« LADY 第7話 | TOPページへ | 第34回日本アカデミー賞 »

2011年02月19日

● バレンタイン草加煎餅2011(その4)


もう少しA子の話の続きをしよう…




A子はマフラーを編み始めた。


が、さすがに編み物が初めてだけに 最初はなかなか思う様にいかず、何度もほぐしては編み直していたが それも僅かな時間の事で、少しづつ自分なりのペースが出来ていった。


なので、最初はそんなA子を眺めながら側の椅子に座って本を読んだり 手空きの看護師達と雑談をしながら 時々、A子が悩むと


「そこは ~して」


と、アドバイスしていた私だったが A子がそれなりにペースを掴んだと感じてからは 相変わらず、あちこちと病院内を徘徊していた。


で、夜になり…


喫煙室でヤクザにネチネチとからんで遊びながらタバコを吸っていると そこへA子の隣のベッドの婆ぁがタバコを吸いに喫煙室に現れ 婆ぁは私の顔を見つけると


「あんた、A子ちゃんと 何か関係があるのかい?」


と、藪から棒に聞く。


「ん? なんだ? てめぇの想像している様な関係じゃ無ぇから気にすんな」


と、私が応えると


「あんまり羽目外してると アンタの奥さんに告げ口させてもらうからね」


こんなババァにまで その名が聞こえているウチの嫁ってどんな存在なのかとおののきつつ…


「告げ口されて困る様な関係じゃないから 安心してあの世に旅立てやババァ」


と、言い返してタバコを吸った。


が、ふと、そのババァを見ると…


婆ぁは私がA子に渡した編み棒と毛糸をポシェットの様な巾着袋から取り出し くわえタバコで何やら編み物の続きを始めたのだ。


「おいババァ?」


「なに?」


「オマエの手にしている編み物…」


「あぁ、これかい? A子ちゃんが編んでるヤツ、あの子が寝てたから続きを編んであげようと思ってね」


「…って それ、A子に頼まれたのか?」


「いや、ただの親切さ」


「…って事は テメェが勝手に それを持ってきて、勝手に続きを編もう…って事か?」


「あぁ、そうだよ 見て御覧よ、編み目がマチマチでグチャグチャじゃないか?

 もう、なんだか見てらんなくなっちゃってさ…」


「なぁ、ババァ

 もう一度、重ねて確認するが それA子に頼まれたわけじゃないんだな?」


「そうだよ、でも、ちゃんと編んであげたら喜ぶだろ?」


「フザケンナよ このババァ!

 その編み物にはいろんな”意味”があるんだよ

 テメェみてぇな梅干しババァが手を出していい代物じゃねぇんだよ

 だいたい、なにが”ただの親切さ”だ?コラ!

 そういうのを”余計なお世話”ってんだバカヤロウ 

 A子が寝てるから…って 黙って持ち出すって 泥棒か? お?」


「なにさ、そんなに怒らなくてもいいじゃないか」


「オメェみてぇなバカは ちゃんとキッチリ怒ってやらなきゃ判んねぇだろ?

 ましてや、ちょっと都合が悪くなると


 ”言ってくれなきゃ判らないじゃないか”

 …なんてぬかして自分を正当化しようとする


 ”言ってくれなきゃ判らない”

 …って開き直る前に なんでオマエがちゃんと確認しねぇんだ?


