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2010年09月08日

● N専務の遺訓(5)


時が経つのは早いもので…




数年前より、Nさんから託されたリストの「屯田兵の御隠居」から順に33回忌を迎えはじめた。


で、私はNさんからの申し継ぎをちゃんと実行しつつ今日に至っているわけだが…


概ね、リストの1・2ヶ月前からメモに記載された住所などを調べ、葬儀にかかわったお寺などを訪ねて法要の手配をしたりなどしていたわけだが、自殺した農家のお婆さんの順番にいたり、お婆さんやお婆さんの息子や孫が葬られたお墓をたよりに お経をあげてもらったお寺を見つけ そこの住職を訪ねたところ、当時の住職は既に他界しており、その息子で代替わりした現在の住職と 先代の住職の奥さんが応対してくれて 二人に私がかいつまんで事情を話して33回忌のお経をあげて欲しい…と頼んだところ 住職と一緒に私の話を聞いていた先代の住職の奥さんが


「あらぁ… それって、○×の高速道路のとこの話でしょ?」


と、なにやら意味ありげに口を挟み


「もう30年になるのねぇ… 早いわねぇ…」


と、遠くを見つめている。


で、やがて、話し始めた先代住職の奥さんの話を要約すると…


農家のお婆さんが自殺する数年前に道央自動車道という高速道路の北広島-千歳間が開通していたのだが、その高速道路が札幌まで延長される事はその時点で既に予定されており、部分的に用地買収や工事が始まっていた。


で、実は既に農家のお婆さんが所有する畑のけっこうな部分がその予定地に入っていたのだが、その時点ではまだ予算が正式に取れていない段階だったので まだ極秘扱いとして公表されずにいたから、農家のお婆さんはその事実を知らぬまま、そして権利関係もちゃんとせぬまま首を吊ってしまい、身寄りが全く無かったので土地の所有権などが宙に浮いたままになっていたのだ。


しかしながら、道路建設着工が本決まりとなり、道路用地の買収が正式に公表されて動き出した時に お婆さんの畑の権利関係についてが問題となった。


というのは、「屯田兵の御隠居」が農家のお婆さんが農協から請求されていた組合勘定の一部を立て替え払いしていたからで、御隠居の資産管理をする会社を任されていたO弁護士やNさんに連絡があり、我々バイト学生には全く知らぬ所で話し合いが行われたのだ。


で、その話し合いの最中に、農協の幹部達が何年も前から既に知っており 息子や孫が交通事故で亡くなった時に 掌を返した様に組合勘定の取り立てに躍起となったのは 組合勘定の回収…という大義名分でその建設予定にされている部分の農地を老婆から取り上げて利鞘を稼ごうとしていた事が発覚しNさんが大暴れしたのだそうな


で、その後 話し合いはそれなりにつき、予定通り高速道路は完成し現在に至るわけだが…


御隠居の指示だったのか否かは今となっては判らないが、お婆さんの3回忌の時に その寺を訪れ、先代の住職にお経をあげてくれるように依頼しつつ Nさんは農家のお婆さんが生前に嫌がらせをされた近隣の農家や農協の担当者達に対して有形無形の嫌がらせを「仕返し」と称して実施したそうだ


で、その「仕返し」のひとつが 残ったお婆さんの畑や農家などに 何処から持ち込んだのかは判らないが 大量の樹木を植えて雑木林にしてしまった事。


先に言い訳しておくと 高校生の頃、私達バイト学生は車の免許を持っておらず、せいぜいが市の中心部と 自宅や通った高校などを中心に自転車で行ける場所ぐらいにしか土地勘が無かった。


その頃はNさんの会社の運転手がドライバーとして駆り出されており、しかも夜中の作業だった事もあって周囲の風景などを記憶にとどめる…って事も殆ど無かった。


でね、いざそのお婆さんの 例えば、あの時の農家はどこにあったのか…なんて事を調べ始めてみると 札幌市内以上に、近郊の町村がこの30年の間に大きく様変わりしている事に気づかされ、その変貌にあらため驚いたのだが、まさか、日頃走り慣れた高速道路の それも近頃は「写真撮りに行くぞ」って千歳に行くのに利用する高速道路の 自分では見慣れたと思っていた景色の中に、あの農家や畑が既に姿を変えて埋没していると判った時、私は心底驚いた。




後日、私が「焼肉屋」を訪ねた時に かつてのノーブラの姐さんに世間話のつもりで その話をしたところ…


焼肉屋の姐さんが「そう言えばさ…」と 思い出しながらひとつの話をしてくれた。


「あの夜中に農家に行ってキムチをお供えして帰ってきた時に、お父さん(焼肉屋の爺ぃ)と話したんだけど…


 ”なんで、あの時 Nさんは仏壇を農家に持って行って

  さらに、お婆さんの血のついた床板で農家を封鎖しちゃったんだろ?”


