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2012年02月20日

● A子の話(その22)


準々決勝の試合を終え、ベンチから球場内の通路へと向かう途中… 




チームメンバーや監督は全道大会出場を決めた事に喜びワイワイと楽しげだったが、そんな一団の中で僕はチームメンバーの中で最も仲の良かったチームメイトに


「あれ、バットじゃなくて指に当たったんだよなぁ…」


と言ったところ


「バカ、そんな事をここで言うなって」


と、真剣な形相で睨まれた。


近くで その僕の言葉を聞いた別のメンバーも慌てた様に


「審判がセーフ、ゲームセットって言ったんだからアレは見事なスクイズだったんだよ

 ケチをつける様な事を言わないでよ」と。


僕の「なんだかなぁ…」感は益々深まるばかり


僕は決して正義感で不満だったのでは無い。


指にあたったという事実はともかく、仮にそれがバットだったとして 転がるボールがファウルになっていたとしたら


「見逃せ…のサインなのに バットに当ててどうすんだ!」


と、間違いなく僕は怒られ チームメイト達からは


「スタンドプレーは勘弁してくれ」


…ってな視線で見つめられたはずである。


にも関わらず、スクイズ成功によるサヨナラ勝ち そんな結果オーライを誰も何も考える事無しに


「やったよ、これで道大会だ」


と、ただただ喜んでいる。


しかも、それがチームメイト達にとっては


「益々、特待生への道が開き近づいた」


と、打算的な喜びだったりするわけだし いつの間にか観客席から中学の校長や数名の教師達、特に 僕とは犬猿の仲の日教組活動家である担任までもが僕達のところに駆け寄り


「ブタネコ、ナイスばんとだったぞ いや、ホント、先生感激したぞ」


と笑顔。


「あれ? アンタ来てたの? スタンドで日教組の赤旗を振ってくれれば直ぐに判ったんですけどね」


と僕が精一杯の皮肉を言っても


「こらこら、嬉しい時には素直に喜べよ」


なんて笑っているのを見たら 尚更、僕の心中は複雑だった。


球場の通路でユニフォームからジャージに着替え その日はそこで解散になり三々五々と帰途につく 球場の出口で待っていてくれていた後年に親の跡を継いで開業医になった友やA子やB子と合流し


「なんで、オマエの父親がスタンドにいたんだ?」


と、僕がB子に聞くと


「アンタはウチのお父さんの倅みたいなモンなんでしょ?

 お父さん 昨日の夜から遠足の前の日の小学生みたいに五月蠅くてさ

 アンタの試合の応援にオイが行かんでどげんすっとじゃ 倅の大舞台ぞ…って」


「で? 親父さんは?」


「帰ったわよ、なんか仕事サボって来てたみたいで ニコニコしながら大急ぎで総監部に戻って行ったわぃ」


B子の父親が喜んでいた… それは僕にとってなによりの救いだった。


「勝利のお祝いに ヤキソバを奢ってやるよ」


という後年に親の跡を継いで開業医になった友の後を歩いていると


「アレ、指に当たったんでしょ?」


いきなり、背後からA子が核心を突いてきた。


僕が何も言い返せず黙って歩いていると


「反則でも 審判がそれを見ていなかったら成立しちゃうのって なんか納得できないものがない?」


と、A子が続けた


すると、サッカー部だった後年に親の跡を継いで開業医になった友は


「野球なんか良い方だよ

 サッカーじゃ ユニホームを掴んだり、腿や脛を蹴ったり 審判の目を盗むのがテクニックのひとつだぜ」


それに対してA子は


「アタシはそういうのがダメって思ってる訳じゃないの

 ただ、プレイしている人達が それを踏まえてプレイしているのに

 それを学校教育の一環だ…って もてはやす様な事を大人が言うのが変だなぁ…って」


「どういう事?」


「もしも、”審判の目を盗むのがテクニック”と言う事が”学校教育の一環だ”としたら

 そうやって育てられた子供って 脱税とか、詐欺とか 目を盗んでバレなきゃOKって風になったりしないかな?」


後年に親の跡を継いで開業医になった友や僕は 何も言えなかった。


僕は 本当は指にボールが当たったのに、それを審判が見逃し、スクイズがセーフとなり、得点は認められて試合が勝利で成立した事に不満だったのでは無い。


けど、勝利を素直に喜び 嬉しかったわけでも無い。


生意気な本音を言えば バントの当たり損ないではなく、ボテボテとかポテンでもいいから 自らの振ったバットでとりたかったわけで、結果はチームの勝利だとはいえ 実は僕にとってはそんな事はどうでも良く ヒーローになれる場面で、ちゃんとバットを振れなかった事に不満で一杯だったんだ。


でも、A子はそれも見抜いていた。


「ブタネコ君って 本当に面白いよね?」


「なんで?」


「試合に勝っても全然嬉しそうじゃ無いじゃん」


「そうか?」


「アンタさぁ、もしあぁいう場面でタイムリーヒットを打っていたら その試合に負けてたとしても

 今みたいに試合が終わって帰る時には 満足そうにニコニコしてるよね?」


自信満々にそう言い切るA子に対して 驚きを通り越して恐怖すら感じ、そして なんか急に可笑しくなって笑う僕。


「ま、たしかに不思議なバカだよな」


後年に親の跡を継いで開業医になった友の一言で そんな会話は終了し、別の話題になったのだが…


その時のA子の一言一句は 何年も、何十年も先まで僕は忘れられずに覚えている。


その日の夜、いつもの様に その日はC男の家で僕のところとB子の家族も集まって夕餉を囲み 父親達は晩酌。


そこで満面にニコニコ顔のB子の父親が


「オイの特訓のお陰やね ウンウン」


と、いかにも満足気だが それに対して


「特訓って 300本ノックと素振りでしょ? バントの練習なんて一度もしてないじゃん」


と、言い返したかったが 言えるわけも無かった。


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