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2011年01月07日

● キャベツのスープ


先日放送された「ケンミンショー」という番組の中で…




ケンミンショー

ケンミンショー

「札幌大玉」なる大きなキャベツが紹介されていたのを見ていた。


で、私にとってキャベツとはこういうものだと思っていた大きさが 実は「巨大」なのだと初めて知った。


と、同時に キャベツにまつわる若い頃の話を思い出したので 忘れる前に記しておこうと思う。




番組では このキャベツを用いて「ニシン漬け」を作るのが定番と紹介していたが、私はニシンという魚を 出来るだけ食べない様にしている関係で 我が家では(ウチの嫁は)ニシン漬けを作らない。


基本的にニシンは嫌いではないし、旬の時期なら美味しい魚である事もよく知っているのだが 基本的に私は一般よりも扁桃腺が大きい体質らしく、魚の小骨がよくひっかかる

ゆえに、小骨の多い魚の代表格であるニシンは食べたいけど その後の不快感を思うと、「んなモノ この世に無くたっていいものリスト」の上位にランクインしているから食べない


が、そんな事はどうでもいい。


高校生の頃、喫茶「職安」でバイトをしていた話を折に触れて記事にしてきたが 実はその喫茶「職安」で体験した様々なバイトの中に限られた期間に とてつもない量の「キャベツと大根の配達」というのがあった。


そう、キャベツとニシンが旬である晩秋にニシン漬けを作る為に札幌では沢山の人がキャベツを買うのだが、この大玉キャベツはひと玉10数キロの重さがある。


それを一般家庭でニシン漬けを作る人は だいたい平均して4~5玉使用する。


また、タクアンを漬けるのも定番で その場合は、数十本の大根を使用する


で、私が高校生だった頃の札幌は札幌オリンピックが終了した直後の 人口が急激に増加していた時期で それまで果樹園とか雑木林とかタマネギ畑だった近郊の土地が開発され4階建て以上の建物が建て並ぶ巨大な団地が造られたり、電電公社、北電、郵政、自衛隊などの官舎が4階建てのアパートに改築されたり、一般のマンションも軒並み建ち始めた頃


今では札幌市内で個人経営の青果・八百屋の店というのは激減してしまったキッカケのひとつも住宅の郊外の発展に伴う大型スーパーの進出である。


で、当時「屯田兵の御隠居」から建物を借りて札幌市内で個人経営の八百屋を営んでいたE(以下、八百屋のEと呼ぶ)がヤクザが経営する競馬のノミ屋で多額の借金を作り、あろうことか家賃の支払いまで滞らせた事から 「取り立てコンサルタントのA」という人物が派遣され…


  参考記事:『取り立てコンサルタントのA


その「取り立てコンサルタントのA」が短期間に収益を上げられる案として企画したのが


大きなスーパーの青果売り場と契約し、漬け物の材料となる大量の大根と重量のあるキャベツを団地や官舎住まいの人に配達する… という商売。


それは、まず団地や官舎やマンションなどにチラシを配るところから始まる。


 漬物用大根とキャベツ 数量・金額に関わらず御自宅まで無料で配達します。

 アパート、団地、マンションなど3階以上にお住まいの客様でも無料で配達します。

 漬物用のプラスチック樽、蓋、ぬか、麹も販売・配達しますのでお気軽に


そして、軽トラックにキャベツと大根と樽やぬかなどを満載し 団地の人通りの多そうなところに停め 八百屋のEがトラックの横に新聞紙を敷いて正座し、通りがかった主婦に


「奥さん、よろしければ ウチのキャベツと大根を買って下さい」


と、ひたすら土下座させる。


そして、興味を惹かれて寄ってきた主婦達に


「実は私、博打で借金がありまして数日中に返済しなければなりません

 つきましては、在庫の大根とキャベツを捨て値でお売りしますので どうか、

 助けると思って買ってやって頂けませんか?

 もちろん、商品は重いですから 御自宅まで無料でお届けします」


と、悲壮感たっぷりに「泣きバイ(とある業界用語 泣きすがって商品を売るテクニック)」させたのだ。


で、我々バイト学生は近くに停めた別のワゴン車で待機しつつ、近所へのビラまき、そして売れた商品の配達が役目


これがね、短期間ではあったが 信じられないぐらい売れて稼げたんだな。


と言うのは、ワゴンや軽トラの運転手は八百屋のEが借金しているヤクザの若い衆だったから、八百屋のEに時々


「てめぇ、サボったら組長に報告するからな」


と、脅しを入れていた事もあって悲壮感が倍増し「お願いです!!」「助けて下さい!!」とEはとにかく売りまくった。


それと、商品のキャベツや大根は喫茶「職安」の常連さん達のコネクションで近郊の農家から直接、仕入れてきた新鮮な品で しかも、スーパーよりもはるかに安かった事。


そして、なによりも数十キロの荷物を無料で4階や5階の部屋まで運んだ事。


さらに、30年以上経った今だからネタばらしすると おぼろげな記憶なのだが、たしかその頃 大玉のキャベツはスーパーで1玉1000円ぐらいで売られていたのだが、八百屋のEは600円ぐらいの値段で売ったのだ。


