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2006年05月28日

● 機械屋のG (その4)


喫茶「職安」の常連で 機械屋のGと呼ばれた人の話の続きを語ろうと思う。




これまでの『 喫茶「職安」の話 』カテゴリ-の記事の中で


機械屋のG(その3)』という記事までに 機械屋のG氏の経緯とピークまでの事を述べた。


この機械屋のG氏が 最もピークだった時期から破綻するまでの間、私は 東京で単身、仕事をしており、札幌で G氏の身近にいて その成り行きを見ていた訳では無い。


ただ、友人達や N専務から電話などで話を聞いたり、時折 帰郷した際に G氏本人と話す機会があったりで 見知った事ではある。


さて、ソフト業界ってのは 当時、広いようで案外狭い世界だったから G氏が どんな考えで どんな動きをしていたのかは ある程度だが、理解出来る。


いろんな開発中のゲームに資金を投資し、それらの幾つかがヒットし…


まぁ、G氏の商売は それだけじゃ無く、他の部分でも時流に乗って儲けまくっていた。


そんなある日の事。


G氏から電話で


「ちょっと、仕事で東京に来てるんだけど オマエ、暇か?」


と、暇なら 晩飯を奢ってやるから付き合えって事だった。


断る理由も無いし、忙しくも無かったし、むしろ そういうお誘いは大歓迎の私なので 喜んでお付き合いさせて貰ったわけだが…


大儲けしていたG氏の誘いだから さぞ、高級なレストランやクラブで豪遊が出来る…なんて想像していた私に G氏が連れて行ってくれたのは 神田の蕎麦屋や定食屋 そして、


「仕上げは どうしても ここだ」


と、わざわざ電車に乗って東中野に行き 連れて行かれたのが「焼きとん」屋だった。


たしかに 連れて行ってくれる店だけあって美味かった。^^


でも、どうして そういう店ばかりなのか… それが、ほんの少しだけ疑問だった。


その後、G氏の宿泊先である高級ホテルに戻り、カクテル・ラウンジで チビチビと飲みながら(と言っても 私はノン・アルコールだが^^;) 長い時間、G氏の思い出話に付き合わされたのだが…


その時の G氏の話は 今でもよく覚えている。


だって、その後の私にとって とても含蓄のある言葉として 時々、嫌でも思い出す事になるからだ。


で、そのカクテル・ラウンジで 私はG氏に


「Gさん 儲けて金を持ってるんだから

 松坂とか丹波とかの高級ステーキの分厚い奴を食わせてくれるんじゃないか…

 なんて期待してたんですよ」


と、私が 冗談めかして言うと


「お? そっか…

 オマエにしてみりゃ そりゃそうだな^^

 よし、じゃぁ 食わせてやるから ここの(ホテル内の)レストランに…」


そう言ってはくれたのだが、それまでに 蕎麦や焼きとんを散々に食べた後だから いくら健啖家の私でも そんなに分厚いものは食べきれる訳がない。^^;


丁重に断ると Gさんは


「今日、行ったところはなぁ…

 俺が学生の頃 よく行った店ばかりなんだ


 あの頃は、金なんか無いクセに 夢ばかり一杯あって…


 面白いモンで 今のオマエと同じでよ

 金を儲けたら 腹一杯、分厚いステーキを食ってやる…って

 あの東中野の焼きとん食いながら思ったし、


 神田の蕎麦屋で ざるそば食いながら、

 財布の中を気にせずに 天ざる食えるようになってやる…とか

 思っていたわけよ^^


 でもな、自慢じゃ無いが 今は、いつでも好きなだけ

 ステーキや天ざる食うぐらいの金には困っていない


 なのに、無性に あの焼きとんやざるそばが食いたくなる時があるんだ…


 で、さっきもそうだったんだけど

 実際に、焼きとん屋に行って 好物のシロを食うとさ

 ステーキ食うぞ…って思ってた学生の頃の感覚が甦り

 なんか、元気が出てくるんだよ^^;


 松阪牛の分厚いステーキ食っても

 そんな元気が沸いた事なんか 一度も無いぜ^^


 不思議だよなぁ…」


そう言った。


それを聞いた当時の私は まだ半人前の社会人で そういう金銭感覚とは無縁。^^;


