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2011年07月18日

● A子の話(その13)


中学2年の夏休み、僕の周囲はいろんな事が大きく変わった。




まず一番の変化は B子が自分の言葉の訛りが僕にバレた途端、それまでと対応が全く違う別人になってしまった事。


そう、無口な引っ込み思案な子と装っていたのが 実は、明朗闊達な子で


「なぁ? どこぞ行かんの? 自転車の後ろに乗せて連れてってぇや」


と、昼下がりに猫とじゃれて遊んでいた僕にB子の方から話しかけてくる様になった。


そして、もうひとつの大きな変化は 僕やB子の家族が住む自衛隊官舎に、学年で言えば2年下の僕の妹と同級生の男の子(以後、C男と呼ぶ)がいる幹部自衛官家族が引っ越してきた事。


その幹部自衛官は僕の父やB子の親父さんと若い頃に とある部隊で共に勤務して仲が良かった人で であるがゆえに、僕の父やB子の親父さんはそれをとても喜び それまで毎日の様に我が家かB子宅で繰り広げられていた夜の合同食事会が3家族合同に増えたのだ。


つまり、夕方 勤務から帰ってきた父親達はそれぞれ風呂に入り 持ち回りの様に三軒の官舎の何処かに集合して晩酌を始め 残り2軒の母親達がそれぞれ一品か二品作ったオカズを持ち寄って子供達も交えて晩御飯となる。


だから、僕と妹 それにB子とC男の4人が一つの卓袱台を囲んで食事をするのだが、それまで僕の妹とB子がなにやら愉しそうに会話を交わしながら食事をするそばで 僕だけが黙々と食べるのが普通の姿だったのだが、B子が僕に話しかける様になった為 僕の妹はC男と話す様になり あっと言う間に仲良くなっていった。


それが僕の父とB子の親父さんには複雑な思いへと変化させていったんだな


ごく当たり前の様に僕はB子の親父さんに付き合わされて銭湯通いをしていたのだが、そこで繰り広げられる熱湯地獄において


「キサン、ウチのB子とずいぶん仲良くなったっちゃねぇ

 それはそれでええ事やけど、やけんが物事には節度っちゅうもんが…」


等と、とりわけ男女交際に関する訓話に熱を帯びる様になったのだ(それでなくても熱湯で暑いのに)


誓って言うが、僕はその当時B子に恋愛感情など抱いた事は無かった。


それはB子がブスだったわけでも、僕がホモだったわけでも無く だからと言って他に好きな子がいたわけでも無い。


ただ漠然と、何の目標や目的もなく「さぁ、そろそろ高校受験の準備かな」そんな感じで流されていたと言っても否定できない。


で、夏休みが終盤にさしかかった頃 しばらくぶりに学校の図書館で会ったA子は真っ黒に日焼けしていた。


「なんだ? ハワイにでも行ってたのか?」


後年に親の跡を継いで開業医になった友がA子をからかうように聞くと


「洞爺湖にお父さんの知り合いの別荘があって そこに行ってたの」


そう言えば、B子が足を再び怪我していなければ一緒に行くんだ…って楽しみにしていたんだ


「知ってる? 有珠山の中腹に銀沼って大きな池があって 綺麗だったよぉ、そこ」


真っ黒に日焼けしたA子と再び足にギプス生活で色白のB子は見るからに対照的な組み合わせだったが、二人は愉しそうに話していた。


「ねぇ、アンタ達もさぁ 来年(中学三年)の夏は受験前だからダメだけど

 高校に入ったら、夏休みに一緒に行こうよ 本当に綺麗なんだよ」


そして、A子は気がついた様に僕に


「お? 野球少年が、今日からは読書少年かい?

 ここにはコナン・ドイルやルブランはあっても 君の好きな横溝正史は置いてないぞ」


と、笑っていた。


以前、記した様に A子は僕が推理小説を昼休みに愛読しているのを知っていたから そう行ったのだろうけど B子は


「横溝正史? エラリー・クイーンやアガサ・クリスティの方が数倍面白いわい」


A子の前では訛り丸出しで普通に話している。


なので、僕はA子に


「なぁ、コイツ(B子) こんな訛っているの知ってたの?」


と聞くと A子はB子に向かって


「もう、ブタネコ君と後年に親の跡を継いで開業医になった友クンには

 バレちゃったんだから話してもいいよね?


