« KC-767(3号機) | TOPページへ | 踊れドクター 第7回 »

2010年08月30日

● O弁護士の遺訓(1)


「屯田兵の御隠居」の遺訓」という記事を掲示したわけだが…




我々、喫茶「職安」のバイト学生にいろんな意味で影響を与えて この世を去っていった常連さんは少なく無い。


私は現在、入院加療を要すと言う名目で仲間である「二代目開業医」の病院の特別室を使用しているが、実はこの部屋 喫茶「職安」のツートップと言われた「運送屋のNさん」と「弁護士のOさん」双方が最期の時を過ごし あるのか無いのか判らない「あの世」へと旅立っていった部屋でもある。


…と言うと


「そんな部屋に入院するのって薄気味悪くないか?」


と、思う人も少なくなかろうとは思うけど 私に言わせればそれは違う。


全く逆で お二方が晩年を過ごし、見舞いかたがたそのお二人からいろんな裏話やタネ明かしをしてもらった 私にとって人生勉強の教室であり、楽しい思い出の部屋なのだ。




弁護士のOさんは私達バイト学生達と喫茶「職安」で出合った頃には既に糖尿病を発症していた。


にも関わらず、食事制限とかは一切気にせず いつも好きなモノを好きなだけ食べ、毎晩の様に相当量の酒を飲み続けていた。


そんなOさんに喫茶「職安」のママが


「そんな事してたら アッという間に糖尿が悪化して死んじゃうわよ」


なんて事を時々言っていたが Oさんはそれに対していつも


「好きなモノも食えず、酒も飲めないんだったら 死んだ方がマシだ」


と、ニッコリ笑いながら応えていた。


豪放磊落を地でいく性格の人で 弁護士だけあって頭が良い、というよりも 物凄く回転の速い頭がキレる人だったが、常に自分に何かしらの信念みたいなものを持っていて糖尿の悪化よりも「いつも好きなモノを好きなだけ食べ、毎晩の様に相当量の酒を飲み続ける」生活をする事の方がOさんにとっては信念に叶う生き方だっただけの事だ。


「俺の育った家は貧乏でな 本当は年の離れた弟と妹がいたんだけど、

 二人とも餓死させちゃったぐらいに貧乏だったんだ。


 で、その後 オフクロも栄養失調で倒れちゃって死んじゃったんだけど、

 俺は親戚に養子に出されたお陰で生き延びたんだよ


 だからさ、俺は弟や妹やオフクロの分も 美味いモンを腹一杯食うの

 それで死ぬんだったら それはある意味、本望さ」


その後、10年以上Oさんは弁護士として暗躍していたが やがて、まず目に障害が生じ 時をおかずに脳梗塞で倒れ 数ヶ月後に再び脳梗塞を起こして他界した。


ただ、ある意味珍しいケースなのだが Oさんの場合、最初の脳梗塞により全身がマヒで寝たきりになってしまったが、言語には何の障害も無かったので二度目の発作が起きて他界するまでの数ヶ月間 会話は何不自由なく出来た。


だから、その時期


「俺ももうすぐオサラバだなぁ… だから、コソッとオマエ達にタネ明かしをしてやるよ」


と、私や「二代目開業医」や「気の弱い弁護士」を相手に喋る事を楽しんで過ごし この世から去っていったのだ。




ちょっと話は変わるけど、そして少々長い話になる事をお許し頂くとして…


ちょうど私が高校に進学したばかりの1年生の春の事。


中学も一緒で同じ高校に進学した友人二人が午後からの授業をサボり 自転車に乗ってある場所へと向かう途中だった。


その二人がとある蕎麦屋の前を通り過ぎるのと 誰が見ても不良と思う格好をした高校生がその蕎麦屋から飛び出してくるのとが不幸なタイミングでカチ合い、ぶつかった。


当然の如く


「てめっ、痛ぇじゃねぇか」


「なんだコノヤロウ? オマエが飛び出しきたからだろ」


「お? やんのか? コラッ!」


と、喧嘩になった。


その時、蕎麦屋から出てきたのは 札幌市内でも当時として不良学校で有名だった私立校の生徒が3人、それに対する自転車に乗っていた2人は公立の進学校の生徒でしかも1年生。


しかしながら、結果は周囲の予想を大きく裏切り公立校の1年生 それも二人のウチの一人だけで短時間にその3人を殴り倒し


「おぅ、ゴメンナサイって言葉 知ってっか?」


と、格好良く決めてみせた。

(注:この時のカッコイイ方が 後に”腕力だけが取り柄の歯科医”と呼ばれる男で もう一人、「僕知らないよ」と他人のフリをしようとしてし損なったのが”気の弱い弁護士”と呼ばれる男である)


