« 拝啓、父上様 第2話 | TOPページへ | 雑感(1月20日) »

2007年01月20日

● 花屋のY


時々、『喫茶「職安」の話カテゴリ-』として 私が高校生の頃出会ったオッサン達の事を書き綴ってきたが…




今回は、オッサンでは無く、お姉さん(当時^^;)の話をしてみようと思う。


喫茶「職安」のママ(と言うか ママ姉妹)は 元々、ススキノでも1・2を争う高級クラブで評判の美人ホステスだった事、その姉妹がホステスを引退して喫茶店を出すまでの経緯は 以前に述べたので過去ログを御参照願うとして…


喫茶「職安」は 毎日、10時半に開店する店で 午前中に現れる常連は その多くが今まで私が記事で述べた様なオッサン達だが 昼下がりの2時頃になると 近所の商店街のオッサン達が遅い昼食と休憩を兼ねて現れ、4時過ぎになると 我々学生と入れ替わり、5時過ぎになると ママの知り合いや後輩である現役のホステスさん達が現れ… というのが典型的なパターンだった。


で、そのホステスさん達は 喫茶「職安」に寄っては ママに日頃の愚痴や悩み相談をして過ごし、やがては仕事に行くのである。


当時の 特に高級クラブで働くホステスさん達の多くは 今のキャバ嬢なんかとは全く別者で 皆、機転が効き 言葉遣いを初めとして礼儀が良く、なによりも客を楽しませるための知識が豊富で 仕事は水商売であっても 人間的には恐れ入る教養高いお姉さんが多かった。


で、そんな彼女達は 実に冷めた人生観を密かに持っており、それは やがて我が身に老いが現れた時の為のビジョン それをしっかり持っていた。


判りやすく言えば、自分がオバサンになり ホステスの人気に翳りが出た時、「自らの店を持とう」とか「それまでに 良い旦那を得よう」とか さもなくば最初から やがては「花屋」や「美容院」や「ケーキ屋」を始めるのが夢で その資金を貯めるためにホステスをしている… と言う風に、ホステスが最終形態なのでは無く、「その後 ~したい」というビジョンを持っていた…という事。


だから、あるホステスさんは「花屋」の店を持つ事が夢だったから 店に来るお客の中でも「坊主」や「葬儀屋」とか ホテルマンとか そういうお客には特に熱心にサービスし それは後々、花屋を開業した時のコネクション作りのためだったわけで 現実に、今では札幌市内でも わりと有名な花屋になった元ホステスさんが実在したりするのである。^^




さて、後に花屋になったホステスさんを Yと呼ぶ事にして話を続けようと思う。




聞いた話を そのまま言えば、Yさんは元々、北海道内でもひなびた漁村出身の人で 最初は看護婦になろうとしていたのだが、住み込みで とある病院の准看をしながら正看への学校に通っていた時に病院とトラブり病院を辞め 看護婦を断念して、とりあえずホステスをしていた友人を頼って… というのがそもそもらしい。


Yさんは ママとほぼ同じ歳だったから、私達学生がYさんと知り合った頃には Yさんは既に30代にのっかり、ホステスとしてはピークを過ぎ、そろそろ…という歳だったわけで、今、思えば もうその頃既に引退後の「花屋」の事しか考えていなかったんだな…^^


ちょうど、私達が高校の2年から3年に進級する春休みを目前に控えたある日の事、運送屋のN専務をつかまえて Yさんが熱心に話し込んでいた。


そして、我々 学生に


「ねぇ、アンタ達 春分の日の前後を含めて3日間 暇な子、バイトしない?」


と、言ったのだ。


その時、私と 後に某国立大学の教授になった奴は何の予定もなかったので そのバイトを引き受けたのだが…


それは YさんがN専務に頼み、本州の知り合いから菊の花をメインに安く大量に花を買いつけたものを N専務の会社の長距離トラックが本州から戻る時に積んで来てもらい、それをワゴン車に積んで 春の彼岸に札幌郊外の とある大きな霊園の側で路上のワゴン・セールをしようと試みたのだ。