と、了解を取り


「うん、転校してきた最初の日から知ってるよ

 でも、他の人には絶対に知られたくないから黙ってて…って言うから黙ってたんだけど

 アンタもさぁ、近所に住んで お父さん同士が仲良しなのに1年も気づかないなんて

 どんだけマヌケなわけ?」


と、大笑いしていた。


そう言われても、ある意味仕方が無いが 僕が責められるよりも、それだけ徹してきたB子が凄かったという他ない。




さて…


新学期が始まり、前回記したB子の回し蹴りは目に見えない部分に波紋を呼んでいた事に気づいた。


僕と蹴られた本人は直接喧嘩をしておらず仲違いをしているわけでもなかったが、それぞれ、回し蹴りの件に関してその後触れようともしていなかった。


ただ、蹴り飛ばされた本人は明らかに腫れ上がった鼻と鼻血の跡から、誰かに何かされたのは他の野球部員達には容易に想像がつくわけで


「どうした?」「何があった?」


と、問われたのであろうけど 女子に蹴られたのが恥ずかしかったんだろね ゆえに、蹴られた本人が本当の事を誰にも話そうとしないから、その時にそばで目撃していた数人のチームメイトも黙り、その結果、その場にいなかった者達の間で想像による噂話が先行し…


それまで内気で引っ込み思案と思われているB子の仕業とは誰も思わず、


「そういえば、あの時 オレらのそばにブタネコいなかったよな?」


…なんてところから


「あれ、ブタネコの仕業だろ? さもなきゃ、後年に親の跡を継いで開業医になった友だろ」


と、決めつけられるのは簡単な話。


僕は自分で言うのもナンだが それなりに他の部員達に引けを取らない技量を持っていると自負していてはいたが、他の殆どの部員達の様に真剣に甲子園を目指す強豪校に進学する気も そこで通用する技量だとも思っていなかったから、自然と部活よりも受験の方に自分のウェイトを置く気持ちが強かったから、三年生が引退して二年生を中心とした新チームにとなり「来年こそは道大会に行くぞ」と気勢をあげるチームメイト達に なんか一緒になって乗り切れずにいた僕にも原因はあるのであろうし、わざわざ僕の方から「それはB子の仕業で…」なんて言うのは言い訳めいてて嫌だったんだ。


ゆえに、その辺が同学年のチームメイト達と僕の間に生じた目に見えない亀裂のキッカケだったんだろうけど そんな事はどうでもいい。


僕はそれまでと何も変わらず、同じように日々を過ごしていたつもりだったが 他者から見て大きく異なって見えた事が、それまで全く人前で会話の無かった僕とB子 特にB子が頻繁に学校内で僕に話しかける様になった事と そのわりにB子は僕以外の誰にも聞こえない様なヒソヒソ声の話し方だった事が余計に 噂好きな連中から


「アイツら付き合ってんじゃねぇの?」


…なんて話のネタにされ始めたんだな。


そんなある日の帰り道、いつもの様にA子や後年に親の跡を継いで開業医になった友と4人でヤキソバを食べた後 途中で別れて、僕とB子が二人だけで自衛隊官舎へと歩いていた時に


「なんかさ、オレとオマエが付き合ってる…って噂になってるらしいぞ」


と、何気なく話のネタの一つみたいに僕がB子に聞くと


「うん、知ってる」


と、B子は素っ気ない


「え? 知ってたの?

 知ってて、平気でこうやって二人だけで歩いちゃってるの?」


ちょっとビックリして僕が言うと


「お陰で、しつこく”付き合ってくれ”って言ってきてた人が来なくなってスッキリした」


「あ? そんな奴いたの?

 しかも、なんで来なくなっちゃったの?」


「アンタにぶっ飛ばされるとビビったんじゃないの?

 ブタネコ君、相当 学校内で暴れ者だと怖れられているからね

 ほんに助かったわい 鬱陶しいっちゃなかったもん」


なので、調子に乗った僕は


「じゃ、とりあえず 世間の期待に応えて付き合ってみっか?」


と、本当に冗談で僕はそう言った。


すると、B子は ちょっと真顔で僕を見つめ ニコッと笑うと


「じゃ、ウチのお父さんの了解をまず取ってきてね」


その言葉を聞いた瞬間、B子の背後に仁王立ちしたB子の親父さんの幻影が浮かび 僕はそれ以上何も言えなくなった。


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コメント

この話を読むと、A子=堀北真希さん。B子=新垣結衣さん。に脳内変換されてB子父は室田日出男さんをイメージしてしまいます。 銭湯で室田さんに説教されたら辛いっすw

★ sato さん

う~ん、どうでしょう…

私が言うのもなんですが、当時のA子は多部未華子と福田麻由子を足して2で割った様な

B子は若村麻由美が一番近いかなぁ… で、B子父は渡辺哲です。


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