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2009年10月11日

● 花屋のY(その2)


先日、別記事で一日に訃報が4件重なって届いた…と記したが そのうちの一人が花屋のYさんだ。




花屋のYさんについては 以前、『花屋のY』という記事を掲示してあるので御参照頂けるとありがたい。


その以前の記事ではYさんが花屋を独立開業した時の事を述べたのだが、今回は ちょっと、その後の事を記しておこう。




Yさんが始めた花屋は ほんの数年のウチに支店を持つ程、繁盛した。


そのキッカケは大きな霊園の傍でゲリラ商売をした事ではあるけれど、商売の最大の柱は夜の繁華街ススキノの傍らで飲み屋やホステスさん相手専門の花屋を始めた事。


飲み屋では「開店祝い」と言えば花を贈り、人気ホステスが誕生日と言えば 届いた花の量や質を競い合う


判りやすく言えば、一般向けよりもボッたくれる上客の宝庫なんだな。^^


それと、Yさん本人がホステス時代から通っていた華道の先生に取り入り そこの生徒さんとの交流を深めたのも繁盛の基だった。


Yさんは 最初の支店を出して間もなく結婚(今で言うところの”出来ちゃった婚”)したが、出産前に亭主の浮気が発覚して離婚。


そうして、一人息子と花屋を育てながらその後の人生をおくったのがYさんの人生だった。


数年前、私が発作を起こして入院した頃は Yさんはピンピンしており、私の病室に


「ちょうど、葬儀用の供花が余っちゃってさぁ」


と、言ってカサブランカや蘭のアレンジを見舞いとして届けてくれたモノだが…


何度か私の病室を見舞ってくれている時に「二代目開業医」が


「Yさん新しい検査器具を導入したから 試しの患者になってくれない?」


「二代目開業医」という医者は とにかく新しい検査器具を導入したがる男で、導入すると知り合いを片っ端から練習台に検査しまくる男なのだ。


で、その時にYさんは癌が見つかり手術を受けたのだが 一時は元気になりはしたが、転移と手術の繰り返しを続け 先日、とうとう他界した。


元は売れっ子のホステスさんだけあって 歳をとっても美しい人だったが、それは晩年も変わらず、美しい顔と豪放磊落な性格がアンバランスでユニークな人だった。


そんなYさんは 今年の春頃からは自らの余命を自覚したのか、遺していく一人息子の行く末だけを心配し私や「気の弱い弁護士」に


「それとなく後見してね…」


と、秘かに何度も頼んでいた。


で、その息子だが…


彼が物覚えがつく頃には 花屋は繁盛しており、彼は母子家庭ではあったけど何不自由なく育てられ、しかも、甘やかされて育ったから御多分にめげず道楽息子を絵に描いた様なバカ息子。^^;


小遣いに不自由しないものだから よからぬ友達にチヤホヤされ、その気になって遊び回り…


時には喧嘩で警察沙汰となったり、時にはヤクザとトラブり、その度に私や「気の弱い弁護士」がYさんに頼まれてバカ息子の尻を拭きに出かけたものだ。^^


が、Yさんが癌に蝕まれ 遂に余命の問題となった時、そのバカ息子は それまでのバカ息子と同一人物か?と思う程、全くの別人に変貌した。


常に、母親の身を心配し 母親が疲れないようにと、それまではYさんが取り仕切っていた花屋の経営を少しづつ引き継ぎ、本人も相当勉強した様で 零細農家に資金を出して専属の園芸農家に仕立てたり ほんの数年で一人前の青年実業家と呼べる程の変わり様。


そんな様子を眺めてYさんは


「案外、私は癌になって良かったのかもしれないねぇ」


と、ベッドから起こせなくなった身体なのに そうとは思えない程、豪快に笑った。


本当ならYさんは私と同じ様に二代目開業医の病院の特別室で最期を迎えたのかもしれない。


けれども、バカ息子は


「オフクロが自分の身一つで建てた家で最期を過ごさせてやりたい」


と、言い Yさん自身も


「私も そうしたい」


と、望んだから 最期はYさん自身が高級住宅地に建てた豪邸で迎えたわけだが、バカ息子は端から見ていても手篤い看護でYさんを送り そんな姿に我々、元喫茶「職安」のバイト学生達は胸があつくなった。