結果を言えば 経費と売り上げが ほぼ同じで、損しなかった代わりに利益もほとんど無かった。


けどね、Yさんは上機嫌で


「何の宣伝もせずに 損しないだけの売り上げがあるとは思わなかったわ」


と、言い


「これなら、充分 商売になるわ」


とまで言った。


数日後、喫茶「職安」で N専務から


「へぇ~ (収支が)トントンだったの? そりゃ、凄いね」


と、感心していたのを疑問に思った私は


「儲けが無いのに そんな感心する事なんですか?」


って聞いたわけで…


するとN専務は 微かに笑いながら


「いいか、賭けてもいいぞ

 今度の夏のお盆、そして 秋の彼岸 同じ所でもう一回 同じ様にワゴン・セールしたら

 間違い無く、少しづつでも売り上げが上がって利益が出るよ」


確かに、N専務の言った通りだった。


その後、やる度に売り上げは増えて現在に至る。


結果論で言えば 1度目のワゴン・セールが宣伝になったのだ。


墓参りに向かう人達が


「あら? ここでお花を売ってるんだ…

 しかも、自分達が予め用意した花よりも もっと安い金額で…」


それを見て 次に来る時は あらかじめ用意できなくても


「あそこに花屋が来てるはずだから…」


と、アテにして来る様になったのだ。


他にも Yさんのアイデア商法がある。


例えば、クラブのホステスの誕生日ともなると 贔屓の客がホステスに花を贈る。


ホステスは その花の数や豪華さを競い、売れっ子になればなるほど 高価な花束やバスケット 下手すると、当時は珍しく高価だった蘭などをあしらった大がかりな物まで並ぶ。


誕生日が近づくと だから、ホステスはさりげなく馴染みの客に 自分の誕生日に店に来る事、最悪来れないのならば「花だけでも頂戴」とせがみ、ついでに

「XX花屋のママは 私の知り合いなの、彼女なら それなりの予算でも豪華なお花にしてくれるから そこに頼んで」

と、囁かせる。


そうしてお客は Yさんの花屋に行き、例えば1万円の花を頼むと 1万5千円か2万円ぐらいに見える花をあつらえて店に届け、飾る。


でも、実は 閉店後、Yさんの花屋が その花を売値の3割でホステスから買い戻し、使える花をアレンジし直して 翌日以降の別のホステスの誕生日フラワーに使い、また買い戻し…


ここまで言えば 聡明な方には判るだろうけど、そうやって Yさんとホステスさん達とで個別の食物連鎖みたいなカラクリを行い、結果的に 花屋も儲かるけど、ホステスさん達にも それなりのキャッシュ・バックが得られるのだ。


さて、このブログの過去ログをお読みなら方なら「あれ?」と思ったはずなので申し添えておくと…


私の友人の質屋は ホステスさん達と提携して誕生日プレゼントと称して贈られるブランド品の「食物連鎖」を繰り広げている。


そう、「花」と「ブランド品」の違いだけで やってる事は同じ。


こう言うと、そのシステムに対し不愉快に感じる人は多いかもしれない。


でもね、ホステスに入れあげて「貢ぐ」アホな男達は 何時の世にも大勢居る。


仮に、定価10万円のバッグを買ってプレゼントしても ホステス達はそれを5・6万で買い取り屋に売るもの。^^;


でもね、友人の質屋だと それを8万円で客に売る。


屁理屈と言われるかもしれないが、客の損害額(?)は 友人の質屋だと2万円安く済む。^^;


商道徳に照らした場合、こういったヤリ方は正しくないのかもしれない。


詐欺同然と思う人もいるかもしれないが、しかるべき許可を得て、本物のブランド品や 本物の花を扱っている限り 私には非を問う事は出来ないと思っている。


その上で、こういう商売方法を編み出し、実践するバイタリティは 商売人としてアリだと思う。


実際に 質屋も花屋も 今ではそれなりの規模に発展し、一般客の評判も良い。


他にも Yさんが花屋として編み出した商テクニックはいくつかあるが、その詳細は さすがにYさんから許して貰えないだろうから述べずにおくが…


よく、人は 簡単に「何か儲かる商売が無いですかねぇ?」とか「あの人は運が良いねぇ」と 巧く商売を軌道に乗せた人を羨ましがったり、妬んだり、擦り寄ったりするけれど Yさんなどを見ていると キッカケとかチャンスは 案外、身近に転がっているもので それを如何に一生懸命に探し、手に入れようと努力するかにあるのだと思う。


