« 花とアリス | TOPページへ | 宿命 »

2007年02月03日

● 万年筆と懐中時計


映画「花とアリス」を見て 思い出した事と、最近の雑感と それぞれを語ってみる。




さて、今回の話を記述するにあたり…


以前、『贈り物』という記事をはじめとして プレゼントについて持論を何度か述べた事があるが、今回の話は もしかしたら それらと矛盾して聞こえるかもしれない。


それが少しだけ心配なのだが、まぁ それは私の文章表現の拙さだと笑ってお許し頂きたい。^^;


で、まずは そのキッカケとなったシーンを挙げると


画像

画像

画像

進学祝いに「万年筆」を娘(蒼井優)に渡し 訥々と万年筆にした理由を述べる父親(平泉成)




ちょうど、高校3年の冬休みになったばかりの頃。


私をはじめとする喫茶「職安」バイト学生は大学入試目前という時期でもあったが、


「一日中、勉強したって息が詰まるだけ」


と称して さすがにバイトは ほどほどにしていたけど、毎日の様に喫茶「職安」に屯していた。


そんな ある日の事、「屯田兵の御隠居」亡き後 喫茶「職安」の常連達のリーダー格だった 運送屋のN専務が、


「おう、良い機会だから 今度の12月25日に バイト学生は全員、3時に ここに集合しろ 判ったな?」


と 我々に命じた。


で、その25日の3時に集合した我々だったが 店には常連の主だった人達も集まっていて


「いったい、何だろう?」


と、ドキドキしていた私達バイト学生に


「オマエ達には バイトで色々と頑張って貰ったから、本当なら大学に合格した時に”合格祝い”にしようと

 最初は考えたんだけど、もしかしたら 1人や2人、試験に落ちで浪人する奴がいるかもしれないし…

 かと言って、”卒業祝い”って考えたら 高校3年の冬休みで 今更、卒業できないアホでも無いだろうし…

 段取り踏んで卒業式の後…って言ったって その頃には、何人かは東京に行ってる可能性も多いだろ?

 だから、ちょっと早いけど この時期に オマエ達にお揃いの”卒業祝い”を 俺達からまとめて

 プレゼントしてやる事にしたんだ」


と、N専務が言いい、我々バイト学生個々に 品物の入った小さな手提げ袋を 一つずつ、名前を確かめながら渡してくれた。


「開けてもいいスか?」


バイト学生の誰かが聞くと 常連さん達は誰ともなしに


「おう、開けろ開けろ」


と、言う。


手提げ袋の中を覗くと 真四角の立方体の箱と 少し、細長い箱が ひとつずつ綺麗に、しかも高級感タップリに包装されていて…


真四角の立方体の箱を開けたら パカッと2枚貝のように開く高級そうな箱が入っていて、それをパカッと開けたら銀色の懐中時計が入っていた。


当時は、物の価値なんか判らない小僧だったけど、そんな小僧にも


「こりゃ、高いぞ」


って判る光り方と重量感のある懐中時計で K鮨の親方が


「それ、本物のプラチナだからな^^ 真面目に高いぞ」


と、笑い。


私が 手提げ袋の中の もう一つの細長い箱を開けると 中には「PARKER」という刻印の入った やはり、それぞれがズッシリと重みがある万年筆とボールペンのセットが入っており…


O弁護士が


「何が良いか 皆で考えたんだけどよ、

 結果的に その懐中時計と その万年筆にしよう…って事になった理由を 今は教えない。

 この先、4年経ったら教えてやるから オマエ達が大学を卒業するまでの4年間 ゆっくり考えてみな


 ただ、一つだけ 先に言っておくと 懐中時計はともかく、万年筆は最初は馴染まず書きづらいかもしれないけど

 騙されたと思って 出来るだけ、使い込め。


 大学に行くと やたらとレポート提出を要求する教官は多いし、

 その中には 鉛筆書きは絶対にダメ、万年筆やボールペンで書いて来い…ってのも少なく無いはずだから


 そういう時には我慢してでも この万年筆を必ず使え セットのボールペンはな あくまでも飾りみたいに

 思って、どうでもいい書類は それで書け^^」


と、言った。


その後、4年間 我々バイト学生達は 1人も浪人せず、進学後に留年もせず 無事に4年で(一部、大学院進学やインターンへと進んだ者もいるが)卒業した。


で、O弁護士が我々に与えた「宿題」の答えについて ちと、想像してみて頂きたい。^^;




「花とアリス」では 以下の様な会話が交わされる。


画像

画像

画像

画像

画像

画像

画像

画像

画像

画像

画像

画像

画像

画像

画像

画像

画像

画像

画像

画像

画像

画像

「まぁ、定番だけど…」

   ・
   ・
   ・

「その点うまくできてるんだよ万寝筆は」


多くの方々には 確かにその通りで説得力があるとは思う。


けど、職種や立場によっては「万年筆」は必需品なのだ。

(今の時代では話は別かもしれないが^^;)


