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2011年02月15日

● バレンタイン草加煎餅2011(その2)


一週間程前の事…




いつもの様に病院内を徘徊して手当たり次第に出会った誰かに絡んだり、喫煙室に行って そこに屯しているヤクザ者にカラんだりしていた私だったわけだが…


病棟の廊下をブラブラと歩いていた時に ジ~ッと私を見つめている女の子(以下、A子と呼ぶ)の視線に気づいた。


A子は たまたま昨年の秋の天気の良い日に 私と院長である二代目開業医が屋上で日なたぼっこしながらタバコを吸っていた時に 近くのベンチでその子は一心不乱に読書していたので


「おい、君はどんな本を読んでるの?」


と、話しかけて聞いたところ


「東野圭吾の”赤い指”」


と、応えたので


「面白いか?」


と、聞くと


「”新参者”の続編って聞いて読んでるんですけど… なんか、いまいち」


「推理小説が好きなのか?」


「うん」


「横溝正史の読んだ事あるか?」


「え? 無いです。 誰ですか? それ」


「なんだ? 横溝正史を知らずに推理小説が好きだって言いやがったのか?」


「え~ だって、聞いた事無いし…」


「オマエ、病室どこだ? 名前は?

 推理小説と聞いちゃ、この五月蠅い俺様が とびきり面白い横溝正史をプレゼントしてやるから ありがたく読め!」


で、その日のうちに 私の使いパシリである某レンタル店のチェーンの店長が 私に命じられて買い集めてきたブタネコ推薦金田一シリーズをA子に届け… 数日後、私の病室にやってきたA子が


「言われたとおり、まず”本陣殺人事件”を読んだんですけど 今まで私が読んだ推理小説の中で一番面白かったです」


と、礼を言いに来て以来 時々、食堂やロビーで会うとお喋りを楽しむ仲となった。


A子は 昨年の夏に肝臓を病んで入院している子で 本当ならこの春に高校へと進学するはずだったのだが、長期間学校を休んでいる事や退院出来るかすら定かでは無いとあって 1年留年してゆっくり治療すべきか迷ってる…なんて話を聞いたばかり


「おぅ? 元気か?

 あ、元気だったら こんなクソ病院なんかにゃいねぇか カッカッカ」


と、私が声をかけると


「あのぅ… 教えて欲しい事があるんですけど…」


と、深刻そうな顔。


なので、娯楽室をかねたロビーに行き


「どんな話だ? オジサンの愛人になりたい…ってお願いだけは聞けないぞ

 ウチの奥さん、いろんな意味でこの辺じゃ世界最強だからな そんな事したら

 俺は人工衛星の”はやぶさ”みたいに 大気圏までブッ飛ばされて火だるまだかんな カッカッカ」


すると、A子は私の話なんかスルーで


「ブタネコさん バレンタインにチョコを貰うと男性の人って やっぱり嬉しいんですか?」


と、聞く。


「あぁ?! アレか? もうすぐバレンタインだから…ってやつか?

