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2006年04月08日

● 短小説「北斗星」 20


現在 2時、北斗星は青森信号所で停車していた。

(東京までの 残り 約9時間半)




【冒頭にあたり、管理人注記】


この物語は1話完結の様に見えて そうでは無い部分があります。

(たぶん…、きっと… あ・あるハズです。^^;)


なので、途中から読み始めた方は どうか


   ・第1話『短小説「北斗星」


   ・前 回『短小説「北斗星」 19


上記URLを御参考に、御一読願います。






【今日のウンチク】


北斗星を利用した場合、札幌発の上り、上野発の下り どちらを利用しても函館-盛岡間は真夜中の運行となり、実は 青森近辺が上りと下りがすれ違う地点でもある。


実を言うと 私は 青森を出て 野辺地から八戸へと通じる区間の景色が 全体のルートの中でも好きな景色の一つで 特に陸奥湾(野辺地湾)沿いの海岸線と小川原湖の縁を通過するところの景色が好きなのだ。


しかし、この区間は完全に真夜中であるため 北斗星でここの景色を楽しむ事は不可能である。


しかしながら、札幌在住の身としては この地域を昼間のJRで通過する…というスケジュールを組むためには 何処かで一泊する必要があるため なかなか、見る機会を得るのは困難である。


以前、それも かなり以前の事、札幌-東京を往復する長距離トラックに助手として乗り込み、何度か往復した経験があり、その時の話で言えば 東京から北上する場合 北海道に渡るには 何処かの地点でフェリーに乗る必要があり、大抵は八戸からの航路を選択するのだが 道路事情等で乗れなかった場合、急遽 八戸から青森や大間に移動する場合があり、私がトラックに乗っていた時にも何度か生じた そんなケースの中で2度ほど小川原湖の脇を通るル-トを走った事があるのだが、それは実に綺麗な景色だったという記憶があり、今でも たまに思い出す。


一般人であれば 茨城県の大洗や東京の有明からフェリーに乗って苫小牧や室蘭に向かう…という選択もある。

しかし、そのルートだと 船内で丸一日と 前後に数時間ずつ、つまり2泊3日の行程となり時間がかかりすぎる。


関西方面から北海道へと向かうのであれば新潟-小樽という航路を選択するのは 時間的な部分と費用的な部分の天秤で選択肢となり得るが、大型トラックの場合は 八戸-室蘭もしくは八戸-苫小牧が まず、第1候補となり、八戸発の船に時間的に間に合わない場合は 青森まで足を伸ばすと 遅い時間の出発便がある代わりに、道内に着いてから函館からのぶんだけ余計な距離を走らねばならない…という事情もある。

(大間からの航路もあるが 当時は船の大きさ等で制限があり、
 長距離系の大型トラックは敬遠していた)

私の知り合いが専務(後に社長)をしていた運送会社の運転手達は 八戸発が当時3便あり、2便が室蘭 1便が苫小牧へと向かう航路なのだが、そのうち苫小牧に向かう便に乗れるように時間調整をしながら東京を出発し、東北道を北上したものだ。


何故、その1便が人気があったかと言うと 理由は単純で、そのフェリーにだけ「展望風呂」があったのだ。


つまり、津軽海峡を船で渡る最中は 運転手にとってはまとまった時間を休憩できるタイミングでもあり、展望風呂でゆったりと湯に浸かり、多くのドライバーがその船の中で洗濯をして仮眠する… そういうタイミングだったのだ。


ちなみに 八戸発着及び青森発着のフェリーは そんなに大きな船じゃ無いので波が荒いと船酔いに弱い人は簡単に参る。^^


なので、一般の乗客ならば仙台-苫小牧か 新潟-小樽の航路を利用する事をお奨めする。


この航路は どちらも甲乙つけがたく国内のいろんなフェリー航路の中でも 特に大型のフェリーが就航していて 他の船よりは揺れが少なく、タイタニックの様な豪華客船とまではいかないが おそらく想像するよりも豪華な旅を味わう事が出来る。


さらに、重ねて言えば とかく旅行下手な民族である日本人には「船旅」を味わうという感覚は薄く「船旅=船酔い」と悪いイメージばかりが先行するきらいがある。


しかし、欧米では「船旅」というのが 実は最も高級な旅行…という感覚が定着しており、日本人風に言えば ある程度の年齢に達し、日本風に言えば「定年」を迎えた老夫婦が ひとつの区切りとして楽しむ旅に選ぶのは 中流以上の家庭の場合、最も多いのが「船旅」なのである。