訴状、上申書、カルテ、申請書、契約書、念書…


まあ、当時もボールペンは既にあったが…^^;


私がそうなのだが、ボールペンで文字を書くのって なんか思い通りの字にならない時がある。


同時に、字を雑に書いてしまう感が強い。


万年筆を使うと、一字ずつ、結構 気を使いながら書くクセがつくし、何故か妙に 漢字で書ける文字は漢字を使わなきゃ…と 意識するようになる。


つまり、結果的に 漢字を覚え、けっして綺麗な字では無くとも 丁寧な文字を書くようになるし、万年筆を使う事により 間違って書き直したくないから一言一句に気を付ける習慣が身に付き それは我々の今の職業上 とても重要な事でもある。


万年筆って ペン先が新しいと引っ掛かる感じがして書きにくい。


だから、最初は珍しがって使うけど いつしか放っぽらかしてしまう人が多いようだけどね、使い続けるとペン先がこなれて気にならなくなるし、他のメーカーや同じパーカーでも 違うタイプの万寝筆だと話は違うのかもしれないが 私達が貰った万年筆はペン先の角度が調整でき、ペンを持つところが微妙な三角形にデザインされていて とても持ちやすい。


案外、愛用し続けると ボールペンなんか使いたくなくなるぐらい書きやすくなるのだ。


それと、あまり知られていない事だが 万年筆のインクって 黒と青の2色と思っている人がいるが 例えばパーカーの場合だと 黒と青の間に 濃い紺や薄い紺という感じでバリエーションが何段階かある。


これを利用すると 例えば、契約書の等の署名とかの場合に 必ず、その愛用の万年筆で こだわったインクを使い続けると 万が一の場合に法的にとか判例的にという意味とは別に 第三者に偽造されにくい…とか、仲間の間で 本当に本人が書いたか否かを見極める隠し符号にもなる。


私が大学生だった当時は まだ、レポートを万年筆で書く学生は多かったのだが、今の時代になって 契約書の署名欄に万年筆で書き込む人は あまり多くない。


年々 万年筆の利用者は減る一方なので 希少価値もあり、ひとつの拘りとも自負できる事にもなっている。


そういう、実質的利益には直接繋がらないが 目に見えない利点が色々とあるんだな。


しかも、その万年筆を常連の誰が品定めをしたのか判らないが 我々が貰った万年筆って 当時でもべらぼうに高い値段だったらしいが、今では 希少価値のアンティーク品として 程度によっては買った時の値段よりも はるかに高いプレミアになっていたりもする。^^;


で、O弁護士が万年筆に関して 4年間使い込め…という 言葉の真の意味は


ひとつの万年筆を4年間使い込むと 手放せない一品になる…という意味でもある。


ただ、4年間使い込める万年筆は それなりに吟味された高価な物の方が良く、現実に  我々が貰った万年筆は それから30年近く過ぎた今でも何度かペン先は交換したが、現役の愛用品のままである。


そして、肝心な もうひとつの事が「花とアリス」の父親の台詞の中にある。


「ああ、そういえば こんなもんもらったな とか思いつつ」


って部分。


この万年筆使って 手紙なんか書いてると、ふと思い出すんだな 常連さん達を^^


「オッサン達、たまには思い出せよ…って事だったのか^^;」


最近になって ようやく判ったよ その意味が。


仕事に必需品で 愛用の一品に そんな”呪い”^^;を込めやがったのだ。




懐中時計に関して言えば…


万年筆と似て非なる理由である。


O弁護士は 大学を卒業した我々に


「これからの時代、懐中時計なんかを わざわざ自分で買う奴は 余程の物好きぐらいのものだろう…

 自分じゃ買わないけど、貰えば嬉しい…ってのは 記念品の極意だろ?

 しかも、この先 下手したら、懐中時計そのものの存在価値が薄れるか、成金趣味のミエの道具になるだろう…

 だったら、今のウチに 良い”懐中時計”を身に付けて馴染ませておけば 将来、間違って

 オマエ等が成金にでもなった時に

 ”俺は昨日今日の目利きで この懐中時計を持ってんじゃねぇ”って 言ってやれ^^


 こういう道具って不思議なモンで 身に付け慣れてるかいないかが ハッキリ判るんだよ


 それに、懐中時計の裏に オマエ達の名前や生年月日や血液型や彫ってあるだろ?

