« ピカルの定理(6月19日放送) | TOPページへ | 今日の日没(6月20日) »

2011年06月20日

● A子の話(その9)


後年に親の跡を継いで開業医になった友から A子とB子、そして我が家にシャムの子猫が一匹ずつ貰われてきたとこまで前回記したが…




種明かし的な話をすると、要はウチの親父が最もシャム猫を飼いたかった…というのが 事の真相だ。


だいぶ後になって聞いた話だが、ウチの親父も元々猫が好きで B子の父親同様、自衛隊を定年退職した暁には「猫を飼う」というのがひとつの夢で 特に、「シャム猫」が憧れの的だったのだ。


昨今、アメリカンショートヘアーとか、ロシアンブルーといった品種の猫が人気で シャム猫の姿をペットショップで見かける機会は少ないが、当時 それらの猫は世に出ておらず名前すら知られてもおらず、ペルシャ、ヒマラヤン、シャムというのが 当時、3大高級猫としてペットショップで扱われていた品種。


中でもシャム猫は その独特の毛並みや配色が洋風で、性格もわりと気が荒く 猫特有の気ままさ、我が儘さが強かったのが まさにウチの親父の好みだったんだな。


休みの日には首輪にリードを付けて 本人は甚平に下駄履き姿でシャムの子猫を散歩に連れて出かけるのが 親父の楽しみとなったのは言うまでもない。


そして、それはB子の父親も同じで 当初は「業務隊長が…」と言っていたくせに いざ、子猫をウチの親父から押しつけられる様に受け取ると


「ここの官舎は あと数年で建て替えやけん、犬猫を飼いたいモノは気にせず飼えばよかろうもん」


と、平気で言う様になり その官舎並びで階級上位の二人がそう宣言したモノだから、あっと言う間に そこここの官舎でペットが飼われる様になったわけだが、そんな中で ウチの親父とB子の父親は


「ウチの@@ちゃんの方が可愛い」


「あ? ウチの方がもっと可愛い」


と、同時に産まれた兄弟猫なのに比較して自慢し合っていたのは 今思えば笑える話だ。


が、それ以上にB子は 余程、猫を飼えるのが嬉しかったらしく いつも一緒に風呂に入り、毎日 一緒に布団で寝ていたので B子の父親は


「もう一匹、オイのぶんも貰おうかね」


と、真顔で言い出す程だった。




さて…


B子が引っ越してきて ほぼ1年近くになるが、その時点でも僕とは殆どまともに会話は無い。


もっとも、何度も記してきたように B子は相当な人見知りらしく、学校ではA子以外の女子と会話する姿を殆ど見かけた事が無いし、男子とは全くの皆無。


僕の知る限り、A子以外に気さくに話す相手は僕の妹と、自宅ではいつも彼女の側にいる彼女の愛猫ぐらいのもので それはさすがに病的とさえ思えるぐらいで そんな彼女を1年間も眺めると、最早 そういうものなのだと、それすら気にならないぐらいになっていた。


中学2年の夏休みを目前に控えたある日の事。


期末試験も終わり、あとは夏休みに突入するのを待つだけ… そんな時の事だ。


僕の所属する野球部は中体連の地区大会を勝ち進み、夏休み初旬に行われる市大会に向けての練習、後年に親の跡を継いで開業医になった友の所属するサッカー部は早々と敗退し 既に3年生は引退して、秋の新人戦に向けて1・2年生による新体制の練習が始まり これまた部活。


とはいえ、僕達の中学校の野球部は元々強豪校ではなく 際立った実力の選手がいるわけでも無いのでいたってのんびりとしたものだったが それでも日が暮れるまでの練習を終えて着替えて帰る頃には外は真っ暗。


その頃は定番だった帰りの寄り道も無く 僕と後年に親の跡を継いで開業医になった友とA子とB子は 銘々ががバラバラに帰宅していた。


だから、いくら札幌が北海道では都会だと言っても 当時は今程街路灯の整備もない薄暗い通学路を家へと歩いていたのだが…


ちょうど中学校と僕が住んでいた自衛隊官舎の中間あたりのところに ちょっと広めの公園があり、そこのベンチに薄暗い中 制服姿の女の子が一人でポツンと座っている。


見た瞬間に それがB子だと僕には判った。


だから、何も考えず 公園に入ってB子に


「何やってんの こんなところで?」


と、問いかけてみた。


B子は 僕が公園に入るところから僕に気づいていたらしく じ~っと僕を見つめたまま何も応えない。


しばしの間、黙って見つめ合う二人


なにも応えず黙ったままのB子に 僕はだんだん腹が立ってきて 僕が振り向いて自分だけ帰ろうとすると


「待って」


と、僕の背中にB子の小さい声


「ん?」って感じで 僕が振り返ると


「足が痛いの」


と、B子


「なんで?」


「歩いていたら石を変な風に踏んじゃって グキッって…」


当時の札幌は 幹線道路以外は砂利道なのが普通だったのだ。


「どっち? 右足? 左足?」


「左」


ベンチに座ったB子の前に僕はしゃがみ 彼女の左足を見るとたしかになんか変だ。


B子に左足を伸ばさせて靴と靴下を脱がせると 素人目にも明らかに判るほど足首が腫れ上がっている


「この左足首を曲げる事出来るか?」


「なんか感覚が無くて…」


瞬間的に B子が自力で歩いて帰るのは無理だと判断した僕は


「一走りしてオマエんとこのオジサンかウチの親父に車でここに迎えに来て貰えるように呼んでくるから

 オマエ(B子) もうちょっとここに座って我慢して待ってられるか?」


「うん」


僕は自分の荷物をB子に預け、自宅のある官舎まで戻り、ちょうど帰宅してステテコ一枚で一服していたB子の父親に事の次第を告げると B子の父親は血相を変えて甚平に着替え


