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2009年08月12日

● 獄門島(石坂版) DVD再見


女優「大原麗子」を偲んで… 獄門島の原作を再読し、DVDを再見してみた。




獄門島(石坂版)


久しぶりに市川崑監督による石坂浩二版「獄門島」を再見した。


そろそろ横溝映画のどれかを再見しよう… そう思っていた矢先、「大原麗子」の訃報を耳目にする。


亡くなったから言うわけでは決してないが、石坂版「獄門島」の完成度を考える時、早苗役を「大原麗子」が演じた事が締める割合は非情に大きいと私は考えている。


横溝正史による金田一耕助シリーズの場合、どの著にも必ず最低一人 キーになる女性が登場する(複数の場合もある)


例えば、「犬神家の一族」であれば「松子」や「野々宮珠世」、「悪魔の手毬唄」であれば「別所千恵」や「青池里子」、「悪魔が来たりて笛を吹く」であれば「椿美禰子」、「本陣殺人事件」であれば「鈴子」 そして、この「獄門島」であれば「早苗」というふうに。


面白いモノで 熱狂的だと自称する横溝ヲタの私としては 横溝小説を映像化する際に 上に述べた女性のキャスティングを見るだけ 映像本編のクォリティの大部分が推し量れると断言する。


以前、「犬神家の一族」が30年ぶりにリメイクされた際の記事で 前作と後作の出来の違いに「松子」を演じた「高峰三枝子」と「冨司純子」の格の違いを私は根拠に論じた事がある。


同じ様に「悪魔の手毬唄」における「別所千恵」を「夏目雅子」が演じた事だけで「可」とした事もある。


百%完璧なキャスティングはあくまでも理想であって 一人や二人、変なのが混じっていても それだけでつべこべ言う気は私には無い。


ただ、肝心要の部分だけは 人気が…とか、持っている数字が…とかでは無く、その役柄にハマるか否かを重要視してくれないと 他の作家の著作ならともかく我が敬愛する横溝作品だけは許せないんだなぁ 私は。


例えば、この「獄門島」に登場する「早苗」という女性に関して原作では


金田一耕助は、そのとたん、思わず大きく眼をみはった。この不吉な名を持った島の、しかも古めかしい網元の屋敷に、こんな美しい人がいようとは、夢にも思いもうけなかったからである。

その人、年齢は22、3か、パーマをかけた髪をふっさりと肩に波打たせ、ゆるく仕立てた焦げ茶色のスーツを着ている。ただそれだけで、装飾といえば白いブラウスの襟にむすんだ、細いリボンの赤がひと筋。

「いらっしゃいませ」

手を使えて見上げた瞳に、深い愛嬌をたたえている。ふっくらとした頬に、大きなえくぼのあるのも温かみのある感じだった。

角川文庫 P25~26より


あの人は… 年齢は22,3でしょうが、なかなかどうして、気性のしっかりした娘さんでね。荒くれ男を屁とも思わねえ。

角川文庫 P41より


という人物描写がある。


でね、過去に映像化された「獄門島」の それぞれの早苗役を並べてみると…


  昭和52年 7月放送 TVドラマ(金田一耕助:古谷一行)………「島村佳江」

  昭和52年 8月公開 映画  (金田一耕助:石坂浩二)………「大原麗子」

  平成 2年 9月放送 TVドラマ(金田一耕助:片岡鶴太郎)……「遥くらら」

  平成 9年 5月放送 TVドラマ(金田一耕助:古谷一行)………「秋吉久美子」

  平成15年10月放送 TVドラマ(金田一耕助:上川隆也)………「高島礼子」


単純に「どの娘が綺麗?」なんて比較はどうでもいい。


先に述べた原作の「早苗」像に 最も近い印象を受けるのは誰だろう?


あくまでも個人感で言えば この5人の中で及第点を超えているのは「大原麗子」と「遙くらら」の二人だけ で、「大原麗子」にはあって「遙くらら」には無い大きな要素は


『荒くれ男を屁とも思わねえ。」という気性の部分


獄門島(石坂版)獄門島(石坂版)

第1の殺人「花子殺し」の後 島に乗り込んできた警察官達を相手にするシーンでの台詞回しに 充分、その気性を垣間見せているからだ。


とかく、この「獄門島」という小説は死体を俳句に見立てる…というところばかりを映像化する際に誇張し 何故、見立てを行ったのか?という 本来であれば最も大事な部分をおざなりにしてしまう。


