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2007年09月03日

● 「値打ちをつける」という言葉(その1)


「値打ちをつける」という言葉がある。



一般的に、どんな意味かはわざわざ説明する必要も無いだろう。


言葉には 単語としては同じ言葉でも 特殊な業界によっては、一般とは微妙に異なる意味のモノがある。


で、今回は この「値打ちをつける」という言葉の ある特殊な業界での意味について語ってみようと思う。^^;




喫茶「職安」の常連だったO弁護士から「金は活かして使え」と言われた話は


O弁護士の話(その3)


という記事の中で述べた。


で、O弁護士と同様、喫茶「職安」の常連であり、「屯田兵の御隠居」が亡くなった後は 常連達のボス的存在で、かつ、私にとっては人生の師とも言える「運送屋のN」こと N専務からも 別の機会に「金は活かして使え」と 何度も言われた事を最近 何故か 時々、思い出す。


「金を活かす」とは どういう意味かお判りだろうか?


まずは、ちょっと 一服がてら想像してみて頂きたい。^^




ある時の事、何気ない夕暮れ時の喫茶「職安」で 私はどの常連だったかは忘れたが、誰かにたかってミートソ-スを食べていた。


すると、N専務が背広の内ポケットから札入れを取り出し、ピン札の一万円を一枚抜き出して ミートソースをラーメンの様にズルズルと音を立てて食べている私の目の前に置くと


「これ、この前 手伝って貰った夜逃げ作業でよ

 (倒産整理で)引き上げてきた品物が 予想以上に良い値で売れたから、オマエにも分け前やるよ」


と、言った。


その時のバイト代は もう既に貰っており、金額も 一般的なバイトに比べて破格の金額を貰っていたから 本来であれば遠慮すべきなのだが、喫茶「職安」の常連達は 皆、高級クラブで粋な遊び方をする人ばかりだったから


「いえ、この前 充分に頂きましたから」


なんて遠慮しようモノなら


「ガキが格好をつけてんじゃ無ぇ」


とか、


「せっかく差し出した金を引っ込めさせるなんて 恥をかかせるんじゃ無ぇ」


と、怒られたモノで…^^;


だから、私たちバイト学生は そう言う場面に遭遇すると


「すんません、助かります」


と、何が「助かるのか?」知らないが^^; そう言いながら一礼して、とっとと、その金を受け取ってポケットや財布にしまい 平然と何事もなかったかのごとく振る舞うのが自然に身についていた。


で、普段であれば 金を出した常連も 同じように何事も無かったかの如く、


「ねぇ、ママ コイツと俺に コーヒーおかわり」


なんて風になるのだが…


その時のN専務は 余程、暇だったのか 気が向いたのだと思う。


「なぁ? ブタネコ君、予想もしないタイミングで貰う一万円は 価値が違うだろ?」


と、私に聞いた。


そりゃそうだ、私は約束のバイト代を ちゃんと既に貰っており、仮にNさんが予想以上に儲けていようとも それに口を挟める立場では無い。


ゆえに、私にしてみれば 不意に目の前に空から一万円札が一枚降ってきた様なモノで 嬉しくないと言えば嘘になる。


すると、N専務は再び札入れからもう一枚一万円札を抜き出してテーブルの上に置き


「お金ってのは 不思議なモノで 今、オマエが受け取って財布に入れた一万円札も

 このテーブルの上にある一万円札も 額面上は同じ一万円という金額だけど、

 価値が違っちゃっている…という意味が判るか?」


と、言い出した。


その意味が その時の私にはよく判らず、


「価値って? 同じ金額なんですから 同じ価値なんじゃ無いですか?」


と応える私に N専務は苦笑しながら話し始めた。


「あのな、よく落ち着いて考えてみろ

 このテーブルの上の一万円札は ブタネコ君のモノでは無く俺(N専務)のだ。


 ところが、さっき君が受け取った1万円札は 君が私から貰った瞬間に君のモノになった

 一万円が自分のモノになった… 嬉しかったろ?」


「ええ、もちろん」


「しかも、貰えなくても不思議じゃない一万円を貰えて それも嬉しいだろ?」


「ハイ」


「このテーブルの上の俺の一万円札は 君にとって嬉しい存在か?」


「いえ、ただの一万円です」


「でも、オマエの財布の中に入った さっきの一万円札は 少なくとも二つ嬉しい一万円だろ?」


「まぁ、たしかに…」


「そこなんだよ、”嬉しい”って”価値”が違っちゃってないか?」




キツネにつままれたような顔をしている私に さらにN専務の話は続いた。


「例えば、今日は9月3日だな…

 で、仮に ブタネコ君は俺から9月の15日まで…って約束で10万借りてたとしよう」


「はい」


「で、9月3日現在 君の手許には現金が5万円あるだけで、入金の見込みは 今のところ何も無い。

 このままじゃ15日までに俺に10万円を返せそうに無い…

 さぁ、オマエなら どうする?」


「12日間で5万円を稼ぐ努力をします」


「そんなのは 当たり前の話。^^

 でも、12日間生きていくには 毎日、いくらかづつの生活費がかかるわけだから

 そのぶんも稼がないとダメだよな? …って考えると

 15日には生活費で 今持っている5万円すら 殆ど、残っていないかもしれないな?^^」


「誰かから借りて 返します」


「別の人から借りて返すと 当然、その人への利息分が膨らむ また借りて、返して…

 それを繰り返していくウチに 利息ばかりが増えて 気がつけば貸してくれる人がいなくなって…

 人生、終わるな^^」


「どうすれば 良いんですか?」


「返済期日が15日なのであれば それより前の5日とか10日に

 例えば、5万円のうちの3万だけを持って、

 ひとまず、3万円だけですが先にお返ししますので 残りは15日より先、

 出来れば月末、せめて20日まで待って頂けませんか?…って 頭を下げに行くんだよ


 あのな? ”誠意”って言葉があるだろ?


