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2010年09月04日

● N専務の遺訓(2)


喫茶「職安」のママが現役のホステスだった頃、後の喫茶「職安」の常連さん達は そのママのファンクラブであり、N専務とO弁護士も「屯田兵の御隠居」と呼ばれた因業爺ぃのライバルだった…なんて事を 以前、記したけれども… 




NさんとOさんが御隠居にとっての格さん助さん的存在となったのは それよりもはるかに前の事。


あくまでも断片的に聞きかじった事を繋ぎ合わせて簡単に記せば 札幌市が冬季オリンピックの誘致に成功し、その施設の建設が始まろうとしていた時に札幌ではいろんなオリンピック絡みで美味い話をでっち上げた詐欺話が横行し、それに引っ掛かる業者が少なく無かった。


で、ある会社がそれに見事に引っ掛かり窮地に陥った時に計画倒産を図った。


運送屋のNさんの会社はその計画倒産を図った会社がそれまで主要な取引先のひとつだったので、その関連で不渡り手形をつかまされ運送屋最大のピンチに陥った。


その時に債権者会議で この3人は初めて顔を合わせたそうだ。


その時、御隠居が受けた負債は御隠居にとってはたいした被害では無かったが、御隠居から見れば計画倒産が見え見えで 自分もその被害者に巻き込まれたのが納得いかずにおり、Nさんも御隠居と同じ債権者の立場 Oさんも別の債権者の代理人としてそこに登場していたわけだ。


で、或る日 御隠居が他の債権者を差し置いて OさんとNさん、それにもう一人(この人物についてはどうでも良いので省略するが)を呼び出し 3人に協力を求め、計画倒産で隠した債務者の資産を調べ上げ 他の債務者にそれを内緒にする代わりに…自分達の債権分は支払えと吊し上げる事に成功した


御隠居はその時のOさんやNさんの振る舞い、行動を高く評価し 少しづつだが自分のブレーンに引き入れ、OさんやNさんも御隠居の人となりを知る上で御隠居の魅力に惹き込まれていったのだ。 




私達バイト学生が喫茶「職安」に通い始めた年のゴールデンウィークが終わって間もない頃、以前、いくつかの記事で記した様に 私達には「夜逃げの手伝い」とか、「債権者に対する差し押さえ」とか、「倒産会社の整理」といった御隠居の仕事に纏わる裏仕事的バイトを命じられる様になったのだが、そんな裏仕事に携わってまだ間もない頃の仕事のひとつに ちょっと風変わりな仕事があった。


それは、札幌近郊のある農家に夜中、Nさんの会社の運転手がトラックを横付けして 6人いたバイト学生のうち、私と二代目開業医と一級建築士の資格を持った詐欺師の3人が 先発隊として同行し そこに住んでいたお婆さんと、そのお婆さんの家財道具や身の回りの大事な品を積み込む仕事で 当初は、そのお婆さんが夜逃げをする手伝いなのだと我々バイト学生は勝手に思い込んでいた。


事実、荷物を我々が積み終えるのと ほぼ同時に別働隊とされていた気の弱い弁護士、某国立大学理工学部教授、それに腕力だけが取り柄の歯科医の3人と 何やら荷物を積んだ別のトラックが現れ、お婆さんを乗せたトラックに別働隊のバイト学生が乗り換えて直ぐに何処かへと出発していったから 先発隊だったバイト学生の我々がそう思い込むのも無理は無い。


ところが…だ、お婆さんの乗ったトラックが出発するのと入れ替わる様に中年の夫婦を車に乗せてNさんが現れ、


「人目につく前に 大至急、(別働隊が乗ってきた)トラックの荷物をこの農家に運び込め」


と、我々バイト学生に命じたのだ。


単純に、夜中に住人と家財道具を運び出すのは「夜逃げ」と考えれば ごく普通の事だったのだが、入れ替わりに そこに別の人を連れ込む…というのは 当時の我々にとって初めてのパターン(後に、こういうケースも何度かあって 我々の理解するところとなったが)で それがどういう事なのかは 与えられたバイトに口を挟まず、口外せずが鉄則だった事もあって不思議に思いつつも それ以上聞けなかったし、その時は聞いても教えてくれなかったであろう




さて…


私達バイト学生が喫茶「職安」に通い始めた年 我々が通う高校が夏休みになって間もない頃、その日は夏らしい日差しのよく晴れた日で 朝から暑く、二代目開業医を除いて自宅に冷房なんか無い家に住んでいたバイト学生達は 朝からエアコンのある喫茶「職安」に入り浸っていた。


そんな時、一本の電話がその時既に店に来ていたN専務にかかってきて その電話を終えると店の中をぐるっと見回して


「ブタネコ、それと”一級建築士の資格を持った詐欺師” ちょっと出かけるから付き合え」


と言う。


そんな事は日常茶飯事だし、我々も暇だったから何も考えず黙ってNさんの車に同乗したのだが…


当時、Nさんが乗っていたBMWには8トラックの元祖カラオケみたいなセットが搭載されており グローブボックスには軍歌集の8トラ・テープばかりが4・5本放り込まれてあった。


