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2007年01月24日

● 南紀勝浦(和歌山県)


今から10数年前 嫁と一緒に旅に行った事がある。



和歌山県東牟婁郡那智勝浦町 (Sorry, this address cannot be resolved.)


ポコッと4日間の休みが取れる事になり、


「旅行でもするか?」


と、私が言ったのがキッカケだ。


どこに行こうか… 


一人旅ならば 私の場合、面白かった本の舞台になった場所や 仮につまらなかった映画やTVドラマでも 惹かれた風景が印象的で記憶に残っていれば ふと「~に行ってみたいな…」となり、その優先度の高い順に即決した場所に行く。


しかし、独身時代なら彼女と 結婚後なら嫁と「二人で」という旅行の場合 何処に行こうかと話し合うのも楽しい時間。


特に、ウチの嫁の場合は 嫁の御意向は後々に私の食生活や家庭環境に影響を及ぼす可能性が大なので 充分に気をつけねばならない^^;


ところが、その時は 特に嫁の御意向は定まっておらず、であるが故に 二人で希望を述べ合ったのだが、なかなか合意に至らず


「じゃぁ、いっその事 二人とも今まで行った事の無い場所にしよう」


という事になり、互いの未踏の地を比べたところ「和歌山」と「富山」が候補に挙がり…


ちょうど季節が冬だった事もあって、南の和歌山で…って事になり、


「そう言えば、2・3日前にTVの旅行番組で「那智勝浦」を見たんだけど、良さそうなところだったわよ…」


ま、そんな安易な決まり方だったわけだが…^^;


夫婦揃って北海道人の場合 どうしても関西より先への縁が薄い。


とは言え、出張で飛び回っていた私は 大概の都市部はまわっていたし…


都市部を結ぶ 主要な幹線路線は列車の窓から眺めていたし…


って考えると 和歌山、特に南紀は 私みたいな者には なかなかキッカケすら難しい場所なんだな


だから、私にとっても「こりゃ、いい機会かもしれないな」と思ったわけだ。




…って事で まだ、小学生だった娘と姪を嫁の両親に預けて旅立ったわけだ。


まぁ、新婚旅行気分だったのは否めない。


景色も良いし、食べ物も美味しく 何よりも海岸を眺めるロケーションでの露天風呂、それと入り組んだ地形を利用した洞窟風呂…


まさに野趣タップリの良い場所の様でもある。


ところが… だ。


2月の那智勝浦に旅行…ってのは 季節外れだったんだな


町も旅館も閑散としていて観光客の姿が乏しい。


ま、元々 へそ曲がりな私は たとえば夏休み時期の軽井沢の様に 観光客でごった返した様な雰囲気は好きじゃ無い。


ほんの僅かな期間に「せっかく来たんだから」って意識丸出しで あちこちと巡り歩き、疲れ果てる様な観光客にはなりたくない…って意識が強い


だから、人出が少ないのは もっけの幸いと、喜んでいたのだが…


「いやぁ、閑散期だから 旅館にも人がおりませんで、本来のサービスが出来ない部分もあります事を御了承願います」


確かに、予約を入れる際に 電話の向こうで予約係が そんな事を言ったのは記憶にある。


で、実際に 旅館についてみたら 旅館の建物じたいはわりと新しく、リゾート・ホテルと言ってもいいぐらい大きく… ところが、出迎えてくれたのは みるからに身体の具合の悪そうな 青白い顔色で痩せこけた番頭風のオジサンと 本人は笑っているつもりでも 私には「ツマンネ」って顔の女中さん


しかも、部屋に通されてからも


「本当なら サウナを楽しんでいただけるんですが… 現在は点検中で…

 本当なら 館内のスナックでカラオケなんかも楽しんで頂けるんですが… 現在は点検中で…

 本当なら 館内の売店でお土産をお買い求め頂けるんですが… 現在は改装中で…

 本当なら 宴会場で黒潮太鼓を楽しんでいただけるんですが… 現在はアレで…」


「ようこそお越し下さいました」の後は聞きもしないのに「スイマセン」と言い訳の連発で


「いや、別に 風呂に入って 飯を食ってナンボだから いいよいいよ」


と、私が言えば 嫁も「そうそう お構いなく」なんて言ってる始末。^^;