後に”腕力だけが取り柄の歯科医”と呼ばれる高校生は その時の事を その当時の学園モノの典型的なドラマの主役にでもなったような気分だったそうだが それも一瞬の事


「フェッフェッフェ… アンチャン達、なかなか元気で結構な事じゃのぅ」


と、声が聞こえ その方向に顔を向けると…


蕎麦屋の隣の喫茶店から 面妖な爺ぃと、見るからに「ヤクザですか?」といった風体のオッサンが数人出てきており


「あ~ やっぱ壊れちゃってるよ これ」


ヤクザ風のオッサン達は 喫茶店の入り口の前に倒れている行燈を確認しており ニコニコ笑顔なんだけど不気味さを漂わせた爺さんが


「元気なのは結構なんじゃけど、ほれ アンチャン達の騒ぎに巻き込まれて

 ウチの喫茶店のカワイイ行燈が壊れたんじゃが

 これの責任について ちょっとミーティングしようや の?」


と、言う。


見ると、行燈の店の名前が彩られたプラスチックが割れている。


「あ、それ さっきの連中が…」


後に”腕力だけが取り柄の歯科医”と呼ばれる高校生は言い訳をしようとしたが いつの間にか不良高校生達は逃げ去っており 仲間であるはずのもう一人(後に”気の弱い弁護士”と呼ばれる高校生)は


「え? ぼ・僕は たまたま通りかかっただけで…」


と、見え見えの知らんぷり「別に、友達じゃないから」オーラを出そうとして失敗していた。


「フェッフェッフェ… さっきの連中?

 そんなものアンチャンが追い払ってしまったから 今更、呼び戻しも出来ないだろさ

 の? ここはひとつ格好のいいアンチャン達に格好良く弁償してもらわんとのぅ…」


すると、いつの間にか喫茶店の中から別のオッサン達が数人出てきていて


「あ~ こりゃダメだ 弁償だなオイ」


「おいおい、それ買うのに俺達がナンボ出し合ったと思ってんだ小僧」


後に”腕力だけが取り柄の歯科医”と呼ばれる高校生の証言によると その時の事は「学園ドラマの主役」から「ヤクザ映画の被害者役」へと 一瞬で天国から地獄へと転落した気分を味わった…そうだ。


二人の高校生はオッサン達に喫茶店の中に導かれると


「まぁ、俺達はアレだ 学生を虐めてナニしようってアレじゃねぇんだ…

 ママぁこいつらにコーヒー煎れてやって5000円の奴」


「ん? オマエ、タバコ吸うのか? そかそか ほら灰皿。

 あ~、気にすんな チクったり(通報)なんかしねぇから 気にせず吸え」


「オマエ達は ナニか 力が有り余っちゃって困っちゃってるクチか?」


二人の高校生を取り囲んで オッサン達が質問攻め。


高校生達には そのオッサン達が東映のヤクザ映画に出てくる中堅幹部もしくは それよりも上のクラスのヤクザにしか見えず ただただビビッて応える事が出来ない金縛り状態だった。


ちなみに、そのオッサン達とは K鮨の親方や口入れ屋のSさんなどで たしかに、知らない人が見たら間違い無く「あの人、ヤクザです」と断言する風体であり、そういう喋り方のオッサン達だから”腕力だけが取り柄の歯科医”や”気の弱い弁護士”がチビるほどビビッたのは仕方の無い事だった。


で、そんな状態がどれだけ続いたのかは判らない。


少なくとも 二人の高校生にとってはそれまでの人生で味わった事の無い長く苦しい絶望的な時間


「ちょうどいいから、コイツら俺に任せろよ」


それを打ち破ったのは 取り囲んでいたオッサン達とは別に、カウンターの席でコーヒーを飲みながらニヤニヤしていた男が発した言葉で 救いを求める様にその男を見た二人の高校生の目に映ったのはは その男の背広の上着の左胸にキラッとしかもゴツいバッチの輝き。


