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2006年04月25日

● O弁護士の話(その2)


喫茶「職安」の常連客の一人であるO弁護士は悪徳弁護士だった。^^;




ただね、ここで言う「悪徳弁護士」とは 弱い者を虐めて強い者に与する…


という意味では無い。


私はO氏を「どうしようも無ぇ因業爺ぃ」と思いつつも「敬愛すべき爺ぃ」とも思っているからだ。


O氏に会い、気さくな話をさせて貰うまで 私は本物の弁護士と会った事も話した事も、もちろん弁護士の御世話になった事も無い。


全ては小説やドラマの中で描かれる弁護士像… それらが混合されて勝手に弁護士像を想い描いていたに過ぎない。


折からの角川ブームの影響で 「高木彬光」や「和久俊三」の小説も随分読んだ。


彼らの小説には検事や弁護士が多数登場し、まさに正義に味方たらんとする弁護士像…というのを そんな小説の中で触れたけど、本物の弁護士であるO氏は どちらかと言えば、それらの小説に出てくる弁護士で言えば 完全に悪役側の弁護士そのものだったのだ。


最近は TVのバラエティ番組や、2時間ワイド・サスペンスや、ジャンルに限らず いろんな弁護士が登場して、実際の弁護士の実態が わりと公になった感があるが、私が思うに その大きなキッカケとなったのは オ○ム騒動の際だと思う。


一家三人が拉致殺害された弁護士、その同僚弁護士達、一連の報道の際にTVにコメンティターとして登場した弁護士達、そして 教団信者の弁護士や、教団側の弁護人…


いろんな弁護士が登場し、法律の矛盾や 裁判制度の不可思議さ等が 裁判や弁護士とは縁の無かった人々の多くを考えさせられた事件でもあった。




よく混同させられるのは 裁判と言っても「刑事事件」と「民事事件」では形式が違うという事。


刑事事件では特に 無実なのに逮捕された人間を救う…という姿ばかりが 小説やドラマのストーリーで描かれ 弁護士は正義のヒーローとなる。


ゆえに正義感に燃えてるはずの弁護士は 弱者の味方をしてくれる… そんな幻想を描く。


けどね、被告人が金持ちで 自前で報酬を賄ってくれるのならともかく、一般的に刑事事件は「国選弁護人」として 費用は国が賄う形を取るが、それは規定があるとはいえ、民事事件の報酬に比べると微々と言わざるを得ないから 弁護士も人の子であり、苦労して得た資格を生かすためにも 少しでも多く収入を得ようと民事事件を担当しようとする。


同様の事は医者の世界にも言える事で 近年の風潮では「美容整形」の専門を目指す研修医が多い変わりに「小児科」や「産科」の専門医が激減しているという


難しい試験を乗り越え、資格を手にした者が その資格に見合う収入を得ようと欲する…というのは ある意味、不思議な話では無く 当たり前の欲望とも言える。


それを考えれば それなりの収入を保障しようと配慮する事も必要かもしれないが、重要な事は 資格に見合った”資質”という点についてバランスは取れているのか?と疑問に思う事が多い。


カッコつけた言い方をすれば


  「資格」-「収入」-「資質」


この三角関係のバランスが取れていればいいのだが、「資質」という部分に疑問を感じざるを得ない「医者」や「弁護士」や「裁判官」が多すぎると思うのだ。




さて、話をO弁護士に戻す。^^;


私が喫茶「職安」でバイト学生だったある時(今から30年ほど前)、O弁護士は私との雑談の中で


「人生の先輩としてアドバイスをしておいてやる

 今後、オマエ(私)が社会人になったら

 誰もがクレジットカードを持つ様になり、

 下手したら財布にはカードばかりで現金は殆ど持ち歩かない時代になる


 でも、そんな時代になればこそ カードを持つのはいいが

 そのカードを使う事だけは絶対に辞めて、ニコニコ現金払いを貫け

 借金をするなとは言わない、家や車を買おうと思えば

 住宅ローンやマイカー・ローンを利用する事になるだろうからな


 でもな、借金をする時は 中途半端な借り方をせずに

 どうせ借りるなら思いっきり多く借り、

 必ず手許に それなりの現金を持っておけよ」


そう言われた当時は その言葉の意味が私には判らなかったが、数年後に その意味を知る。


バブル期の前頃から 急速にクレジットカードの普及が進んだ。


その要因は 大手の銀行がクレジット会社と提携し、銀行のキャッシュカードにクレジット機能を付加するサービスを積極的に顧客に勧めたからだ。


例えば、(銀行名はカード会社発足当時)