「金のある奴は 考える事も贅沢だな」


なんて内心 感じたりもしたのだが…


その後の流れで 運良く ステーキや天ざる食うぐらいの金には困っていない身に私が至った時、このG氏の言葉は 物凄く説得力を与えてくれたものとなった。


ちょっとキザな言い方をすると ただの”焼きとん”を味わいたいのでは無いのだ。


夢を描きながら 学生の時に焼きとん食べていた… その思い出ごと味わいたいのである。


誰が言ったかは知らないが 食べ物の最高の隠し味は「想い出」とは けだし名言だと思う。^^


東中野の焼きとん屋は G氏にとっては学生の時の 私にとってはG氏との「想い出の味」になったわけだ。^^




それから、ほぼ半年後 G氏は銀行屋のTが”儲け話”として持ち込んだ計画倒産の手形を掴まされ アッという間に奈落の底に転落し 札幌から姿を消した。


私が 最後にG氏と会ったのは その東中野の焼きとん屋の夜の事


それ以降、今に至るまで 私はG氏と音信は全く無い。


で、私は 時々、ふと 失踪したG氏が ごく希に その東中野の焼きとん屋に現れて 大好物のシロを食べながら 再起を夢見てるんじゃないか?… そう期待を込めて夢想していたんだ。


まず、あり得ない事だけど もしかしたら、その「焼きとん」屋で Gさんに偶然、再会できるかも知れない… そんな妄想まで抱いていた。


でも、その「焼きとん」屋が 跡形も無くなっていた… という話を聞いた時


「本当に、もう二度とGさんとは会う事は出来無いな…」


そう思うしか無くなってしまい、なんとなく寂しい今日この頃だ。(ToT)



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コメント

ブタネコさんへ
今日のお話で遠い目をした読者は何人いるのでしょうか?’その思い出ごと味わいたいのである’、’食べ物の最高の隠し味は「想い出」’、これらの言葉もの凄く共感します。男というものは現実的な女性と違ってロマンチックな生き物なのか、とかく思い出に浸り気味になるようです。
どういうわけか一時、学生時代と同じ路線で通勤していた時があったので僕も一度、千歳烏山に途中下車して学生時代にいやというほど食べた’レバーにら炒めライス’を食べたくて馴染みの定食屋さんに行った事があるのですが、妙に綺麗になっていて、何か違った味になっていたような気がしてガッカリしたことがあります。カウンターの向こうで熱い鍋に材料が入った瞬間蒸気がモウモウと上がって、美味しそうな匂いが鼻腔をくすぐる、そんな雰囲気を味わいたかったのですが、カウンターはなくなっていて厨房から出来上がった料理が出てきたのは興ざめでした。そういえばあの当時ほど、美味しいと思って食べた料理は少ないなーと感じ入っています(勿論かみさんの手料理は別にしてですよ)。

★ タンク さん

私は 単身で東京で暮らし、時々 札幌の妻子の元へ帰る…という生活をしていた時期に北海道へと向かう飛行機の中で

「よし、今回は ~という店に行って~を食べよう」と よく考えていたものです。

それは xx軒の味噌ラーメンだったり、xx亭のジンギスカンだったり 昔懐かしの店の よく食べた料理だったわけで…

今でも店や味が残っているのは たった2軒だけ、あとは無くなってしまいました。(ToT)

もちろん 嫁の手料理食べて

「これ食いたくて帰ってきたんだぁ」

と言うのも忘れてませんが^^;

ブタネコさんの食べ物の話が好きです。
地方の特産品の話を読んで自分も旅気分になったり、北海道でしか食べられないものを一度食べてみたいと思ったり、食べ物と当時の思い出が絡まった何物にも変えがたい一品に思いをはせて涙が浮かんできたり。
機械屋のGさんは、突然姿を消して多くの人達に迷惑を掛けただろうけど、なにか憎めない気がして会ったらお酒を飲みながら話がしたいです。銀行屋のTさんの如才ない生き方がどうも共感できないのは、自分がそんなふうにできないからうらやましいだけかな。
以前ご友人の方々についてブタネコさんが書いておられましたが、喫茶「職安」の方々の風貌を勝手に色々な俳優や政治家や身近な人に当てはめて楽しんでいます。

★ satomin さん

お褒め頂き恐縮です^^

北海道という場所は とても食材には恵まれた場所だと思います。

でもね、最近 その北海道にいながら、食べ物の本当の味や旬を知らない人がふえてしまいました。

しかも、昔ながらの魚屋は どんどん姿を消し、スーパー化して 切り身のパック売り…

そんなのを見ていると「なんだかなぁ…」と思うばかりなのです。^^;


機械屋のGさんには きっと、再び会う事なんて とっくの昔に諦めた事ではあります。

でも、私は 私なりに 東中野の焼きとん屋に 一度は行って食べていた筈だと信じてる…というか確信してます。^^;

だから、店さえあれば ほんのちょっとだけでも再会の機会は残っている、まだ縁は切れてない… そう思っていたんですけどね^^

銀行屋のT氏については 少なくとも もう一度書く事になると思います。

もし、宜しければ 御一読頂けると嬉しいです。^^

>勝手に色々な俳優や政治家や身近な人に当てはめて楽しんでいます。

そうですか^^

では、私の役は 三浦友和でひとつ…^^;

【※注意!!】

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