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2008年01月31日

● アヒルと鴨のコインロッカー 原作


「アヒルと鴨のコインロッカー」の原作を読んだ。




因幡の白うさぎ

著:伊坂幸太郎 刊:東京創元社 ISBN4-488-46401-7


「アヒルと鴨のコインロッカー」の原作を読んだ。


先日、原作を読むよりも前に見た映画版「アヒルと鴨のコインロッカー」の記事を掲示したところ いろんな御意見・御感想を頂戴したわけだが、その殆どが原作も読んだ上でのお話しであった為、試しに原作も読んでみた。


で、思った事は「原作もそれなりに面白い本だし、楽しめた。」という事だが、原作も映画と同じ(率直に言えば、原作の方が映画よりも面白いとは思ったが)で 駄作とこき下ろす様な内容では無いけれど、絶賛する程の内容だとも思わなかった。


で、映画の感想記事に寄せられた御意見・御感想に対して 個人的意見を記事にする事で まとめてお応えしようと思う。


ゆえに、大変申し訳ないけれど この記事には「アヒルと鴨のコインロッカー」におけるネタバレが満載なので 未見の方は映画か原作の すくなくてもいずれかを最後まで楽しんだ後に この記事の以下の文を読まれる様に懇願します。




さて、私は映画を見終えた感想の中で


 ・ ブータン人の飢餓感が足りない

 ・ ペット屋の主人の言動や行動の辻褄が合わない

 ・ 約2年後の時点で社会復帰出来ている事があり得るのか?


特に この3点について違和感を抱いた…と述べた。


で、原作を読むにあたって 上の3点については特に注意して読み進めた。


「ブータン人の飢餓感が足りない」という点に関しては 原作も映画と さほど変わらない。


しかしながら、筆者の文章表現力の巧妙さで 映画と違って原作では違和感にはならなかった。


「ペット屋の主人の言動や行動と辻褄が合わない」という点に関しては 原作では「助けられる人は助けたい」と言うペット屋の主人の台詞は映画と同じ様に語られるけど、映画と大きく異なるのは その台詞の前後に河崎(?)とペット屋の主人のいろんな会話があり、そこにペット屋の主人の考え方を補完している部分があるから「辻褄が」という風な違和感にはならなかった。


「約2年後の時点で社会復帰出来ている事があり得るのか?」という点に関しても 原作では生き残った独りの描写があり、それを完全に受け入れる事は出来ずとも、先の二つの問題同様 違和感にはならなかった。


ゆえに、であれば 私は原作を褒めるべきなんだろうけど、そんな気にもなれなかったのは 松田龍平が演じた青年の最期の描き方が納得がいかなかったからであり、これは映画の方に対しても 実は私は納得がいっていない。


つまり、根本的な部分として 事件は瑛太と松田龍平とで起こすべきであって 椎名が関わる必要は無い… と言えば、物語の根底を否定せざるを得ないからだ。


逆説的に言うならば 椎名が巻き込まれるのは本当の河崎が既に他界してしまっているからであり、その河崎が如何にして他界してしまったか?に説得力が無ければ 物語全体の説得力が無くなってしまう…という部分の捉え方なのだ。


そこに私の様に違和感を覚えてしまうと もう駄目だよね。^^;


勝手な想像で言えば 映画の制作者達も 原作における本当の河崎の亡くなり方に違和感を覚えたから 映画での設定描写を変えたんだと思うのね?


で、もし、そうなのであれば、あくまでも変更しようとした事に関しては理解も同意も出来るのだが、残念ながら変更された映画の描き方も リアル感が伴わないくせに、フィクションドラマではありがちな死に方に描いたのは全くもってイタダケないと私は感じたけどね。


発病してしまって もう、出歩く事も出来ない状態になってしまった時に TVのニュースで報じられる反対運動の中で 脳天気にヘラヘラと笑いながらインタビューに御立派な事を言っている加害者の姿を見た河崎が 怒りながらも、なにも出来ずに他界した…みたいな描き方の方が 私には理解出来たのにな…なんて思うのだが如何であろう?




