« 加藤ローサ&村川絵梨 in IQサプリSP | TOPページへ | 働きマン 最終話 »

2007年12月19日

● 取り立てコンサルタントのA


映画「転々」を見て思いだした「取り立てコンサルタントのA」という人物について語ろうと思う。




昔、私がサラリーマンSEを辞めて 喫茶「職安」の常連さん達の仕事を手伝い始めて間も無い頃の事だ。


ある会社が「不渡り」を出し、債権者が群がる…


常連さん達の仕事には「屯田兵の御隠居」と呼ばれた爺さんの遺産である貸しビルや貸倉庫の管理があり、そんな物件の店子が「不渡り発生」となると 当然、家賃や光熱費の回収…として、債権が生じるわけで 自動的に常連さん達が任されていた管理会社も債権者の一人となり、多くの場合 家賃や光熱費の未払いの他に 倒産した会社(人)に対して管理会社が融資している場合もあり、当然その場合は 債権額が増える。


で、常連さん達の管理会社にはコンサルタント的な存在としてAという人物がおり、債権回収という状況が発生した場合 そのAが債務者である人物や会社を調査して どれぐらい回収出来るか、どうやって回収するかを Aのアドバイスを基に決めていた。


で、ある日の事。


常連さん達のリーダー格であった 運送屋のN氏から


「まぁ、ひとつの人生勉強だと思って オマエ(私)はしばらくの間、Aについてまわって、

 Aがどんな風に一仕事終えるかを勉強させてもらえ」


と、私は命じられた。


それに従い、私はAが数件の案件を片付ける作業をついてまわったのだが…


Aは プロの取り立て屋みたいな男だった。


この”みたいな”という表現の理由は 彼は”取り立て屋”が本業なのでは無く 指定された相手に返済能力はあるか? あるとすれば、どのくらいの返済が可能か?を見極めるのが基本的な仕事で ”取り立て”というのはその後のオプションで 毎回では無いけれど 彼が調査の最中にいくばくかの債権を取り立てた場合は 取り立てた額の4割が彼にボーナス的成功報酬と支払われる…って感じだった。




Aの事を知るまでの 私のそれまで抱いていた「取り立て」に関するイメージは たぶん、多くの人が今、抱いているイメージと そんなに変わらないと思う。


毎日、朝から晩まで電話をかけたり、さもなくば朝から晩まで債務者が住んでいる家や部屋を訪れては嫌がらせをする… そんなイメージだ。


実際、そういう取り立てを行う業者は少なく無い。


いわゆる、ヤミ金融だけでは無く TVでCMを流し、さもウチは明るいイメージで…なんてサラ金もしかり、今では銀行や 今では別の会社になってしまったボー○フォンなんて携帯電話の会社ですら 未払い料金の回収が滞ると「アンタはサラ金ですか?」なんて真似を平気でしていたのも私は実際に知っている。^^;


しかしながら、Aは債権者の代理人として債務者のもとを訪ねても 殆どの場合、声を荒げて怒鳴ったり、無意味な嫌がらせをするのを 私は見た事が無く、むしろ、声を荒げる別の債権者をなだめ 時には、そんな債権者に金を出して 債権を安く買い取る事もあり、特に サラ金系の取り立て屋の多くとは面識もあって 債権者のいないところではニコニコと笑い合いながら談笑していた。


そんなAに


「なんでAさんは 怒鳴ったりしないの?」


と、一度だけ私は聞いた事がある。


すると、Aの答えは


「落ち着いて考えてみなよ^^

 本当に金の無い人間からは 脅そうが何をしようが取れないんだよね


 そういう相手に対して いつまでも取れないのに無駄足を運び、

 無駄な経費をかけるのは 変な話だが実にバカバカしい事でしょ?


 それに、怒鳴ったり、喚いたり、脅したり…ってのは 他のヤクザみたいな債権者が

 放っといてもやってくれるわけだから 俺らが真似してもしょうがないのよ^^」


と、いうもので 大抵の場合、Aは優しい口調で債権者に接し、


「他の五月蠅い(ヤクザみたいな)債権者をおとなしくさせてあげるから

 その代わり、俺には嘘や隠し事無しで 金が無いなら無いで良いから、

 正直に話をしてくれよ…」


と、まるで債務者の味方の様に振る舞う。


実は、これって「取り立て」のアメとムチ戦術なのだ。


基本的には情報交換を、場合によっては 他の取り立て屋の債権を格安で保全してやる変わりに、

Aの邪魔を他の債権者はしない…という風に他(特にヤクザ)の取り立て屋達と裏側でAはきちんと手を結んでいる。


で、何故、そんな真似をするかと言うと…


倒産による債務者の場合 大きく分けて3つのパターンがあり、


(1)持ち金がギリギリの状態になるまで粘っての倒産の為、その時点で回収出来る現金が無い

(2)そこそこ現金を持っているけれど 全ての債権をまかなえる金額では無い為、出すに出せない。

(3)事前に倒産する覚悟を決めていた為、それなりの現金を持っているが どうせ倒産なんだと
   開き直り、現金を隠し通そうと思っている。
  

という風にだ。


で、上の1~3の どの状態なのかを正確に見極めないと 債権者側の対応が大きく変わるからでもある。


Vシネマ風だと 取り立て屋の誰かが、先に回収しちゃえば「早い者勝ち」って結果もたしかにある。


でも、現実の取り立てでは そう簡単にはいかないのである。


例えば、上記1や2のケースの場合 現金は多くは無いけれど、倉庫に商品在庫がそれなりにあったり、機械や車や什器備品や不動産など 処分する時間さえかければ それなりの回収が出来るケースも少なく無い。