だから、原作を読んだ事が無い人が 先に映像を映画やドラマで見てしまって ともすれば、ただ「おどろおどろしい」だけの陳腐な話…みたいに受け止められている。


それに対して、映像よりも先に原作を読んだ人達の中には 映画化で最も話題になった「犬神家の一族」や 市川版の映画では「悪魔の手毬唄」が傑作だ…と言いながらも 横溝の最高傑作は「獄門島」だ…と主張する人が少なく無い。


つまり、映像化において それだけギャップが生じてしまうのが「獄門島」なんだな。


でもね、原作尊重派…とでも言える人の多くは 数多ある映像化された「獄門島」の中で この市川版だけは「許せる」と言う その最大の理由は「大原麗子」が演じた「早苗」が 多くの横溝ファンが原作を読む中でイメージした早苗像にとてつもなく近かったからだと私は思う。


獄門島(石坂版)獄門島(石坂版)

獄門島(石坂版)獄門島(石坂版)

獄門島(石坂版)獄門島(石坂版)

獄門島(石坂版)獄門島(石坂版)

獄門島(石坂版)獄門島(石坂版)


でね、あくまでも私の個人的な願望を言えば もし、機会があるならば「大原麗子」が「悪魔の手毬唄」の「青池リカ」を演じるのを見たいと秘かに思っていたのだが… それも叶わぬ夢となった今、只々 御冥福をお祈り申し上げると共に、素晴らしい「早苗」像を見せてくれてありがとうと深く御礼を申し上げたい。


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コメント

ブタネコさん、こんにちは。

大原麗子さんはとても残念でした。
たしかに「早苗」は、特に市川版が基本にある私はこの大原の早苗が当然一番ですね。

ただ、「獄門島」は好きな作品ですが、市川版は「かつの」の描き方というか、その設定が私は正直いうとあまりすきではない点なんですよね。殺人に関しても、見えない力がちょっと違ってしまっていますので。
まあ親子愛をすべてにからめているので、しようがないんですけど・・・。

ただ、やはり見立て連続殺人の傑作ではありますよね。


そしてこの「早苗」はいいキャスティングだったと思います。


大原麗子の「リカ」ですか、私も見たかった気がします。
では、また。

★ イエローストーン さん

ども、お久しぶりです。^^


>「かつの」の描き方というか、その設定が私は正直いうとあまりすきではない

この点に関しては 私も同様の思いがあります。

しかしながら、市川版以外の獄門島では それ以上に「なんだそりゃ?」が多すぎて^^


ちょっと言葉が足りなかったみたいなので 補足をお許し願うと…

私は 以前に述べた様に市川版の金田一シリーズの中では「悪魔の手毬唄」が最も傑作だったと感じているのですが 唯一、岸恵子に関しては「徹子の部屋」事件が大きな理由ではありますけど好きになれない点なんです。(とはいえ、稲垣版のかたせなんかよりは 遙かにマシですけどね^^)

なので、大原麗子が40代後半か50代前半ぐらいの年頃の時に 青池リカを演じていたら…と思った時、「見てぇ~」って物凄く思ったんですよ。^^

ブタネコさん、こんにちは。

先日のレス、又、再見の記事ありがとうございました。

確かに大原さんは原作にある気丈な早苗の姿を髣髴とさせる演技だったなあと思いました。
毅然とした”山猫”という感じが良く出ていたのではないかと。

また大原さんですが、低い声で重々しく相手に対する場面は、とても凄味があります。
たとえば劇中、祈祷所でかつのに迫っていくシーンは、見ていて怖かったです。
(かつのの正体?を承知で、そこまで追い詰めなくても・・・と思ったものです)

<ただ、肝心要の部分だけは 人気が…とか、持っている数字が…とかでは無く、その役柄に
ハマるか否かを重要視してくれないと

「演出はキャスティングで7割決まるから・・」と市川監督が仰っているインタビューを見たことがありますが
本当に、ハマる俳優さんをもってこないと全く別の話になってしまいますよね。市川監督の一連の金田一
作品は本当に出演陣が”ハマる”皆さんが多かったですよね。
レギュラー出演になっていたチョイ役の女性スタッフもお約束でしたが、いい味出していました。


★ のぼう さん

久しぶりに獄門島を再見し やっぱ、良いモノは良いなぁ…と確認しました。^^

考えてみれば 良い時期に撮影したのかもしれませんね

【※注意!!】

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