さて、原作と映画では大きく違う部分が一つある。


原作と映画の両方に目を通した方なら 皆、お気づきと思うが、ラストのコインロッカーにまつわる描写で 椎名と河崎の言動が原作と映画では入れ替わったかたちになっているのだ。


なんで この部分、映画の制作者達は入れ替えたんだろう?


映画では 椎名が神様が閉じこめ、河崎は ただ、その作業を眺めている。


原作では 河崎が神様を閉じこめるのだが そこにはもう一つの「あるモノ」と それに書かれたメッセージも閉じこめ、それについて河崎なりの見解が述べられている。


どっちの方が良いのか? それによる私の受け止め方が変わったか?と問われれば 正直言って 私は どっちでも良い。


ただ、この部分が入れ替わっている事に気がついた時、私は 全く違う点について考えてしまった事がある。


それは この「アヒルと鴨のコインロッカー」で描かれた物語の重要な柱の部分にボブ・ディランの「風に吹かれて」という曲がある…という事。


この曲を名曲として世界中の多くの人々が愛している事は言うまでも無い。


でね、ちょっと考えてみて頂きたいんだけど この「風に吹かれて」という曲の詞って どんな内容か貴方は知っていますか?


How many roads must a man walk down Before you call him a man?
Yes, 'n' how many seas must a white dove sail Before she sleeps in the sand?
Yes, 'n' how many times must the cannon balls fly Before they're forever banned?
he answer, my friend, is blowin' in the wind, The answer is blowin' in the wind.

どれだけ道を歩いたら、人として認められるのかな?
いくつの海を渡れば、白いハトは砂の上で安らげるのかな?
何度、弾丸の雨が降ったなら、武器は永遠にいらなくなるのかな?
なぁ、アンタ 吹く風の中にその答えはあるよ


How many times must a man look up Before he can see the sky?
Yes, 'n' how many ears must one man have Before he can hear people cry?
Yes, 'n' how many deaths will it take till he knows That too many people have died?
The answer, my friend, is blowin' in the wind,The answer is blowin' in the wind.

どれだけ見上げたら、青い空が見えるのかな?
いくつの耳をつけてやったら アイツに民衆の叫びが聞こえるのかな?
何人死んだら、こんなに沢山の人が死んだと気づくのかな?
なぁ、アンタ 吹く風の中にその答えはあるよ


How many years can a mountain exist Before it's washed to the sea?
Yes, 'n' how many years can some people exist Before they're allowed to be free?
Yes, 'n' how many times can a man turn his head, Pretending he just doesn't see?
The answer, my friend, is blowin' in the wind, The answer is blowin' in the wind.

山を海で洗い流すには どれだけの期間が必要なのかな?
いつになれば、束縛されている人達が解放されるのかな?
どのぐらい 人って顔を背けて知らんぷりが出来るのかな?
なぁ、アンタ 吹く風の中にその答えはあるよ


上の引用歌詞の訳はブタネコ流なので正確かどうかは保証しない。^^


日本人ってさ、面白いモノで ある歌を「良い歌だ」と評すわりには その歌の歌詞を全く斟酌していない輩が昔から少なく無い。^^;


特に、外国の曲なら 尚更、その傾向が強い。


メロディや歌い方、そしてルックスや声の感じ その辺だけで「良い曲だ」「この曲、大好き」なんて言い 多くの人が支持すれば、それに乗り遅れまいと 何も判っていない癖に「うん、これは名曲」なんて言ってるアホも少なく無い。


名曲として後世まで残っていく曲には その曲の素晴らしさから、その曲を聴いた時に感じた事や 起きた出来事などが記憶として混じり合い、何年も後に その曲を聴いた時、ノスタルジィとなったりする。 


で、この「風に吹かれて」がアメリカでヒットした背景には ベトナム戦争に対する反戦歌としての趣と、もうひとつ 公民権運動のシンボリック・ソングみたいな意味合いで当時の多くの若者達が歌い その時代を彩ったところがある。


で、この公民権運動とは 黒人等に対する人種差別を無くす運動であり、ゆえに「アヒルと鴨とコインロッカー」における ブータン人が日本で味わった疎外感と それを補った琴美や河崎に対しての友情を超えた想い… その主題歌として考えたのが映画「鴨とアヒルのコインロッカー」の演出なんだろうなぁ…と、思う。


