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2012年02月26日

● A子の話(その23)


8月に入り、中体連の全道大会が始まった。




その一回戦が始まる少し前、後年に親の跡を継いで開業医になった友やA子やB子が僕のところに近寄り


「頑張れ」


と励ましてくれるのを チームメイト達は内心面白くなかったようで…


「また、あの女が見に来てんのかよ 鬱陶しいなぁ…」


あからさまにそう言う奴までいたけれど 僕は聞こえないふり。


不思議な事に 懸命に練習を積み重ね、それなりに努力もした末に行き着くところが「神頼み」とか「ゲン担ぎ」だったりする。


よく、「勝利の女神」という表現を耳にする。


一年生の時、A子が見に来た練習試合は不思議と負ける事が無かったので 三年生の先輩達はA子を「勝利の女神」だと可愛がった。


それから僅か二年 何故かA子は敗戦を招く不吉な者扱いになっている…


根本的に A子はただ試合を見に来るだけなんだから、試合の勝敗に彼女は何も関係無いのは誰が見ても明白なんだけど 例えばそれが試合前の緊張をほぐす冗談のネタみたいなものであれば まだそれなりに理解出来なくも無いが、真剣に恐れおののくような様は笑えなかったが、まぁ、それはどうでもいい。


いざ一回戦が始まってみると、そんな不吉な予感が現実に変わってしまった様に 僕のチームのベンチ内は重苦しい雰囲気に包まれた。


それは相手チームのピッチャーが試合前の練習時に相手のベンチ前でウォーミングアップしている時の投げるボールが それまでの対戦したどの投手よりも速く、中学生なのに180cmを優に超える身長で投げ下ろしているから 見るからに打ち難そう


監督も そんな相手チームのピッチャーを見て、何か感じるモノ 考える事があったのであろう それまでの打順を大幅に入れ替え、何故か僕が一番バッターに


「俺、そんなに脚は速くないけど 一番でいいんすか?」


僕は中学の野球部で それまで練習試合や紅白戦を含めて打順が一番だった事は一度もない、なので つい、そう監督に聞いてしまったのだが


「なんか、ウチの選手の殆どが緊張してるみたいだべ?

 オマエは緊張感の乏しい奴だから…」


帰ってきた応えに説得力は無く どうやら監督自身が緊張しまくってさえいる。


「なんだかなぁ…」感に包まれた状態で試合は始まった。


で、その第一打席 中学生活で初めて一番バッターとして打席に入った僕は 初球を頭にぶつけられ… 軽く後ろに下がるだけで簡単に除けられる、そう思った僕の判断を上まわる投球のスピードで「ヤバィ!!」と思った時には僕の左のこめかみ辺りに当たっていた。


今がどうなのかは知らないが、当時の中学野球は軟式のA球が公式とされ 硬式野球の様にバッターがヘルメットを被る事を義務づけられてもいなかった。


前に、スクイズが実は右手に当たっていた事を述べたが 軟式野球の場合、痛くないと言えば嘘になるが、硬式の様に骨折など大怪我になるケースは少ない 現に、それまで数え切れない程デッドボールを頂戴した僕だったが、さすがにその時ばかりは違った。


痛みはさほど感じなかったが、ガッと当たった瞬間からブーンという羽音が耳の奥というか頭の中を駆け巡り、立って一塁へと向かおうとしたら 膝に力が入らず…


今だったら救急車で搬送されるのが当たり前なのだろうけど、僕は球場の医務室で水枕と氷嚢を頭に寝てろと言われ僕の試合はそこで終わり、結果から先に言えば 相手ピッチャーに完封された僕の中学は敗戦となり 中学野球もその日で終わった。


プロ野球みたいな華々しさは無いが 球場内や施設にはウグイス嬢(と言っても当番中学校の女子生徒だが)が「第一試合は3対0で @@中学の勝利となりました」と告げる放送がスピーカーから流れるのを聞きながら 医務室のベットで身体を起こすと、いつの間にかブーンという羽音は聞こえず、普通に身体は動くし痛みも吐き気も無い。


そばにいた後年に親の跡を継いで開業医になった友やA子やB子と普通に会話も出来るし、


「試合が終わったね」


「負けたみたい」


「なんか、こういうエンディングもドラマチックじゃん」


他人事の様にそんな会話を交わしていると… 外の方でガッガツとコンクリートの上をスパイクの金具がたてる足音が近づき、開いていた医務室のドアを 身長180cm以上のユニホーム姿の大男が入ってきた


