道模試でも常に第1位の成績を誇る「気の弱い男」と 我が中学の生徒会長であり、見た目は大人しそうで真面目に見えるのだが、中身は今風に言えば「オタク」の最先端をいっていた男


しかも、その二人が見るからにガラの良くない数人の高校生に囲まれて やがて、人気の無い資料室の方へと誘導されて(まさに拉致されて)行くのを 僕と後年に親の跡を継いで開業医になった友は目撃してしまったのだ。


正直言って、「生徒会長」は1年生の頃はわりと気さくに話をしていたが、2年生になった時のクラス替えで別になって以来疎遠になっており、 「気の弱い男」とは それまで同じ中学の同学年とは言っても同じくラスになった事は無いからロクに話した事も無い。


僕と後年に親の跡を継いで開業医になった友は教師や下級生達からマークされているロクデナシなのに対して、その二人は教師や下級生達から模範以上の生徒と扱われ、僕達とは対局の位置に居る存在だから 親しげに会話を交わす機会すら無かったのだ。


「あらら、ありゃ絶対カツアゲだな あの制服はS商業だわ」


と、後年に親の跡を継いで開業医になった友


「どうする? 見ちゃった以上、何もしないってのもなぁ…」


と、僕


「バカ、人助けって大義名分で気持ちよく暴れられる機会はそうそう無ぇべ」


と、嬉しそうに走り出す後年に親の跡を継いで開業医になった友


仕方無くその後に僕もついていくと 資料室の奥の方で


「有り金全部寄越せなんて言わないからよ 電車賃ぐらいは残してやるから素直に…」


と、まさに不良的強制募金の最中の高校生の股間を 後年に親の跡を継いで開業医になった友は後ろから蹴り上げ


「センパ~イ ウチの中学の、それも俺の貯金箱にチョッカイかけないでくれます?」


と、言うや否や 二人目のみぞおちに腰の入った拳をめりこませ、残った3人目のリーゼントっぽい前髪を鷲掴みにすると


「センパ~イ 安心して下さいよ、俺 良い病院紹介しますから」


とか言いながら、鼻血が出るまでメチャメチャに殴る。


結局、僕は何もする事が無く 後年に親の跡を継いで開業医になった友が一方的に3人の高校生を殴り蹴りまくるのを横目に 外から誰か来ない様に見張りつつ「気の弱い男」と「生徒会長」に 


「悪いけど、便所の道具入れに雑巾みたいのがあったら濡らして

 もしそんなのが無ければ、トイレットペーパーでいいから取ってきてくれる?」


と頼むと 二人は何も言わず、あっと言う間に濡れた雑巾を便所から持ってきてくれて その間に打ちのめされた3人の高校生は無抵抗の意を示していたので 後年に親の跡を継いで開業医になった友に濡れ雑巾を渡すと 後年に親の跡を継いで開業医になった友はその濡れ雑巾で鼻血を出していた高校生の顔を


「どうしたんすか?センパ~イ まさか喧嘩じゃないですよね?

 足を滑らせた拍子に 本棚に顔をぶつけたんですよね? そりゃ災難だったっスねぇ?」


…なんて因果を含める様に言いながら撫で回して血を拭い、


「今度、俺の中学に手ぇ出したら 病院通り越して葬儀屋の手配にしちゃいますからね?

 そこんとこ、忘れんでくださいよ? ね?」


そして、雑巾をその場に放り捨てると「気の弱い男」と「生徒会長」に


「なんか、運動したら腹空いてきた どこかその辺の店で なんか食うべ?」


そう言って資料室から僕を促して出て行き 「気の弱い男」と「生徒会長」も僕達の後についてくる。


僕達はA子とB子、それに180cm男がいる自習室に戻ると


「ちょっと腹が空いたから その辺の店にラーメンかなんか食いに行くけどオマエらは行く?」


と、後年に親の跡を継いで開業医になった友が言うと A子が


「何言ってんの? 勉強しに来てるんだから 行かないわよ私は」


B子もそれに黙って頷き、180cm男も


「そ・そうだよね 勉強しなきゃ ね?」


と、A子にゴマをする様に言う


後年に親の跡を継いで開業医になった友は妙な笑みを180cm男に向けた後、振り返ってついて来ていた「気の弱い男」と「生徒会長」に


「オマエらは行くよな?」


と、言うと 二人は座敷犬の様にウンウン頷いてる。


結局、図書館から僕を含めた4人が抜け出し 近場の食べ物屋を探したが、これといった食堂っぽい店が無い。


で、たまたま何かの店舗の前で掃除をしていたオバチャンに


「すいません、この辺でラーメンとか焼きそば食わせてくれる店は無いですか?」


と、僕が尋ねると


「インスタントラーメンなら一杯150円で食べさせてあげれるけど ウチに寄ってくかい?」


と、オバチャンが言うので「お願いします」とその店舗の中に入ってみると そこは雀荘。


「この時間は誰もお客さん居ないからさ その辺、適当に座ってて」


そう言うとオバチャンは厨房へ。


ラーメンを待つ間、手持ち無沙汰な僕達は麻雀卓の上に転がった牌を弄って遊んでいるうちに 誰からともなく


「オマエ、麻雀出来る?」


「うん、オマエは?」


4人とも麻雀が出来ると判った途端、ガラガラと牌を混ぜて山を積み 僕達は麻雀を始めていた。


しばらくして4人分のインスタントラーメンをお盆にのせたオバチャンが奧から出てくると 一人前に麻雀に興じている僕達を見て


「あら? アンタ達、麻雀出来るのかい?

 したっけアレだわ、ラーメンは麻雀のお客さんなら1杯百円でいいんだわ

 その代わり、半チャン一回一人百円ずつ場代を払ってちょうだいね」


それが僕が人生で生まれて初めて雀荘で麻雀をした時になり、他の3人も同様 その時に一緒に麻雀をした「気の弱い男」は後に「気の弱い弁護士」と呼ばれる男になり、「生徒会長」が「某国立大学理工学部教授」になるのはずっと先の話だ。

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コメント

待望の「A子の話」!

私も受験勉強に市立図書館通いしました。
懐かしい記憶を思い出しました。
ブタネコさん、感謝します。

まってました!続編ありがとうございます。180cm頑張れ!

★ 高橋信之 さん と ★ ちょろ松 さん

お待たせしてすいません。^^;


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