そのカラクリは 近郊の農家の畑に直接バイト学生が軽トラックで乗り付けて、味は変わらないのだが 例えば「虫食い」とか、陽当たりの関係で色味が悪い…という理由で 組合などが「ハネ物」として買い上げてくれないものを農家の選別でバイト学生が刈り取り積み込む


つまり、農家にしてみれば労力がかからず売り物にはならない「ハネ物」を買い上げるのだから


「まとめて5000円でいいよ」


ところが、軽トラにはキャベツだけで100玉以上積まれていたので 1玉50円にもならない原価


もちろん、泥付きの虫食いである事は 買う主婦達にも一目瞭然なんだけど、当時の札幌の主婦達は 逆に、「虫食ってるのは美味い証拠」なんて見た目は気にせず とにかく値段と自分で持ち帰らなくていいという手軽さの方が受けたのだ。


で、団地の一角で販売している軽トラの在庫が売れて乏しくなると 別の満載した軽トラと入れ替え バイト学生とワゴンは畑と団地をピストンして とにかく売りまくったのだ。


わずか1週間でヤクザは貸し金の回収はもちろん 貸した金の倍以上の儲けを得たし、農家はハネ物で小遣いを稼ぎ、我々バイト学生は一人あたり10万以上のバイト代と 期間中、タバコと食べ物の無料支給でホクホクと 皆が満足する結果を得た事は言うまでも無い。


さて、借金を清算し、まともに戻れたはずの八百屋のEだったが…


「取り立てコンサルタントのA」の発案でキャベツで瞬間的にビックリする儲けを味わったのが災いし まともな商売が出来なくなってしまったんだな。


翌年の初夏、八百屋のEは何処かから4トントラックを借り 夕張や富良野を巡ってメロンのハネ物を捨て値で買い付けし それを関東圏の団地に持ち込んで販売しようと試みたのだが、ものの見事に大失敗をした。


というのは、メロンの「ハネ物」って 玉の表面の編み目が無い…なら極上だが、大抵の場合、ひび割れなど文字通りの「傷物」で 実は、その傷が原因で痛みやすいのだ。


しかも、当時の交通事情では 北海道で収穫してそれを積載したトラックが関東圏に到着するのは早くても翌々日、ところが八百屋のEが荷物を積んだトラックは最初は小樽 さらには函館で時化の為にフェリーは欠航してしまい、まる一日足止め その上、その年は猛暑で トラックが関東圏に着いた時には半分近くがトラックの箱ボディの中で蒸されてメロンは腐り売り物にはならなかったのだ。


その際に八百屋のEが どれだけの負債を抱えたのか正確な額は知らないが、その額が半端な額じゃ無かった事は 腐ったメロンを満載にしたトラックを八王子のはずれに乗り捨てたまま八百屋のEが失踪した事で想像がつく。




そんな八百屋のEと私が再会したのは 八王子トラック乗り捨て失踪事件から10年程経った頃。


いろんなところを放浪し、いろんな事をして食いつなぎながらも 結局は故郷が恋しかったらしく八百屋のEはいつしか札幌に戻ってきて知人を頼ったところを八王子トラック乗り捨て失踪事件で金を踏み倒された人達に捕獲されたのだ。


幸いにして喫茶「職安」の関係者達の中に八王子トラック乗り捨て失踪事件の被害者はいなかったので 常連さん達は半分呆れながらもどこか八百屋のEに対して同情的で 最終的に運送屋のNさんが八百屋のEが借金を踏み倒した人達に話をつけて、「屯田兵のご隠居」の遺産の管理物件のひとつである駐車場の係員として雇った。


当時の私はサラリーマンSEから足を洗い Nさんの秘書兼運転手兼使い走りをしており、Nさんが何かの買い物をしに行く間 その駐車場に停めた車の中で休憩を兼ねて昼飯を食べようとしていた。


