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2009年01月24日

● 中堅ヤクザの自宅処分(その2)


私達、喫茶「職安」のバイト学生が引っ越し屋の真似事をした件数は数えきれない。^^;




先日、『喫茶「職安」とブタネコ』という記事で述べた「風呂場が血まみれの家」の皮切りに週に一度 多い時は三日続けて…なんて時もあった。


それだけ、喫茶「職安」の常連さん達の周囲にはそういう騒ぎが多かったんだな。


そんな特殊な引っ越し作業だが、今思えば興味深かったのは 毎回、作業直前にNさんから出される特異な指示。


例えば、


「今日は俺が”コレ”って指定した物だけ運び出せ それ以外には絶対に手を触れるなよ」


という指示の時は「転売しやすい物」か「金目の物」だけを運び出させたし…


「今日はいろいろと妨害が入るかもしれないが オマエ達はガラ悪く接しろ」


と、言われた日には


「それは御先祖様から受け継いだ大事な品なので…」


品物を運びだそうすると泣きながらしがみつくオバチャンが登場し、バイト学生が対応に困る度に


「この人でなし、鬼!、悪魔!」


と泣き叫ぶ。


そんな時にNさんが


「うるせぇんだよ オマエが後先考え無しにパチンコで無駄遣いするから このザマなんだろが!」


と、怒鳴ると オバチャンは「けっ!」とか「ちっ!」とか言って姿を隠すが、数分も経たぬ間に再び現れると


「それは死んだ息子の形見…」


と、またバイト学生に縋り付いて泣き喚く…


我々は「オマエ達はガラ悪く接しろ」といったNさんの指示を思い出し


「文句は あっちのオッサン(Nさん)に言ってくれや」


「こっちも好きで運んでんじゃねんだよオバサン」


と、ガラ悪く接すると いつしか大人しくなっていたり…


Nさんが


「今日は誰かに脅されるかもしれないが そんな時は直ぐに俺(Nさん)かO弁護士を呼べ」


と言った時は


「誰に許可を得て荷物を運んでんだ?」


と、チンピラに凄まれものだ…^^;


だから、バイトを始めて、半年が過ぎた頃には 我々バイト学生達は毎回出されるNさんの特異な指示には驚かなくなっていた。


そんなバイトを始めてから半年が過ぎた或る日の事。


我々はいつもの様にNさんの会社のトラックの荷台に載り その日の荷物を運び出す先へと向かった。


その日、作業したのはススキノの外れにあった、とあるマンションの11階の一室。


「今日の現場は ちょっと特殊だから、出来るだけ静かに出来るだけとっとと作業を終わらせろよ」


というのがその日の指示。


と言うのも、その日 我々が荷物を運び出したのは、とあるヤクザの組事務所。


「侠」と一文字筆字で大書きされた額縁や 代紋の入った掛け軸、分厚い黒檀のテーブルなど… 当時はまだビデオデッキすら普及していない時代だからVシネマなどもちろん無い、ゆえに「へぇ~ これがヤクザの事務所?」と私達バイト学生には物珍しくて仕方が無かったのだが、さらに不思議だったのは この事務所なら結構、人がいるんだろうに…という規模や豪勢さのわりに 我々が作業するのを40前後の組員が一人だけ監視する様に立ち会っているだけで それ以外に、誰もその現場に現れなかった事。


さすがに何件も件数をこなしていると我々バイト学生も慣れたもので おそらく一般的な引っ越し屋と比べても荷物の搬出の手際はこなれていたと思う。


あっと言う間に大半の荷物の搬出を終えて そろそろ撤収するぞ…って時に騒ぎが起きた。


突然、意味不明な叫び声をあげながらひとりの男が その組事務所に乱入してきたのだ。


「&%ずぉ$#&’わ&$げ$##」


男は殆ど骸骨と言って良い程、ガリガリに痩せた顔で 血走った目だけがギョロッと妖しい光を発しているが焦点は合っていない。


見るからに上等なスーツだという事は判るのだが、ガリガリに痩せた身体にブカブカのサイズが珍妙で 何故か裸足。


そんな男が なにやら呂律の回らない口調で、しかも何事かを叫びながら その事務所に乱入してきたのだから、高校生のバイト学生には堪らない。


「ふぇめぇは ほほほほざほほほっへふぁがふ」


何を言ってるか我々には判らないが、たぶん怒って異様なまでに興奮してるんだろう事は判る。


呂律と同じ様に足取りも千鳥足なのだが、そんなのおかまいなしに近くのバイト学生を喚きながら掴まえようとするのだが、我々だって逃げる。


すると、何処からかNさんが


「撤収! 作業員はとっとと撤収!」


と、大声で号令をかけ それを合図に我々バイト学生は一目散に事務所から逃げ出した。


怖かった… この時の骸骨親父は しばらく夢で見る程怖かった。


今までの私の人生の中でベスト3に入る恐怖だ。


その逃げる時に 一度だけ、骸骨親父がハッキリとした口調で


「ヤスエ(仮名)! これはオマエの仕業か!」


と、怒鳴ったのを 逃げながらだが、我々バイト学生全員がハッキリと聞いた事だけは覚えているが、そんなのかまっている暇は無い。


我々は転がる様に逃げ、荷物を積み込んだトラックと一緒に 我々を乗せた車は一時的に荷物を保管させる為の空き家へと向かい、そこで荷下ろしを行って その日の作業を終えたのだが…


その後、バイト代のオマケである食事で NさんとO弁護士に連れられて焼肉屋に行った私達は そこで焼き肉を食べている時に


「ビビッたなぁ… あの骸骨親父」


と話題になると 普段は、殆どその日の作業の内容を喋らないNさんが珍しく口を開き


「あの骸骨な 今日の昼まであそこの組事務所の組長だったんだ

 見ての通り、何もかもがブッ壊れてたろ?

 ありゃシャブ(覚醒剤)の末期的な中毒症状でヤクザ用語でいうところの”テンパイ”

 つまり、テンパッちゃったんだな…

 だから、オマエ達が作業に取りかかっている頃、もっと上の組の親分に呼び出されて

 そこで破門を申し渡されていたんだ。」


つまり、上位団体の親分の指示でテッパった組長は破門 組は解散で、組員は上位団体の親分の預かりとなり、組事務所は撤去… 本来なら組員が引っ越しをすればいいのだが、外部への世間体を考え あたかも、マンション内の一般人の引っ越しを装ったのである。


「まぁ、ヤクザの引っ越し…って聞いたら まともな運送屋はみんな体よく断るからな

 引き受けるのは俺ぐらいのモンだろう…」


Nさんは そういって「カカカ」と笑ったが、作業員である我々は


「このオッサンだきゃ…」


と、皆 内心で苦虫を噛み締めていた。^^;


数日後の新聞で その時の骸骨親父が無惨な死に方をしたのが報じられ、それをNさんから喫茶「職安」で教えられて読んだ時、薬物中毒による人間の壊れ方の怖さを我々バイト学生は実感した。




                                                    (その3に続く)


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