 俺、チョコ嫌いだから 俺へ…ってんなら気ぃ使わなくていいぞ」


「あのぅ、ブタネコさんにあげるんじゃなくて…」


「あら、俺じゃないの? だったら、誰にやんの?」


「え、それはちょっと…」


「まぁ、中学生ぐらいの男の子だと ”今年はxx個貰った”なんて数を自慢するアホも多いわな」


「ブタネコさんも そうだったんですか? 中学背の頃って」


「俺? 俺は… ほら、ウチの奥さんと中学生の時から一緒だったから、売約済みにくれる女子なんていないし…

 ウチの奥さんに張り合って俺に…なんて強者なんかいるわけないしな…」


「じゃぁ、奥さんからの1個だけ?」


「いや、ウチの奥さん 俺がチョコ嫌いなの知ってるからくれた事無いよ」


「え~ そうなんですか?」


「そ、だから 社会人になって以降”義理チョコ”は貰ったことあるけど”本命チョコ”なんてのは貰った事が無い。」


「あ、聞かない方が良かったですか?」


「いや、基本的に俺は バレンタインなんてお菓子屋が商売半分に広めた風習に興味なんか無いから

 ウチの奥さんには毎年、草加煎餅を縁起物として貰ってるけどね」


「へぇ…」


「で? オマエは誰かにチョコを渡したいのか?」


「うん、でも、別に好きな人…ってわけじゃないんだけどぉ」


「お? いいねぇ、聞かせろよ 誰? 誰が相手?」


「お父さん」


聞いた私が馬鹿だった。


俺、こういうの弱いんだよねぇ…


我が娘二人に対して馬鹿親父を自他共に認めるだけに 娘が父を想う…なんてシチュエーションは聞いただけで泣きそうになる。


「変ですか? 娘が父に…って」


「いや、全然、変じゃない。

 むしろ、俺は娘二人を持つ父親として全面的に支持するぞ」


「ホントに?」


A子はひとりっ子で 母親はA子が小学生の時に癌で亡くなり、父親は保険会社の特殊な部署に勤務していて地方への出張が多く 滅多に見舞いにも来れず、他に親戚も居ないそうで だから、A子はいつも一人静かに勉強するか本を読んで過ごしているのだ。


元々、そういう性格なのかは判らないが、A子は 今でこそ私相手に 時には笑顔で話をするが、元々は とても気難しい子で 医者や看護師とは最低限の会話はするが、雑談めいた話は全くせず であるがゆえに他の患者とも会話する事が殆ど無く 私とロビーや食堂で微笑みながら会話している様子は 現在のこのクソ病院の七不思議の一つとすら言われており、私の嫁がこの界隈で世界最強である事を仮に誰も知らなければ 間違いなくロリコン親父の金目当ての援交と言われたに違い無い。


「ただなぁ…

 あくまでも余計なお世話なんだけどよ

 たとえそれがひとかけらのチョコであっても 父親は娘から貰ったら

 それだけで風呂に入れる程の涙を感動して垂れ流す。

 けどよぉ、もし オマエにもう少しだけその気があるならチョコなんかじゃなくて

 別のモノにする事を俺は強く勧めたいね。」


「どういう事?」


「手編みのマフラー」


「え? 私、編み物なんか出来ませんよ」


「余程の不器用じゃなければ マフラーなんて編み物の初歩だから誰でも編める

 編み慣れたやつなら半日、初めてでも3・4日あれば編める。」


「教えてくれそうな人、誰もいませんよ」


「バカヤロウ、俺が教えてやる」


「え~っ、ブタネコさんが編み物?」


「オマエに薦めた横溝正史の本の中に”女王蜂”ってのがあったろ?

 俺、あの本を中学生の時に読んで 横溝正史先生御本人がエッセイで御自身が編み物をされたと知って

 俺も覚えなければ…って 覚えたんだよ」


「信じられない」


「バレンタインまで まだ1週間あるんだから、その気になれば十分に編める

 騙されたと思って編んでみろ? 編み方を教えてやっから」


と言うわけで、その直後 病院を抜け出した私は 最寄りの手芸店に行き、毛糸と編み棒をA子のために買ってきたのであった。


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コメント

ブタネコさんへ
ご無沙汰しています、今日は確定申告へ行ったついでに映画’太平洋の奇跡’を見てきました。でも小説のほうはちょうど今’序過去から来た男’を読んだかりですので、これを読み終えてからコメントします。それよりもこちらの記事のほうがとても期待が持てて、だいぶ以前シリーズで書かれていた鉄道の小説を楽しみにしていた頃を思い出し次回の展開が楽しみでなりません。

病院の屋上で読書している少女。


もう完璧にA子ちゃんは忽那汐里で妄想してますので^^;

A子さんがスルーしたセリフに大笑いしつつ、続きをシュネーーールッ!という感じです(笑)。
(最近「Uボート」のサントラをヘビロテしているもので)
いえ、体調が良い時で構いませんが、私もすごく続きを楽しみにしております。

★ タンク さん

そうですか、太平洋の奇跡を御覧になりましたか… 気になってるんですよ私

原作を読まれて あらためて映画がどう感じたか伺ってみたいです


★ 虎馬 さん

う~ん それはどうかな…


★ ラヴァ さん

毎度御贔屓に^^


【※注意!!】

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