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2012年03月19日

● 悪霊島 再記


映画「悪霊島」を不意にTVで見た。




悪霊島

1981年に角川映画として公開された「悪霊島」は個人的にいろんな意味で思い出深い。


私が横溝正史文学の大ファンである事は このクソブログに何度も記した事だが、諸説色々ある中で 私にとって横溝正史の遺作はこの「悪霊島」だと思っている。


この映画が公開される少し前に敬愛する横溝正史先生は御逝去され そんな感慨を抱いて映画館でこの映画を初めて見た時、何故か泣けて仕方が無かった事は今でもハッキリ覚えている。


1970年代の半ば過ぎに 角川書店が発行する「野生時代」という月刊誌に「病院坂の首縊りの家」を「金田一耕助最後の事件」として出筆された後、たしかインタビュー記事だったと記憶するのだが、アガサクリスティやエラリークイーンなどの著名な海外ミステリー作家達が「元気なうちに自分が生み出した名探偵を引退させてやりたい」という意図のもとにポアロ等の「最後の事件」を記した事を挙げ 自分も「金田一耕助に花道を」と考えて「病院坂の首縊りの家」を著した事 同時に、金田一耕助シリーズの中で活躍した等々力警部と磯川警部にも最後の花道をと考え「病院坂の首縊りの家」では等々力警部を、次回作では磯川警部を(それが「悪霊島」) そして、本当の最後として両警部が登場する作品を記すつもりである…と述べられていた。


つまり、磯川・等々力 両警部が登場する作品は記されぬまま横溝先生は他界してしまわれたわけだ。


悪霊島


兎角、色々とあった角川春樹ではあるが 横溝正史の作品群に再び光を当てた事と、市川崑・石坂浩二による 金田一耕助が本来あるべき姿での映画化に関しては金田一シリーズのいちファンとして深く御礼を申し上げたいが、野村芳太郎の「八つ墓村」や、斎藤光正の「悪魔が来りて笛を吹く」 そして、この篠田正浩による「悪霊島」は 願わくば、この時期の市川崑・石坂浩二で制作して欲しかったと強く感じたのは


悪霊島


この映画は冒頭に「ジョン・レノン」の射殺事件を報じるニュースを盛り込み キー・パーソンである「三津木五郎(古尾谷雅人)」の回想という設定・構成にしている


しかしながら、それを見た瞬間に「あぁ、駄目だ これは横溝先生の悪霊島じゃ無ぇや」と私は失望した。


悪霊島


確かに、エンドの「レット・イット・ビー」は ある種のノスタルジィの様な良い雰囲気は醸し出されているとは思うけど、それは落ち着いて考えれば「映画に対する感傷」ではなく「レット・イット・ビー」という名曲に対する感傷なのだ。


たしかに、「悪霊島」の原作の中で「ヒッピー風の」という表現があり 映画が制作された少し前にジョン・レノンの事件があった事を ヒッピー=反戦運動=ジョン・レノンと短絡的にイメージ付け 社会派ネタを盛り込みたがる傾向の強い典型的な日本の映画制作者達には格好の材料だったのであろうけど それが後々、使用権の問題でビートルズではなく別の歌手のものに差し替えを余儀なくされ、ポール・マッカートニーの歌声とは違う「レット・イット・ビー」では感傷もクソも無い


この「悪霊島」という物語の根底には巴御寮人の過去に纏わる話を核として 三津木や荒木の親捜しの旅であり、越智竜平の復讐ではなく懐古があり 原作ではそれらの感傷で胸が一杯になる。


そもそも、この映画では岩下志麻が一人二役で「ふぶき」なる人物を登場させるが 原作にはそんな人物は登場しない。


仮に、巴御寮人の二面性をそうする事で表現したかったのだとするならば 篠田は己の監督としての表現力の乏しさを猛省すべきなのだ


つまり、この映画に限ってを言わせてもらうならば「レット・イット・ビー」を持ち込む事によって 本来の横溝ティストを表現しきれなかった部分が誤魔化せただけの映画でしかなく、横溝ティストは活かされていない事が後年になって「ビートルズ」から他の演者の「レット・イット・ビー」に差し替えられた事で如実になり、ボロが出てしまったんだな


それに、「ジョン・レノン」という事で曲を盛り込むのであればポール・マッカートニーがボーカルの「レット・イット・ビー」より「イマジン」なんじゃないの?って違和感も拭えないが それぞれの曲の詞のどちらがこの映画に合っているかは意見が分かれるだろうけどね。


…といった理由で 私はどちらかと言うとこの映画に関しては「クソ映画」に違い感想を抱いていた。


でもね、しばらくぶりに そう、今になって久しぶりにこの映画を見ると違った味わい方というか、感傷に浸る事が出来る事も判った。


例えば、


悪霊島

「古尾谷雅人」や


悪霊島

「室田日出男」といった記憶に残る名優のかつての姿を垣間見れた事もさることながら…


あらためて


悪霊島

悪霊島

悪霊島

悪霊島

悪霊島

悪霊島

悪霊島

悪霊島

悪霊島


在りし日の瀬戸内の風景や雰囲気を味わえた事は とても嬉しい。


実を言うと、高校卒業まで北海道で過ごし 大学進学で東京に上京した私は中高時代に読んだ本の舞台となった土地を自分の目で眺める事に飢えていた。


喫茶「職安」で当時の学生としては破格のバイトで稼いだ金の殆どを私が貯金していたのも「いつかは旅をするんだ」という夢の軍資金だった。


だから、私は大学生になってから そして、東京で就職して生活した数年間 見に旅をする事を夢見た場所を巡り歩いて堪能しまくったわけだが、設定は違うけれども その頃の自分が この映画の古尾谷雅人が演じる青年であり、その時に見た光景の一つがこの映画で垣間見る瀬戸内の景色なんだ


ちょうど、この映画が撮影された前後の時期に何度か私は岡山や広島、瀬戸内と旅をしており、物心がついて初めて北海道とはまるで異質な瀬戸内の景色に魅了され 特に、何度も読み返して親しんだ横溝ワールドの舞台地に浸ったわけだが、それから30年以上が過ぎ、当時は無かった四国と本州を結ぶ3つの橋や、バブル等の景気の作用で いろんなところの景観は変わってしまったけど この映画の映像の中にはその頃の瀬戸内の景色がまだちゃんとある。


言い方は悪いけど、「クソ映画」でもある程度の時代を経ると 違った意味で貴重な映像となるから侮れない。


悪霊島


それに、あらためて見ると「鹿賀丈史」の金田一耕助もまんざら悪くは無いんだよね


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コメント

自分は瀬戸内海といえば
獄門島ですかね。
大原さん、佐分利さん、太地さん。。。。
みなさん鬼籍に入られてしまいました。
浅野さんはデビュー直後で坂口さんも可愛かった。
佐分利さんの「きちがいじゃがしょうがない」
のセリフが印象的でもあり謎を解く鍵となったことを
今も思い出します。

★ やじ さん

獄門島は別格ですよ^^

なんか、最近 角川映画の再放送とか ここにきてDVD化が続いていて見る機会が増えてます

が、それらを見ていると ひどく懐かしく思う自分に 過ぎた年月を痛切に感じる今日この頃です。


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