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2009年10月05日

● 常連さんからの躾(その4)


今回は喫茶「職安」の常連さんの中でも特に私達バイト学生がお世話になった弁護士のOさんとのエピソードを記そう。




私の記憶にある弁護士のOさんは いつもニコニコしていて温厚そうな人。


しかし、一度 口を開くと滅茶苦茶な事を何食わぬ顔で平然と言ってのける人。


そのギャップは筆舌に尽くしがたく とても弁護士としての品行方正とはかけ離れた人物だったが、運送屋のNさんと並んで 私達バイト学生にとっては偉大な師匠


Oさんに関するエピソードは


   ・『O弁護士の話

   ・『O弁護士の話(その2)


等を御参照願うとして…


そんなO弁護士が よく、我々バイト学生に言っていた事は


「なぁ? 今日は晴れていたかい?」


とか、


「おい、昨日の月は どんな月だった?」


…って事。


そう聞かれて私達バイト学生が 単純に


「ええ、晴れてましたよ」


とか、


「月は見ましたけど どんな月って言われてもねぇ…」


なんて応えると O弁護士は表情はニコニコなんだけど


「ダメだ、おめぇは使えない」


と、表情とは裏腹の辛辣な台詞。^^;


ゆえに、バイト学生は 皆、一度はそうやってOさんに 今風に言えばダメ出しを頂戴したものだ。


その時にOさんがダメ出しで言っていたのは…


「オマエらよぉ 下ばかり、足下ばかり見て暮らしていたら

 道でつまずいたり、転んだりはしないだろうけど、人生はつまづくし転ぶぞ」


と。


「よく、偉そうな人が”胸を張れ”なんて言うだろ?

 大抵の奴は勘違いして腹を突き出すんだけどよ^^


 要は顔を上げて 真っ直ぐ前を見ろ…って事。


 堂々とする…ってのは 真っ直ぐ前を見据える…って事。


 どうも、最近の若い連中は 下ばかり見て、猫背な奴が多すぎる


 あれ? 俺、今、猫背になってないか?


 そう思ったら、思いっきり空を見上げろ」


とも。




O弁護士は 私達バイト学生が夜間に夜討ちや夜逃げの手伝いを作業している間、自称:保護責任者とか、何かトラブッた時の弁護士立ち会いとして 必ず、現場に現れていたが その間、ずっとタバコを吸いながら夜空を眺めている人で…


ある時、作業が終わって引き揚げる車の中で


「Oさん、夜空を眺めるのが好きですねぇ」


と、私が聞くと Oさんがその時に話してくれたのは


「そう言えば 話した事無かったっけね。^^

 俺さ、大学生の時に、学徒動員で太平洋戦争に出陣し 海軍でパイロットではなく偵察員を務めてたのよ。

 前席でパイロットが操縦して 後ろで俺がキョロキョロ見回すんだけど

 ”天測航法”って言って 六分儀と太陽や月や星とかを使って 今、自分の飛行機が何処にいて

 行き先に向かうにはどっちの方角か?なんてのを計算するわけよ


 今でもさ、夜中に夜空を眺めていると その頃の、飛行機の中にいた頃の自分や

 その時に どんな事を考えたり、思ったりしてたのか?とか思い出されるんだよな」


という話。


そんな話を聞かされると きっと、亡くなった戦友達の事などを思い出して…なんて私達は勝手に想像し であるがゆえに、それ以上は聞かずにおいたわけだが…




O弁護士は晩年、脳梗塞の発作で倒れ 一時は車椅子ながらも会話は達者であったが、本人は余命に関して思う所があった様で「最後の人騒がせ」と称して 嬉々として暗躍していたが、日が経つにつれて 元々、患っていた糖尿病の悪化が進行し 今、私が使っている「二代目開業医」の病院の病室に入院し生活していた。


そんな入院生活の最中 Oさんの日課は天気が良ければ、病院の屋上に行って タバコを吸いながら昼間なら空を 夜なら月や星空を眺めて過ごす事。


ある時、そんなOさんを見舞った際に


「屋上なんかにいたら寒くないんスか?」


と、私が聞くと Oさんは糖尿の悪化で痩せ細ってはいたが、昔と変わらぬニコニコ顔で


「空を見上げていると 何もかも忘れちゃって、寒いとか暑いなんてのも忘れちゃうんだよなぁ…」


と。


そして、その後に言っていたのは


「なぁ?

 俺さ、昔 海軍で飛行機に乗って偵察員していた…って話をオマエ(ブタネコ)にしたよな?