 …ってお父さんに聞いたんだ そしたらさ、


 Nさんはな そりゃ、情に厚い人だったんだ

 最初は少佐も 警察から戻された奥さん(農家の婆さん)をお骨にして

 戦死した旦那さんのお墓に入れて上げる時に遺品や床板も炊き上げて

 供養しようとしてたんだよ


 でもな、Nさんが それじゃぁ、奥さんの無念が晴れないんじゃないか?って言い出して

 で、少佐が”どうすればいい?”って聞いたら

 ”あの、農家と畑こそが婆さんの生きた証なんだから あそこを墓にしてやるべきだ
” 

 Nさんは そう言ったのさ


 で、オマエ(姐さん)から話を聞いた後に

 ”なんで剥がした床板をわざわざ持って行ったんだ?”

 …ってNさんに聞いたらよ


 ”あぁ、あれは婆さんの血や肉がこびり付いた封印だよ

  ロクでもない近隣の農家や農協が あの農家や畑に何かをしようとした時に

  あの床板や仏壇を見たら さぞビビんじゃないかな…って

  で、もし予想通りにビビれば さぞかし婆さんも仕返した気分が味わえるんじゃないかな…って”


 Nさんは、笑いながらそう言ってたってさ。」


なるほど、Nさんらしい解釈だな…と私も思った。


それと同時に、御隠居やOさんやNさんは それとなくそれなりに高速道路の建設予定などの情報を知っていたんじゃなかろうか?…と あくまでも私の想像なのだがそう思った。


だからこそ、仏壇を据え直し 血のついた床板で農家を封印し、近隣の農家や農協などの関係者が近付いた時に ともすれば薄気味悪く感じる様な演出を施したんじゃないか?と。


そして、その施した演出には「お婆さん達のことを忘れるんじゃないぞ」という意図を強く込めた様な気がするんだな。




ちなみに、農家のお婆さんと入れ替わる形で住み込んだ中年夫婦は後年になって「占有屋」と呼ばれた輩である。


つまり、御隠居に金を返済出来なくなった夫婦を 他の債権者から逃がす為にその農家に秘かに移り住まわせて 農家のお婆さんの気晴らしをさせると同時に、その農家に行われる嫌がらせなどに対して中年夫婦に対抗させて農協などが勝手に処分や利用できないように図ったのだ。


借金が払えなくなった人の家に形だけとはいえちゃんとした賃借契約を結んで入り込み 債権物件となった不動産の再利用を阻害し、立ち退きを拒んで不良債権化する手法のひとつで後にバブル崩壊後 いたるところに生じた不良債権の処理が問題となった時に「占有屋」の存在やテクニックが世に広まったのだが、御隠居やOさんやNさんは バブル以前に既にこの手法を用いていたのだ。




さて…


それらの事実が判って後、あらためて農家や畑だったところを訪れてみた。


凄まじい藪化した草木をかきわけて雑木林の奥深くに歩み行くと 農家だった建物は風化して崩れ落ちてはいたが、注意深く見れば 昔を知る者にならばそれが農家だった事は判る。


でも、それはかつての開拓される前の北海道の原野に巡り巡って戻った風にも見え、言い換えれば 今となってはその雑木林が30数年前には農家があり、きちんと整備された畑だったとは知らない人には絶対に想像も出来ないだろう


でもね、その雑木林の中に立って周囲を見回していると いくら30年という月日が経過し、Nさんが雑木を植えまくったからと言っても それだけでその場所があたかも原野に戻ってしまたのには早すぎる様な… そんな違和感を覚えた。


薄気味悪く聞こえるかもしれないけど それは目に見えない何らかの意志が働き、あたかも夢の跡を元の姿に大急ぎで戻してしまった様な… そんな感じがしてならないのだ。


それと、あらためて高速を走りながら注意深く眺めたら その農家のあった地域は元々、人気の多い地域では無いところではあったけど、高速道路によって東西に分断された事もあって そのまま農地として残っている所は少なく、見るからに荒れ地や雑木林ばかりで「あぁ、あれ」なんて昔の名残は殆ど無く… かつてそこが広く耕された畑と その畑の中にポツポツながらも農家がいくつ点在して集落を作っていた…なんて名残はとどめていない事に気づく。


それは、まるでお婆さんの農家だけではなく その地域全体が無に帰すというか元の開拓前にリセットされようとしている風に見えたりもする。


そんな景色を眺めていたら、なんだかNさんが


「知らぬが仏…って言うだろ?」


と、独特の重低音で意味不明な事を言ってニヤリと笑った様な気がした。


お駄賃

 気が向いたら…で結構です。^^;

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