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2010年09月03日

● N専務の遺訓(1)


「屯田兵の御隠居」と「O弁護士」の遺訓を記した以上、喫茶「職安」のツートップである「N専務」の遺訓も記しておかねば化けて出てきて説教されかねないので記しておく。




「N専務」が亡くなったのは「O弁護士」が亡くなった後のほぼ7年後。


他の主要な常連さん達は亡くなるか、姿をくらますなどしており 我々バイト学生にとってはN専務の他界=そのひとつの時代の終焉だと感じている。


以前、何かの折りに記した様にNさんは元々、長距離トラックの運転手だった人で Nさんの兄貴分だった長距離トラックの運転手だった人と二人で 独立して運送屋を開業し、大型トラックだけでも30数台を所有した北海道でもそれなりの規模の運送会社にまで育てあげたのだが、その矢先に兄貴分だった社長が病気で急逝し 本来であればN専務が社長になるべきところを


「この会社は兄貴が育てあげた子供みたいな会社だから」


と、亡き社長の未亡人を名義上の社長に据え 実質上は社長でありながらも


「俺は生涯ナンバー2だ」


を実践した人。


考えてみれば、喫茶「職安」でも御隠居の跡を実質的に任されながらナンバー2である事に徹し、


「俺はテレ屋で恥ずかしがり屋だから目立ちたくないんだ」


と、重低音のドスの利いた声で言いながら 誰よりも先頭切って債権者会議やヤクザの事務所に乗り込み


「てめぇ、コノヤロー、バカヤロー」


と、ゴジラの放射能光線さながら 吠えまくっていたオッサンだった。




我々バイト学生達が 暇を見つけては喫茶「職安」に通い始めて間もない頃は 我々に与えられるバイトも そんなに風変わりなモノでは無かった。


それは先に述べた様に本屋の在庫整理だったり、酒屋の配達やガソリンスタンドの従業員の穴埋めの他に 運送屋のN専務の会社の引っ越し荷物の積み卸しとか、殆どが単発で長期間を継続的にと言うモノではないが、特に珍しい仕事の内容でも無い。


例えば、バイト学生が喫茶「職安」でコーヒーを飲みながらマンガを読んでいたりすると 隣の蕎麦屋の兄貴が現れ


「おい、大量の出前がカチ合ったから配達手伝え」


と、駆り出され それを終えて戻ってくると近所の商店街の自転車屋の親父が現れて


「ちょっと2台ほど自転車を組み立てなきゃなんねぇんだ手伝え」


という感じ。


で、ゴールデンウィーク前の或る日の事 いつも日曜は休みだった喫茶「職安」なのだが、数日前から


「今度の日曜は 全員が朝から夕方まで強制参加のバイトがあるから必ず来いよ」


と、通達されていた事もあり めいめいがジャージ姿で喫茶「職安」に行くと 店の前にはマイクロバスが停まっていて Nさん直々の運転で現場に行くという


1時間弱ほど車で移動して着いた先は 札幌郊外の畑が広がった農家で


「はい、今日のオマエ達の作業は農作業だ」


そこには別にNさんの運送会社の運転手が数名駆り出され、何処から持ってきたのか数台のトラクターで だだっぴろい畑を耕し、そこにジャガイモの種芋を植える。


我々バイト学生は それぞれトラクターに分乗し、作業員として種芋の入ったカゴの補充をしたり蒔き損ないがないかの監視 それを終えると、別の区画の畑に移動して 今度はトウモロコシの種まき


今ではごく当たり前になったトラクターなどを利用した機械化作業だが、その当時はまだ物珍しく それらの機械をNさんがどうやって確保したのかその時は知らなかったのだが、農作業と言ってもトラクターの助手席に乗っての作業は肉体的にはそんな辛い作業ではなく、むしろ我々には物珍しいぶん楽しくさえあった。


で、陽が沈む少し前に作業は終わり


「おう、みんな御苦労さん んじゃ、みんなで飯食いに行こう」


と、向かった先が ススキノの一角にあった焼肉屋で 本当は夜の10時頃から開店なのだが、Nさんが頼んで夕方に店を開けてもらっていたのだ。


焼き肉屋に入って席に座り さぁ、食うぞ…って時に


「おう、好きなモンを好きなだけ食え それが今日のバイトのギャラだ」


Nさんの その一言に固まるバイト学生達


「え? 朝から夕方まで作業して ギャラ、それだけですか?」


「おう、まぁオマケはあるけど それは後のお楽しみだ」


「なんすか? そのオマケって」


「うるせぇな その時が来れば教えてやるから 今は黙って食えコノヤロウ」


Nさんにクワッと睨まれ それ以上何も言えないバイト学生達。


「なんだ、今日はボランティアか クソッ」


誰が言うまでもなく、八つ当たりの様に


「オバチャン キムチ!」


「冷麺も!」


「ジンギスカン 生の奴ね」


食いまくったバイト学生達だった。


その焼肉屋は当時、爺さんと婆さん それに我々バイト学生より一回り年上の 当時20代後半の爺さん達の独身の娘と数人の従業員が働く規模の店だったが、その娘が見るからに気が強そうな態度だったが そこそこの美人で、一斉にいくつものテーブルで焼き始めた煙や熱気が換気の悪い店内とも相俟って熱気となり あっと言う間に汗だくになって料理や飲み物を運んでいたが、Tシャツ一枚にノーブラ姿だったから