ところが、銀行も含めて 多くの金融業者の取り立て担当者は「出来るだけ早く現金で回収」ばかりを金融業者の上役から要求されるので、処分する時間的余裕を「そんな悠長な事言ってられるか」と債務者に与えない。


ゆえに、「払いたくても払えない」「”無い所”に”寄越せ”と無理を言う」ばかりの同道巡りを繰り返す事になる。


Aは その間に、在庫や不動産など現金化出来るものを調べて見積もり、いけると判断すれば、ヤクザな金融業者達が同道巡りに飽きる頃合いを見計らって


「とりあえず、債権額面の2割で良ければ買い取ってやるから 債権譲渡しない?」


なんて話を持ちかけ、それに対して


「仕方ないから、うん、良いよ」


と、簡単に応じるのが 当時のヤクザな取り立て屋達だった。




さて、一口に「債務者」と言っても いろんな性格のパターンがある。


ただ、ひたすら謝り続ける者もいれば、開き直って「取れるモンなら取ってみろ」と叫ぶヤツ、何もかもが面倒臭くなって逃げる者もいれば、自分だけ首を吊ったり 家族を巻き込んで排ガス自殺…なんて場合もあった。


で、今回の話の主人公である「取り立てコンサルタントのA」と呼ばれた人物は そういったいろんなパターンの中で どのパターンなのかを見通すのが物凄く巧い人だった。


常に「すいません、すいません」と丁重に謝り続けている債務者と会った後、


「あの野郎、相当な金額を隠し持ってやがる」


と、Aが言えば 実際に後になって金が出てきたし


「取れるモンなら取ってみやがれ」


と、常に強気で開き直っていた債務者と会った後で


「アイツ、へたすりゃ近いうちにふける(逃げる)か 首くくるな」


と、言った時も その言葉通り、1週間後に自殺となった。


私は そんなAの予言が悉く的中するのを最初は驚き、やがては恐怖するに至り


「Aさん、アンタ なんで、そんなに先が見通せるの?」


「Aさん 何を根拠に、債務者が金をどれぐらい隠しているかを推測出来るの?」


と、よく聞いたのだが


「バカヤロウ、それをオマエ(ブタネコ)に教えたら 俺は飯の食い上げだろうが」


と、苦笑しながら教えてくれなかったのだが…


その後、案件を重ねていくうちに


「なぁ、ブタネコ

 オマエはさっきまで会っていた債務者に対して どう思う?」


と、Aは自分の予測を語る前に 私を試す様に質問を浴びせ 私が私なりの推論を述べるのをニヤニヤしながら聞きながら


「う~ん、俺が思うには…」


という前置きで解説してくれるようになった。


私の推論は なかなか当たらなかったが、回数を重ね その都度、Aからアドバイスや教訓を与えられた結果もあって 少しづつ当たる様になった頃、突然 運送屋のNさんに


「ブタネコも随分と”大人”になって けっこう”目が利く”様になったから 俺は引退して故郷に帰るよ」


と、言い出し とある北海道の地方街である故郷に引っ越してしまった。


Nさんは それに対して何も言わず、以後 Aの役目は全て私の役目になったわけだが…


数日後、私はNさんから書類の入った厚めの茶封筒をひとつ渡され


「これを Aに届けてくれや」


と、私に命じた。


ちょうど、Aの住む街の二つ隣の町の案件を処理しに行く必要があったので そのついでに聞いていた住所を探して 私はAを訪ねた。


で、茶封筒を渡しながら


「ねぇ、Aさん もう二度と聞かないし、聞く機会も無いだろうから 最後に、もう一回だけ聞くけど…


 Aさんは、どうして債務者の先が見通せて、金をどれぐらい隠しているかを推測出来る様になったの?」


と、聞くと Aは懐かしい苦笑いを浮かべながら


「それは、俺が 昔、会社を倒産させちまって 屯田兵の御隠居やN専務に追い込まれた人間だからさ…

 今更、言い訳なんかするつもりは無いけどよ…

 その頃の俺はお人好しで いろんなヤツに騙されたり、裏切られたり…

 そんな真似を同じ時期にいっぺんにくらって アッという間に倒産よ


 その時に、とりあえずなけなしの金を屯田兵の御隠居に差し出して

 ”コレしか無いんです 勘弁して下さい”って言ったらさぁ…

 御隠居が ”それ俺に寄越すのはいいけど 他の債権者にはどうすんだ?”って聞くのな

 後から思えば 不思議な爺さんだよなぁ…^^

 切羽詰まってダメだったら 首吊りますよ…って俺が言ったらさ

 ”じゃぁ 死んだつもりで 残りの人生を俺に売れ”って 他の債権者に

 いくら払ったのかは知らないけど、とりあえずその時の債権を整理してくれたんだよ

 で、俺 何すりゃ良いんですか?って御隠居に聞いたらさ

 ”オマエは俺(御隠居)の代理の取り立て屋になれ…”だと^^;