 この言葉って 何故か良い場面では殆ど使われない言葉でな、

 大抵の場合が 怪我をさせらた人とか、犯罪の被害者とか、

 事故で何かを壊された人が 加害者に対して

 ”誠意を見せろ!”って言う台詞でしか使われないんだけど…


 金を借りた人間が 貸した人間に見せるべき”誠意”ってのは

 もちろん、きちんと返済する事なんだけど、

 万が一 返せない場合は 金を貸した人間にかける迷惑の度合いを下げる事が

 ひとつの”誠意”なんだよ


 だから、返済期日よりも前に 少しでも金を持っていって頭を下げるべきなんだ。


 ところが、最近じゃ 世間の風潮が変わってね

 借りた金10万のうち 先に3万円を返しても 残りの7万の猶予を伸ばす奴なんか 殆どいないし、

 どうせ怒られるなら わざわざ先に持って行く必要なんか無い…って

 10万全部を踏み倒す事ばかり考えるんだな^^;


 もしも、貸し主が金融業者であれば ”先に3万だけ…”なんて話は通用しないよ


 でも、友人や身内が相手の時は 少しだけでも先に返すぐらいの誠意を見せなきゃダメなのに、

 その辺が貸す方も借りる方も ごちゃ混ぜになっているんだ」


その時の私には 意味が難しい話だったけど、今思えば Nさんが何を言いたかったのかが よく判る。^^;




数年後、サラリーマンSEを辞め 札幌に戻り、本格的に喫茶「職安」の常連さんたちの仕事を手伝う様になった頃、また Nさんから同じ様な話を聞かされる事になったのだが…


「いいか? 金を貸す時のコツとして 肝に銘じておくべき事のひとつは…


 例えば、ある人物が ある事情で今月末までに100万貸せと言ってきたとする。

 状況を調べてみたら どうやらちゃんと返してくれるか不安が強い…


 そういう場合は もちろん、不安要素があまりに強すぎれば貸さないのが当然だが、

 それまでの付き合い度合いや心情から100万は無理でも10万や20万なら…

 って思える時は 月末じゃなくて、出来るだけ早くに10万なり20万を貸してやれ」


「どうして?」


「早く貸してやれば それが ひとつの「恩」になる

 それに、不安要素が強いのに貸せ…って奴の大抵は 貸して貰えないとそれが簡単に「怨み」に変わり

 ”アイツは~なのに貸してくれなかった” と、自分の立場を棚に上げて 泣き言ばかりを言い続ける。


 仮に10万とはいえ 先に、気持ちよく貸してやっておけば、”気持ちよく貸してくれた恩”を

 死ぬまで忘れずにいてくれる奴が 希にいる。^^;」


それから間もなく ある「金貸し」が死んだ。


その金貸しはまさに「因業爺い」を地でいく人物だったが N専務とは妙にウマがあって友人づきあいをしていた関係で N専務が葬儀委員長を務めた関係で、私も手伝いに駆り出されたのだが…


通夜の読経の後、酒や料理が振る舞われた席で 大半の弔問客が故人の因業ぶりを肴に酔った勢いもあって悪口、罵りが飛び交う中 何人かは故人の遺影に長い時間手を合わせ 部屋の片隅で静かに酒を飲んでいる人達がいた。


灰皿を交換する時に そんな人たちと言葉を交わすと


「あっちの人たちは悪口で盛り上がってるけどね 私は本当に故人に救って貰って感謝してるんです」


と言った。


その時、N専務の言った事の意味の大体を判ったつもりになった私だったが、それが実は意味の半分にもなっていなかったと知ったのは もっと後の事。^^;


(その2に続く)


お駄賃

 気が向いたら…で結構です。^^;

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コメント

「喫茶 職安」の話ですね~。
やっぱりこのカテゴリーは、わくわく、ドキドキします。
続きが楽しみです^^

ブタネコさんへ
ご無沙汰しています、ドラマのこだわった解説も楽しみですが、このお話しのような経験談は普通のサラリーマン生活を送った人間にとって、とても新鮮で興味深いものがあります。第2段を楽しみにしています。振り帰ってみて社会人の時はお金は必要だから使うと言う程度にしか気を使っていませんでした、ブタネコさんの諸先輩のような苦言を呈してくれる先輩も居ませんでしたし生かすような使い方をしたかまるっきり自信はありません。

★ しき さん

そうなんですか?^^;


★ タンク さん

活かさないと すぐ没落する稼業なもんで^^;


【※注意!!】

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