● 扉は閉ざされたまま
石持浅海:著 「扉は閉ざされたまま」を読んだ。

祥伝社文庫:刊 ISBN978-4-396-33406-2
相変わらずの微熱続きで 二代目開業医の病院に薬を貰いに行った際、二代目開業医から
「家でおとなしくしてんのか?
だったら、この本をやるから 読んで、感想を聞かせろや」
と言って 私にくれたのが この本。
帯を見ると「このミステリーがすごい!」の書評は なかなか良い所を突いており、06年第2位という部分に ちょっと期待を抱いて読んだ。
さて、この本は「ミステリー小説」である。
ゆえに、以下の記述には極力ネタバレを含まない様に述べるつもりではあるが、この本に興味がある方は 先に、本を購読される事を強くお薦めする。
面白い小説を書く人だなぁ…
読み終わった時に、作者である石持浅海に対して思ったのだが、この「面白い」とは 小説が面白いというより、文体が面白い…という意味。
特に、探偵役が知的に推論を構築していく様は かつての探偵小説を彷彿させるものがある。
しかしながら、この本には というか、この作家には欠点がある。
この本を読んだ人の多くは おそらく犯人の動機に首を傾げるはずだ。
「そんな理由で殺すか?」
と。
正直言って私も 基本的にはそう思う。^^
しかしながら、あくまでも個人的意見で言えば この動機に私は少しばかり、共感を覚える部分もあり、全面的に批難する事は出来ないのだが、それはあくまでも私の人生経験上での話であって とても一般的な話では無い。
しかも、そんな私であっても共感は覚えるが、私は殺したりしない。
むしろ、違う方法で罰するよ… それが、私の個人感。
興味深いのは「光原百合」という作家がこの本の巻末で述べている解説に
「人はこんな理由で 人を殺しうる」
と、述べている点。
言いたい事は判るんだけどね、動機に対して 多くの読者から疑問なり、不快感を呈された時点で その小説は駄作と潔く受け止めるべきだと私は思うんだが 如何であろう?
この作者の視点、論点は 近頃、多く見受けられる推理小説なんだか、恋愛小説なんだか、青春小説なんだか グチャグチャとして良く判らない玉虫色の新進作家に比べ 往年の探偵小説で重要視された 探偵の推理と その推理の説得力を示す斬新な着眼点を持っていると私は素直に認めたいし 持っているのだから、もっと腰の据わった説得力のある動機を提示する作品を書け…と言いたいんだな。
それにね、探偵小説的な推論を構築する上で ともすれば陥りがちなのは、読者に「あ!」と思わせる着眼点 そこを突かれた犯人が己のミスに気づく…という部分に関して 過去の優れた探偵作家達の名作と呼ばれる作品では「あ~なるほどなぁ」と読者に感じさせる説得力があればこその話。
この「扉は閉ざされたまま」における その「あ!」の部分は、作者の御都合 言い換えれば「ひとりよがり」とも受け止められるギリギリの脆さがある。
であるがゆえに、動機に不具合を感じながらも、「面白い」と多くの読者は認めているのであるから、自作では不具合を情状酌量されたり ギリギリの脆さみたいな崖っぷちを歩くのでは無く、堂々と「どっからでもかかってこい」的なプロット構成を示して欲しいと期待したく、作家と名乗る「光原百合」が弁護の様な泣き言を解説で語る必要は全く無い。