案内の女中が立ち去ると 私と嫁は宿の浴衣に着替え、「まずは 温泉でしょ」って事で廊下の案内表示に従い「洞窟風呂」へと向かったのだが…


洞窟風呂の入り口の所まで行くと 照明は薄暗く、人の気配も無いし 風呂場特有の湿り気のある温もりすらも無い… というか、寒い^^;


しかも よく見ると、入り口に「現在、点検中」と 下手くそな字でコピー用紙にマジックで書きなぐったビラがセロテープで貼ってある。


「仕方無ぇなぁ…」と 入り口横にあった電話型のインターホンを取り、フロントを呼び出すと


「あぁ、申し訳ありません 露天風呂のほうでしたら、今すぐにでも御入浴が可能です」


との事なの 嫁と二人で、露天風呂の方に行くと…


先ほど、部屋まで案内してくれた女中さんが露天風呂の入り口で待っており、私たちの姿を見ると


「お客様、実は 現在、男性用の露天風呂は使用できませんので 出来ましたら、女性用を混浴で御利用願えませんか?」


と言う


「仕方無ぇなぁ…」


と、口では言いつつ 内心、ちょっと嬉しい私だったが 嫁は


「他の男性客も一緒なの?」


と、チェックは怠らない。^^;


「いえ、お客様お二方が入浴中は貸切にさせて頂きますので 他の方は…」


そう聞くなり、ガッカリの私と


「なら、良いわ」


と、さっさと入っていく嫁


まぁ、普通だったら「なんだ、このサービスは」と怒る人の方が多いかもしれない。


でもね、観光地の旅館なんて 実際には どこに行ってもこんなもので その地域の賑わう季節だと 人でも多ければ、それを見込んだ食べ物屋やお土産屋も人が賑わって活気がある。


が、そんなシーズンのは真逆の閑散期に訪れると 旅館じたいが休みになっていたり、従業員も季節雇用の為、少なくて 旅館の中じたいも閑散としている。


私みたいなタイプは 世話を焼かれるのが鬱陶しく感じるし、人が賑わっているのは 実はあまり好きではなく、閑散期に ひとりでブラブラするのが好きだから、むしろ この時の雰囲気が好ましい。


ウチの嫁も その辺は似ていて、実際に風呂から出た後、「~に行こう」なんて考えは無く、部屋から海を望めるように張り出したベランダの椅子に腰を下ろし、持参した本をバッグから取り出して「夕食まで 本を読んで過ごすの」なんて言っている。


私はといえば、こういう温泉地に行ったら 旅館の浴衣のまま、ぶらっと外出し、近所の別の温泉旅館やホテルに行って そこの風呂だけの日帰り入浴コースを利用して 風呂に入って回るのが好きなのだ。


だから、部屋に嫁を残して すぐ向かいの別な大きな温泉旅館に行き、風呂に入り ロビーの喫茶コーナーでソフトクリームを食べていた。


すると、その旅館の半被(ハッピ)を来た中年の従業員が私に近づき


「お客さん xx旅館にお泊まりなんですか?」


と、聞く。


大抵、どこの旅館も その旅館オリジナルの 旅館名やマークを染めた浴衣だから、浴衣を見れば地元の業者なら一目瞭然である。


「そうですよ」


と、私が応えると


「御一泊ですか?」


と、重ねて聞く。


「え? いや、2泊しようと思っているんだけど… なんで?」


と、不審に思って聞き返すと


「どうか、御気を悪くしないで聞いて頂けますか…」


という前置きで聞かされた話によると…


簡単に要約すれば 私と嫁が泊まろうとしている旅館には「オバケ」が出ると言うのだ


で、それが理由で 夜中にチェックアウトした客が すぐ向かいの そのホテルに逃げ込んでくるのだという。


「まぁ、余所さんの悪口は言いたくないんですが…

 それが、ホント 頻繁なもので 逃げ込まれる当方も お泊まりいただけるのは嬉しいですけど

 夜中では何のサービスも出来ませんしねぇ…

 まぁ、ウチは24時間 玄関横のフロントに従業員が詰めてますから もし、何かの時は御気軽に…」


私も 今まで、商売柄 いろんな経験をしてきたが、こういう営業文句を聞かされたのは始めてで 元々、ビビリでは無く 逆に、そういう話をされるとワクワクと好奇心が増すタイプである。


