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2006年04月27日

● ミスタア・ロバーツ


我が同好の士(というと怒られるかもしれないけど^^;)『葉月亭』さんの

『 『コンバット!』 と 『ミスター・ロバーツ』 』

という記事に触発され^^; 『ミスタア・ロバーツ』について語ってみる。




とは言え、『ミスタア・ロバーツ』についても『葉月亭』のHAZUKIさんが詳しく述べておられるので まずは、どうかそちらを御一読願いたい。^^


で、私は HAZUKIさんが触れなかった部分で 私なりの『ミスタア・ロバーツ』に関するこだわりを述べようと思う。


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この映画が封切られたのは1955年の事。


実に 古い作品なのである。^^

( でも、今、観ても 決して中味は古い作品では無い^^ )


この映画を初めて 目にしたのは中学生の時で、休日の昼下がりに 何気にテレビで流れたのを途中まで見た。


太平洋戦争末期の米海軍の輸送船、その船内を舞台にしたコメディ…


とても面白かったのだが、どんな用事だったか忘れたが、私は 途中で外出しなければならず、当時はビデオなんてものも無かったから、結局 後ろ半分を見逃したままだった。


それから随分と年が過ぎ、たまたま私は義弟と共に横須賀の米軍基地が一般開放してるのに合わせて見学に行った帰りに 京浜急行の横須賀中央駅の傍にある映画館で この「ミスタア・ロバーツ」がリバイバル上映されているのを見かけ、なんとなく どうしても見たくなって 無理矢理、義弟を引き連れて観た。


結論から言うと… 観て、正解だった。




ひとつ前の記事で「MASH」について語ったが、私は「MASH」と この「ミスタア・ロバーツ」は 素晴らしい戦争映画として 未だに、この2本はトップランクから動かない。


興味深いのは どちらも「コメディ」仕立てで、激しい戦闘シーンなど無い。


しかし、「戦争映画」として 観賞後、この上なく胸を締め上げるのだ。


私が 最初に観た時に見逃した後半には 物凄く重要なエピソードがあり、この作品を「単なるコメディ」等と軽々に言ってはいけない素晴らしさが込められていたからだ。


正直に言って 私は、自分でも右翼思想が強いと自覚する。


この「ミスタア・ロバーツ」を観る直前の頃が 私の人生の中で、私の右翼思想が最も右に偏っていた頃だ。


しかし、この「ミスタア・ロバーツ」を観た後、私の考えは微妙に でも、確実に変わった。


それまでの私は


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「トラ・トラ・トラ」で 上のような場面を観ては快哉を挙げ、


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上の様な 特攻の実写フィルムを観るとき、特攻機が米艦への体当たりに成功すると「よっしゃ!!」と叫んで「(成功して)良かったなぁ…」と泣き、米艦目前で撃墜されて海上に墜ちる場面では「さぞ、無念だろうなぁ…」と泣いていた。


それは、今でも変わらないが、この「ミスタア・ロバーツ」を観る前までは まったく考えた事は無かったが、観た後からは特攻機に突っ込まれ爆発する米艦にも人が乗ってるんだよなぁ… その事に気づき、考える様になったのだ。


米軍の施設や艦艇が日本軍に破壊される事に、快哉を挙げる気持ちは変わらないけれども、それで死んでいった米兵にも哀悼の意を抱く様になったのだ。


と、述べたら「綺麗事を言ってカッコつけんな」とか「なんだかんだ言っても右翼か」と言う人もいるだろう… けど、そんなの どうでもいいや^^


本でも映画でも 考えを変えさせられたり…、新たな視点を教えられたり… そんな影響を受ける作品って 今まで、随分と映画や本を観たり読んだりしてきたけど、なかなか無いのだ。


だからこそ、そんな希有な作品を褒め称えて 何が悪い?




さて、「ミスタア・ロバーツ」について 少しウンチクを述べてみる。^^;


この作品は 太平洋戦争に海軍での従軍経験を持つ作家が その経験を短編小説にしてまとめた本のエピソードをヒントに ある脚本家がヘンリー・フォンダを主人公にした新しい舞台劇の脚本に書き上げたのが そもそもの始まり。


第二次世界大戦時に海軍に在籍していた経験を持つヘンリー・フォンダは この脚本に大いに気に入り、専属契約をしていた映画会社との契約を破棄して出演し、1947年にブロードウェイで開演した舞台は、アメリカ演劇史上空前の大ヒットとなってロングランを記録し トニー賞の主演男優賞を獲得したフォンダは、7年間に渡り ロバーツ役を演じつづけた。


1953年に映画化される事になり、監督としてジョン・フォードが選ばれ映画化作業が進められたのだが、フォードは舞台版の脚本に 細々と修正を加え、従来からフォードが自分の映画に起用している役者を 役のキャラクター設定とはお構いなしに連れてくるなどの独断主義を押し通し始めるに至り、舞台で成功したストーリーを大切にしたいと考えていたフォンダと対立する様になり、ついにはあるシーンの演出を巡って 殴り合いの喧嘩にまで発展したのだが、その際に 映画スターであるフォンダの顔を 数週間に渡って消えずに残るほどの青痣が出来るまで殴り倒したフォードに 映画会社のオーナーが激怒し、フォードは干され、アルコール中毒になる。


フォンダの痣が消えるのと フォードのアル中が治るの待った後、撮影が再開されるが、フォ-ドのアル中は治っておらず、むしろ悪化していった為、表向きは病気による休養とされて 途中から監督がマービン・ルロイに替わる。


ルロイは 元々、舞台版を知っており その脚本の良さを認めていたので、舞台版の演出家をつとめていたジョシュア・ローガンの協力を得て フォードが変更した部分の殆どをさらに変更して、元々の舞台版の持つ雰囲気に近いものに仕上げた。