というのも、その時 直前にとあるバカタレが衆議院選挙に立候補する事を決め、その決起集会と所信表明を兼ねて とあるホテルで開かれた立食パーティーにNさんが招かれた際に 立候補者の秘書と名乗る人物がパーティーに出された料理を折り詰めにして私に


「これも何かのご縁と言う事で 一服の時のつまみにでもしてください」


と、コソッとくれたのを持っていたからだ。


で、それを車の運転席で食べようとしていたら 何か言いしれぬ視線を感じ、その方向を見たら 駐車場の係員になっていた八百屋のEが、車の直ぐ横で 窓越しにジッと私を見つめていた。


「あれ? 八百屋のEさんじゃない 久しぶり」


私が車の窓を下げて声をかけると 僅か一週間とはいえ、キャベツ売りのバイトだった私をEは思い出し


「あぁ、あの時のバイト君かぁ 今、Nさんの運転手してるのかい?」


と、力のない声で応え


「何それ ローストビーフにエビチリに ずいぶん豪華な弁当だねぇ…」


八百屋のEは私よりも実は私が手に持った折り詰めを見つめていたのだ。


「あ、よければ食べる? これ貰いモンだし、今蓋を開けたばかりで口をつけてはいないから…」


私の言葉を全部聞かず


「え? いいのか? 悪いねぇ…」


間髪入れず、車の窓越しに手を差し込んで私から折り詰めをひったくるように受け取ると もの凄い勢いで、しかもガツガツと音を立てて食べ始め


「美味いなぁ… ローストビーフなんて何年ぶりかなぁ…」


時折、そんな事をつぶやきながら あっと言う間にたいらげて満足そうに笑った。


「御馳走様、美味かったぁ… 本当に美味かったよ」


それから間もなくNさんが買い物から戻ってきたので 私は八百屋のEとほとんど会話をする事無くその場から離れたのだが、それが今生の別れとなった。


と言うのは、この時から数ヶ月後に八百屋のEは就寝中に心臓発作を起こしたらしく 眠ったまま亡くなり 無断欠勤を訝しんだ管理会社の社員が住居を訪ねたところ、死後数日経過した状態で発見されたからだ。


で、私はキャベツの売りのバイト期間と この折り詰めをあげた時しか八百屋のEとは接点が無い。


ただね、ケンミンショーという番組で大玉キャベツを見ていて「そう言えば」と 唯一、八百屋のEから教わった食べ物を思い出したんだな。


それは「キャベツのスープ」である。


先に断っておくが、八百屋のEも私も料理人では無い。


ゆえに、以下に記す料理法が もしかしたら間違っているとか、もっと良い方法がある…といった御意見があるやもしれないが そんな事はどうでもいい。


① まず、鍋に2/5ぐらいの深さまで水を張り 鍋底と同じ面積ぐらいの昆布を適当な大きさに千切って放り込み数時間放置する。


② 次に、その鍋を火にかけ煮立ったところで最低ふた掴み以上の量の鰹節を放り込み、再び煮立ってから適当な時間に鰹節と昆布を鍋から取り出す。(好みによっては 昆布はそのまま入れておいても可)


③ ②の作業が終わった鍋をしばらく放置してさましたところで ザックリと大きめに切ったキャベツを鍋からあふれるぐらいの量を鍋に放り込み、蓋をして煮る。

この時、重要な事は キャベツの芯は中心部分は切り取っても良いが、出来るだけ茎の固いところは取らずにそのまま入れる事


④ 唐揚げ用の鶏肉を そのままゴマ油で表面だけ炒める(中まで火を通さない)


⑤ ④で炒めた鶏肉を③の鍋に放り込み十分に煮込む。


⑥ 最後に調味料で味付けをして仕上げるのだが、調味料は塩だけ 他の味醂とか酒は入れちゃダメ ひとつだけ例外としては「ゆず胡椒」を若干入れるのはアリ


以上が八百屋のEが 30年前にキャベツを売りながら、買いに来た主婦達に薦めていた料理法で バリエーションとして


④ 唐揚げ用の鶏肉ではなく、フランクフルトソーセージを大量に放り込む


というバージョンと③と④の間に


3.5 ちょっと多めのオリーブオイルを敷いたフライパンでみじん切りにしたニンニク2斤を炒め、そこにサイコロ上にトマトを2玉刻んだものを放り込んでさらに炒め 或る程度トロッとしたところを そのまま③の鍋に放り込む


というのを ウチの嫁が後に付加して 現在、我が家の定番スープのひとつとなっている。


で、このスープ 普通のキャベツでも十分にいけるのだが、大玉キャベツだと格別に美味い


特に、煮込んだキャベツの茎は私の好物のひとつなんだな。


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