● 嫁の策略
このところ 我が家に あるオバチャンが何かと理由をつけては訪れていた。
その人は 私の住む地域の町内会で「婦人部長」という肩書きを持っている方なので 近所付き合いのてまえ、まぁ、邪険にするわけにはいかない。
ウチの嫁としては とかく、近隣で評判の芳しくない私を その人と会わせたくないらしく 確かに、相手が誰であろうと食ってかかる私である事は 私自身が心得ているし^^; 近所付き合いの矢面に立つのは私より嫁である事を考えれば 玄関に その方が現れたのが判ると 私は スッと自室に引き籠もる事にしている。
実のところ 正直言って 本当はウチの嫁も その方を心良く思ってはいない。^^;
何かと家庭内の事を詮索したがり、雑事を押しつけたり 町内付き合いを強要するきらいがあるからだ。
が、その方が我が家を訪れるのは 今までは数ヶ月に一度の事で
「ちょっと風のキツイ台風が来たと思えば ま、我慢も出来るわよ」
と 嫁は言ってたものだ。
ところが、昨年の暮れあたりからオバチャンの来る頻度が急増し 最近では二日に一度、下手すると 連日になりそうな勢い。^^;
「奥さん 親戚がジャガイモを送ってくれたのよ」
「奥さん 煮物を多く作りすぎちゃったから」
「奥さん お饅頭好きだったよね?」
最初の内はともかく 頻度が増してくると、どうも 何やら目的があるらしい…と 我が家では感じ始めたのだが、その目的が判らない。^^;
「あ、お父さん またオバチャン来たよ」
娘が苦笑混じりに リビングから外を眺めながら空襲警報を発令すると 私は読みかけの本と 飲みかけのコーヒーの入ったマグカップを持って 防空壕ならぬ、書斎へと移動する。
小一時間の後 娘か姪が 私の書斎に現れて、
「空襲警報解除」
を 告げに来ると また、本とマグカップを持って居間に戻るわけだが…
気づくと 3匹の猫達も 空襲警報が発令されるとリビングから何処かへ待避し、空襲警報が解除という声を 何処かで聞きつけると また、三々五々とリビングに戻ってくる。
そんな猫達と廊下でバッタリ出会すと 自分も猫みたいで情けない。 orz
さすがに そんなザマが連日続くと 嫁の機嫌は悪くなるわけで…
昨年末、とうとう嫁は
「奥さん ごめんなさい
今日は ちょっと たて込んでいるので御相手が出来ないのよ」
最初は そんな風に やんわりと家の中に入れず、玄関先で断っていたのだが、そうなれば そうなったで オバチャンも巧妙に
「あら、残念… 明日の午後は空いてるの?」
等とアポの先取りを仕掛ける。
元々、ウチの嫁は 結構外出しがちなので 日中は家にいない事が多いから
「御免なさい 用事があって出かけるから 何時に戻れるか判らないの」
そうやって断るのだが オバチャンは 何処かで監視しているかの如き正確さで 外出先から嫁が帰宅すると 計った様に30分後に現れる…
「何か魂胆があるのはミエミエなのよ でも、それが何かハッキリしないのよねぇ…」
忌々しげに呟く嫁
「それなら、”来るな…”って言えば良いじゃん」
「馬鹿ねぇ、それをあからさまに言ったら ああいうオバチャンは根に持つのよ」
「根に持つ…って 結果的には どうやったって そうなるだろさ?」
そう私が言うと
「そりゃ、そうなんだけどねぇ…」
と、思案げな嫁。^^
その翌日の昼下がりも オバチャンは現れ、私は 防空壕 書斎に引き籠もっていたのだが…
不意にドアをノックする音が聞こえ 見ると、嫁が
「アナタ ちょっとリビングに来てくれる?」
と 私を呼ぶ
「なんだろう?」
と、思いつつ 嫁の後に続いてリビングに行くと 美味そうにコーヒーを飲んでいるオバチャンがおり、テーブルには1枚の表紙がついた写真らしきものがあり…
「あ、どうも 今日は…(オバチャンに) で? 何の用?(嫁に)」
「あのね、奥さんが ウチの娘達に お見合い話を…」
あぁ、成る程 テーブルの上の写真は それだったのか…
気づいた私は 嫁の台詞が終わるよりも前に
「何だって?」
「いや、だから 奥さんがお見合いの話を…」
話を全部 聞く必要は無かった^^;
「おい、ババァ(オバチャンに)
てめぇ、何様のつもりなんだコノヤロウ
たまたま近所に住んでるってだけで 人の家庭に、ましてや娘の人生に口はさんでんじゃねぇぞ 馬鹿野郎」
怒鳴りはしなかったが、自然とドスの利いた声になる私。
「アタシは良かれと思って…
良い縁談だから こちらのタメになると思って…」
慌てて言い訳するオバチャンだったが そんなのに構う必要は無い
「よその家の”タメ”を考える暇があったら とっとと帰って てめぇの家の”タメ”だけを考えてりゃ良いんだよ
残り短い老後を もっと縮めて欲しいのかコノヤロウ」
心の中で「怒鳴っちゃイケナイ 怒鳴るのだけは止めておこう…」そう思いながらも口調は どんどんドスが利いていく私^^;
すると、嫁が
「そんな怒らなくてもアナタ お話だけでも…」
台詞は”とりなし”だが、目で”もっと、やれ!”とテレパシーを飛ばしている
「お話だぁ? 馬鹿言ってんじゃねぇよ
こんなクソババァに頼らなきゃ 彼氏も見つけられない不器量な娘達かウチのは?