「あれ? もしかしてビーチク?」


バイト学生の一人がそれに気づくと多感な年代だった事もあって気もそぞろ


でも、Nさんはそんなのお構いなしに


「おう○×(焼き肉屋の娘)ちゃん そのノーブラは客寄せのサービスか?」


なんて言い出し


「生見たけりゃ いつでもTシャツまくって見せて上げるよ その代わり、お勘定5割り増しだからね」


Nさんに平気で言い返す、その気の強さにビビるバイト学生達…


が、そんな話はどうでもいい。




その年の8月 お盆明けの頃の或る日の夕方 喫茶「職安」に屯していたバイト学生に


「おう、明日は平日だけど 朝から学校サボッてバイト出来る奴 いるか?」


と、Nさんが聞いた。


それぞれが翌日の時間割を確認し 私と後に”某国立大学理工学部教授”、”腕力だけが取り柄の歯科医”の3人が


「行けますよ」


と、応えると


「そっか、だったら明日バイトに来れる奴は もう家に帰って寝ろ  で、明日の朝6時に この店の前に集合な」


翌朝、バイト学生3人はNさんが運転するベンツに乗り 行った先が、上述した畑


そこには「ホントですか?」って聞きたくなるぐらいトウモロコシが充分に食べ頃の大きさになっている。


Nさんは車のトランクから あらかじめ用意していた軍手と大きなポリ袋を私達に渡し、


「トウキビを収穫してちゃんと皮を剥いて そのポリ袋に入れ、車のトランクに積めるだけ積め」


と指示 我々バイト学生はそれに従って1時間もかからずにベンツのトランクをトウモロコシで一杯にすると Nさんは畑からさほど離れていない所にある農家にベンツを走らせた


その農家では事前に指示が出されていた様で 農家の住人らしき中年の夫婦が庭先にブロックで簡易的に作ったかまどで火を焚き、子供なら風呂代わりになるぐらい大きな鉄鍋をしつらえて湯を沸かしていた


Nさんは 我々バイト学生に


「ほら、ボケッとしてないで トランクのトウキビを鍋に放り込め…」


10数分後、茹でキビが出来上がり


「トウキビってのはよ 朝イチでもいで、もぎたてを茹でたのが一番美味ぇんだ ほら食え」


たしかに、その時のトウモロコシは未だかつてない程の 本当の美味さを教わった瞬間だった。


一人当たり、3・4本のトウモロコシを食べ堪能している頃に Nさんの会社のトラックが1台 その農家に到着し、それを見計らって


「オマエら もう一回、あの畑に行って あのトラックに積めるだけ、もう一度トウモロコシを刈り取れ

 ただし、あのトラックに積み込むトウモロコシは間違っても皮は剥かず 髭もそのままにして積めよ」


という指示 再び、我々はトラックの荷台に載って畑に行き 午前中一杯の時間を掛けて収穫したのだが それでも畑のトウモロコシは畑全体の1/3ぐらいで 残りの2/3はまだま青々とそのまんま


トウモロコシが満載されたトラックが何処かへと走り去ったのを見送って 我々バイト学生は農家まで歩いて戻ると、その間に 朝イチで収穫したトウモロコシは全て茹で上げられており、茹で上がったトウキビを綺麗なポリ袋に詰めると それをベンツのトランクに積み込んだところで


「よし、本日の作業終了 帰るぞ」


と、Nさんは言った。


帰りの車の中で


「どうだ? てめぇで撒いた種のトウキビの味ってのはひと味違うだろ?」


と、Nさん


「こんな美味いトウキビ初めてです」


と、我々バイト学生がそれぞれ応えると Nさんは満足そうに笑い


「春の種まきの時に バイト代の代わりにオマケをやる…って言ったろ? それがコレだ」


と。


「トウキビってのはな 朝イチのもぎたてを茹でて食うのが一番美味ぇんだ

 皮を剥かずにおけば まだ、そうでもないけど…

 スーパーみたいに皮剥いて半日も転がしちゃったら甘みはぬけるし、風味も落ちる

 わざわざ不味くしたのを食ってどうすんだ?…って話だ。」


そして喫茶「職安」に到着すると


「おう、まずオメェ達から トランクの茹でキビを好きなだけ取っていいぞ

 ただし、いいか、オメェ達の家の父さんや母さんや兄弟達が食べる分だけにしとけ

 どうせ、しばらくは毎日 好きなだけやる事になるから、意地汚い真似はするなよ」


そして、私達が数本ずつ確保したのを見計らって 喫茶「職安」の中にいた常連客やママ達に トランクに残った茹でキビを振る舞った。


トウモロコシ狩りは その後、畑のトウモロコシを全部収穫し終えるまで ほぼ1週間続き、その間 我々は毎日トウキビを食べる羽目となり それが終わって、少ししたら 今度は同じ様にジャガイモ掘りが始まった。


が、ジャガイモは 掘り起こしてそれを大きな鉄カゴに入れるまでの作業を 殆どが機械的に行えたので 我々にとってはそんなに辛い作業では無かったが、ちゃんとした農家は掘りあげた芋の大きさや形や傷の有無などを一つずつ手作業で選別しなければならないとNさんに教わり それを考えたら農家の苦労に頭が下がる思いも教わった。


朝イチもぎたて茹でたてのトウキビ、掘って間もない新ジャガの塩茹で どっちも知ってしまうと Nさんの話じゃ無いがスーパーで買って食べるのではもう絶対に満足出来ない味なんだけど それでこそ北海道で暮らす醍醐味でもある事を痛感した。


                                         ---- 続く ----


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コメント

いつも拝見させて頂いてます、大好きな職安のお話が再開されているじゃないですかーーーー!
ブタネコさんお体ご自愛下さいね!

★ ishidonaldo さん

はい


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