 それ身に付けて どこかで倒れても 兵隊のドッグタグ(認識票)と同じで 何かの時に役に立つ

 もちろん、プラチナだから 売れば良い値段にもなるしな^^


 ただな、本当の意味は もっとクダラナイ事なんだ。


 俺達はな オマエ等がスリーピースの似合う男になって欲しいんだよ。


 俺達の世代じゃ スリーピースってのは それなりの地位で貫禄があって初めて似合うと見なされたもんさ


 で、スリーピースのベストには 腹の所に小さなポケットがあるんだが、そのポケットは 懐中時計を入れるために

 付けられる様になった…って話があるのを知ってるか?

 それが、嘘か本当かは 俺も知らないけど、スリーピース着て 懐中時計を持ってない…ってのは

 画龍点睛を欠くってもんだ。


 要は そんな風に スリーピースに懐中時計付けて それが似合う貫禄の男になれ…って事さ^^」


O弁護士は そう言っていた。


けどね、本当の意味は やはり、それだけじゃ無い。^^;


だって、我々が貰った懐中時計には 文字盤を隠すプッシュで開く蓋がついているのだが、時刻を見ようと その蓋を開けると 蓋の裏側に



贈 @@@会(「屯田兵の御隠居」が他界した時に 世話になった人達が御隠居を偲んで作った親睦会)


この時計を「屯田兵の御隠居」の形見代わりに ブタネコ君に託す



と、わざわざ彫ってあるのだ。^^;


これじゃぁ、時間を見ようとする度に 常連さん達を思い出すし、売るわけにもいかないじゃん^^;


でもね、これはこれで我々バイト学生には意味がある。


大事な席にはスリーピースを着て 腹のポケットに この懐中時計をしのばせると、自然と ビッとした気分になる。


それが実印なり、社判を押す様な重要な文書を取り交わしたり、提出する場であれば 署名欄には愛用の万寝筆でしか書かない事にしているから ダブルで気が入る。


するとね、自然にケアレスミスなんか出来ない雰囲気にもなるし神経も張る。


これは 考え方を変えると まさに「お守り」でもあるのだ。^^


実際の所、万年筆を貰い まず、大学の4年間で使い込みながら我々が考えたO弁護士の宿題への解答は甘かった。^^;


けど、万年筆と懐中時計をくれた常連さん達の意図は そういう「謎かけ」を我々に与えることで、一人前になって 責任のある仕事をする時の為に、気構えや 素養を身に付ける大きな意味でもあった…という事を 30年近くなって 身に染みるほど実感する。


と、同時に 万年筆と懐中時計は 結果的に「屯田兵の御隠居」だけでは無く、常連さん達みんなからの「形見」となってしまったわけでもあり、ちょうど 今の我々が、喫茶「職安」に集った当時の常連さん達の年代に達し、あのオッサン達に負けてないだろうか?と身を律する事を忘れさせてくれない品でもある。


よく、N専務は「金は活かして使え」とか「常に一石二鳥どころか 三鳥、四鳥を考えろ」と口にしていたが、形見でもあり、お守りでもあり、知識や素養を身に付ける道具でもあり、売れば金にもなる… まさに、N専務が行ってた通りの仕儀なんだな。^^


今春、娘と姪が卒業する。


親戚達は「お祝い送るから楽しみにしていてね」と 娘や姪に言ってるそうだが、私は その娘達に


「いいか、ロクでも無い物を寄越した奴を大事にする事なんか無い。

 ”とりあえず、何が欲しいか判らないから お金を送るわね”

 って奴には この先、何かでお返しなり、贈り物をする時に その金を返すつもりで現金を送ってやれ、

 その代わり、何か考えた上で意味を込めてある物を送ってくれた人は

 その意味を 充分に よく考えた上で付き合いを大切にしろよ。」


と、私は言っている。




お駄賃

 気が向いたら…で結構です。^^;

 この記事への御駄賃がわりに下のバナ-のいずれかを クリックして頂けると嬉しいです。^^
 (全部、クリックしてくれると もの凄く嬉しいのは事実です。^^)

ブログランキング・にほんブログ村へ Blog Ranking 人気映画・TVBLOG blogram投票ボタン BlogPeople「自分のこと」部門にクリック BlogPeople「テレビ」部門にクリック BlogPeople「映画」部門にクリック

『喫茶「職安」の話』関連の記事

コメント

ブタネコさん、久しぶりにコメントさせていただきます。
ブログも快調で、きっと体調もいいんだろうなとひそかに安心しておりました。

さて、今回もいい話でした。
職安の「いい大人たち」との触れあい、羨ましく思えます。
(日ごろは厳しいおやじ達だったんでしょうが)

