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2009年06月09日

● 天国はまだ遠く


久しぶりに いい映画を堪能した。




2008年に公開の映画「天国はまだ遠く」のDVDを入手したので観た。




    この記事にはやむを得ずネタバレが多く含まれています。

    この「天国はまだ遠く」は 鑑賞を強くお薦めしたい映画なので 

     鑑賞後にあらためて御一読下さる事をお薦めします。




天国はまだ遠く


「長澤雅彦」という映画監督の作品には これまで何度も絶賛してきたが、この「天国はまだ遠く」を見終えた今 まず、そして最も強く感じている事は


「長澤… また、ひとつ良いモン見せてくれてありがとう」


という強い感謝の念である。


いつも感じる事なのだが 長澤雅彦の映画のキャスティングの妙に 今回もまた ただ唸るばかりだ。


天国はまだ遠く


主役の女に「加藤ローサ」を起用したのは どういう理由だったのだろう?


もし、機会があるなら是非、伺ってみたいと思う。


これは、けっして批判で問うのでは無い。


まったく逆で よくぞ、「加藤ローサ」と絶賛したいからだ。


正直に言うと 私が「加藤ローサ」に惹かれたキッカケは とあるCMで「ニャオ」と猫の鳴き真似をしながら笑う姿が 実に可愛かったから


女優としては 時々、「お?」と惹かれる時はあるけれど おしなべて可もなく不可もなくという感じで 最近では「男に騙される女」とか「妙に元気なだけの脇役」という役柄が多く 少々、物足りなさを感じていた。


しかしながら、おそらくはこの「天国はまだ遠く」を契機に 彼女の役柄は少し違う方向へと 女優としても一つか二つ上のランクの役柄が与えられる様になるんじゃないか?と期待する。


彼女が演じた女は


天国はまだ遠く

天国はまだ遠く

天国はまだ遠く

自殺する場所を求めて あてもなくフラッと、とある駅で下車し 駅前で乗ったタクシーに連れられて人里離れた場所の民宿に行き着くところから物語が始まるわけだが…


冒頭の電車の中のシーンから駅前に佇むシーンまで 加藤ローサの表情や仕草から


「あぁ、この娘は死のうとしてるんだなぁ…」


という雰囲気が充分に醸し出されており、汲み取れる。


たった、それだけの事なのだが「え? 加藤ローサって こんなに演技が巧かったっけ?」と ブログにカテゴリーを設けてヒャッホイしてきた身でありながら ついついそう思ったと ここは正直に述べておきたい。


天国はまだ遠く

もう一人の この映画の主役であり、民宿の経営者である青年役を演じたチュートリアルの徳井も これまた実にナイスキャストと絶賛したい。


独特のとぼけた仕草が とても良くハマっていた。


女は睡眠薬を大量に飲み自殺を図ろうとするが


天国はまだ遠く

天国はまだ遠く

ただ「死んだ様に寝込んだ」だけで目覚めてしまい


起き出してみると


天国はまだ遠く

ちょうど食事の支度が調っており…


天国はまだ遠く


それを豪快に、かつ 実に美味そうに食べる加藤ローサが とても良い。


全体の構成も


天国はまだ遠く

天国はまだ遠く

時折、挿入される天橋立や宮津という町の風景が心地良く 物語が進むにつれて女の心が変化していく描写も実に巧い。


極端なエピソードが持ち込まれているわけでもなく ともすれば冗長で終わりそうなストーリーにも関わらず、最初から最後まで タバコを吸う気持ちさえ起きない程惹き付けられ


天国はまだ遠く


ラストシーンに流れるテーマ曲が 熊木杏里の「こと」で


天国はまだ遠く

冒頭とは全く違う「加藤ローサ」の表情と相俟って最後の仕上げをされた様にジーンとシビレる。


素晴らしい。


実に 素晴らしい余韻を味わえた。




この映画には「瀬尾まいこ」という著者の原作があるそうなので 近々、入手して読んでみたいと思うのだが… 調べてみて ちょっと意表を突かれたのが「幸福な食卓」の原作者でもあったんだな…と。


タイトルに天国という言葉を持ち込むと とかく「死」というものに対して哲学的なテーマや 簡単なお涙頂戴的ストーリーが描かれる事が多い中で この映画の描き方はある意味、斬新だ。


日々の生活の中で 何かに疲れて「死にたい」と思う事は少なからずあるのかもしれず、中には それを実行してしまう人もいる。


そんな人に対して小賢しげに「死んだ気になれば何でも出来る」と 安易に勇気づけようとする輩も少なくない。


たしかに、病気や事故など 何らかの理由で「死んでいても不思議じゃない」という状況を体験した者としては その通りだと思うけど、そんな経験のない者が 判った風に軽々しく「死んだ気になれば何でも出来る」と言っても その言葉には重みが無く 説得力も備わらない。