Yさんはホステスをやりながら、「将来は花屋に…」と どういう理由やキッカケで思い立ったのかは聞いた事が無いので知らない。^^;


でも、「将来は花屋に…」と思い立ってから 自分なりに勉強して知識を積み重ね、いろんな事を研究し、コネと金を蓄えた。


けどね、そんなYさんがホステスを引退し 花屋の店舗を構えて商売を始めようとした時、銀行は どこも金を貸してはくれなかった。


Yさんは準備金として 1500万円貯金を持ち、それを元手にすると同時に 銀行から開業資金をいくばくか借りるつもりだった。


というか、1500万の現金を持ってるのだから同額の1500とまではいかずとも、1000万ぐらいは簡単に借りれるつもりだったのだが…


どの銀行に交渉しても 媚びるように現金を定期にする事ばかり薦めて融資には応じてくれない


喫茶「職安」に入り浸っていた銀行屋のTに言わせると


 ・Yさんは 前職がホステスであり、水商売は信用度は低い。


 ・Yさんには 花屋の実績が無い


 ・Yさんには 現金以外の担保が無い


 ・Yさんには 国民金融公庫などに申し込むにも 資格・条件が満たされない。


等々の理由により 融資は実行出来ない…との事だった。


当時、高校生だった私は 世の中の仕組みなど全く知らず、金額には限度があるだろうけど 1500万もの大金を貯めて持つYさんであり、霊園側でのワゴン・セールなんてゲリラ販売で それなりに稼いだ事は 私には大いなる実績に思えたから いくばくかの融資は頼めば実行されるものだと思い込んでいただけに 融資を断られまくって凹むYさんの姿など思いもよらなかったものだ。


そんな現実を眺める私に 運送屋のN氏は


「いいか、これが現実だ。

 銀行なんてのは 預金者のフンドシを良いだけ利用しておきながら

 夢とか希望とか、机上のプランには ビタ1文、金なんか貸さない。

 そのくせ、Yが 少しでも儲けてみろ…

 今度は掌を返したように”ウチを使って下さい”、”いつでも融資をしますよ”って

 言い出すハイエナみたいな連中なんだ。


 あいつらは 自分で金を儲ける方法を知らないし、その為に汗をかいたり、知恵を絞ったりしない

 あいつらが知恵を絞るのは どうやって善人面して…

 如何に金を持ってる奴から貯金を預けさせるか…

 さもなくば、商売が順調な奴に どうやって担保出させて金を借りさせるか…

 そういう奴らなんだよ。


 つまりな、金を生むニワトリを探したり育てる気持ちは無いクセに

 誰かが持っている 金を生むニワトリを 如何に利用しておこぼれにあずかるか…

 その程度の連中なのさ。」


そして…


他の喫茶「職安」の常連達と協議して「屯田兵の御隠居」の遺産から 花屋の店舗に適した物件を敷金・礼金・保証金無しでYさんに貸し、その為に必要とされた資金を借りずに済む様にしてYさんに花屋を開業させたのだ。


その上で 私にだけコソッと


「いいか…、金とか不動産ってのは 活かして使え

 店舗は どうせ空いていた物件だし、保証金のぶんは利息は稼げないけど元本だけでも貸したも同然、

 花屋が潰れても別に損はしないし、順調に育てば 取れない利息の代わりに「恩」はきせられる^^」


Nさんの言った事が正しかったのは それから30年経った今、「屯田兵の御隠居」の遺産を管理する1人として 私は つくづく実感する。


花屋は順調に成長し、今では支店を複数持ち、優良な顧客であると同時に Yさんと交友関係にある(あった)ホステスさん達は その後、資産家になった人や 資産家に嫁いだ人も少なく無く Yさんとの交友ネットワークは強固である。


そのYさんと我々が絶大なる信頼関係にあるのも 元をただせば、最初の「保証金無し」によるものと言って良い。


まさに、Nさんは 空き物件で金を生むニワトリを育てたわけだ。


武田信玄の故事に倣うと


「人は石垣、人は城」


と言うほど 人材は大切な財産であり、人を見抜く目を養う事は なかなか口で言うほど簡単では無い。


同時に Yさんに金を貸さない銀行側の言い分は 銀行がよく大義名分として御題目に使う「顧客(その銀行の預金者)の利益を守る」という観点から言えば けっして間違いでは無い。


