● M*A*S*H
『葉月亭』のHAZUKIさんが詳しく述べておられるので まずは、どうかそちらを御一読願いたい。
で、私は HAZUKIさんが触れなかった部分で 私なりの『M*A*S*H』に関するこだわりを述べようと思う。

1970年に 映画版が公開されたのが まず、最初の「MASH」
この映画は封切り直後、作品の出来が どうのこうのという問題とは別の事で話題になる。
それは この公開された1970年とは ベトナム戦争真っ盛りの時期で 強硬派のケネディ大統領が暗殺され、その後を継いだジョンソンが退陣して ニクソン大統領が登場したのが1969年 ニクソンは組合など労働者層や低所得者層を支持母体として段階的にベトナムから軍を撤退させ兵力削減する事を公約に大統領に就任したのを受けて、当時、ヒッピーと呼ばれた若者達を中心にブームになっていた反戦運動者達は ベトナム戦争終結への期待が盛り上がったが、1970年 それまで反米主義だった隣国カンボジアでクーデターが生じ、シアヌーク国王一派が追放された事により、米軍及び南ベトナム軍がカンボジアに侵攻し、逆に戦線が拡大するに至って反戦運動者達の気運が加熱していた時期なのだ。
で、この『M*A*S*H』とは 野戦病院を部隊に繰り広げられるコメディで激しい戦闘場面がある戦争映画では無い。
むしろ、前線より離れた後方で 前線からヘリで運ばれてくる負傷兵を治療する軍医や看護婦、それらをとりまく人々の話なのだが、主人公の軍医 ピアース大尉やマッキンタイア大尉が すこぶる毒舌の変わり者で、真面目を絵に描いた様なバーンズ少佐やホーリハン少佐(婦長)を愚弄しまくるのだが…
この映画版の悲劇は 米国内においてベトナム戦継続を主張するタカ派の人々、それに対するハト派の過激な反戦運動者達からも どちらからも同様に
「オチャラケ過ぎていて不愉快な愚作」…と評された事。
ところが、朝鮮戦争に限らず 第二次大戦やベトナム戦などに 実際に従軍した兵士経験を持つ人々からは 絶賛を浴びた作品なのである。
それは、ピアースやマッキンタイアが喋る台詞や行動は ブラック・ジョークなんだけど、前線で戦っていた兵士達には 物凄く共感を呼ぶものだったから。
で、1972年から


TV版「MASH」が放映開始されたのだが…
このTV版 調べてみたら 1982年まで10シーズン放映され 全251話なのだ。
この事からも、このTV版「MASH」の人気度が推し量れるはずだよね。
で、私は かねがね「MASHは 映画版も良いけど、TV版の方が すこぶる面白かった」と発言を続けるのには理由がある。
映画版の場合は2時間枠と言う事もあって 世相風刺の色合いを持ちながらも どこかに青春群像っぽい描写の方が濃いのだが、TV版は それが放映されていた時代の世相風刺が思いっきり濃い。
例えば、1週間遅れで本国から届いた新聞を見ながら ピアースとマッキンタイアが会話する場面で
ピ「おい、本国じゃ 新生児の出生率が激増してるらしいぞ
徴兵された貧乏人の倅が 前線で弾をうってる隙に
本国じゃ金持ちの 倅どもが 別のタマうってやがんだな…」
マ「へぇ…、本国では違う戦争か…
いや、もしかしたら、前線で兵士が死にすぎるから
その補充って事かもしれないぞ」
ピ「そっか、じゃ その子供が前線に来る歳になるまで
戦争は続けておかないとな」
という台詞の応酬の合間に
ピ「大統領が、秋までに兵士を1万人撤退させる方針を表明…」
マ「つまり、大統領としては 1万人の兵士の命の助けたかったら
秋までは大統領を暗殺するな…って 脅迫だな、それは」
ピ「そっか…、じゃ、秋までは 俺達(軍医)も せいぜい頑張って、
1万人以上の兵士を生き残らせておかなきゃ駄目…って事か」
マ「だね、すんげぇノルマかせるよな ボーナス無しで」
つまり、あたかも朝鮮戦争を舞台にしているかの物語の中で ベトナム戦真っ最中の時事ネタを盛り込んで風刺している台詞が TV版の初期のシリーズでは満載だったのだ。
(ベトナム戦争は1975年 サイゴン(現ホーチミン)陥落により、米国の介入は終わる)
この様な ピアースやマッキンタイアの台詞は 戦地で苦渋を舐めた人々の心の叫びの代弁と受け取れる部分が多い。
だから、全体としてはブラック・ユーモアのコメディに仕立てられていながら、実は とびきり風刺の効いた反戦メッセージでもあり、その矛先は 当時の米政府だけに向けられたものでは無く、母国で のうのうと過ごしながら、反戦運動という名目で 兵士をも侮蔑する風潮に対しても向けられている部分が多いのだ。
そういう部分も含めて 私は、この「MASH」という作品は 実に素晴らしい作品だったと思っている。
さて… 以下は、TV版初期の主な登場人物である。
(映画版も ほぼ同じ)

(左:ピアース 右:マッキンタイア)

(左から ホーリハン少佐、バーンズ少佐、ブレイク中佐)

(マルケイ神父(従軍牧師))

(左:ブレイク中佐 右:レーダー伍長)

(部隊内放送のスピーカー(これも立派な登場人物^^))
そして、奇人クリンガー伍長





( この人物は 自分が精神的におかしくなったと装い、
本国へ送還される事を望んでいるのだが、
実は 本当に精神的におかしい人…という複雑な設定なのだ^^; )

ピアース(右)の不真面目さを ブレイク中佐(左)に報告し
処罰を求めるバーンズ少佐(中)

手術をしながら看護婦を口説くピアース

(手遅れで)治療の甲斐なく手術中に患者が死亡し凹むバーンズに
ピアースとマッキンタイアが優しい口調で キツイ台詞をかける
マ「誰がやっても 助ける事は出来なかったよ」
ピ「そうそう、オマエがやったから苦しむ前に
とっとと”あの世”に行けて良かったじゃないか」

手術の最中に食事(ステーキ)を食べるピアース
ちなみに、この「MASH」には原作翻訳本が昔、発刊されており
「マッシュ」
「続・マッシュ」(上の画)
「続続・マッシュ」
と、3冊ある。
但し、「続・マッシュ」「続続・マッシュ」は 朝鮮戦争から復員後の話である。