 ふざけやがってコノヤロウ!」


それまで一緒にタバコを吸っていたヤクザが慌てて


「どうしたの? そんなに怒ると心臓に良くないよ…」


と、怒った私をなだめに入るが「黙ってタバコ吸ってろボケ!」と睨みつけ


「おいババァ とっととその編み物をA子に戻して テメェはおとなしく”あの世”に行く準備でもしてろや お?」


婆ぁはくわえタバコを私にもぎ取られ その私の剣幕を怖れた様にあたふたと喫煙室から出て行った。


で、その後 しばらくして私が自分の病室に戻ってみると そこには担当看護師のCちゃんと 内科の病棟の主任看護師がその日の夜勤だったらしく来ており…


「ブタネコさん 喫煙室で@@のオバァチャンに何をやったんですか?」


と、二人揃って抗議の姿勢 なので、ババァが黙ってA子の編み物を持ち出し、手を加えようとしていたから叱ったと説明すると


「こんな恐ろしい病院にはいたくない 明日、早速、転院なり退院する」


って騒ぎになっちゃってるんですけど… と、困り顔の主任看護師


「出て行きたいって言ってんなら好都合じゃねぇか 追い出せ、あんな泥棒ババァ」


…と私が言うと 主任看護師は


「よかれと思って編んであげようとしただけらしいですから…

 その気持ちを汲んであげて 許して一言、謝っていただけませんか…」


と、私に言ったが


「冗談じゃ無い

 あれは、A子がA子の父親に感謝の想いを込めて編み上げる事に意味があんだよ

 だから、編み目がマチマチで形がグチャグチャでも そこに込められた”想い”があってこそ

 父親にとっては温かみが違うんだ


 あのババァが 仮にどんなに編み物が巧かったとしても

 見ず知らずのババァが編んだものは ただのマフラーでしか無いんだよ


 何が”良かれと思って”だ? 冗談じゃねぇぞ、バカヤロウ

 退院だなんだって騒いでんだったら いっそ、棺桶に放り込んだろか? その方が静かで簡単だろ?」


そう応えた私に主任看護師は まだ不満顔だったが、担当看護師のCちゃんは


「主任さん ブタネコさん、こんな風になっちゃったら もう何を言ってもダメですよ」


と、諭し 主任を促して病室を出て行った。




翌日の午前、早朝に自宅に戻って入浴し病院に戻りがてら ロビーを通りかかると そこにマフラーを編んでいるA子の姿があった。


「おう、編み物は順調か?」


「うん、明日にはなんとか…って思ってるんだけど…」


「そっか、今度 父さん、いつ見舞いに来るんだ?」


「13日の日曜日」


「じゃぁ、その日までに仕上げないとな」


「うん

 でも…、なんかところどころ凸凹の編み目なんだけど…」


「そんなの、最初からきちんと編めるヤツなんていないよ

 むしろ、オマエが最初に編んだ…ってところに意味も価値もあるんだから気にするな」


「そうなの?」


「そ」




自分の病室に戻ると それをどこかで監視していたかのスピードとタイミングで担当看護師のCちゃんが現れ


「旦那ぁ ずいぶん、A子ちゃんに御執心ですね?」


と、下卑た笑み


「あ? ほっとけバカヤロウ」


「あまりお熱をお上げになっているようですと ママ(ウチの嫁)にご報告を…」


「あのなぁ…^^;

 ただ、出来れば A子の事は しばらく嫁には言わないで欲しいんだけどなぁ…」


「あら? じゃ、やっぱり?」


「違うんだよ 俺や二代目開業医があの子に感じた事は ウチの嫁には違った意味で問題なの」


「どういう事ですか?」


「ほら、ウチの嫁や俺たちと中学・高校で同級で白血病で死んじゃった”亡き友”の話って 知ってるだろ?」


「あぁ、ママの親友…」


「そう、その子に雰囲気が似てるんだよ

 だから、嫁にA子は会わせたくないんだよ」


「あぁ、そういう事ですか

 だから、院長先生も いつもとちょっと違うんだ」


「ん? あいつ(二代目開業医)も変なのか?」


「夕べ、ブタネコさんが怒ったオバァチャンの件

 今朝早くにオバァチャンが院長先生に 退院させろって直訴して…

 その時は

 ”お婆ちゃん、家に帰っても鬼嫁に虐められるんだろ?”…って優しかったのに

 その後、夕べの経緯を(内科病棟の)主任が院長先生に報告したら

 院長先生が

 ”婆さんの入院は体調的にはもう不要だったんだけど、家庭内での嫁姑の折り合いが悪くて

  婆さんが退院して帰宅したくなかっただけの事なんだから 退院したいんならさせちゃえ”…って

 だから、今日の午後には退院する事になったんですよ」


「ふぅん…」


「で、その後に

 ”そりゃぁブタネコが怒るのも無理無いな” …って

 普段だったら、”またブタネコの野郎やらかしやがったな”って苦笑いなのに

 変だなぁ…って思ったんですよ。」


「ま、オッサン達には オッサン達なりに色々と人生にはあったんだよ」


と、私が言うと


「そんなのは 私にはどうでもいいんですけどね

 でも、夕べ(内科の)主任さんにブタネコさんが言ってた

 ”娘が父親にに感謝の想いを込めて編み上げる事に意味があんだよ

  だから、編み目がマチマチで形がグチャグチャでも そこに込められた”想い”があってこそ

 父親にとっては温かみが違うんだ”

 …って 横で聞いていて、なんか、ちょっとだけ感動しました」


「そうか? 感動したか、まぁ、そりゃ俺の内面から滲み出る魅力というか…」


そんな私の言葉を最後まで聞かず


「Nパパ(運送屋のN専務 Cちゃんの養父)の元で鬼とか悪魔とか言われたブタネコさんにも

 優しい父親の一面があったんだなぁ…って あまりの驚きにオシッコをちびりそうになりましたよ」


そう言い捨てて病室を出て行った。


お駄賃

 気が向いたら…で結構です。^^;

 この記事への御駄賃がわりに下のバナ-のいずれかを クリックして頂けると嬉しいです。^^
 (全部、クリックしてくれると もの凄く嬉しいのは事実です。^^)

ブログランキング・にほんブログ村へ Blog Ranking 人気映画・TVBLOG blogram投票ボタン BlogPeople「自分のこと」部門にクリック BlogPeople「テレビ」部門にクリック BlogPeople「映画」部門にクリック

『バレンタイン煎餅』関連の記事

【※注意!!】

この記事は『ブタネコのトラウマ』の倉庫に保管されている記事なのでコメントの投稿は出来ません。 2015年2月10日以降 このクソブログは『ブタネコのトラウマ・リニューアル版』に移転しましたので新規記事更新及び、過去記事へのコメントの受付もそちらで行っておりますので お手数ですが、そちらへの移動をお願い申し上げます。