 ”いっぺん、とことんまで追い込まれた経験があるんだから 追い込むヤツと
 追い込まれるヤツの両方の心理をオマエは知ってるだろ?”って言ったんだぜ^^


 だから、種明かしをすると 俺は追い込まれた経験があるから その場しのぎにどう言ったり、

 どう行動するか、身をもって経験してるから、債権者の身振り口ぶりで 嘘か本当かが判るんだよ」


それを聞いて「成程なぁ…」と 私は思った。


さらに Aは続けて


「御隠居が死んだ後も仕事を続けて、オマエ(ブタネコ)に 俺のテクニックを教えたのも

 全ては御隠居に助けて貰った恩返し。


 で、N専務がくれたこの茶封筒は 俺が会社を倒産させた時に担保で取り上げられるはずだった

 この実家の土地・建物の権利書でね、N専務が御隠居の命令で処分しないで保管してくれてたのを

 今回、退職金代わりに…って戻してくれたのさ

 一応、俺の御先祖様からの土地だからね 俺の親父やオフクロが

 俺の倒産の巻き添えで土地を取り上げられずに済んで ここで死んで行けたのも御隠居のお陰なんだ」

と、言った。




まぁ、興味の無い方にはどうでも良い話とは思うが 映画「転々」を見て 久しぶりにAさんの事を思い出したので記した次第だ。^^


お駄賃

 気が向いたら…で結構です。^^;

 この記事への御駄賃がわりに下のバナ-のいずれかを クリックして頂けると嬉しいです。^^
 (全部、クリックしてくれると もの凄く嬉しいのは事実です。^^)

ブログランキング・にほんブログ村へ Blog Ranking 人気映画・TVBLOG blogram投票ボタン BlogPeople「自分のこと」部門にクリック BlogPeople「テレビ」部門にクリック BlogPeople「映画」部門にクリック

『喫茶「職安」の話』関連の記事

コメント

私の大好きな『喫茶「職安」の話』をまた読めて嬉しいです。
このような債権回収の話はマンガの「ナニワ金融道」や「極悪がんぼ」で知ってはいまし
たが、ブタネコさんの文章を読んで現実感が増しました。

「屯田兵の御隠居」は色々いた債務者の中からどうしてAさんを選んだのか分かりませ
んが、でもその目に狂いは無く、きちんと恩を返したAさんと見抜いた御隠居はかっこい
いなとちょっと胸が熱くなりました。

★ こるとん さん

>「ナニワ金融道」や「極悪がんぼ」

「ナニワ金融道」は 原作漫画を殆ど見ましたが、最初の頃のエピソードは特に 興味深いものが多かったですね

TV版は 大げさに弄りすぎてリアル感が薄いです

「極悪がんぼ」は すいません知りません。

>どうしてAさんを選んだのか

簡単な話でして、「素直に謝ったから」なんです。^^;

ブタネコさんへ
御無沙汰しています、冬到来で寒さが厳しくなってきましたが体調にお気をつけ下さい。暫くPCを触れない状況でしたので、久しぶりにブログを楽しませて頂いています。今日のお話しはとても読後感が良いですね、落ちについ頬が緩むというか和まされますね、僕の好きな藤沢周平の短編小説に何か似ています。それとご覧になる映画とDVDの膨大な量に感心を通り越して尊敬の念が生じました、すごいの一言です。僕はスケールの大きい外国映画を主に見てきましたがこれからはブタネコに触発されて日本映画も楽しもうと思います。

★ タンク さん

藤沢周平ですか… じゃぁ、今度は時代劇でも書いてみようかな^^

ブタネコさんへ
コメントを読んで、呼び捨てという大変失礼な事をしでかして申し訳ありませんでした。今後チェックを厳しくして二度と失礼な事はしませんのでお許し下さい。

★ タンク さん

どうか お気になさらずに^^

【※注意!!】

この記事は『ブタネコのトラウマ』の倉庫に保管されている記事なのでコメントの投稿は出来ません。 2015年2月10日以降 このクソブログは『ブタネコのトラウマ・リニューアル版』に移転しましたので新規記事更新及び、過去記事へのコメントの受付もそちらで行っておりますので お手数ですが、そちらへの移動をお願い申し上げます。