しかし、その論理では 新規事業や顧客の開拓など望めない。


でも、多くの銀行は言う


「中小企業など 地場地域の発展に寄与し、地域の人々から愛される銀行を目指します」と。


そんな台詞を聞けば聞くほど そんな事を臆面もなく言う奴の二枚舌を確信し、銀行なんてモノを信頼したり期待するのは大きな間違いだとも確信する。




ちなみに、Yさんは 私が心臓を壊して入院したと聞き 見舞いに来てくれたのだが、その時に 豪華なバスケットにアレンジした花籠を持参し


「ちょうど、葬儀用の供花が余っちゃってさぁ」


と言ったのを 私はICUのインターホン越しに聞いたのを忘れていない。^^;

(どうりで、カサブランカや白い蘭が多かったわけだ(ToT))


しかし、そのYさんの台詞が 実は如何にYさんが正直な人なのかを物語っているのか 私は充分、判っているだけに 仮に、それが本当に「余り物」だったとしても 自分で即座に届けてくれる誠意が嬉しかった。




お駄賃

 気が向いたら…で結構です。^^;

 この記事への御駄賃がわりに下のバナ-のいずれかを クリックして頂けると嬉しいです。^^
 (全部、クリックしてくれると もの凄く嬉しいのは事実です。^^)

ブログランキング・にほんブログ村へ Blog Ranking 人気映画・TVBLOG blogram投票ボタン BlogPeople「自分のこと」部門にクリック BlogPeople「テレビ」部門にクリック BlogPeople「映画」部門にクリック

『喫茶「職安」の話』関連の記事

コメント

「喫茶『職安』の話」、待ってました!
自分の才覚でたくましく生き抜くYさんと、人を見ず担保、実績ばかりをみる銀行。
「職安」に集った方々の話に、人とのつながり、人をみる眼の大切さを改めて教えてもらっています。
葬儀用の供花が~のちゃっかりしてて正直なところがまたイイですね。
Yさんを演ずるとしたら女優さんでいえばどなたのイメージでしょうか。
木村多江さん、西田尚美さん、白石美帆さんはどうでしょう?

ブタネコさんへ
お見舞いに行って葬式用の花というYさんもすごいですが、それを笑って受け入れるブタネコさんもすごいですね、お二人の関係が推し量れてとても良いお話しです。今日の記事でバブルに浮かれる銀行、証券会社をまじかに見て、その後の見るも無残な様を見て来た者としては共感いたします。昨今の銀行の利益額をみて本当に間違っていると思います、昔一緒に仕事した小さなソフトウェア会社の社長が呟いたことが思い出されます。’銀行っていいな、傾いたら国が税金で助けてくれるんだから、俺達に対しては潰れそうでも失業保険や厚生年金無理やりでも持って行くもんな’金策に苦労していた後姿が目に焼付いています。今年もその社長から年賀状が来てまだ頑張っているようなので安心しています。

★ satomin さん

>女優

う~ん そうですねぇ… 当時の雰囲気で言えば田中美里って感じでしたね

今は… まぁ、その30年後って事で^^;


★ タンク さん

>笑って受け入れる

後で聞いた話によると それを受け取ったウチの嫁は

「ホントだぁ このまま、あの人が死んだら そのまま使えるね」

って 笑顔で受け取っていたそうです(証言:二代目開業医)

笑うしか無いでしょ? (ToT)

ブタネコさん、こんにちは。
おかげさまで、すっかり不眠症から抜け出しました。

このブログ、オモロ過ぎです!
元ホステスのYさん、いい女ですね~。
なんか私の親友と根っこが似ている感じがします。
その彼女に今朝はメールをもらって助かりました。
もう少しで「とくダネ!」を見逃すところでした。
はい、大好きな旬くんが出てたので・・・(笑)

★ hamako さん

そりゃ良かった。^^


【※注意!!】

この記事は『ブタネコのトラウマ』の倉庫に保管されている記事なのでコメントの投稿は出来ません。 2015年2月10日以降 このクソブログは『ブタネコのトラウマ・リニューアル版』に移転しましたので新規記事更新及び、過去記事へのコメントの受付もそちらで行っておりますので お手数ですが、そちらへの移動をお願い申し上げます。