● 日輪の遺産
2011年公開の映画「日輪の遺産」のDVDを入手したので見たのだが、なかなか感想をまとめきれずにいた。


「堺雅人」
浅田次郎の原作は発表間もない頃に読了していたのだが、DVDを見て「あれ?」と感じ あらためて読み直してみた。
浅田次郎に関しては このクソブログにかなり以前にカテゴリーを設けている通りけっして嫌いな作家ではないのだけれど、何かの記事で記した通り「鉄道員」以後の彼の著作にはなんらかの計算やおもねりを感じてしまい 今ひとつ絶賛する気になれず、私が好きなのは「きんぴか」とか「プリズンホテル」のシリーズ いわゆる極道ピカレスクと呼ばれた作品群だ。
で、「日輪の遺産」の原作に関して個人的感想を言えば とても面白い小説だと感じたが、いくつかの部分に大いなる疑問を抱いたのも事実で 評価としては中。
映画版のDVDを見て「あれ?」と感じたのには間違いなく 映画化に際していくつかの大きな設定変更が施されていた。
その設定変更に関してはそれなりに違和感を抱くが、百歩譲って可もなく不可もなく…と言えない事もない。
が、それじゃあ私の感想らしくないので いくつかの点について私見を記しておきたいと思う。
まず、

「麻生久美子」の起用はファンとして嬉しいけれども 原作では殆ど登場しないこの女性を それなりに登場させる意図が私には判らない。
が、回想シーンの導入を

「八千草薫」が演ずる老女に任せたのは原作よりもスッキリしていてとても良いと思う
にも関わらず、

上のシーンの挿入の仕方は その前後のシーンとの整合性や、時代状況などを考えた時に脈絡が不明であり、どうせ入れるならもっと肉付けをしておけと思う。
でね、今までに何度か別の記事で記した事だが あえてもう一度記させて頂きたい事は
「佐々部清に日本軍絡みの映画を撮らせるな」
…という点である。
「出口のない海」で彼の演出で見せた日本軍の描き方のデタラメさは何も治っておらず、思うに この「日輪の遺産」という映画の脚本を別の監督が演出したならば 代わりの監督にも寄るけれど大傑作になったかもしれないという思いが私は拭えないのだ。
その理由としては この「日輪の遺産」という書は終戦間際に日本陸軍が隠した財宝の行方と、隠すにあたって女学生達に起きた出来事…という部分にばかり演出がなされているけれども もっと重要な根本はその作業に関わった3人の兵それぞれの話であり、映画だけ見たのでは堺雅人が演じた少佐に関して 彼が戦後、どういう風に行動したかが描かれている様で実は描かれていないも同然である事だ。
もし、それを佐々部が理解していたならば ほんの短いシーンの挿入だけでもティストは全く違ってしまって(良い方向に)いたと思うのね

「ユースケサンタマリア」が演じた教師の描き方も 邦画特有の「反戦教師云々」みたいに描いているだけで この教師が反戦主義者か否かなんてのは実はどうでもいい もっと違った「生徒想いの教師」という部分に佐々部が気付いていたとは思えない演出なんだな
それと、もっとも肝心な点はネタバレになるので ヒントの様な記述で御容赦願うが、
「もし、アナタがこの映画を御覧になった時 女学生達に起こった出来事は、
誰が、どういう理由で そういう結果を生じさせてしまったのか?」
…という点に 特に注目して御覧頂きたい。
余計なお世話で申し訳ないが、上述の点をあえて注意しておかないと 八千草薫の演技などで 本来、この「日輪の遺産」という映画で観客が感じ、考えなきゃイケナイ事がぼやけてしまうのだ。
ゆえに、
「佐々部清に日本軍絡みの映画を撮らせるな」
…なのである。