民宿の経営者である青年には 婚約者の自殺というエピソードがあり、それが彼の背景らしいと推察出来る場面は映画内にあるが それがどういうものだったかは詳細に描かれていない。


観客の中には その部分も含めていくつか説明不足、描写不足と指摘する不満の声もあるらしいが、なんでもかんでも詳細に描写する必要は無く むしろ、よく制作者側が都合良く言い訳に使う「見る側の想像に任せる」というような手法が この映画では正しい使い方として用いられていると私には感じられた。


と言うかね、小賢しい理屈は抜きにして 冒頭からラストまで「加藤ローサ」だけに注目して 彼女の表情や仕草、そして雰囲気が どのように変化していくのかのみを眺めてみる事を私は強くお薦めする。


そこにはきっと「長澤雅彦」の演出により引き出され、引き上げられた「加藤ローサ」の女優としてのポテンシャルが如実に理解出来ると思うのね。


それだけでも この映画は充分に傑作と私は評したい。





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コメント

ブタネコ様、良いタイミングでの情報、ありがとうございます。
偶然にも、雑誌の映画・DVD情報にこの作品が紹介されており、何だか気になって
切り抜いておいたのですが、製作が「よしもとアールアンドシー」とあり、徳井君のPVかなぁと
見るのを迷っていたのもですから。

週末に借りに行きたいと思います。

さて、一昨日「おと な  り」を見てきました。
違う物を見るはずが、満員で仕方なく空いてる方に流れました。

予想外に良かったです。
特に麻生久美子さんの鼻唄は必聴です。
後半私には、主役のJ系俳優の後姿(麻生さんを撮る)がブタネコ様に重なって仕方ありませんでした。
調子がよろしければ、主治医に御相談の上是非ご覧下さい。

★ みかnママ さん

この映画は良いです。 少なくとも私はそう思っています。

>「おと な り」

J系俳優の後姿が 私と重なりましたか… そうですか、そうですか

そうですか… 私の背中がJ系と聞いては 行って観ずばなるまいて^^

そうですか… J系俳優の後姿が…

薩摩の小僧や 下総のストーカー あたりに その点を強調しておかねばなりませんね

え? 南東北のアホ? いいんです彼は。^^

ぶたねこ様
私は密やかにあなた様のブログを楽しみに拝見させていただいている一ファンです。映画や本に対する感想がなんとなく私と似ているところがあり、いつも参考にさせていただいております。
そこで、もうおそらくご覧になられているかとは思いますが、最近見たDVDの中で思いのほか良かったものをご紹介させていただきたいと思い、筆をとりました。

『虹の女神』 上野樹里・市原隼人・蒼井優

という映画なのですが、なんとも上野樹里の表情が良いです。中ごろは何となく単調に思えたストーリーが、最後にギュッと胸をつかまれる所など、私にとって久しぶりに満足のいく映画でした。

もし既にご覧になっているようでしたらば、またお時間のある時に感想などをお聞かせいただけると幸いです。今回は突然に失礼いたしました。今後も楽しみに拝見させていただきますので、お体をご自愛ください。

公開当時に映画館で見ました。
最後の彼女の選択とその後のシーン含めて、最後の余韻まで味わえてよかったなぁ、と思いました。
ブタネコさんほど出演作を追えてはいませんが、この作品のローサちゃんが一番好きです。
これと「夜のピクニック」が見たのですが(これも好みでした)、他の長澤作品も見たほうがいいのかな、と
思ってます。

★ kazmi さん

こちらこそはじめまして コメントありがとうございます。

このブログのトップページの左上にある google窓にて「虹の女神」キーワードでblog内検索をするか さもなくば、上野樹里や蒼井優ののカテゴリー内を御覧頂けば 記事が直ぐに見つかると思います。

ただ、どうやら「虹の女神」に関しては 感想が異なる様なので それだけが気がかりです


★ しゅか さん

個人的感想ですが 「13階段」と「ソウル」はワンランク落ちます

そのかわり、「ココニイルコト」は 必見だとお薦めしたいですね。

ブタネコ様
はじめまして。ブログの方、いつも楽しく拝見させて頂いております。

>主役の女に「加藤ローサ」を起用したのは どういう理由だったのだろう?