「今まで じゃぁ、逃げて来た人達って どんな怖いめにあったの?」


と 半被従業員に聞いたところ…


  ・昼夜に関わらず 不審な物音がする。


  ・夜、窓の外に人影が浮かぶ


  ・寝ている布団の上に 誰かが乗っかってくる


  ・複数の子供が ギャァギャァ騒ぎながら 廊下の外を走りまわるが、廊下に出てみると誰もいない


  ・真夜中に館内電話が鳴り、出てみると 変な音がしたり、気味の悪い声が聞こえる


等々、挙げていったらキリが無い。


小一時間、そんな話を聞かされた私は その従業員に


「じゃぁ、何かあったら逃げてくるから その時は頼むよ」


と、冗談半分に言い 旅館の部屋に戻ってみると…


嫁は 窓辺の椅子に座って本を読んではいたようだが、心なしか不機嫌そう^^;


私の顔を見るなり


「なんかさぁ、ここ 五月蠅いわね」


と言う。


「へ? なんかあったの?」


と、聞くと


「もう、部屋の外の廊下を 子供が騒ぐのよ ホント、どういう躾してんのかしらね、その親」


と言う。


「いや、実はさ…」


私が向かいの旅館で聞いてきた話を 嫁にしたところ


「え? じゃ、アタシが聞いた子供の騒ぎ声って オバケだって事?」


と、怒った様に聞き返す


「いや、それがそうかどうかは判らんでしょ^^;  ただ、そういう事例があったらしいよ…って事で」


と、私が応えると…


「まぁ、そりゃそうだけどさ…」


と、言いつつ 何か思案気にコーヒを飲みながら本を読んでいたが、突然 立ち上がったかと思うと 館内電話をフロントにかけ、番頭を部屋に喚び…


現れた番頭に


「今、ウチの旦那様が 散歩の途中に余所で聞いたきたんだけど この旅館って オバケが出るの?」


ド真ん中に 豪速球を投げ込む嫁^^;


「それによると…

 ”廊下で騒ぐ子供”って霊がいるらしんだけど、今日 この旅館に 小学生以下の子供が少なくとも二人以上泊まってますか?

 私、さっき 何度も、そのドアの外を騒いでいる子供の声を聞いたんだけど…

 それって、霊だったのかしら?」


口ごもって応えない番頭に たたみかける嫁^^;


やがて番頭は 重い口取りで


「たしかに 今日は お客様御夫婦の他に お年を召した御夫婦が二組と、15名の社員旅行の団体様がお泊まりだけなので 子供のお客様はおりません」


すると嫁は


「あら、じゃ あれは霊なのね?」


と、妙にテンションが上がっている。


番頭は困り果てた顔で


「いや、ですが…」


と、モゴモゴ喋り出そうとするのを嫁は遮り、


「ねぇ、番頭さん アタシは別に 幽霊が出てもいいのよ」


その言葉に 唖然とする私と番頭^^;


「でもね、それならな 事前に”幽霊のサービス付です”ぐらい 断ってくれなきゃダメじゃない?

 不動産だって、”この部屋は 以前、自殺がありました”とか「殺人事件がありました」って事を

 事前に、話しておく義務があるのよ? 御存じ?」


口ごもる番頭、しかし 嫁は続ける。^^;


「洞窟風呂も売店も”点検中”なのはいいわよ、閑散期ですもの…

 でも、オバケ・サービスがあるなら あるよ…って 言って下さらなきゃ

 アタシ、聞いたわよ ちゃんと、この両耳で騒ぐ子供の声を」


嫁が こうなってしまうと手をつけられないの事を私は充分、知っている。^^;


幽霊に関して 肯定はしていないが、否定もしない番頭の姿に「何か」があるのは間違い無い。^^;