 「VISA」-「住友銀行」


 「UC」-「第一銀行」
      「富士銀行」
      「日本勧業銀行」
      「太陽銀行」
      「埼玉銀行」
      「三菱銀行」


 「JCB」-「日本信販」
       「三和銀行」
       「北海道拓殖銀行」


等々…である。


要するに 当時の大手都市銀行が、「クレジットカード」という洒落た名前の「サラ金」サービスを始めたのと何も変わらない…という事。


あえて、一般的な「サラ金」と区別する必要があるとすれば 公共色が強い銀行が絡んでいる為、金利は法定金利内である…という点のみである。


大学を卒業し、プログラマーからSEという仕事をしていた私は 損保会社や証券会社、そして大手都市銀行のオンライン・システムを担当していた時期があり、その都度「付き合い」と称して 保険に入らされたり、銀行に新規口座を開かされ その口座を給料振り込みの指定銀行に変えさせられ、キャッシュカードを作ると同時に提携クレジットサービスに加入もさせられた。


そのおかげで 今ではカードだけで名刺入れがパンパンに膨らむほどの枚数を加入契約しているが、その殆どのカードを使用した事が無い。^^;


O弁護士は その時点で、そういう時代が来る事を予見しており、クレジットカードによるトラブルや弊害が増加する事も予見していたんだな。


事実、クレジットカードの普及の増加に伴い「カード破産」と呼ばれる自己破産者も急増した。


最も簡単な事例で言えば、手持ちの現金・預貯金が無いのに 次回の給料を見込んでキャッシングで借り出したり、買い物をするのだが、いつしか月給分以上の請求がカード会社から来るようになり、カード会社Aへの支払いのために カード会社Bから借り、そのBに返済するためにCから借り… そのうち、手持ちのカードだけでは資金繰りが追いつかず、サラ金から借り… 負の悪循環へと陥り、誰も貸してくれなくなって破産に至る。


ところが、自己破産するためには数十万の手続き費用が必要なのだが、破産しようと思い立った時には手持ちの現金など僅かしか無く、誰も貸してくれない。


なんとか、かき集めて手続き費用を用意しても 負債総額が500万ぐらいで 借りた金の用途が飲食やギャンブルだった… となれば免責にはして貰えず、破産の意味が無い。


要するにO弁護士が


「借金をする時は 中途半端な借り方をせずに

   どうせ借りるなら思いっきり多く借り、

   必ず手許に それなりの現金を持っておけよ」


と、言ったのは


「最悪の場合、破産する手続き費用ぐらいは用意しておけ」


という意味であり、


「1000万の負債で破産」も「1億の負債で破産」も「破産は破産で同じだ」


という意味でもあったのだ。




さて、破産したくても 破産費用が用意出来ない…


そんな依頼人が訪ねてきたら弁護士は どう対処するのだろう?


今は いろんな救済システムがあるけれど、カード破産が増加し始めた20数年前の時代では 率直に言って私の知る限り、多くの弁護士が 丁寧・無礼 応対の様は別にして門前払いでお引き取り願ったもので 依頼人はその後も取り立てから逃げ回る日々を送る事となったものだ。




さて、ある時の事


O弁護士が個人的に世話になった事がある知人の遺児が O弁護士を訪ね、


「自己破産をしたいので相談に乗って欲しい」


と、言った。


通常であれば 門前払いだったのであろうけど、恩人の遺児という部分にO弁護士は無下にする事が出来ず、相談に乗る事にした。


状況的には まだギリギリの段階で返済に滞りは生じていなかったものの、負債総額は数百万で ほんのちょっと歯車が狂った瞬間に返済は崩壊する状態だった。


単純に言えば 手続き費用をO弁護士が立て替えて破産手続きをしてしまえばいい…


私なんぞは勝手に そう思ったものだが、O弁護士や その後、相談に協力した喫茶「職安」の常連達の考え方は違っていた。


簡単に言えば…


依頼人の借金を 全て、一時的に立て替えて(貸して)返済し 全く借金の無い状態にし、表面上は「信用状態の良い人」にした上で 新たに大きな借金をさせて、最初に立て替えた金額を返済して貰った上で差額を手許に残させて破産させようとしたのである。


つまり、もっと判りやすく言えば…


当初、依頼人は500万の負債を抱えて 手持ちの現金は0に近い状態だった。


そこでO弁護士達は 500万を用立てて負債を全て返済させる。


借金0になった依頼人は 新たに800万の借り入れをして その中から500万プラス礼金をO弁護士達に戻し、破産費用を支払っても 手許には まだ2百万前後の現金が残る…という筋書きである。


これ、ハッキリ言えば「詐欺」です。^^;


ただ、「詐欺」にならない途もひとつだけある。


それは「破産せずに 新たな借り入れ800万を きちんと返済する」という事。


この時のケースで言えば 「破産せずに 新たな借り入れ800万を きちんと返済する」という途を依頼人は選択したが、数年後 結局、返済に行き詰まり破産した。


よく「多重債務者の借り入れを一本化」という表現があるが 上述した手法も、その一本化の手法の一つだが、通常の場合「多重債務者の借り入れを一本化」というのは 表面上、親切を装った 実は悪質な詐欺手口だと思って間違い無い。