Nさんは その中から一本のテープを取り出すと機械にセットし やがて、流れてきたのは



   朝だ夜明けだ潮の息吹

   うんと吸い込む銅(あかがね)色の

   胸に若さの漲る誇り

   海の男の艦隊勤務

   月月火水木金金


音楽が物凄いボリュームで車内に鳴り響き、それに合わせる様にNさんは歌う


「うみぃ~の男の艦隊勤務 ゲッゲッカァアスゥイ モッキンキン♪」


歌っているウチに みるみるテンションが上がっていくのが判る。


車で15分ほど走り、着いた所は御隠居の持ち物である一軒のアパート


「なんかあったんですか?」


そう聞く”一級建築士の資格を持った詐欺師”に


「まぁ、見てのお楽しみだ」


と笑うN専務


住人から「隣の部屋から とてつもない異臭がする」と大家である御隠居の会社に連絡があり、Nさんがマスターキーを持って我々を連れて確認に来たのだった。


で、問題の部屋に向かったわけがが たしかに階段を上がり始めた時点で


「なんだ この臭い匂い」


とハッキリ判る異臭 問題の部屋に近付くにつれてその匂いの濃さがきつくなる。


「あ~、やっちゃたなこりゃぁ…」


ボソッと呟いた後、部屋のブザーを鳴らし


「○×さぁん」


と、外から声をかけても部屋の中に反応は無い


Nさんが持ってきたマスターキーで部屋のドアを開けると 広がっていくドアの隙間からより一層濃度の濃い匂い それはまるで毒ガスの様で吸っているうちに吐き気を通り越して気が遠くなりそうになる。


開けたドアから靴を脱がずに2・3歩室内に入ったNさんだったが、直ぐに中を確認出来たらしく


「これも社会勉強だ オマエ達も中を覗いてみろ」


言われて中を覗くと…


<<< 筆者注:どうでもいい事なので詳細の記述を省略します >>>


Nさんは 最初、部屋の中の電話から受話器を取って耳に当てたが 料金未納で電話は止まっており、”一級建築士の資格を持った詐欺師”に


「その辺の公衆電話を探して 警察に電話して呼べ」


と指示し 私を促して愛車の所まで戻ると、深く深呼吸しながらポケットから取り出した煙草に火を点け、私にも


「お巡りが来るまでタバコでも吸え 少しは匂い消しになるかもよ」と。


そう、その部屋にあったのは半分、腐って溶けた人間の死体だったのだ。


数分もせぬうちに 物凄い勢いでパトカーが2台駆けつけ、その後も数台の車両と大勢の制服、私服色とりどりの警官達がやってきて…


後で聞いた話では 死因は首を吊った自殺で死後2週間ほど、初夏の暑い日が続いていたので腐乱が早く激しかったのだ。


そのアパートで死体を発見した帰り道 運転しながらNさんが


「人間ってのは嫌でもいつか必ず死ぬんだからよ わざわざ自分で死ななくてもいいのにな…」


まだ、自殺かどうかもハッキリしない段階で そう呟いたのだけは私の記憶に焼き付いた。




さてさて…


そんな騒ぎがあった日の夜。


私と”一級建築士の資格を持った詐欺師”は”二代目開業医”の実家の娯楽室で”気の弱い弁護士”も交えて麻雀をしたのだが…


麻雀というのは雑談しながら遊ぶのが楽しいわけで その雑談の話題はいつしか昼間の騒ぎの話となる。


「え? 死体見たの? ホントに どこ? それどこなの?」


かねてより心霊写真を写す事が夢と言いつつ 人一倍”気の弱い”弁護士が 私や”一級建築士の資格を持った詐欺師”の話に目を輝かせ


「これから行ったら 撮れるかなぁ… 念願の心霊写真」


と、気もそぞろ


死体と言っても我々が見たのは 既に人間の原型は全く留めていない肉塊とそこから飛び出た骨 思い出すだけで食欲なんか失せるショックの強いモノだっただけに 異様な光を目に浮かべて興味津々の”気の弱い弁護士”にウンザリ


本来であれば仲間内でも基本的には口外せず…という喫茶「職安」のバイトの鉄則だったが、私も そして”一級建築士の資格を持った詐欺師”も ”気の弱い弁護士”のしつこさに半分ぶち切れて


「○○の××丁目 △△通りを□□橋渡って左に曲がり、北へ☆☆kmぐらいいったところの…」


Nさんの車で走った道を思い出しながら そのアパートの場所を言ったのだが…


それを聞いているウチに 最初はポカンと、次第に青ざめていく”二代目開業医”と”気の弱い弁護士”が


「そのアパートの隣にクリーニング屋が無かった?」


「まさか、2階の角部屋か?」


等と 私達が説明するより前に、既に場所に見当がついている口ぶりで


「そうだよ、クリーニング屋が隣にあって 2階の角部屋だよ」


と、私が肯定すると ”二代目開業医”と”気の弱い弁護士”は顔を見合わせたまま固まっている。


「なんでオマエら知ってるんだよ?」


”一級建築士の資格を持った詐欺師”が問い詰めると 二人はどちらともなく口を開き


「俺達、そこに行った事があるんだよ… な?」


「ほら、トウキビやジャガイモ植えた畑があったべ? そこの傍の農家の…」


そう聞いた瞬間、私と”一級建築士の資格を持った詐欺師”にもピンときた


「あの婆ちゃん もしかして、そのアパートに連れて行ったのか?」


(…って事は あの死体は あの婆ちゃんなのか?)


その場にいた4人は麻雀どころでは無くなった。


                                         ---- 続く ----


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