「狙って投げたわけじゃ無いんだ 本当にゴメン」


でかい身体で深々と僕に向かって下げたのは 一回戦の相手チームのピッチャーだった。


当たり前である、試合開始早々に 先頭バッターの頭を狙ってボールを投げ込む馬鹿なピッチャーなんていない。


それよりも、デッドーボールの相手に そんな風に詫びに来るピッチャーもいない。


あくまでも、試合の上での真剣勝負なんだから 詫びる必要なんか無いのだ。


しかし、その180cm男は試合が終わってまだ間もないタイミングで詫びに来た… それだけで充分な誠意だと僕は思った。


僕は笑って「凄い球だった… あれだけ速けりゃ誰も避けきれないよ」と応え「気にしなくて良いよ」と言うと 180cm男は再び深々と頭を下げ「本当にゴメン」と


試合に負けて、僕の中学での野球は終わったけど 悔しさとかは全く感じず、むしろ その180cm男に清々しささえ感じていた。


で、その時 深々と頭を下げている180cm男に


「コイツ(僕の事)は平気だから 気にしないでいいよ

 それより、折角コイツ(僕の事)にぶつけたんだから この先、勝ち進んで優勝してよ

 そしたら、コイツ(僕の事)も ”あの優勝ピッチャーに頭にぶつけられちゃってさ”って

 自慢が出来る様になるからさ ガンバッテね。」


と、A子がいい そんなA子を180cm男はビックリした様な顔で見つめながら


「う・うん が・が・が・頑張るよ」


と、応えていた。




どうでも良い事だけど、書き記しておくと 初回の先頭バッターでデッドボールを食らい、医務室に行った僕を チームメンバーはおろか、監督や顧問の教師まで忘れてしまっていた。


お陰で、医務室には後年に開業医になった友やA子やB子と謝りに来た180cm男以外、誰も訪れる事は無く 僕は忘れ去られたまま、チームメイト達や監督は球場を後にしていた。


まぁ、後から彼等が言うには「病院に運ばれた…と思っていた」そうだが、医務室まで付き添ってきた顧問の教師は 僕が卒業するまで僕の顔を学校内で見かけると逃げる様に姿を消していたのは なんか後ろ暗い気持ちがあったからなんだと僕は決めつけている。


そんなわけで、自分の中学の関係者がいない事に気づき 大会関係者が困惑しだしたのを見て A子は球場から父親に電話をかけてHさんの運転する車を差し向けてくれて それに乗って僕達は まず、後年に開業医になった友が自分の父親に やはり球場から電話で頼んで手配してくれた脳外科の病院に行き念の為の検査を受けて 自宅に帰宅したのはちょうど夕御飯の時


既に、父親達は晩酌で軽く酔いが回っており


「なんじゃ?負けたとか 今日だけは用事が入っちょって見に行けんかったとやが

 明日は休んで応援に行ったろうと思うとったんやけどねぇ…」


B子の父親は残念そうに言ったかと思った途端


「まぁ、これからは 受験やね

 気持ちをスパッと切り替えて 今度は受験に向かってまっしぐらや」とも。


「”高校入試に落ちても最悪たかが一年浪人すれば良かっちゃろ?”って言ってたじゃないすか…」


つい、そんな変わり身の早さに そう口答えしてしまったところ


「キサン、あん時に言うたやろ?

 中学三年の夏は 今しか無かろうが?

 唯一無二の夏ぞ?

 その夏に悔いば残すのは男子の本懐とは言えんやろが

 キサンもタマタマぶら下げた男子なら ここぞって時に気合い入れんでどぎゃんすっとか!」


「なんか違う」私は心の中で叫んだが 逆らえばどんどん事態は悪化する。


その後、残っていた夏休みをひたすら勉強と読書で過ごした僕は 二学期が始まり始業式の日に 久しぶりに登校した時に腰が抜けるほど驚いた。


それは、始業式が終わった直後のHRで


「@@から転校してきた¥¥君です 今日からこのクラスの一員なんで仲良くしろよ」


担任に紹介された転校生が 中体連の道大会で一回戦の時に対戦した相手中学のピッチャーである180cm男だったからだ。


それが、後に「腕力だけが取り柄の歯科医」と呼ばれる男の登場だった。


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コメント

凄い。

最後の一行・・・鳥肌立ちました。

★ うごるあ さん

ども^^


今日のは、読み終わってやられたってかんじでした。
コメント書こうかと開いてみたら、書こうと思ったことをうごるあさんに書かれていました。

新たなキャラを迎えて展開がどう動くのか続きが楽しみに…、

★ ぴの さん

ども~^^


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