● バッテリー
映画「バッテリー」のDVDを入手したので見た。

「あさのあつこ」の原作は 3巻まで読み、その後はまだ読んでいない。
なかなか良い作品だと一般的に評価が高いそうだが、決して駄作だとは思っていないが、2巻、3巻と巻が進む毎に 私は「なんか違う様な…」という違和感が 少しづつだが、大きくなっており それもあって4巻以降を読む気になれず今に至る。
が、「違和感を覚える」と言っても 作品自体が悪いモノだとは思っていないので そこは誤解して欲しくないのだが…。
映画も 出来は決して悪くない。
でも、映画には映画にたいしてのみの違和感がある。
例えば、こんなシーンがある。



母親が不意に肩を掴んだ事に怒る息子、その理由を解説する祖父
原作にも 何度かその様なシーンが描かれているが、これは野球をやっていた者なら不思議な光景では無く、それだけ肩や肘に神経を使うのは ある意味、当たり前となってしまう事なのだが…
昔の野球選手の逸話には 左利きのピッチャーが 寝る時は必ず横向きで左肩を絶対に下にして寝なかった…とか、荷物は常に利き腕じゃない方の手で持つか、肩に提げた…とか、そういう習慣は 今の選手だって少なく無い。
でも、これって野球を知らない人には 意味が判りにくいんだろうなぁ…とは思う。
特に、この主人公である少年は類い希な素質を持ったピッチャ-にありがちな 他者からは傲慢とか不遜に思える態度と それに伴って育まれた異質な性格を表す上で重要なのだが…

であるがゆえに、上の様な格好で その主人公が寝転がる事は 肩だけじゃ無く、肘にも負担をかける事を嫌うはずだから、主人公の様な性格なら絶対にあり得ない。
これって細かい事の様に思われるかもしれないが こういう細かい部分が違和感の元となり、そんなのが積み重なると「駄作」と呼ばれるようになる事を考えてみて頂きたい。


このシーンは 単なる祖父と孫の風変わりな挨拶場面の様に見えて 実はいろんな背景がある。
カーブという球種を覚える事は より打たれ難いピッチャーとなるための研鑽の証
けど、成長期の身体で変化球を多投する事は 肘や肩の関節を痛めやすく 成長期の故障は ピッチャ-としての将来には致命傷となる。
ゆえに、背伸びしようとする孫を祖父が諫めた…シーンでもあり、そこに 孫と祖父 それぞれの考え方や対応をも含んで描いている事になる。
「バッテリー」の原作において 私がとても好感を抱くのは

要所になると この祖父が実に渋い台詞を述べるところ。
ゆえに、映画化のキャスティングが「菅原文太」という点は実に素晴らしいと思うのだが、残念なのは 映画の中では そんな祖父が渋いシーンが思ったよりも少なくなっている事なのだが、これって続編制作を視野に入れているのか?と つい勘ぐりたくなり、それならそれで良しとしたいところでもある。
映画っていろんなジャンルやスタイルがあるけれど、この「バッテリー」みたいなタイプは ほのぼのと眺めて ほんわかした気持ちになれるから とてもありがたい。
特に、高校まで野球部だった私としては 子供の頃の日々がなんか懐かしく いろんな事が思い返される。
10年程前まで プロ野球や高校野球はもちろんの事、知り合いの選手が出場する時には 社会人野球をスタンドに行って応援したものだ。
しかし、ここ数年はTVですら野球は一切 見ない。
何故なら 見ていても全然、楽しくなれず むしろ腹立たしく思う事が多すぎるからだ。
「つかこうへい」の傑作小説に「ジャイアンツは負けない」という本がある。
その中で 野球選手なんてのは 棒っきれで玉をひっぱたく土方だ…という表現がある。
ピッチャーの投げるボールを打つ事が楽しかったし、飛んできたボールを捕り、投げる事が楽しかったのだ。
プロの選手は 途方も無く速い球や、信じられないぐらいに曲がる変化球を投げ、それを軽々と遠くに打ち返すバッターがおり、物凄いスピードの打球を 軽々と捕って華麗にスローイングする内野手…
そんな一挙手一投足に 血湧き肉躍らされたのだ。
阪神の村山や江夏、中日の星野 彼らが王や長嶋相手に見せる気迫は凄まじく 押さえた時の「どうだ!!」という仕草、逆に打たれた時の悲壮感 どちらもファンを魅了してやまなかった。
今の野球には そういう気迫が全く感じられない。
同時に 選手から「楽しさ」も感じられない。
そんな今の野球を見るのは ただ、自分のテンションを下げるだから見ないのだ。
でもね、野球ってのは楽しい(楽しかった)のだ。
練習は辛かったけど、そのおかげで ゴロを巧くさばけるようになったり、巧く打てる様になったと実感した喜びや チームメイト達といろんな事を語り合い、共に過ごした日々は本当に楽しかったのだ。

エンドロールで流れる「熊木杏里」の唄う「春の風」という曲を聴いていたら そんな事をいろいろと思い ホロッと泣けた。
透き通った歌声が とても素敵だ。