青森信号所に停車した北斗星は ここで、進行方向が逆向きとなり、気動車が代わり、運転手も代わる。


ゆえに、乗客の乗り降りは無いけれど 10分前後停車する事になる。


蟹田の時とは違って乗降口は開かないので ホームに降りて深呼吸という真似は出来ないが、そのぶん 停車中とあって震動や雑音の無い車内は まったり感が漂う。


時間的にも午前2時とあって多くの乗客は寝静まっている。


さっきまでロビー・カーで宴会をしていたジジババ4人組も 自分達の寝台へと戻って行き、「トイレに…」と言っていたパンドラも その後、戻ってこないところをみると トイレから真っ直ぐ、自分のコンパートメントへ戻って行ったのだろう…


静かになったロビー・カーで 私は読みかけの本の続きを読む事にした。




さて、順調に作業が終了したようで ほぼ定刻通りに北斗星は動き出した。


私自身も パンドラやジジババ4人組に掻き回されたペースから開放され 少しづつ本来の私である「渋さ」を取り戻しつつあった。


また、ちょうど この頃になると 寝そびれたり、寝付かれない客が気分転換も兼ねて ロビーに現れたりするもので 私と同年代風の男が独り、「男はつらいよ」の寅さんが持っていた様な箱形のトランクを片手に提げて ロビー・カーに入ってきたし、反対側の入り口からは 私と同じ様に文庫本を持った 私より 少し、歳上の男性がロビー・カーに入ってきて それぞれ手頃な席を陣取ってくつろぎ始めた。


この時、実は内心 失敗したなぁ…と私は後悔していた。


というのは「寝台車に乗るから雰囲気的に調度良い」なんて思って「オリエント急行殺人事件」なんて文庫を札幌駅で買ってきたのだが、実は この本、何年も前にアガサ好きの嫁が買ったのを借りて読んでしまっており、大好きな「横溝正史」じゃ無ければ 推理小説の場合一度読んでしまったモノは ネタバレしているぶん、直ぐに飽きてしまう事が多く…「オリエント…」に いささか飽きをかんじてしまっていたのだ。


「失敗したなぁ…」


そんな想いをかき消そうと タバコに火をつけた時だった。


トランク男が スッと近づき


「すいません、ライターの火をお借りできませんか?」


と、話しかけてきた。


私は 旅は道連れ世は情けとばかり 気持ちよくライターを貸してあげると 男は自分のタバコに火をつけて 美味そうに一服した後、


「すいませんでした… 助かりました」


と、ライターを返して寄越した。


そして、人懐っこい笑顔で


「あのぅ?… 将棋できます? もし、良ければ 一局、御相手願えませんか?」


と言う。


自慢じゃ無いが、私は麻雀、将棋、碁、オセロ、人生ゲーム等で勝負を挑まれて 相手に背中を見せた事が無い。


「誰の挑戦でも受ける」


なのである。


「え? 将棋? いいですよ… でも、将棋盤や駒…」


すると トランク男はトランクの中にスッと手を入れると トラベル用のマグネットのついたミニサイズの将棋盤と駒のセットを取り出して


「いやぁ、良かった もう、暇で暇で退屈してたんですよぉ…」


と、駒を並べ始めた。


私も 将棋は嫌いじゃ無い。


それに、そんなに意気込まれると こちらも、にわかに気合いが入り始めるタチである。


どうやら、トランク男と私の将棋の上では 同レベル程度だったらしい、互いに一進一退を繰り返しながら あぁでもない、こうでもないと言いつつ 良い勝負を繰り返し、それぞれ1勝1敗で五分に渡り合っていた。


そうなると、将棋好きとしては どちらが言うでもなく「もう1番」となり、黙って3局目の用意に駒を並べ始めていたら トランク男の後にロビー・カーにやってきた歳上のダンディが 


「すいません、観戦させてもらって良いですか?」


と、傍にやってきた。


互いに旅の途中である。


無下に断る理由も必要も無い。


「どうぞ」と互いに快く迎え、3局目が始まると…


これがねぇ… 将棋の実に不可思議なところなのだが、対戦している当事者同士は 頭の中で「あの手この手」と自分なりに2手先、3手先をよんで自分の差し手を決めるのだが、第三者的に 横から見ている人間の方が不思議と客観的に見れるぶん 良い読みが出きるモノ。


