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2009年01月31日

● とある、ひと夏の経験(後編)


我々、バイト学生達は黙々と支笏湖のキャンプ場を目指して歩いた。




で、これが小説なら 歩く途中~な出来事がありました…なんて笑い話の一つもエピソードを挿入すべきなんだろうが、現実は何も無く と言うか、それどころじゃなく 我々はただ、黙々と歩くだけだった。


で、地図上 ほぼ中間地点じゃないか?…という地点まで歩くと そこからはジョギングより少し早いペースで走った。


元々、「気の弱い弁護士」を除く我々6人のうち5人は まがいなりにも体育会系の部員だから それなりに体力はあったのだ。


ゆえに、計算上は夜の7時だったが夕方の5時前には目的地に到着し喫茶「職安」の常連さん達から


「ほう、やるじゃねぇか」


と言わせる事に成功したのだが、それでも着いた後はヘトヘトで 用意してくれていた晩御飯のジンギスカンも 殆ど口に出来ぬまま、死んだ様にテントで爆睡。


結局、目が覚めた時には既に朝になっており 前日の残りのジンギスカンを朝食代わりにがっつき、


「あ~、生き返った!」


なんて言いつつも 身体(特に下半身)は筋肉痛でギシギシ(ToT)


朝食を済ませ、後片付けが終わると


「よぉし、じゃぁ札幌に帰るか…」


と、オッサン達に急かされて車に乗り込み帰途につく


車は支笏湖畔の東側を半周し ちょっとした上り坂を過ぎると恵庭岳の横から支笏湖を見下ろせる展望台がある。

恵庭岳 (Sorry, this address cannot be resolved.)

そのパーキングエリアで車を停めると 常連さん達は


「よし、ここで記念撮影だ」


と言って 我々を促して車を降り、支笏湖をバックに写真を撮った。


その時、我々バイト学生は 皆、一抹の嫌な予感というか… 誰ともなしに


「なんか、これ昨日のパターンと似てねぇか?」


「デジャブみたいだ」


「あれ? 弁護士のOさんがニコニコしていっぱいリュックを車から降ろしてるぞ…」


すると、Nさんが


「ハァ~イ オマエらお楽しみ、第2回サバイバル大会で~す」


だと。(ToT)


「オマエ達には これから、札幌の真駒内公園まで歩いて貰います。

 ちなみに、ここから真駒内公園までの距離は 昨日歩いた距離の半分程度なんで安心して下さい

 尚、現在の時刻は10時なので 昨日の実績から午後2時半までにゴールしなければ

 昨日言った、賞金1万円は没収とします。 では、頑張って」


そういうと、そそくさと車に乗り 常連さん達は走り去ってしまった。


残されたのは我々バイト学生と人数分のリュック。


リュックの中身は 何故か、またあんパンとジャムパンが1個ずつに一升瓶一本分の水とバスタオルが一枚に タバコとマッチが1セット。


前日は元気一杯だったが、二日目のその時は筋肉痛で文句も言えない。^^;


「あのオッサン連中 絶対、ぶっ殺す」


「Nさん ありゃ、悪魔だな」


「あぁ、俺にもNさんのケツに尖ったシッポが生えてるのが見えた」


我々は歩き出した。


そして、なんとか時間内にゴールに辿り着いた。


喋る気力もなく、真駒内公園の入り口でのびている私達にNさんは


「たいしたもんだ、見直したぞオマエ達」


そう声を掛けながら1万円札を一枚ずつ渡すと 我々に常連さん達の車に分乗させ家まで送り届けてくれたのだが…


翌日、我々バイト学生達は再度 喫茶「職安」に招集すると、Nさんは我々に紙と鉛筆を渡し


「なぁ? オマエ達、昨日、一昨日歩かされて辛かっただろ?」


と、聞く。


「あたりまえじゃないすか」


「もう、死ぬかと思った」


「Nさん アンタ悪魔でしょ」


我々が口々にそう言うのを笑いながら聞き流し


「例えばの話だ。

 オマエ達が今、これから医者に行ったとしよう…

 そしたら、医者が”アナタの命は せいぜいもってあと1週間ですね”