「ほれ、とっとと助手席に乗らんかいや!」


と、僕を促し タイヤをキキッと鳴らしながらB子の待つ公園へと爆走


着くや否や B子の足をガシッと掴んで触診し


「う~ん こりゃ、下手すっと大事やね 病院に行かんばダメっちゃ」


で、軽々とB子をお姫様抱っこして車に乗せると 自分も運転席に乗ってエンジンをかけ


「キサン(貴様)、何しとうとや? 早う荷物ば運ばんね?」


僕がB子の鞄と 先ほど、B子に預けた学生鞄と部活の道具などが入ったスポーツバックを持って車に行こうとしていると


「モタモタしとるとB子の命にかかわるけぇ キサン(貴様)はそれ持って一人で帰っとけ」


そう吠えると 僕を残して車は走り去っていた。


仕方が無いので そのまま荷物を持って一人で帰宅し、B子の家にB子の鞄を届けに行くとB子の母親が


「@@病院にいるから保険証を届けてくれって ウチのオジサンが…」


何の因果か、「@@病院」というのは 後年に親の跡を継いで開業医になった友の父親が経営している病院で 僕達の住む地域ではそこそこの規模で夜間救急も受け付けていたから ある意味、必然的とも言えたのだが。


僕は預かった保険証を持って自宅に戻り、とりあえずジャージに着替えて自転車に乗って@@病院へ


ロビーに入ると B子達は診察を終えており、B子の父親は僕が届けた保険証を持って受付へ


見るとB子の左足は 膝下からつま先までギプスで固められて痛々しい。


「骨折れてんの?」


僕がB子に聞くと B子は


「骨はなんでもないけど、足首が脱臼しかけたらしくて靱帯が伸びてるんだって」


「そりゃ大変だね」


僕がそう言うと 突然、背後から後頭部をパシッと叩かれ


「大変とはなんね? 何を他人事のように言っちょるんど?」


振り向いて確認せずとも それがB子の父親の仕業とブロークン訛りで判る。


「ほれ、帰るけん B子、コイツ(私の事)におんぶされ」


その言葉に「え?」と驚く僕に


「ん? なんじゃ? B子は歩くのが不自由なんぞ?

 キサン(貴様)がおぶらんで どないすっとじゃ?


 B子、オマエもオマエもじゃ 何、たまがった(驚く)顔しとんぞ?

 気にせんでよか、コイツは父さん公認のおんぶ係ったい 自家用車だと思っておんぶされ」


「いや、あの…」


ドギマギする僕に


「なんじゃ? ほれ、B子の前でかがまんかいや 

 キサン(貴様)がポケーッと突っ立っておったら いつまで経ってもB子がおぶされんばい」


と、無理矢理 僕の首根っこを掴んで B子に背中を向ける様にしゃがまされ


「ほれ、B子 ガッとおぶさらんかい!」


僕は生まれて初めて 妹以外の女の子をおんぶした。


僕の背中の腰のちょっと上あたりを包み込んだB子の内股と 僕の肩胛骨当たりに感じた軽いふくよかさに 初めて、僕は自分が思春期なんだな…と実感した。


B子の父親は それを完全に見透かしていたようで


「ええか? 最低限、おんぶするのに必要なタッチは認めちゃるけど…

 尻を撫でたり、乳を揉んだりしたら ささらもさらにしちゃるけん、判っとぅな?」


と、それまでで一番怖い目つきで 僕に呟いた。


お駄賃

 気が向いたら…で結構です。^^;

 この記事への御駄賃がわりに下のバナ-のいずれかを クリックして頂けると嬉しいです。^^
 (全部、クリックしてくれると もの凄く嬉しいのは事実です。^^)

ブログランキング・にほんブログ村へ Blog Ranking 人気映画・TVBLOG blogram投票ボタン BlogPeople「自分のこと」部門にクリック BlogPeople「テレビ」部門にクリック BlogPeople「映画」部門にクリック

『A子の話』関連の記事

コメント

>ささらもさら
の意味がわからず調べたんですが「極道用語の基礎知識」にでてましたw
なるほど、状況を想像するとかなりビビりますね。

次回作も楽しみにしております。

★ sato さん

>ささらもさら

広島の人でもあまり使う人はいない言葉のようですね

私も今までの人生で この言葉を使った人を3人しか知りません。


【※注意!!】

この記事は『ブタネコのトラウマ』の倉庫に保管されている記事なのでコメントの投稿は出来ません。 2015年2月10日以降 このクソブログは『ブタネコのトラウマ・リニューアル版』に移転しましたので新規記事更新及び、過去記事へのコメントの受付もそちらで行っておりますので お手数ですが、そちらへの移動をお願い申し上げます。