きっと、Yさんは自分の建てた家で過ごしたいんじゃなくて 愛すべき馬鹿息子と仲睦まじく過ごしたかったんだ 私はそう思っている。


おそらくそれは「二代目開業医」も同じ想いなんだろう。


彼は主治医でありながら


「そうですか、じゃ、そうしましょう…

 時々、ウチの病院から私か誰か他の医者が往診に伺いますから 最期までボッタクリさせて下さいね」


なんて言いつつも、バカ息子に


「ちょっとでも、アレ?ってなったら夜中でも報せろよ」


と、脅す様に言っていたからね。^^




さて…


今から、ちょうど一ヶ月程前の事。


「二代目開業医」と私は「気の弱い弁護士」から


「Yさんが 俺達3人に、折り入って話があるから、揃って見舞いに来てくれ…って言ってるんだ」


と、伝言を受け取り 3人の都合の良い時に、揃ってYさんに会いに行った。


Yさんは 時折、痛み止めのモルヒネで朦朧となる その合間を見計らっての会話だったが 話の内容は終始、


「バカ息子を頼む… くれぐれも頼む…」


の繰り返し。^^


帰る車の中、三人で誰ともなしに


「太閤殿下が秀頼を頼む…ってやったのは こんな感じだったのかな?」


と、苦笑い。


「と言う事は、俺(二代目開業医)が前田利家で オマエ(私:ブタネコ)は徳川家康か?」


と、「二代目開業医」が私に言うと「気の弱い弁護士」は


「え? じゃ、俺は? 俺は誰?」


それに対して私と二代目開業医は口を揃えて


「オマエには石田三成がお似合いだろう…」


「百歩譲れば、大野治長でも良いぞ」


「気の弱い弁護士」は東大を出る程の頭脳の持ち主ではあるが、日本史 特に戦国時代には滅法弱く、教科書に載っている武将の名前以外は皆目分からない男なので


「大野治長って誰? 何やった人?」


そればかりを今でも気にしている。^^




さてさて…


Yさんの葬儀は滞りなく済んだ。


だいぶ前から心の準備が出来ていたのであろうバカ息子が万端を見事に仕切り、傍目からは青年実業家として貫禄さえ滲んできたような風格さえ出てきた様にも思える。


で、昨日 私が連休を利用して自宅に戻っていると誰かに聞いたらしく バカ息子は我が家を尋ね 殊勝にも母親であるYさんとの付き合いに故人に成り代わっての挨拶をしにきたわけだ。


で、普通なら「オマエも立派になったなぁ」なんて嘘ででも言って「アハハハ」と笑って済ませるのだろうけど、そこは 元喫茶「職安」のバイト学生として 運送屋のNさんや弁護士のOさんから 散々に鍛えられ、躾けられた私であるから 通常の受け答えなど絶対にしない。


バカ息子が私に蕩々と挨拶と礼を言うのを見届けると 待ってましたとばかりに、あるモノをバカ息子に見せて 小一時間、説教をかましたのである。^^;


そのあるモノとは…


画像をクリックして大きな画像で見てね。^^


これ。


差し出されてバカ息子はキョトンとしながら


「これ、何ですか?」


「見れば判るだろ 塩だよ、シ・オ」


「で、これが何か…」


「これ、オマエのオフクロ Yさんの通夜の時に不祝儀(ぶしゅうぎ:香典の事)返しについていたんだよ」


「あ、清めの塩ですね」


「清めの塩ですね…って オマエ、これ見て何とも思わないの?」


「え? 何がですか?」


「清めの塩ってのは ごく普通の塩で充分なんだよ

 なのに、何コレ”伯方の塩”って 、”海の恵みにがりを残した”って 俺は漬け物か?

 これ、自分にふりかけて漬け物になれってか?」


「いや、これは葬儀屋が勝手に…」


「だったら、その葬儀屋をシメろ

 こんなもん使いやがって…ってシメろ。


 白い結晶が2gってオマエ、俺らは笑って済んでも 気の弱い弁護士なんか時節柄、笑えないぞコレ


 こんなパッケージで まだ、”伯方の塩”って書いてあるからいいけど

 何も書いてなかったら アイツの同業者みたいに、ちょっとお話しを署の方で…って

 勘違いされちゃうぞ?」


「いや、ただの塩ですから…」


「しかもだぞ、数日前に 俺、千歳に行ったのよ

 その帰り道に 小腹が空いたからラーメンでも食おう…って 高速の輪厚のSAに寄ったのな

 そしたら、輪厚の食堂でゆで卵を売ってるんだけど そのゆで卵を買ったら

 どうぞ…ってオバチャンがくれたのが これと全く同じモノ、どういう事だ? オイ」


「…」


「ある時は「清めの塩」、そしてある時は「ゆで卵の御自由にお持ち帰り下さいの塩

 テメェ、いいのか? そんなんで!」


「判りました、早速 葬儀屋を呼びつけてシメます」


「おう、シメた後は その塩で揉んでやれ そうすりゃ旨味が増すからよ」


バカ息子が我が家を辞した後、私とバカ息子の会話を聞いていた嫁が


「バカねぇ、魚は塩をふってシメるのよ

 シメた後に塩を振っても 塩気が増すだけで意味無いわよ

 なんなら、アナタで試してみる?」


ニコリともせず、真顔でそう言い 目の前に作りたてのゆで卵を置くと、


「その塩で そのゆで卵を食べて上げれば? その方がアナタに振りかけるより、余程の供養よ」


と、言って立ち去った。




イラスト


お駄賃

 気が向いたら…で結構です。^^;

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