キャスティングに関する当時の監督さんのコメントを少しだけ憶えていたので記述しますね。

確か、監督さんは、加藤ローサさんご本人の性格が、イメージしていた主人公・千鶴と
一致したのでキャスティングを行ったみたいなことを言っていたかと思います。
(監督さんの舞台挨拶での発言だったと思います。違ったかな・・・)

具体的には
『ローサは性格も良く凄い真面目。ただ、どこか抜けており(天然で)マイペース。
そんなところが、主人公・千鶴(と同じ)だった。』
『加藤ローサに久しぶりに会ったら、「ここに(本物の)千鶴がいるじゃん」と思った。』
といったような内容だったと思います。

あと、徳井さんに関しては、お笑い好きの多部未華子に以前から進められており、
実際にお会いしたらこの人なら(あの役が)出来ると思った、
といったような内容を雑誌のインタビューにて答えられていたかと思います。

当時の薄っすらとした記憶を辿っているので、正確な内容かは物凄く微妙ですが、
補足程度の情報にして頂けたら幸いです。m(_ _)m

★ らじお さん

こちらこそはじめまして コメントありがとうございます。

なるほど、だいぶ合点がいきました ありがとうございました。^^

>加藤ローサ

良かったですねぇ。私も最初、この女優さんがこんな暗い役をやるのは初めてじゃないかなって思って観てました。

最後の場面の表情は冒頭の暗い表情があってこそ生きた表情だと思います。

>キャスティング

よく「この役、別に他の誰々でも良いよな」っていうドラマ、映画がよくあります。

最近では「BOSS」とか・・・ほぼ全員そんな感じ。(話自体は面白いほうだとは思いますが)

そういった点でこの映画は「加藤ローサ」を他の誰か、「チュートリアルの徳井」を他の誰か、と考えてみてもこれといったのは思い浮かびません。

>制作者側が都合良く言い訳に使う「見る側の想像に任せる」

これねぇ・・・私も基本的に嫌いなんです。何か作り手が逃げてる感じがして。

それを「これは読み取らなきゃだめなんだよ」なんて言う小賢しい自称映画ファンが、ブタネコさんがM上H樹ファンを嫌いな感情と同じベクトルでもっと嫌いです。

徳井演じる田村から眼鏡橋で婚約者が自殺した事について触れられるかな?と思ったけど触れられなかったですね。普通のドラマだったら語っていたでしょう。

最後の駅での見送りのシーンも二人が抱き合うかと思いきやそうしなかったですね。これも普通なら抱き合っちゃうでしょう。

でもそれで良かったと思います。そうしてたらこの映画が恋愛のほうに比重がいきすぎちゃう。

恋愛感情はほのかに残しつつ「ああ、この娘は春にまた訪れるんだろうなぁ」なんて思わせる。

これが「想像を観客にまかせる」のこの映画での正しい使い方なんじゃないかな?なんて。

★ うごるあ さん

もし、綾瀬はるかや長澤まさみが この女を演じたらどういう風に映るんだろう?

そう考えると、私は違った意味で興味があります。^^

ただね、加藤ローサが ここまでハマって演じてみせられるとは思っていなかったので驚いたのが正直な言い方かもしれません。

なぜ、お土産にマッチが入っていたのか?… あとは勝手に想像してくれ…って感じで それは正しい使い方だと 私は思いました。

そう、「春になったら この子は来るな…」と。^^

私が長澤雅彦監督を好きになったのは、貴ブログの「夜のピクニック」の記事で興味を引かれ、彼の作品の追っかけが始まりました。
長澤監督の映画はブタネコ様の仰るとおり「キャスティングの妙」と、映画全体が醸し出す雰囲気がとても心地よく気に入っています。
私が特に好きな作品は「夜のピクニック」と「卒業」です。
この映画も前から気になっていましたが、地元の映画館では上映がなくDVD化を待っておりました。
本記事の冒頭を読み、たまらずレンタル屋に走り、いま観賞を終えたところです。
いやぁ、いいモノを見させていただきました。特にラストシーンの熊木杏里の歌を聴いて思わず涙が出てしまいました。
歌詞の中の「いつもそばにいることが二人のためになるのかな」を聴いて、これが本作品中における監督の言いたかったことなのかな、などと一人考えております。
長澤監督と監督の存在を教えてくれたブタネコ様に感謝いたします。
DVD特典の「私が死んでも世界は動く」を見るためにもDVDを買わなければなりませんね。

P.S.作品中加藤ローサが部屋の扉に張った「心配御無用」の張り紙を見て思わず「ココニイルコト」を思い出したのは私だけではないはず...


★ ユーノス さん

そうですか、御覧になられましたか^^

>いつもそばにいることが二人のためになるのかな

そうかもしれませんね…

>DVD

特典もそうですが コメンタリーが実に良いです 買うべきです

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