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2010年09月06日

● N専務の遺訓(3)


4人のバイト学生達が 麻雀どころでは無い夜を過ごした翌日




我々、バイト学生は俗に「胴長」と呼ばれる 胸まである防水ゴム長靴


胴長


を、常連さん達から支給され 既に各自に支給されていた裏仕事用の作業服の上に その胴長を身につけ バスタオルを頭巾の様に被ってティッシュを丸めて両方の鼻の穴に詰め、大きな水中眼鏡をつけ その水中眼鏡とセットだったシュノーケルを咥えてそれで息をして ヒジまである長さのゴム手袋…という装備で 前日、騒ぎのあったアパートに出撃を命じられた。


作業内容は、警察の検証が終わって許可が出た問題の部屋から遺品を運び出す事と 室内の清掃である。


その際、普段はバイトの現場に立ち会わない「屯田兵の御隠居」も珍しく同行し 作業を開始する前に、長い時間 部屋の床の大きなシミに向かって手を合わせていた。


そして御隠居は祈り終わると 部屋の奥にあった見るからに立派な金箔貼りの仏壇を指差し


「あの仏壇だけは傷一つつけずに運び出して高価な品物を保管している倉庫に運べ

 それ以外のモノはゴミもひっくるめて○○にある空き地にとりあえず運び

 濡れたり汚れたりしないようにビニールシートを被せておけ」


という指示


なので、まずバイト学生が4人がかりで その仏壇を慎重かつ丁寧に部屋から運び出し、後は2人が2階の部屋の窓から外に放り出したものを 窓の下で4人が待ち受けてダンプに積み込む… その流れ作業で1時間もかからずに遺品の撤去は完了


しかし、問題は床の大きなシミで それは床板を張り替えないとどうにもならないほど染み込んだ汚れ方だったから 御隠居はバイト学生達に床板を全て剥がして、それも遺品と一緒にダンプに積め…と。


「あのぅ? この”血まみれの床板”も”濡れたり汚れたりしない様に…”しておくんですか?」


と、バイト学生の誰かが聞くと


「そうだ、それも使う場面があるんだよ」


と、御隠居は怒った様に応え、積み込み作業を見終えると御隠居は


「このアパートも ずいぶんと築年数が経っているから、これを機会に立て直そう

 他の住人達には 今の条件のまま、ウチの管理物件で空いている 多少、もっと条件の良いトコに

 越して貰う…って事で キミ(O弁護士)交渉してくれよ」と言い置いて 口入れ屋のSと呼ばれていた常連さんの運転する車に乗って何処かへと去っていった。


「この剥がした床板 匂いも凄いし、血やナニもついちゃってますけど、空き地に一緒に置いてきてホントにいいんですか?」


誰とはなしにバイト学生がNさんに聞くと


「野ざらしだし、空き地の周りは工場ばかりだから平気だろ

 御隠居も理由があっての指示なんだから 黙って言われた通りにしとけばいいんだ」


という応えが返ってきたので 我々は指示の通りに行動した。




さて… 


その後の数ヶ月の間に ちゃんと数えた事がないので正確な件数は覚えていないが、3・4日に1回のペースで裏仕事のバイトが入り 何度も記した事ではあるがバイトの内容に関して詮索せず…という事もあって 当時の我々は済んだ個別の案件に関してあれこれと考える事はしなかった。


で、夏が終わり 秋になり、その秋も間もなく終わって冬になるだろう… そんな時期に


「今日のバイトは まず、俺のトコで用意するダンプに ○×の空き地で

 ほら、あのビニールシートをかけて放置してある 血のついた床板とか遺品を

 昼間のウチに積み込んでおく事。」


という作業を命じられ、その作業が終わると 別のトラックに私と腕力だけが取り柄の歯科医、二代目開業医と一級建築士の資格を持った詐欺師の4名が乗り、御隠居が持っている保管倉庫に行って アパートから搬出した仏壇をそのトラックに乗せた。


やがて陽は沈み、8時過ぎぐらいだったか 我々バイト学生達とOさんとNさん、それにその時は珍しく御隠居も現れて いつもは作業が終わってから行くいつもの焼肉屋に、その日は何故か 作業の前に行った。


以前、何かの記事で記した事だが その焼肉屋の親父は「屯田兵の御隠居」とは付き合いの深い人で 我々バイト学生が店に入った時はカウンターの椅子に足を組んで座り、くわえ煙草でスポーツ新聞を読みながら