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( 注: 本編はカラーで白黒ではありません。^^; )


そうして完成した映画版「ミスタア・ロバーツ」は 当時としては莫大な600万ドル近い興行成績を挙げ アカデミー賞で3部門にノミネートされる程、高い評価を得たのだが、自分をないがしろにされたと怒るフォードとフォンダの対立を スキャンダル話として面白可笑しくマスコミに書き立てられた事により、映画の評価は蚊帳の外にされてしまった。


と言うのが、この映画の制作裏話である。


ただ、結果的には報われなかったジョン・フォードだが、彼が制作に関わったおかげで この作品の映像には 実に貴重な背景が映っている。


それは、太平洋戦争の分岐点となった「ミッドウェイ島」


実際に、ミッドウェイ海戦時、ミッドウェイ島に海軍のドキュメンタリー映画を撮るために滞在していたフォードが 日本軍が島の飛行場などに空襲を行った様を実写して、フィルムを残すなど 戦争中、戦費獲得の為のプロパガンダ映像制作などで海軍との関係が密だったおかげで この映画のミッドウェイ・ロケが実現したのである。


なので、米海軍関係者じゃ無ければ目の当たりに出来ない島の風景が 映画の中に映っているのである。

(希に 悪天候・機体不良などで民間の国際路線機が緊急着陸する場合があるが、その際には 乗客は機外に出して貰えず、飛行機の窓も閉める事を強要される。)


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数年前に「MASH」と この「ミスタア・ロバーツ」双方とも DVDが発売されたので 充分に綺麗な映像で楽しめるのだが、この二つの作品を置いているレンタルショップって 実は、かなり少ない。^^;


もし、日頃 利用しているレンタル屋に この、どちらかでもあって、貴方がまだ未見なのであれば 是非、鑑賞する事をお奨めする。


ちなみに 普通であれば「ミスター・ロバーツ」とされるべきタイトルなのだが、1955年という時代が そうさせたのか、正式な邦題は「ミスタア・ロバーツ」となっている。^^



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コメント

「ミスタア」としているところ、ブタネコさんの こだわりが感じられていいですね(^^)
当時の日本のパンフレットや雑誌記事中の表記も「ミスタア」でしたものね。

ブタネコさんにロバーツを語っていただけて とても嬉しい私ですが、拙記事のご紹介に与りましたことは恐縮を通り越して汗顔の至りであります(^^;)

この映画でのヘンリー・フォンダとジョン・フォード監督の対立は、ファンにはとても悲しいものでした。

『怒りの葡萄』 『荒野の決闘』と、いい作品を残していただけに初めて知ったときは本当にびっくりしました。

フォード監督は一応、フォンダに詫びたようですが、その後は現場でフォンダに対して嫌味やトゲのある もの言いを繰り返していたそうで、ますますがっかりしました。

代わってメガホンを取ったマーヴィン・ルロイ監督の手腕は見事なものでしたね。

私は、ルロイ監督がヘンリー・フォンダに理解を示しただけでなく、フォード監督の考えもある程度取り入れた撮り方をしていたのかなと思っていました。
どのシーンがルロイ監督のものか区別がつかないからです。
でもブタネコさんの記事を拝読し、フォード監督が撮ったシーンにも手を入れたところがあったのかもしれないな、とふと思いました。

ジョン・フォード監督の海軍好きは知られていますが、彼が軍隊にハマッてしまった理由の一つに、奥さんの親戚筋に軍人が多かったということもあったようです。
夫婦で海軍士官クラブにもよく出入りしていたようです。

>本でも映画でも 考えを変えさせられたり…、新たな視点を教えられたり… そんな影響を受ける作品って 今まで、随分と映画や本を観たり読んだりしてきたけど、なかなか無いのだ。
 そうですね。そういう出逢いって、なかなか ないですね。

私は、自分のこれまでの考え方をあらためて自分に問うてみたくなるような強い影響を与えてくれる作品に出逢うと、戸惑いながらも嬉しくなります。

そうか、そういう考え方、見方もあるのだな、ということに気づかされるのも一つの発見ですし、視野が広がるというのは楽しいことです。

だけど やっぱり自分はこう考えるな、と おのれの見方、感じ方を再認識することもあれば、ああ、なるほどなぁ、自分はちょっと狭量だったかもしれないなぁ、と思ったり、そういった いろんな発見をさせてくれる作品に出逢うと楽しいです。

(P.S. ブタネコさんから「我が同好の士」などと呼んでいただけて光栄です ^^)

★ HAZUKI さん

>「ミスタア」

ええ、なんか、「ア」ってところが魅力なんです。^^

>この映画でのヘンリー・フォンダとジョン・フォード監督の対立は、ファンにはとても悲しいものでした。

まったくです。^^

結局、この対立以降 ヘンリー・フォンダは「十二人の怒れる男」など、名作がありますが、ジョン・フォードは 没落してしまった感がありますしね。^^;


>フォード監督が撮ったシーンにも手を入れたところがあったのかもしれないな、とふと思いました。

それが、最終的にフォードの怒りが静まらなかった原因のようです。


>私は、自分のこれまでの考え方をあらためて自分に問うてみたくなるような強い影響を与えてくれる作品に出逢うと、戸惑いながらも嬉しくなります。

>そうか、そういう考え方、見方もあるのだな、ということに気づかされるのも一つの発見ですし、視野が広がるというのは楽しいことです。


まったく同感です。^^


この「ミスタア・ロバーツ」のラストは まさに、その通りで 鈍器で殴られた様な気分でした。^^;

【※注意!!】

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