 その時にさ 先輩の偵察員に言われた話なんだけどよぉ…


 空とか、雲とか、月ってのは 心の鏡なんだよ…って その先輩は言ったんだ


 例えば、夜空を見上げて月を見たとする。


 その時に、月が綺麗だなぁ…って いつも思うんだけど、同時に 月が悲しく見えたり、

 月が不気味に見えたり、月が愉しそうに見えたり そんな風に微妙に見え方が違う時がある

 空や雲も 月と同じ様に、悲しそうだったり、不気味だったり、気持ち良さそうに見えたり…


 先輩が言うには その「悲しい」とか「愉しい」とかって 雲や月を見た時の自分の気持ちが反映して そう見えるんだ…って そう言われたんだ。


 だから、新しい一日が始まって 空を見上げてどういう風に見えるかで その時の自分の心境が判る…ってね。


 オマエもたまには 空を見上げてみれば良い。


 自分では気づけてなくても”あれ? 俺って凹んでる?”なんて気づけるぞ^^」


と。




数年前から、写真を撮る事に凝り 千歳空港に毎日の様に通っていた私は 久しぶりにある事に気づいた。


それは、月って 昼間でも見える時があるんだ…って 当たり前と言われればそれまでの事。^^


Nさんの仕事を引き継ぎ 自分で言うのもナンだががむしゃらに働いた30~40代の間に 私は働く事に夢中で いつしか、いくつかの事をすっかり忘れていた。


例えば、それは高校生の時に亡くなった「亡き友」の事だったり、自分の心臓に欠陥がある…って事と同時に、Oさんに言われた「空を見上げる」って事も そう。


Oさんが「空を見上げろ」とよく言っていたのは 空や雲や月で 自分の気づかざる心理に気づけという意味の他に どんなに忙しかったり、何かに夢中になっていたとしても 顔をあげて周囲を見回し、空を見上げるぐらいの ほんのちょっとで良いから、心にゆとりや余裕を持て…という意味。


そんな事を忘れて 無我夢中になっていたから、あれ?と思った瞬間に 心臓が壊れた。^^


で、仕事の一線からは退き 現在の状態になり、千歳の滑走路脇で空を見上げたら まだ3時の昼下がりなのに 空には月がポッカリ浮かんでいる。


「なんとか、月と飛行機が重なる様に写せないかな…」


その時に、そう考えて以来 千歳に行って夕方が近付くと 無意識に「月は?」と空を見回す様になった私。^^


で、民間機の夜間撮影に一時期熱中し 気がつけば夜の9時過ぎになってしまったある日


「もう寒いし、いい加減にして帰ろう…」


そう思って見上げた空にオリオン座を見つけて それを撮る事に夢中になった私。


気がつけば 時計は11時を過ぎており、辺り(千歳の滑走路脇)は人気も灯りもなくシーンと静まりかえって真っ暗


そんな中をスーッと近付いてくる車の気配を感じて その方向を見ると、誰が見ても警察の機動隊の小型トラックで 私の車の傍に停まると、警官が数人降りてきて 私の車を覗き込んだりしている。


なので、カメラ機材を抱えて愛車に戻り


「なんだ? おまえら?」


と、愛車を囲んでいた警官達に言うと


「不審な車が放置されている…って 110番通報があって来たんだけど

 アンタ、この車の持ち主かい? なにやってんのさ? こんな時間にこんな場所で?

 ま、とにかく車検証と免許証見せてくれるかい?」


と、格上の警官。


「免許証と車検証を見せるのは構わないけど、なんだ? その不審な車?って

 何処のバカだ? 余計なお世話してるアホは」


私がそう言いながら 免許と車検証を提示すると 他の警官が


「もう、10月なんだから寒いでしょ? なにやってたのここで」


と、聞く


なので、私は胸を張って


「オリオン座の写真を撮ってた」


そう言うと


「え~? わざわざこんなトコで? 随分、奇特な話だねぇ」


と、その警官は苦笑い


「なんだ? コラ!

 俺がオリオン座を撮っちゃ似合わねぇってか?

 札幌からわざわざ空気の綺麗なド田舎の千歳くんだりまで オリオン座を撮りに来ちゃダメか?」


私がブスッとした声で言うと


「似合うかどうかの問題じゃなくて 人から見たら、不審だ…って事の方が問題なんだよねぇ」


と、その警官。


私は 自分が持っていたカメラのモニターに その直前に撮影したオリオン座の写真を表示させて それを警官達に見せて


「ほら、ちゃんとオリオン座が写っているだろ?

 それともなにか? 俺がここで穴掘って死体を埋めていた…とか

 この人気のない場所で自殺しようとしていた…とか、

 ヤクザ連中と御禁制の品物を売買していた…とか、

 なんか、文句があんのか? こら!」


と、私が怒ると 年かさの警官が


「じゃ、遠慮なく 車の中やトランクを拝見しますよ 良いですね?」


と、下卑た笑みを浮かべて言う。


「おう、上等だ 隅々まで、なんだったら車を裏返して見たって良いぞ

 その代わり、何も出てこなかったら オマエら土下座の一つもしろよ」


私はそう言い切って 車の鍵を年かさの警官に渡し、少し離れた場所に移動してタバコを吸い そんな私を監視する様に警官が一人、私のそばから離れない。


ふと見上げると、夜空に煌々と満月に近い月が まるで、ニコニコと笑って輝いていた。


「まるで、Oさんのニコニコ顔みたいな月だなぁ」


そう思うと同時に、Oさんが言っていた「心の鏡」って話を 10数年ぶりに思い出した。


「Oさん、俺 こんなオッサンになっちゃったけど 良いんだよね? コレで^^」


そう、問いかけていた私。


ちなみに、私の愛車から出てきたのは新垣結衣が表紙で微笑んでいるHighwayWalkerという雑誌だけ。^^


「汚すなよソレ! 大事に持って帰るんだからよ」


と、怒鳴る私に困った様に笑う警官達だった。


お駄賃

 気が向いたら…で結構です。^^;

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コメント

ブタネコさん、こんにちは。
「常連さんからの躾」シリーズ、その4が一番いいです。
弁護士のOさんの先輩って、なんか私とすごく感性が似ている気がして・・・

私のことを理解できるのは私だけ・・だなんて
刹那的に世の中を見ていた愚かな私ですが
世界は広いということ、人生は素晴らしいということ、
人を愛するということはまず自分を愛するということ、
いろんなことに気がついた私です。

おかげで、今夜もぐっすり眠れそうです。
これからも、楽しいお話を楽しみにしていますね。

★ hamako さん

は~い^^


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