その上、さらに不可思議なところは 例えば私が 何かの駒を動かすと


「あ~ダメダメ それじゃ、次に王手飛車かけられちゃう…」


とか


「いや、それより、先に角あげないと 3三の銀が死ぬよ」


等と どんどん口を挟んでしまう人が 時々いる。^^;


この時のダンディも そういうタイプの人間だった。


だから、局面が展開していけばいくほど ダンディもテンションが上がり、


「馬鹿だなぁ… それじゃ簡単に詰んじゃう」


等と口走る。


そうなると 対局している当事者としては この上なく鬱陶しい観戦者となるわけで…


私もトランク男も 盛り上がっていたテンションが一気にクール・ダウンし 結果的に互いがいい加減に駒を進め初めて グチャグチャな展開となり私の負けで終局した。


さて、ダンディのように将棋の横から口を挾むタイプの人間は 往々にして、将棋が好きなタイプが多い。


で、このタイプの人間は 散々に他人の対局に口を挟みながら 心の中で、


「この対局が終わったら どちらかと、今度は自分が指したい」


と思う傾向が強い。


終局し、私とトランク男が ふぅと一服始めた途端


「あのぅ? 良ければ、私 次に指させて…」


案の定、ダンディが言う。


私は 先の対局で散々、横槍をさされてウンザリしていたから


「あ、良ければ 私と代わりましょう」


と、さっさと一抜けを宣言すると トランク男も同様だったと見えて


「いやぁ、私も なんか疲れました。 申し訳無いけど 私も一服します…」


と逃げる。


すると、ダンディは


「そうですか… そりゃ、残念だ… でも、お疲れなら仕方が無い…」


と、名残惜しそうに 我々の傍から離れて 最初に陣取っていたソファの方に戻って行った。




さて、対局が終わってつけたタバコを それぞれが楽しみながら


私とトランク男は雑談を始める。


「私は上野までなんですけど そちらは?」


そう聞く私に


「私は大宮までなんです。 明日の…あ、今日の午後までに高崎に行かないと…」


と、トランク男


「へぇ 出張ですか?」


「いやぁ、実は 私 実演販売を仕事にしてまして…」


「え? 実演販売?」


「えぇ、見た事ありません? デパートや大型スーパーで

 洗剤とか包丁とか 万能ハサミとか…」


「あぁ、今なら 軽石セットもつけちゃう…みたいな?」


「そうそう、それです」


「へぇ… で、今は 何をメインに売ってるの?」


「それがですねぇ…」


と、トランク男がトランクから取り出したのはプラスチック製の グルグル回す取っ手のついた 一見、ミキサーの様な機械


「これ、スグレモノでしてね…

 上から人参やキュウリを入れて 取っ手を回すと

 物凄く薄くスライスしちゃう…

 で、このツマミでスライスの厚さが調節できて…

 こっちのレバーを下げると

 タマネギやニンニクなんか アッという間にみじん切りにしちゃう…」


放っておいたら 実際にトランクの中から野菜を出して実演しそうな勢いだ。


( そのトランク ドラエモンの異次元ポケットか?)


と、内心で思う私。


「さっき… あ、正確には昨日まで函館のデパートでやってたんですけど

 先輩が急病になっちゃって 私が代わりに高崎の現場に…」


「へぇ、じゃ 日本全国 いろんなとこに?」


「ですねぇ… ま、それが楽しみでもあるんですけどね」


なんて話をしながら 万能ミキサ-をトランクに仕舞おうとしているトランク男が 荷物の収まり具合が悪いのか トランクの中からいくつかの品物を取り出し ソファの脇に置いたのだが… ふと、それを見たら トラベル・ゲーム・シリーズと呼ばれた 先程の将棋と同様の「碁」や「オセロ」


で、つい その「オセロ」を手に取り…


「あぁ、久しぶりだなぁ このオセロ…

 どうです? 今度はオセロしませんか?」


と、私が言うと


「お、良いですよぉ… 私、オセロは強いですよぉ…」


と、かなりヤル気のトランク男。


しかし、その瞬間 私とトランク男の両方が嫌な視線に気づき横を向くと…


「オセロですか… 良いですねぇ…」


と、ニヤリと笑うダンディ


その台詞を聞いて 何故かヤル気が削がれる私。


見ると、トランク男も固まっていた。




現在 3時少し前(東京までの 残り 約8時間半)



      To be continued …  

( 早く寝れば良いのにね )


お駄賃

 気が向いたら…で結構です。^^;

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