悪質なケースと問われるのは 上記のケースの場合「新たな借り入れ先」として申し込む相手が親戚とか知人とか場合で 銀行とかマチ金とか、金融業者相手に行うぶんには 金融を生業としている以上「騙される方が馬鹿」と 倫理観や道義感が偏屈な私は考えるので 時には「可」だとすら考える。


だってね、バブル崩壊以降 中小企業の経営者相手に「倒産防止」を目的とした「制度融資」を悪用して「貸し剥がし」という事を多くの銀行が平然とやってのけたのだが、この「貸し剥がし」と 上述した「一本化」は手口としては 全く同じなの。


で、銀行は その「貸し剥がし」により、自分の不良債権を「新たな借り入れ先」として「国」に対して 大蔵省黙認、自治体黙認で詐欺行為を行ったのと同じだ…という事。


そういうカラクリを何も知らない人が この文を読むと、中には 実に不愉快極まりなく感じる人も多いだろうとは思う。


けど、銀行相手に四苦八苦の交渉に苦労している方々なら 充分に「ウンウン」と頷いてくれるはず。


それが「現実」なのである。


だから、喫茶「職安」の常連達や バイト学生だった私達は 今、思えば 法律ギリギリの「現実」を渡り歩いていた部分が多い。


だから、そんな私達と敵対関係にあった方々は 私達の事を「極悪非道」とか「詐欺師」とか「死ぬまで憎み続ける」とか言うだろうけど、私達の自負は「善良な人を虐めた事は一度も無い」という事で、「詫びる」つもりも「反省」するつもりも「償う」気持ちなど欠片も無い。^^;




さて、O弁護士の話しに 再び戻す。


O氏は晩年糖尿が悪化して 失明寸前となり、不整脈から脳梗塞を起こした。


幸いにも梗塞した部位が運良く、後遺症は歩行障害で車椅子の生活となったが、言語障害や記憶障害などは生じ無かったけれども、医師からは


「いつ、再び脳梗塞や肺血栓が起きても不思議では無く

 次に それが起こったら おそらく最期…」


と、言われるに至った。


で、その後に及んだO氏は 自分の弁護士事務所の事実上の閉鎖を決意し、かねてより後を託していた旧バイト学生の一人である「気の弱い弁護士」に引継ぎ、本人は実質、引退する。


そして、着々と「最期の人騒がせ」の準備に入り ほぼ1年後、脳梗塞が再発し 今度は致命的な部位をピンポイントの如く詰まらせて故人となった。


で、「最期の人騒がせ」とは…


例えば、会社法人が事実上倒産となった場合 管財人として弁護士がその会社法人の資産や負債を整理して倒産手続きを行うわけだが、通常の場合 倒産法人の依頼を受けて管財人は選任され 旧経営者の代わって債権者との応対にあたる。


本来であれば 倒産整理は速やかに行い、債権者の損失を出来るだけ少なくする事で「誠意有る対応」を心がける…というのがタテマエ


実質的には 時間をかけて債権者の多くを泣き寝入りさせる…と言うのが実際だ。


O弁護士は 自分の末期に、倒産を前にした中小企業経営者達の顧問となり、隠し資産を作らせる事を示唆し、実質的に計画倒産をさせて 自分を その管財人に選任させたのだ。


で、「管財処理に手間取っている…」と称して 実は債権者達をほっぽらかし、何もせずに放置しておき、そのまま あの世に旅立った。


これが どういう意味を持つかというと…


「資産台帳など 肝心な書類の多くが、管財人が 急死しちゃったもんで

 何処にあるのか? どうなっているのか? 全く判らないんです」


その後を処理しようとした別の弁護士に そう言われてしまうと、債権者の多くは結果的に泣き寝入りする他、どうしようもなくなってしまったのだ。


旧経営者達は口を揃えて


「O弁護士に全て預けて任せてあったので…」


という事で「隠し資産」の発覚を免れ、倒産後も最低限の資産を保持し続ける。


その手で 悉く、泣き寝入りさせられたのは 悪質な「貸し剥がし」で旧経営者達を泣かせていた銀行が殆どである。


O弁護士の墓は 郊外の見晴らしの良い霊園の一角にあるが、お彼岸や盆の時期になると ちゃんと誰かが掃除をして、花も供えられてある。


それが、「最期の人騒がせ」で騒がされた(?)旧経営者達によるものだとは 真相を知る我々、旧バイト学生達は 口が裂けても言えない。^^;



お駄賃

 気が向いたら…で結構です。^^;

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