もちろん、原作でも その趣は変わらないとは思うのだが、あくまでもブタネコの個人的深読みで述べれば 原作においては「動物を虐待する若者」をも「人種差別する人」と重ね合わせて描いている様に私は感じたわけで…


であるが故に 何故、ブータン人なのか?という設定に関しても ブータン人ならではの

「死んだ人は生まれ変わるからね。動物も人も、みんな。シャッフルだよ」

という考え方を対比させる事で そういう考え方とは違う日本人達の動物や外人への対し方を浮かび上がらせ、歌詞の意味も 公民権の様な背景も全く知りもせず「”風に吹かれて”って曲、良いよねぇ」と脳天気に語る日本人を風刺する意味も込めて描きたかったからの様な気がしてならないからだ。


だから、そういう感覚で映画を見直すと 原作でボブ・ディランの歌声を「神様の声」と記した意味を 本当に理解して映像に描いているのかな?という点に 大いに疑問を感じ、単なる主題歌としてしか扱っていない様に感じるのだ。


つまり、それらの事を考えると、ラストのコインロッカーのシーンでは 歌詞や背景を判っていない椎名に「神様の声を閉じ込めた」なんて台詞を判った様に語らせちゃぁいけない…っていう風に思うんだな 私は。


お駄賃

 気が向いたら…で結構です。^^;

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『伊坂幸太郎』関連の記事

コメント

こんばんは(^^

いつも、伊坂幸太郎の小説を、
「それってありえないとは思うけど…テーマが好きなんだー!」
と、思いながら読んでいました。

でも、今回のブタネコさんの記事を読ませていただいて、
そのテーマの元にある「作家の意図」については、
「今まで全然それは考えていなかったな…」と、
改めて思いました。

これから、再読するときには
今までとはまた違った目線ももって読んでみます!

そうしたら、もしかしたら、
今まで私が「テーマ」だとして思っていたものも
また別の見え方がするのかもしれない…!
と思いました。

★ すもも さん

ブタネコの見方って偏屈ですから どうかお気になされませんよう^^;

ところで、伊坂幸太郎の著書でお薦めって何ですか?

「グラスホッパー」と「重力ピエロ」は読んだので それ以外で御教示頂けますと幸いです。

こんばんは。
またまたお邪魔致します(^^

> ブタネコの見方って偏屈ですから どうかお気になされませんよう^^;

私は、いつも本を読むときに「自分側」に本の世界をもってきて
読むタイプ(自分かってな解釈ともいえる^^;)なのですが、

今回のブタネコさんのレヴューを読んで、
「ブタネコさんは、その世界をもって作家がいわんとしていること
を、真っ直ぐ見据えて読む方なんだなー」と、思ったのです。
(若輩ものの私がいうのも失礼なことかもしれませんが…)

いつも「伊坂小説は、いい!」と、自分の感想だけで終結していた
ので、ブタネコさんのレヴューとっても新鮮で、
むしろ、「なるほど!」と、思い、改めて大好きな伊坂小説に対する興味が
さらにふつふつと再沸騰したのですョ!

ところで、お薦め伊坂本について…

私が一番好きなのは「重力ピエロ」なのですが(^m^

「お薦めは?」と聞かれると、今までずっと
「"終末のフール"と"死神の精度"」と、答えていました。

なぜだろう…?
なぜだか、理由は自分でもわからないのですが(^^;

★ すもも さん

良かった… すももさん はらわたが煮えくり返ってるんじゃないかとビクビクしてたんです。^^;

この本が駄作と感じたならば もっと、おざなりの感想になったと思うんですけどね

個人的な不満はあれども それなりに面白いと思ったんです。

ただ、伊坂幸太郎を語るには 私は彼の本を読んでいないから、もう少し 読んでみたいと思いました。

>「"終末のフール"と"死神の精度"」

御教示ありがとうございます。

早速、取り寄せます。^^


【※注意!!】

この記事は『ブタネコのトラウマ』の倉庫に保管されている記事なのでコメントの投稿は出来ません。 2015年2月10日以降 このクソブログは『ブタネコのトラウマ・リニューアル版』に移転しましたので新規記事更新及び、過去記事へのコメントの受付もそちらで行っておりますので お手数ですが、そちらへの移動をお願い申し上げます。