「お? なんだなんだ? 今日は早いな」


なんてふんぞり返っていたのだが、最後に「屯田兵の御隠居」が店に入ってくるのを目にした瞬間、焼肉屋の親父は反射的に立ち上がり直立不動の姿勢になると


「御無沙汰しております 少佐殿」


まるで、そこだけ戦時中の様な光景が広がった。


「おう、キミも元気そうだね うんうん」


意に介せず御隠居は焼肉屋の親父に近寄り 小声で何かをボソボソと話し、親父はそれに対して


「ハッ!」


「はい」ではなく「ハッ」と それはまるで軍隊の上官と部下の会話の如く。


我々バイト学生達は そんな二人にお構いなしに


「あれ? ノーブラの姉さん 今日は居ないのか?」


「いや、店に入ってきた時はいたぞ」


「あれ、ホントにいないや」


なんて会話を交わしながら、いつもの様にガツガツと注文し食べまくっていたが…


店に入って1時間半ほど過ぎた頃


「よし、そろそろ 行くか」


というNさんの言葉を合図に店を出ようとすると いつもはTシャツにノーブラの焼肉屋の娘が いつの間にかチマチョゴリ姿に着替え、気のせいか薄化粧までしており、手に白い布で包まれた物を持って立っている。


そこへ御隠居がNさんを手招きして何やらボソボソと話すと Nさんは


「じゃ、オマエは俺の車に乗りな」


と、その娘を同行させた。


我々バイト学生は 再び、深夜に札幌近郊の そう、我々がトウモロコシやジャガイモを植えた畑の傍の農家へ行くと そこにいた中年夫婦は既に身の回りの品の荷造りを終えており、それらをバイト学生がトラックに積み込むと”一級建築士の資格を持った詐欺師”と”某国立大学理工学部教授”の二人が そのトラックに乗り込んで何処かへと走り去り…


Nさんは残った4人のバイト学生に


「血のついた床はとりあえず置いておいて 遺品だけをトラックから降ろして農家の家中にばらまけ」


と、指示


その作業を終えると Nさんは


「じゃ、あの仏壇をトラックから降ろして 農家の居間の真ん中に据えろ」


という指示


据え終わるのを確認すると 


「綺麗な雑巾で仏壇の掃除をして 掃除が終わったら俺の車のトランクに花や供物があるから

 それを仏壇にお供えしろ」


で、作業が終わると いつの間にかOさんが見るからに何処かの寺の住職という格好の坊さんを連れてきており その坊さんが仏壇に向かってしばし読経


神妙な面持ちで我々バイト学生達も参列し


「コレも何かの縁だから オマエ達もお参りさせて貰え」


というNさんの指示で 仏壇に向かって拝み、線香をあげると 我々の後からチマチョゴリ姿の焼き肉屋の娘も 仏壇の前に行き何やら仏壇に話しかけ、長い時間手を合わせていた。


隣の家と言っても1Km以上は離れ 街路灯なんか全く無い場所で 真夜中に荷物の搬入を行い、坊主がお経をあげてるのは けっして普通の光景では無い。


しかし、詮索せずが鉄則だったから黙っているしか無い。


やがて、坊主の読経が終わると、Oさんが坊主を車に乗せてそそくさと撤収してしまい


「よし、本日の作業のフィナーレだ

 婆さんの血の染み込んだ床板で 農家の玄関や窓や、出入り出来そうな所を塞げ

 塞ぐ木材が足りない時は 農家の壁でも床でも好きな様に剥がして使っていいから

 雪囲いの要領で 玄関や窓を塞げ」


という、指示。


それまでに 債権者会議が始まる前に、倒産会社の事務所や社長の家を木板を釘で打ち付けて封鎖する作業を何度もしていたが 血染めの床板でやらされたのは後にも先にもこの時だけ それだけに不可解な気持ちが強かったが、指示に詮索せずが鉄則だったから黙っているしか無い。


我々が作業を終えると Nさんは節分の豆まきみたい 用意していた塩を「ほら、お清めだ」我々や自分にふりかけ


「よぉし、帰るぞ オマエ達、今日の事はこの瞬間に全て綺麗に忘れろよ」


と、大声で念を押した。

                                         ---- 続く ----


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