 そうオマエ達を診断したとしよう。」


我々、バイト学生は言われた通りにイメージした。


「さて、残りの一週間で オマエ達は何をしたいか、それをいくつでも良いから

 その紙に箇条書きで書き出してみろ


 ちなみに、金の事は考えるな。

 有り余る程、金はある… そういう前提でしたい事、欲しいモノ 何でも良いから書け」


と、言った。


2日分の筋肉痛で 椅子に座って紙に字を書くだけなのに身体中のあちこちが痛い。^^


その痛さがあるぶん、余命1週間というのが なんとなくリアルに感じた。


その時に、私が書いたのは今でもハッキリ覚えている。


「横溝正史の小説の舞台、特に岡山県を旅したい」


私は そう書いたのだ。


他のバイト学生達が それぞれ何と書いたのかは知らない。


けど、みんなそれぞれ せいぜい一つか二つしか書かなかったのであろう事は間違い無い。


書けと言われて、数分後には全員が書き終わっていたからだ。


で、全員が書き終わったのを確認すると Nさんは、ずっと前に同じ様に我々に書かせて茶封筒にしまって持って行った紙を 我々に戻し、


「これ、前に オマエ達に

 ”今、オマエが金があったら欲しいモノ”とか、”やってみたい事”を書けって

 書かせた紙なんだけど それをもう一回、見てみろ」


と言う。


そして、


「面白いもんでよ 人生が残り僅かだと悟ると、人間って欲が無くなる…って言うか

 あっても、それが物凄く現実的になるんだよ。


 前に、書かせた時は みんな一杯書いてあるだろ?

 でも、その中には ダメで元々…とか、別に叶わなくてもそんなに困らない事ばかりだろ?


 しかし、さっき、余命一週間って前提で書いた希望って

 せめて、それぐらい叶わないと悔いが残る…みたいなモンなんだよな?


 いいか、よく覚えておいて これからの人生で心がけておけよ

 せめて、それぐらい叶わないと悔いが残る…みたいなモンの為なら金や暇は惜しむな、

 その代わり、悔いが残らねぇ様なモンの為にかける金や暇は無駄だと思え


 その違いが何か?って事は 今回の事を良い教訓に覚えておけよ」


そうNさんは言った。




これまでに何度も喫茶「職安」の常連さん達の中で「屯田兵の御隠居」亡き後、遺産管理のリーダー的だった運送屋のNさんの話を いろんな記事で述べてきたが…


Nさんという人は もし、ポツンと街中の人通りが多い交差点みたいなところに一人で立っていたとしたら 全く目立たない風貌で、知らない人が見たらうだつが上がらない中間管理職を絵に描いた様な人。


普段は陽気にバカ話に興じ、人懐こそうな笑顔でいつでも誰とでも親しくなってしまう話術の持ち主でもあったのだが、時に 何かのスィッチが入ると別人に変身してしまい 目からビームが出てるんじゃないかと思う程、物凄い迫力で相手がヤクザであろうが警官であろうが


「てめぇ、コノヤロウ!」


と、平気で立ち向かう人でもあった。


そんなNさんが イタズラ半分に、私達バイト学生に施してくれた教訓は その後の我々の人生において嫌でも影響を受ける羽目となる。


特に、バイト学生達の中で一番可愛がってもらったのはかくいう私で ゆえに、Nさんと過ごし、薫陶を受けた量も半端なく多い。


私にとっては 自分の実の父、嫁の父親、それと「亡き友」の親父さんに続く 人生における4番目の父親的存在だ。


お駄賃

 気が向いたら…で結構です。^^;

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コメント

参りましたm(^^)m プロローグの中に答えあり! やはり ブタネコさんは....選ばれし者でした。 
縁を大切にするブタネコさんならではのとても素晴らしい経験ですね!!

ブタネコさん、初めまして。毎回楽しみに読まさせて頂いています。ブタネコさんの文章は情景が自然と頭の中に湧いてくるので、読んでいてとても楽しいです。Nさんの話、もっと聞きたいです。

★ きーマン さん

>選ばれし

たまたまです

>縁を大切に

ええ、エコロジーです


★ ユーイチ さん

はじめまして、コメントありがとうございます^^

【※注意!!】

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