● バンド・オブ・ブラザース 再び
このところネット検索の誘導で「バンド・オブ・ブラザース」に興味を持って このブログに迷い込んでこられる方が多い。^^
なので、個人的に出入り業者にしているレンタル屋の店長に確認したところ 昨年の暮れ辺りからチェーン店全部の貸し出し状況でも「バンド・オブ・ブラザース」が秘かにブームと言っていい程の貸出率を示しているのだそうな。
なので、私も久しぶりに再見も兼ねて あらためて再考記事を記そうかと思った次第だが…
「バンド・オブ・ブラザース」という本は アメリカの国立D-Day記念館の創立者だったスティーブン・アンブローズが著者
D-Day記念館とは 第二次大戦時西ヨーロッパを席捲したドイツに対し米英など連合軍が反攻するために行ったノルマンディ上陸作戦(D-Day)を後世に語り継ぐ為に設立された記念館で スティーブン・アンブローズは歴史学者であり、他の著作には「Citizen Soldiers」「The Victors」など第二次大戦のドキュメント作品が米国内でベストセラーとなった事や、D-Day時の連合軍総司令官で後に大統領になったドワイト・D・アイゼンハワーの伝記作家としても著名な人物。
そのアンブローズ氏がD-Day記念館での企画でD-Dayに従軍した多くの退役軍人達に 実際がどうだったのかを語って貰うインタビューを行う中で 歴史学(というか戦史家)として興味を抱き 特にD-Dayで初参戦以降ドイツ降伏までヨーロッパ圏内の激戦地を転戦し続けた101空挺師団の中の第506パラシュート歩兵連隊第2大隊E中隊をピックアップして 生存する元E中隊員達の証言を基に独自の検証を加えてまとめたのが「バンド・オブ・ブラザース」である。
この本が映像化されたのは 映画「プライベート・ライアン」をスピルバーグが制作する際に軍事アドバイザーとしてアンブローズ氏が参加し その活動の中でスピルバーグとトム・ハンクスが「バンド・オブ・ブラザース」に興味を抱いたのがキッカケと言われている。
さて、「戦史家(戦史研究家)」という言葉 日本ではなかなか馴染みが無い。
昨今「軍事評論家」と呼ばれる人が たまにニュースのコメンティターで登場するようになったが、個人的な感想を率直に言えば 日本で「軍事評論家」と名乗っている人達は主に軍事マニアの域内におり、個別の兵器のカタログスペックはやたらと詳しいが 戦史や戦術論などに関しては それほど詳しいと感じさせてくれる人物を殆ど見かけた事が無い。
例えば、世界で著名な戦史家と言えば イギリスの「リデル・ハート」やアメリカの「S・L・A・マーシャル」といった人物がおり、リデル・ハートは時の英国首相チェンバレンやチャーチルの軍事アドバイザー的存在 S・L・A・マーシャルは米陸軍大佐として戦場を巡り戦線を視察して回った人物でもある。
要するに、米英は第二次大戦時 既に自軍の戦闘を第三者的に評価する専門家を置き、主立った戦場での部隊の動きや指揮運用などにおいて問題点を見つけ反省の材料とする事と 際立った働きをした部隊や兵士に叙勲を行う際の評価に用いていた…という事。
例えば、ハートは戦後の著書で「日本への原爆投下の必要は無かった」という旨の連合軍批判を述べたり、「連合国側の無条件降伏要求が、戦争を長引かせる一因となった」とも述べている様に立場というか視点が中立的なのが特徴的であり特記すべき点でもある。
で、アンブローズ氏も 言わば戦史家であり、見事なまでに中立的視点で「バンド・オブ・ブラザース」を描いている。
日本軍の真珠湾攻撃を期に 米国は積極的に第二次大戦へと参戦するに辺り、軍を強化する。
その時に創設された部隊の一つが101空挺師団で ほぼ2年半の訓練期間を経てヨーロッパへの大規模反攻作戦であるノルマンディ作戦時、海岸に舟艇から本隊が上陸する安全度を高める為に 海岸線より数km奥地にある通信施設などドイツ軍の後方攪乱を行う為にパラシュート降下したのが師団としての初戦闘で、その日からドイツ軍が降伏するまでの約1年間 西ヨーロッパの主な戦線を転戦する。
この「バンド・オブ・ブラザース」みたいな原作を 今の日本の映像制作者が映像化しようとする場合、無理矢理2時間の尺に詰め込み 結果的に半端な駄作に仕上げてしまうだろう事は目に見えている。
スピルバーグとハンクスは それを否とし、全10話のTVシリーズとしたところはまさに慧眼だったと思う。
第1話では新兵として訓練に明け暮れる期間を描き 第2話でノルマンデイへと降下…
回が進み、転戦を続けていくにつれて 一人、また一人と部隊内の兵士が死傷し 生き残った兵士も見るからに疲れ、やつれていく様は日本製戦争映画では殆ど見る事が出来ないリアルさがあり、第6話のごく一部分を除いて 日本製戦争映画お得意の「妻や妹や恋人が的女物語」は含まれておらず 逆に「戦線で疲労困憊の兵士」に「離婚請求」や「別れ」の手紙を送ってきたりする様は 現代の日本女の思考すらマッチングして複雑なリアルさを醸す。
派手な戦闘シーンだけを目的に このドラマを見た場合、期待外れの感を抱く人も少なく無い。
しかし、第1話からじっくりと腰を据えて見ていくと いつしか自分もE中隊の兵士の一人になった錯覚に陥り、仲間が倒れていく様に自然と怒りや涙がこみあげる。
もう、今から8年近く前の事。
私の義弟が休暇で札幌に帰ってきた時に
「兄貴、これ凄ぇよ」
と、差し出したのが
並木書房 著:スティーブン・アンブローズ 訳:上ノ畑淳一 ISBN4-89063-146-1
という本だった。
私の義弟は現職の幹部自衛官であり、私の周囲の中では無類の戦争映画オタク B級・C級と言わず戦争映画と名の付く物は殆ど見たと豪語し もちろん戦争関連の書籍も相当な量を読破している。
そんな義弟が「これは最高だ」と太鼓判を押し私に読めと薦めたのだ。
たまたま義弟は この本の日本語翻訳版に携わった方々と知り合い その方々からいろんな背景やお話しを伺い 感動はさらに深まった。
翻訳者の方々が主宰されるサイト『【Band of Brothers 絆で結ばれた兄弟たち】』
さて、原作本を読み ドラマシリーズを初めて見た日から6年近くが過ぎたが、このシリーズを超える戦争映画の傑作に まだお目にかかっていない。
その間、日本では終戦60周年記念とかいって 随分とクソ映画やクソドラマばかり見たけれど、日本人として 日本兵のバンドオブブラザースに匹敵する実話を知りたいと願う若者が ここ数年増えてきた事が昨今の秘かなバンド・オブ・ブラザース再ブームなんじゃないか?と愚考する。
