● 敵兵を救助せよ!
著:恵隆之介 発刊:草思社 ISBN4-7942-1499-5
「敵兵を救助せよ!」という本を読んだ。
この本を知るキッカケとなったのは 4月19日にフジ系で放送された『奇跡体験!アンビリバボー』という番組で紹介されたから
翌日、札幌市内で最大(嘘か真かは知らないが関東以北最大)と自称している本屋に行ったところ、売ってたので迷わずに買い いくつかの用事を済ませて自宅に戻った私は 早速、読み進めたわけだが…
読み進んでいくウチに 目頭が熱くなり、終いにはポロポロと涙がこぼれた。
この本は「漢(おとこ)」の本だ。
本で書かれた 駆逐艦「雷(いかづち)」艦長 工藤俊作中佐も 紛れもない「漢」だが、
この本を記した恵氏も「漢」だ。
戦後、この書で記された出来事が周知されずに60年が過ぎてしまったのは 日本人関係者で生存し戦後を過ごした方が少なかった事が最大の理由だが、
当事者である工藤俊作氏が昭和54年まで存命でありながら ある事情により、戦中の話を誰にもしなかったから。
「黙して語らず」は ひとつの「漢」の姿ではある。
でも、工藤氏の黙する「事情」は深く その心中を察するに余りある。
概要をザックリと述べると…
太平洋戦争の最中、インドネシアとボルネオの間にあるジャワ海で海戦が行われた後 日本軍に乗艦を撃沈されたイギリスやオランダの将兵を 撃沈した側である日本軍の駆逐艦が救助した…という話である。
こう述べてしまうと 平和ボケの現代日本人には 大した話には映らないと思う。
しかし、「敵兵を救助せよ!」という書で著者である恵氏は それまでの当時の状況や背景など経緯を克明に説明した上で この出来事に秘められた真実を書で表している。
その恵氏が出来事を知り、調べてみようと思い立つキッカケが
救助された英軍将兵の中に 後に、外交官として「サー」の称号を与えられるまでに活躍したサムエル・フォール卿がおり、平成15年に 救助された時の事に礼を言うために来日した事にある。
フォール卿は
「マイ・ラッキー・ライフ」という自著の中でも その事について述べている。
重要な事は 戦後、日本軍の行った事は全てが悪…みたいな風潮ばかりが語り継がれ 普段であれば善行とさえ呼ばれる行為ですら 戦争の中での行いであれば「戦争=悪」という単純図式の結果 黙殺されたり、触れることすら悪い様な雰囲気にすらなっている日本という国のデタラメさを考え直せ…という事。
戦争を賛美する気は全く無い。
でも、「戦争=悪」と単純に決めつける考え方には 私は納得出来ない。
戦争を否定する事と、戦争で没した先人達を黙殺する事とは全く別の話であると私は考えるが、「戦争=悪」を唱え続ける多くの方は 戦没者に線香を挙げる事には無関心なアホが多い以上 そんな輩と同調できるか!という気持ちが 私は強いからだ。
戦争中の出来事を 戦後、語らぬまま過ごす従軍者の数は少なく無い。
それは、戦勝国であるアメリカでも同様で その理由の殆どは戦争中に体験した戦友達の最期や戦場での現実に それらを語る気持ちが失われるからであり、同時に 戦争中に 逃げ回ったり、何もしていない者が さも、自分が活躍したかの如くホラを吹きまくる輩に変身する様を見て辟易させられたせいだ…等の話もある。
大事なことは 何が事実で、何がデタラメかを全く検証しようとしない結果が そんな法螺吹き野郎までのさばらせる結果になっている…という事。
無意味に「美談」だとか「善行」だとかと賛美する必要は無い。
しかし、事実として「こういう事がありました」と知らしめる事は重要な事。
敵兵を救助した…という話を含め いわゆる「武士道」を以て従軍した将兵が少なくなかった事は「敵兵を救助せよ!」という書の中で 駆逐艦「雷」の事例以外にも紹介されており、それらを末裔である我々は知っておく必要がある。
同時に、人の話まで自分の話に置き換え美化までして語りたがるアホの事例も紹介されており それも知っておく必要がある。
勝手な想像だが、工藤俊作氏が「雷」の艦長では無く 一人の士官乗組員であれば、没していった方々の名誉のために広く語り継いだのではないだろうか? 工藤氏が指揮官である艦長であったが故に 己の美談として広めるのを潔しとしなかったのではなかろうか?
そう思うと、第三者として この書を記し、語り継いだ恵氏の行為は没していった「雷」乗組員達への大いなる慰霊に繋がったと私は信じたい。
艦全体で武士道を発揮した駆逐艦「雷」の その後の最期と、壮烈に没した乗組員の方々をこの書を読んで知ると 涙が止まらなかった。
