● ブタネコの「縁日」
書斎にこもって作業をしていたところ、珍しく 嫁がフラッと書斎に現れ…
(書斎は 私の喫煙室でもあるため、嫁は寄りつかないのだ^^;)
「なんかさ、@@@(ウチの娘)の様子がおかしいのよ」
と言う。
御存じの通り、私は 超親バカ親父である。^^;
「なに? どんな風に?」
もう、心穏やかではいられない。
「さっき、札幌祭りの縁日から帰って来たじゃない?
そしたら、何を思ったのか 一生懸命に仏壇を片付けて
焼きソバやイカ焼きを小皿に取り分けて お供えしてるの」
嫁から そう聞いて仏間に行ってみると たしかに仏壇には豪勢と言えるほど 縁日で定番の品々が供えてあり、ちゃんと酒まであがってる。
ここでお断りしておくが、私は というより、我が家は ほぼ無神論者である。
だから、宗教によっては「生臭モノ」や「酒」を仏壇に供えるのは言語道断といわれるのも知っている。
が、先にも言った様に 我が家では 一応、浄土真宗の檀家ではあるが、そんな戒律など全く気にしない。
先祖が生前 好きだった食べ物や飲み物が 例え、生臭モノであっても 我が家は堂々と供え、御先祖様に捧げるし、時には 愛煙家だった私の親父や祖父の為に 線香の代わりに火をつけたタバコを供えたりもする。
実は、私の親父 娘にとっての祖父は 大の縁日好きで、毎年 札幌祭りで中島公園に露店が軒を連ねると 祭りの期間中、露店をねり歩いては 朝から晩まで祭りに染まる人だった。
そんな親父が生きている頃 その理由を
「俺が子供の頃は 兄妹も多かったし、躾も厳しかったから
”お祭り”だからって なんでもかんでも買って貰えたわけじゃなく
何かひと品 ”これだ!!”ってやつだけを買ってもらえたのな…
だから、兄妹で オマエはこれ…って 同じモノがダブらないように
話し合って、それぞれがひと品ずつ買って貰い、それを 少しづつ
兄妹で分け合って味わったんだ。
けど、兄妹が多かったから
分けると量が ほんの少ししか無いのもあって
満足できないモノが多くてさ…
いつか、自分で稼ぐようになったら、
好きなだけ買って食べるぞ…なんて 思っていたわけよ
でな、孫が産まれて その孫を連れて 何十年かぶりに縁日に行って
お? ハッカパイプなんて まだ売ってるのか? なんて思ってさ
懐かしくて買って吸ったわけよ
そしたら、オマエ…
子供の頃の事が フワ~ッって甦ったのな…
ハッカパイプはよ…
海軍で、戦艦「陸奥」と一緒に爆沈しちゃった兄貴が
毎年、買っていて…
だから、ハッカパイプの スーッとした感じが口の中に広がったら
その、兄貴を思い出しちゃって…
リンゴ飴を舐めれば 特攻で死んだ兄貴の事を思い出すし…
綿あめを舐めれば ひと掴み食べさせてくれた幼馴染みの同級生を…
そいつもニューギニアで戦死したけどな。
だからな、俺が 毎年一回の縁日に行くのは
お祭りに行くのが楽しい…のでは無く、お祭りを楽しむ余裕の無いまま
逝っちゃった兄貴や友達の供養なんだ
年に一回、アイツらが嬉しそうに食べたモノを食って
アイツらを思い出してやる 2ヶ月早い「お盆」みたいなモン」
だから、その親父が死んで以後 私は 札幌祭りの露店が並ぶと 必ず、
「仏壇の お供えを買ってくる」
と言って 露店巡りをし、一通り 親父が買いそうなモノを買って
それを仏壇に供えるのが 私の恒例行事となったのだ。
ところが、今年は 私は療養中の為、「露店巡り」が出来ない。
なので、昨日 娘に
「私の代わりに縁日に行って コレとアレを買って来い」
と、頼んだのだ。
で、娘は 言われたとおりに縁日に行き 買ってきたモノを供えた…
というのが ここまでの顛末なのだが…
なにげに 庭で3匹の猫にブラシをかけている娘に
「どうだ? 縁日は面白かったか?」
と、聞くと
「なんかさ…
例えば、ハッカパイプを買おうとするじゃない?
入れ物が ゴジラだったり、仮面ライダーだったり、
いろんなのがあるのね。
で、どれ買っても同じだ…って言われれば それまでなんだけど
つい、”お爺ちゃんだったら どれ買うかな?”って
考えちゃうのね…
そしたら、お爺ちゃんがニコニコ私に手を引っ張られながら
”おい、焼きソバなら アッチの屋台の方が美味そうじゃないか?”
なんて言ってたのを思い出しちゃって…
なんか、泣けてきちゃったのね
バカみたいじゃん
20歳過ぎの娘が 縁日の人混みの中で泣いてるのって…
もう、なんか 自己嫌悪」
違うよ…
そうじゃ無いんだ 娘よ…
自己嫌悪なんかしなくて 良い。
そういう気持ちで泣くオマエを もし笑う奴がいるなら この父がトラウマになるぐらい ブッ飛ばしてやるから 直ぐに言え。
だって、俺が 今まで そうだったんだもん(ToT)
毎年、お祭りに お供えを買いに行って その帰り道に泣いてたんだもん。
昨年、
「串焼き 霜降り米沢牛 1串500円」
って屋台のアンチャンに
「おい ホントは米沢牛じゃ無いんだろ?
周りの人には黙っててやるから400円にまけろ」
と 私が言うと、アンチャンが
「旦那さん 面白い事言うね^^
でも それじゃ ハイどうぞとは言えないな…
こっちの”名古屋コーチン 1串500円”ってのを1本付けるから
合わせて800円なら 内証でいいよ」
昨年の縁日で そんなやりとりを露天商とした私。
包みを入れたビニール袋を下げた帰り道に ふと、
簡単に「いくら?」「500円」というのではなく
なんか一言 やりとりを楽しみながら買う…
それが私の親父の姿だった事を思い出し、
「オヤジ、どうだった?
さっきの やりとりは オヤジの域に達したかな俺?」
そう思ったら 涙ぐんでたんだ 私は(ToT)
そっか…
オマエ(娘)も もう、それが判るようになったか…
息子なら もっと早く、家訓や家風を申し伝えていたはずなんだけど、娘だからと その辺がおざなりになってたなぁ…
よし、これからは ちゃんと先祖伝来の申し継ぎをオマエにしてやろう…
泣きながら、そう思った 今日の私だった。