「教育」などというと大げさかもしれませんが、今時なかなか
他人の子にこんな教育誰もしてくれませんよね。


この話に激しく反応してしまったのは2つ理由があります。
1つ。
一昨年父をなくしたのですが、この父から高校生になるときに
プレゼントされたのが、モンブランの万年筆。
形見分けでもらったのが、やはり父の別のモンブランの万年筆でした。
でも、父はN専務のように謎掛けはしてくれませんでしたよ。
ブタネコさんの記事を読んで、思慮がたらなんだなぁと。

ケアレスミスも出来ない緊張感、激しく同意します^^。

さらに、大学卒業したときの父のプレゼントが、
セイコーのキングクォーツ(当時は最高級品だったと記憶)。
25年以上たった今も愛用してます^^。
母にそのことを話したら、「死ぬ前に言ってやれば喜んだのに」
でもね、わざわざそんなこと恩着せがましく言うのもね。

反応したもうひとつの理由。
平泉成のせりふ。
○和証券の伊東美咲とのコマーシャルを連想。
知ってます? 実は、いつもブタネコさんと娘さん(または姪御さん)
との会話はこんなんじゃないかなぁ、と思っておりましたので。

長々と失礼しました。
表題の「雑感」というのが油断できないんだよなぁ、いい話が多いんだモン!

ブタネコさんへ
今日のエピソードも良いですね、挿入の絵もとてもマッチしている上に最期のブタネコ節炸裂で心にしみますね。又一つ勉強させてもらいました。万年筆の思い出としては漫画を少しかじったことがあるのでGペン?を使用していたのを思い出しました。ペン先が広がって絵を描くのにとても使いやすかったです。最近の贈り物はもっぱらお金で済ましていたのでこれからはすこし反省して心のこもったものを贈りたいと思ったのですが、この年になるともうそんなに贈る相手のエベントがない、残りは甥や姪の結婚式位ですが、その時はお金のほうが重宝されそうですしね。

こんばんは。
ブタネコさんの記事、そして皆さまのコメントを読んでおりますと、
プレゼントっていいなぁと心が暖かくなります。

わたしの父(故)はわたしが社会人になるとき、実印をプレゼントしてくれました。
そんなに頻繁に使うものではないですが、昔は実印は高かったこともあり
結構ありがたく思っておりました。

そして、わたしは割りにいい年をした女性なのですが
その実印を未だブランクなく、ずっ~と使っております^^

そういうことで父が実印をくれたのかと思うと
何だか複雑な思いです^^;

★ おじさん さん


ども、お久しぶりです。^^


>思慮がたらなんだなぁと。


そんな事無いと思いますよ^^

御尊父が自分で使って良いと思われたから 入学祝いのプレゼントにしたんじゃないでしょうか? だからこそ、謎かけなんかする必要も無かったでしょうし…^^

でも、謎かけなんかせずとも 形見の品…って その品物で たまに思い出してあげるためにあるんだろうなぁ…なんて思うんですね私は まぁ、それもオッサン達が謎かけしてくれたせいかもしれませんけど^^;


>セイコーのキングクォーツ(当時は最高級品だったと記憶)。


最高級だったと私も記憶してます。^^


>25年以上たった今も愛用してます^^。


最近は見栄で高級品を買い求め、実用性とか耐久性が軽視されがちなのが嫌ですね^^;

メーカーも「高い方が売れる」なんて考えて 実際にはそんな価値の無いモノに「高級な材質を使った」なんて わざと高値設定にして売ってるモノまであるし^^;

だからこそ、当時の高級品が如何に高級品だったかは 今になってよく判りますよね


>母にそのことを話したら、「死ぬ前に言ってやれば喜んだのに」
>でもね、わざわざそんなこと恩着せがましく言うのもね。


お気持ち、よく判ります。^^


>○和証券の伊東美咲とのコマーシャルを連想。


ええ、知ってます。^^;


あれ、最初に見た時に 嫁がゲラゲラ笑ってましたから(ToT)


★ タンク さん


>その時はお金のほうが重宝されそうですしね。


実際には 私も そうですよ^^


気持ちを込めて贈りたい相手が なかなか、そうそういませんしね^^;


★ pu-pu-pu さん


>実印


財布と印鑑は 人から貰うモノ…

ある、縁起かつぎに拘る知人が言っていたのを思い出しました。^^


だから、私も、娘と姪に 実印を作ってやりましたよ^^

(財布は 何個も買わされてます(ToT))

【※注意!!】

この記事は『ブタネコのトラウマ』の倉庫に保管されている記事なのでコメントの投稿は出来ません。 2015年2月10日以降 このクソブログは『ブタネコのトラウマ・リニューアル版』に移転しましたので新規記事更新及び、過去記事へのコメントの受付もそちらで行っておりますので お手数ですが、そちらへの移動をお願い申し上げます。