だから、余計な口を挟まず タバコを吸いながら成り行きをうかがう私


番頭は 困った顔を続けながら、それでも嫁に


「では、どうすれば宜しいでしょうか?」


すると嫁は ニッコリ笑い


「宿代をマケるか、夕食に 少し豪勢な料理を奮発して頂戴」


番頭は そう言われると


「では、相談して参りますので…」


と、部屋を出ていき


二人だけになったのを見定めた私は嫁に


「他の旅館に移る…って選択肢は オマエには無いのか?」


と、聞くと


「何、言ってるのよ せっかくの機会だもの 一晩は泊まっていくわよ」


と、笑っている。


まぁ、私は 神なんてものは存在を信じないが、霊はいるだろうと思っている。


が、不思議と 現実社会で 生きている人間の怖さを人一倍知っているから オバケ話に必要以上にビビル事は無いけれど…


それにしても、嫁の「怖さ」を あらためて思い知った次第だ。^^;


結局、宿代を半額にしてもらう…って事で話は終わり、本当は二泊するはずだったのを 一泊に変更し、翌日は同じ南紀でも「白浜」の方に移った。


「オバケが出るかもしれない…」


そう思ったら 妙にドキドキして、私は 結局、ロクに眠る事が出来ず 夜明け前に どうせ眠れないんだったら風呂に入ろう… そう思って 海が眺められる露天風呂に行ったのだが…


後で、那智勝浦の地形を見て なるほどな…と思ったのは 那智勝浦は西方が山で 海は東方に面している。


だから、太陽は水平線から浮かんでくるのだ。


つまり、その露天風呂では夕陽は ほとんど楽しめないが、私が泊まった日のような雲一つ無い好天だと 朝焼けが物凄く綺麗なのだ。


私は 風呂から急いで出て部屋に戻り、熟睡している嫁を起こし 部屋の窓から その朝焼けを一緒に眺めたわけで、結局はオバケなんか出て来ぬまま 綺麗な朝焼けを想い出に貰って その旅館を後にしたのだが…。


旅館からJRの駅へと移動するのに利用したタクシーの運転手が ごく、自然に


「お客さん 夕べ、あそこの旅館に泊まったの?

 出なかった? 幽霊?

 あそこは ホント、やばいのよ^^;


 私ですら 今まで、何人も乗せたからね”怖かった”ってお客さん」


そう話すのを聞いて どうりで番頭が口ごもったわけだ…と納得したものだ。






さて、この話には後日談がある。


昨年(2006年)の初夏、私が 松崎に買った家に悪友達と行った時、「この際だから…」と 広島や四国へと旅をした時の事


昔、那智勝浦の旅館の話を「気の弱い弁護士」が聞いていたのを彼が覚えていて


「なぁ、折角だから 名古屋から大阪に移動する時に 寄り道して行こうや」


と、言い出したのだ。


実は、「気の弱い弁護士」は 名うてのオカルト・マニアなのだ。


「心霊スポット」と聞いたら 気が弱いクセに行ってみたくなる奴なのである。^^;


「二代目開業医」が「オマエ(弁護士)のワガママに付き合うんだから 汽車代は奢れよ」と言うと 弁護士はそれでも良いから行こう…とせがむ


で、行ってみたわけだが…


世の中って ホント、不思議な事が多い。^^


私と嫁が泊まった旅館は 今でも(2006年7月初頭現在)健在で 建物は少し古びた感じはするけれど健在だった。


ところが、向かいの 私にオバケ話を教えてくれた別の旅館は 如何にもオバケが出そうな廃墟と化していた。^^;


駅から移動するタクシーの運転手によると 私と嫁の泊まった旅館は その後、「オバケが出る旅館」として口コミで噂が広まったのだが、そのお陰で 怖いモノ見たさの客が全国から泊まりに来るので経営が続いたが、向かいの健全そうだった旅館は ある日、突然 倒産したのだという。


今では その廃墟にも「幽霊が出る」と評判で 元々、「オバケが出る」と評判の旅館共々、その道のマニアが詰めかけているのだそうだ。^^;




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