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2010年11月27日

● ふと、思い出した事


以前の記事で 喫茶「職安」の常連頭である運送屋のN専務が関わった整理案件の中で債務者生活に疲れた両親から捨てられたも同然の子供を合計7人育て上げた話を記した。




今回は それにまつわる話をまた少し記してみたくなったので記しておこうと思う。


参考記事

 ・「将来の夢・過去の現実(その5)

 ・「雑感(5月25日)




基本的に引き取った7人の子供達を公平に しかも、Nさんなりに普通の親以上の愛情を注いでいた事は その課程の一部始終の目撃者である我々、元バイト学生達が胸を張って証言する。


だが、


「俺がキッチリ、大人になるまで育ててやるんだ」


という気概だけは相当なものだっただけに、時には気ばかりが募って空回りしているのが傍目にもよく判る始末だった。


中でも、子供達は学生だったから 学校行事や進路相談など「保護者」が登場しなければならない場面が それぞれの子供達には生じるのだが、基本的にNさんは 債権整理や不動産管理のエキスパートとしてバブルの前から破綻後のしばらくまで活躍した人物だけに 知らない人が見たら、どこから見ても「ヤクザ」


しかも、年齢的に子供達の父親よりも祖父の年齢に近かったから 高校生の子供の父兄面談などは良いとしても 小学生の参観日に登場するには他の子の親達や担任教師を無言で凍り付かせてしまうオーラを拭い去る事が出来ず


「オマエのジィチャン ヤクザだろ」


等と、同級生から仲間はずれにされてしまう子が出る始末。


で、そんな子が


「今日ね、学校でね…」


と、泣きながら そんな虐められた話をしようものなら


「どのクソガキだ? 家ごとブッつぶしてやるから泣くんじゃねぇ

 おいブタネコぉ ”気の弱い弁護士”連れて そのクソガキの親を泣かしてこい!!」


と、(ヤクザ以上に)大激怒したものだ。


でも、Nさんは見た目はヤクザでも 心はとても優しい気配りの人だったから、


「このままじゃイケネェ… 何か良い方法は無いものか…」


と、模索もしていた。


で、その結果が


「おい、オマエ(私)の奥さん 代わりに授業参観に行ってくれないかなぁ」


と、なり 結局、7人の子供達から今でも「ママ」と呼ばれる存在となる。


子供達は今ではそれぞれが立派に社会人となり 中には結婚して子供も授かり、明るい家庭を築いてるいる者さえもいる。


さて…


借金に苦しみ取り立てから逃れるのに夢中となり いつしか子供の事に気が回らなくなり、中には八つ当たりの様なDVにはしる者もいれば 完全に育児放棄してしまった者が少なくない。


そういった現場に遭遇する度に


「いくら自分が辛いからって子供にまで…」


と、そんな親達にNさんは激怒し 子供の前でネチネチと取り立てようとする債権者に対しては


「子供泣かしたって回収なんか出来ないだろ? お?」


と、Nさんは間に入っていた。


そして、見るに見かねた子供を


「オマエ、こんな親捨てちゃえ おじさんがオマエの面倒を見てやるから」


…なんて言いだし その結果が合わせて7人の養育


「俺は両親が早死にして 子供の頃苦労したからよ 見てられないんだよなぁ」


何かの現場の帰り道に Nさんがそう言ってたのが印象的だった。


Nさんは子供達を正式に養子縁組して籍に入れたわけでは無い。


Nさんの理屈に基づいて言えば


「例えば、ヤクザってのはよ 組長の事を自分の父親だと思うから”親分”であり、オヤジと呼び

 自分より先に子分となった者を”アニキ”って呼ぶ


 子供達もさ 俺の事を親父同様と認めれば”オヤジ”って呼べば良いし

 認めないなら”Nさん”でも”オジサン”でも なんでも良いんだ


 ま、逆に言えば 子供達から俺が”オヤジ”って呼ばれる様になれれば

 俺もそれだけたいした奴だって証明だわな」


…って事だった。


そんなNさんが余命幾ばくも残っていないと診断され 二代目開業医の今、私が使用している病室で過ごしていた時、7人の子供達は入れ替わりNさんを見舞い Nさんが亡くなった時には実の親が亡くなった子供達ですら見せないほど泣いていた。


そんなNさんが亡くなる少し前の事。


Nさん本人も そして周囲の人達(もちろん7人の子供達)も Nさんの寿命がもうあと少しと判っていたわけで そんな時、7人の子供達の一人だったCちゃん(そう、現在二代目開業医の病院で私の担当看護師であるCちゃん)が


「パパ、なんかして欲しい事とか、後悔している事とか無いの?」


と、Nさんに聞いたそうだ。


すると、Nさんは


「オマエ(Cちゃん)に”パパ”って言われると なんか他人から”愛人とパパ”みたいに思われそうで嫌だ」


と、言いつつ


「まぁ、今だから強いて言えば 娘とお風呂に入りたかったなぁ 一緒に」


と、応えたそうだ。


その話を私がNさんから聞いたのは数日後の事で Nさんは


「そしたらよ、C の奴

 ”なんだ、そんな事ならとっとと言えばいいじゃん 良いよ、今から入ろう”

 …って言いやがってよ」


と、とても嬉しそうに話し


「入ったんですか? 一緒に?」


と、私が聞くと


「てめぇ、ブッ殺すぞコノヤロウ」


と、全盛期の頃のNさんを彷彿とさせる気迫のこもった怒鳴り方をした後


「ヘヘヘ C の奴、俺がオヤジなんだってよ そう言ってくれたぜ よ?」


と、笑いながら泣いていた。


なんでだろう?


最近、何故か私はこの時のNさんを時々思い出す。


なので、昨日の昼間 点滴のパックを交換に来たCちゃんに


「なぁ、俺と一緒に風呂に入らない?」


…って 試しに聞いてみた。


するとCちゃんは 一瞬、キョトンとした表情で私を見つめ


「てめぇ、ブッ殺すぞコノヤロウ」


と、言われた。


口調も声質も全く違うけど その時、CちゃんがNさんに見えた


と、同時に


「あぁ、俺は まだまだだなぁ…」


そう思った。




で、今日の昼間 いつもの様に入れ立てのコーヒーをポットにいれて自宅から届けにきたウチの嫁が


「あなた、昨日 Cちゃんにトンでもない事を言ったんだって?」


いつもながらに美しく凛々しいが能面の様な表情で


「お風呂に入りたいの? ワタシ以外の誰か?と?」


(あっ!、Cちゃんまたチクリやがった)と気づき


「それは、挨拶みたいなもんで 本気でどうこうってわけじゃなくて…」


そんな私の言い訳など最後まで聞かずに嫁は


「そんな事やってると 寿命が尽きるよりも前に三途の川をバタフライで泳ぐ羽目になるわよ」


と、アイドルなんか問題にならないほどの極上の笑顔で言った。


まだ雪は積もっていないのに 肌寒さで震えそうな私だった。


お駄賃

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コメント

だからこういったお話を読むとなんて書いてよいかわからなく感動して涙してしまうのです・・・

★ S・H さん

はっはっは


遅レスですみません。

私もS・Hさんと同じく、なんというか
目頭が熱くなってしまうのです。

パフュームダンスはスルーしてしまいましたが、
Nさん、Cちゃん、奥さん揃い踏みの今回は・・・。
凄い人たちだなぁ、としか言いようがありません。

S・Hさんの だから・・、の件は同感です^^。

★ おじさん さん

はっはっは

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