だいたい、娘達は 二人とも それなりの彼氏がいる…って この前 言ってたじゃねぇか」
すると、オバチャンは
「あら、嫌だ アタシ、娘さんに彼氏がいるなんて聞いてなかったのよ」
と、言い訳を始めたが…
「オマエは 何か、マスコミか? いちいちオマエに報告せにゃならんのか?
ババァが聞いてようがいまいが、我が家の明るい家族計画には オマエみたいなのは関係無いだろ?
お? オマエ(オバチャンに)、いつまで そこに座ってんだ? とっとと この家から出て
二度と近寄るんじゃねぇぞ、コノヤロウ…
あ、それとな… ひとつだけ念を押しておくけどよぉ…
この先、近所で ウチの悪い噂が流れたら 全部、オマエのせいだと俺は思うから覚悟しとけよ
イジメられたくなかったら 悪い噂は オマエが真っ先にかき消しておけよ?
じゃないと 間違い無く、確実に オマエに不幸がおとずれるからな? いいな? 判ったら消えろ!!」
あたふたと オバチャンは我が家から出て行った。^^;
玄関のドアの締まる音を聞いて 私は嫁に
「こんな感じで良かったかな?」
と、聞くと 嫁は
「そうね、上出来ね^^」
と、笑ってた。
結局、私が悪者になれば済む話なのである。
どうせ、
「ブタネコさんチは 奥さんは良い人で、娘さん達もしっかりしてるけど あの御主人がね…」
そう言われるのは 今始まった話じゃ無い。^^;
ウチの庭の栗の木にスズメが沢山集まるようになって チュンチュン鳴くのを私と猫が ほのぼと眺めていたら
「オタクに集まるスズメが五月蠅くてかなわない…」
なんて文句を言うくせに、秋になって その栗の木に実がなると、
「オタクの栗は食べごたえがありそうですねぇ…」
なんて、さも 栗をわけろ…みたいな遠回しを言うような 調子の良い近隣達ばかりなのである 嫌われたってかまわないのだ私は。^^;
それにしても…
「アナタのタメを思って」
それを大義名分に「親切」の押し売りをするアホが多いよねぇ…
そのくせ、文句を言われると
「知らなかった」「聞いてなかった」「それなら 言ってくれれば…」
って 言い訳がセットになっていて さも、私は「悪くない」みたいなつもりになっている。
「それなら、言ってくれれば」
そういう言い訳をする奴に限って 元々、他人の話なんかロクに聞いていないクセに^^;
その日の夜、夕食の席で 娘や姪に オバチャンが私に追い出された話を楽しそうに語る嫁。
我が家の夕餉が笑顔で溢れており、それはそれで 私としては満足だったのだが…
なんか、気のせいか 何かが引っ掛かる 私。
最初は ほんの小さな その引っ掛かった気持ちが次第に大きくなり、心のしこりとなる私。
すると、それを察したかの様に嫁は
「そう言えば、お父さん こうも言ってたのよ
こんなクソババァに頼らなきゃ 彼氏も見つけられない不器量な娘達かウチのは?
だいたい、娘達は 二人とも それなりの彼氏がいる…って この前 言ってたじゃねぇか
って…
お父さんも せっかく、そう言ってくれたんだから…
アナタ達、早速 家に彼氏を呼んで お父さんを安心させてあげないとね」
そうか…
そういう事か…
そこまで計算してたのか… > 嫁 orz