「あ~、やっぱ本物のヤクザだ」


後に”気の弱い弁護士”と呼ばれる高校生は その瞬間、絶望した。


男は何事かを一番格上と思われる妖怪爺ぃに耳打ちすると 爺ぃも


「おう、そりゃいい うん、そうしな」


と、満足そうに応える。


男は二人の高校生に「ついてこい」と促し 喫茶店を出ると3・40mほど歩き、そこにあった床屋の入り口を開けて 客が居なくて居眠りをしていた床屋のマスターに


「おい、雑巾とバケツ 二つずつ貸せや」


と言い、高校生の一人に 店の前にあった蛇口にホースを繋げと命じ もう一人に床屋のマスターが持ってきたバケツや雑巾を持たせて 床屋の隣の駐車場に入っていくと


「オマエら学生手帳を出せ」


と、二人の高校生から取り上げ


「まさか逃げないとは思うけど、念のためにコレあずかっておくぞ

 で、オマエ達は この駐車場に停まってる車を 全部、その道具を使って綺麗に洗え

 俺はあの喫茶店にいるから終わったら来い

 見りゃ判るだろうけど どの車も安い車じゃ無ぇから丁寧に洗えよ

 傷なんかつけた日にゃ 喫茶店の行燈どころの話じゃ済まねぇからな

 あ、あと 何かあったら、そこの床屋の親父に相談しろ」


そう言い置いて喫茶店へと戻っていった。


駐車場に停まっていたのは 一番安いと思える車ですらクラウン、ベンツにBMW、カマロのコルベットなど 昭和40年代末のその当時 高級外車の見本市ですか?って話


二人の高校生は根本的には真面目な子供だったから 言われるまま1台ずつ、そこにあった車を洗い 全部の車を洗い終え道具を床屋の親父に返すと 床屋の親父は


「そこで待ってな」


と言って 喫茶店に電話をかけ


「洗い終わったってさ」


数分後、数人のオッサン達が喫茶店から駐車場にやってきて


「お? よしよし、綺麗になったべや」


と、それぞれの愛車を点検し オッサン達の一人が


「おう、ありがとうな 喫茶店に行っていいぞ」


二人の高校生が喫茶店に戻ると 洗車を命じた男が


「おい、オマエ達 肝心要の事を忘れてないか?」


と聞いた。


そう言われても二人の高校生には何の事か判らない


すると男は


「行燈壊しちゃったんだろ?

 だったら、まず最初に壊した行燈の喫茶店のママにゴメンナサイだろ?」


二人は慌てて「ゴメンナサイ」と頭を下げると


男は二人に学生証を差しだし、


「行燈と言えば看板も同然 看板に免じてカンベンしてやるよ」


訳の判らない笑えないダジャレをとばし、


「今、ママがカレースパゲティ作ってくれてるからよ (空いていたボックス席を指さし)そこに座って食ってけ」


二人の高校生は言われるまま椅子に腰を下ろしたが まだ不安は拭えていない


「あのぅ… 僕、お金をそんなに持って無くて…」


後に”気の弱い弁護士”と呼ばれる高校生が恐る恐る精一杯の勇気を振り絞って言うと その言葉を遮る様に


「親から小遣い貰って暮らさせてもらってる小僧が偉そうに銭金の話をするんじゃねぇ!」


喫茶店の一番奥のボックス席で妖怪爺ぃと将棋を指していた オッサン達の中で最も貫禄のある男が怒鳴り、二人の高校生は固まった。


そのオッサンはのそっと高校生達の席に近寄って


「おう? オマエ達なんか勘違いしてねぇか? オジサン達はヤクザじゃねぇんだよ

 アイツの襟をよっく見ろ 襟で小生意気に光ってるバッジ、ありゃ弁護士バッジだぞ?」


事実に気づき二人の高校生は目が点。


そこにママが出来上がったカレスパを運んできたので


「ほら、遠慮しないで食え

 最初から弁償代をオマエ達から取り上げようなんて俺らは思ってないんだよ


 ただ、ゴメンナサイには罰ゲームが必要だから みんなの車を洗わせたけど…

 床屋の話じゃ なかなかオマエ達、一生懸命に丁寧に洗ってた…っていうから

 褒美でこのカレスパ御馳走してやるんだ だから、遠慮しねぇで食え」


オッサン達の中で最も貫禄のある男、それが運送屋のN専務だった。


                                         ---- 続く ----


お駄賃

 気が向いたら…で結構です。^^;

 この記事への御駄賃がわりに下のバナ-のいずれかを クリックして頂けると嬉しいです。^^
 (全部、クリックしてくれると もの凄く嬉しいのは事実です。^^)

ブログランキング・にほんブログ村へ Blog Ranking 人気映画・TVBLOG blogram投票ボタン BlogPeople「自分のこと」部門にクリック BlogPeople「テレビ」部門にクリック BlogPeople「映画」部門にクリック

『喫茶「職安」の話』関連の記事

【※注意!!】

この記事は『ブタネコのトラウマ』の倉庫に保管されている記事なのでコメントの投稿は出来ません。 2015年2月10日以降 このクソブログは『ブタネコのトラウマ・リニューアル版』に移転しましたので新規記事更新及び、過去記事へのコメントの受付もそちらで行っておりますので お手数ですが、そちらへの移動をお願い申し上げます。