● 「父親たちの星条旗」
映画「父親たちの星条旗」を 映画館で観てきた。
ここしばらく、例年にないぐらい邦画での戦争映画が制作されたが、どれもこれもクソ映画ばかりでウンザリしていた。
そんな中で、密かに私が期待していたのは まだ公開されていない『俺は、君のためにこそ死ににいく』と クリント・イーストウッドによる硫黄島2部作だった。
で、その2部作のひとつ「父親たちの星条旗」の原作は
「硫黄島の星条旗」 著:ジェイムズ・ブラッドリー 文春文庫:ISBN4-16-765117-3
私は この本を随分前に読んでおり、興味深い内容だと思う反面 これが映画化された場合の危惧があった。
それは、この本の著者が表紙にもなっている写真の 星条旗を掲げようとしている海兵隊員の1人の実子で 硫黄島戦の事を何も語らずに亡くなった父親の事を興味を持って調べ上げた末の著述なのだが、この著者自身が日本に留学経験がある…という事で さも親日家という評価を得ているようだけど、まぁ、私も他人の事は言えないけれど^^; この著者は 少し、著述に偏向がある。
特に、米兵捕虜が日本兵に虐待を受け死亡した件につき 酷く拘った描写があり、たしかに きっとそれは事実だったのだろうと思うが、それに対する反感により 他の部分に関して濁った目で解釈されたような記述が多いのだけが 私としてはすんなり受け入れられなかったのだ。
だが、この本により「へぇ~」と知った事実も沢山ある。
例えば、米国政府は枯渇気味の戦争資金を捻出するために「戦時国債」を発行し、米国内の篤志家から資金を集めるなんて事をしており、この硫黄島での星条旗を掲げた海兵隊員達を英雄と祭り上げて 戦時国債を集めるパーティーや式典に人寄せパンダとして利用しまくった…という事実。
要するに「硫黄島の星条旗」という本は 硫黄島における戦闘シーンに主眼がおかれた著書では無い。
英雄に祭り上げられた隊員達の悲劇と言ってもいいヒューマン・ドラマなのである。
だから、原作者の偏向記述が 映像にどのように影響を与えるのか… それが、私の最大の危惧だったのだが、映画を見終えて そういったものにはきちんと配慮されていたと感じている。
いろんな新聞や雑誌などの「父親たちの星条旗」に関する評を目にすると「素晴らしい反戦映画」という評が結構目に付くのだが…
けっして「好戦」的な内容では無いが、「反戦」と言うよりも 時の政府に対する批判という意味合いの方が強く感じる。
戦争が正義か否かを問う前に、戦争のための行為が正義か否か? そこを問うているような感が強い。
この映画の制作にはスピルバーグが関与しているが、「プライベート・ライアン」以後、スピルバーグの関わる戦争映画は 基本的に兵士個々に対する視点が強く、私は そこに従軍兵や戦没者への労いや慰霊の意を感じ、素晴らしいと感じている。
特に『バンド・オブ・ブラザ-ス』は 戦争を扱ったTVドラマとしては最高の作品だと思っている。
(近々、記事を再構成しようと思っている^^;)
今回の「父親たちの星条旗」も 硫黄島の擂鉢山の山頂に星条旗を掲げた海兵隊員達を中心に 従軍した兵達の末路を描き、それを後世に伝える…という意味は充分に達成していると思う。
だからこそ思うのは 何故、日本の映画では こういう描き方が出来ない… いや、しょうとしないのかね?
今回の「父親たちの星条旗」を観て ますます、その思いは強く、だからこそ 日本側を描いたとされる「硫黄島からの手紙」の予告編を見て 今度こそ、見たい映画が観れるかもしれない…という思いが強い。(ToT)
先日、『散るぞ悲しき』という記事を書いたが…
何故か、その数日後 某国営放送でスペシャル番組の再放送が流れた。
内容は 基本的に硫黄島の戦闘に生き残った方々の証言をまとめたドキュメンタリーではあるが…
中に、貴重な映像があったので引用しておきたい。
「問題の写真」と「ワシントンにあるモニュメント」
「現在の硫黄島」(手前が擂鉢山)
実写映像(米側)
実写映像(日本側)
「硫黄島守備隊 戦闘心得」
「当時の新聞」
「栗林中将 最後の電報」
「守備隊の構築した地下壕 復元画像」
で、もうひとつ紹介しておきたいのは
宮嶋茂樹:著 「不肖・宮嶋 史上最低の作戦」文春文庫PLUS ISBN4-16-766014-8
私は この「宮嶋茂樹」という人物を高く評価している。
日本で唯一の戦場ジャーナリストであるとすら思っている。
上に挙げた著の中で 不肖・宮嶋は硫黄島に実際に赴いたルポ20pを記述しているのだが、これが実に素晴らしい。
残念ながら、「父親たちの星条旗」は 原作の「硫黄島の星条旗」を読んでるか否かで 深みの受け取り具合が変わってしまう。
それは尺の問題という事もあるのだろうが、戦闘シーンと 母国でのシーンなどがコロコロと入り混じり、なかなか把握しづらい編集とも思えるからだ。
だから、敢えて私は「硫黄島からの手紙」を見る前に「散るぞ悲しき」や「不肖・宮嶋 史上最低の作戦」を 読んでおくのも一興と申し上げておきたいと思う次第だ。


